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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項1号公知 B65D 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 B65D 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 B65D 審判 全部申し立て 1項2号公然実施 B65D 審判 全部申し立て 2項進歩性 B65D |
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管理番号 | 1048333 |
異議申立番号 | 異議2000-72263 |
総通号数 | 24 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2000-02-15 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-06-05 |
確定日 | 2001-07-14 |
異議申立件数 | 4 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2986450号「アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第2986450号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第2986450号は、平成10年5月22日の特許出願に係るものであって、平成11年10月1日に特許の設定登録がなされ、その後、その特許について、申立人三和食品株式会社、株式会社マル井、青木暢子及びカネク株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年2月2日に意見書の提出がなされ、再度取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年5月23日に意見書の提出と共に訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 2-1.訂正の内容 上記訂正請求は、特許明細書の記載を訂正明細書の記載のとおり訂正することを求めるものであるが、その概要は次のとおりである。 (1)特許明細書の特許請求の範囲請求項1乃至5を、次のとおりに訂正する。 「【請求項1】 アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品をガス透過性の包装材で包装し、 前記包装材を破らない段階では、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品から揮発する辛味成分により、周囲に抗菌作用を及ぼし、 前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品から揮発する辛味成分は前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側で、 前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側から遠い中心に近い部分には、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品本来の辛味成分は残存しており、 前記包装材を破いて前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品を食することができ、 前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品は、ワサビであり、このワサビは、さしみと共に使用するものである ことを特徴とするアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法。 【請求項2】 アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品をガス透過性の包装材で包装し、 前記包装材を破らない段階では、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品から揮発する辛味成分により、周囲に抗菌作用を及ぼし、 前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品から揮発する辛味成分は前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側で、 前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側から遠い中心に近い部分には、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品本来の辛味成分は残存しており、 前記包装材を破いて前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品を食することができ、 前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品は、ワサビであり、さしみを入れる容器内に前記ワサビを内在する包装材を共に入れる ことを特徴とするアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法。 【請求項3】 ガス透過性の包装材は、内面がポリエチレンフィルムで、該ポリエチレンフィルムをガス透過性の紙で被覆し、 前記内面が互いに向き合うように折り、縦シーラーで縦シールし、横シーラーで横シールすると共にアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品を充填し、再び、横シーラーで横シールし、前記アリル・イソ・チオシアネートを密封し、その後、カッタでカットするものであり、 前記縦シール及び前記横シールは、熱圧着によるものである ことを特徴とする請求項2記載のアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法。 【請求項4】 ガス透過性の包装材は、内面がポリエチレンフィルムで、該ポリエチレンフィルムの外側に孔を有したバリア性フィルムの多層フィルムで構成され、 前記内面が互いに向き合うように折り、縦シーラーで縦シールし、 横シーラーで横シールすると共にアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品を充填し、再び、横シーラーで横シールし、前記アリル・イソ・チオシアネートを密封し、その後、カッタでカットするものであり、 前記縦シール及び前記横シールは、熱圧着によるものである ことを特徴とする請求項2記載のアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法。」 (2)特許明細書の「課題を解決するための手段」の欄及び「発明の効果」の欄の記載について、上記の特許請求の範囲の訂正に伴い、対応する箇所を訂正する。 2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 上記訂正事項(1)については、請求項1は、訂正前の請求項1に記載された「アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品」をワサビに、該ワサビは更に「さしみと共に使用する」と下位概念に限定しようとするもので、この訂正は特許明細書の段落番号【0012】を根拠としている。また、請求項2は、訂正前の請求項2を独立形式に訂正するものである。また、請求項3は、訂正前の請求項4に、訂正前の請求項2を結合すると共に、訂正した請求項2に従属する形式に訂正するものである。また、請求項4は、訂正前の請求項5に、訂正前の請求項2を結合すると共に、訂正した請求項2に従属する形式に訂正するものである。 上記訂正事項(2)は、上記の特許請求の範囲の訂正に伴い、整合性を図るために訂正するものである。 したがって、上記訂正事項(1)は、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、上記訂正事項(2)は、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 2-3.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び第3項で準用する第126条第2、3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議申立てについての判断 3-1.申立ての理由の概要 申立人三和食品株式会社(以下「申立人A」という。)は、証拠方法として、下記甲第1号証〜甲第5号証を提出し、本件特許明細書の請求項1〜5に係る発明は、いずれも、本件の出願前に公然知られ、公然実施された、甲第1号証〜甲第5号証によって開示された発明と同一であるか、又は、甲第1号証〜甲第5号証によって開示された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第1号〜第3号及び同法同条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、従って、本件特許明細書の請求項1〜5に係る特許はいずれも取り消すべきものである旨主張する。 [証拠方法] (1)甲第1号証:特開平3-15370号公報 (2)甲第2号証:各種の流体粘体自動充填包装機中の「型式JKL-1 300V」及び充填包装手順のラインナップ慨略図が掲載されてい るコマック特選カタログ (3)甲第3号証:カタログの印刷年月日により、甲第2号証のカタログに掲載のラインナップ概略図及び型式JKL-1300Vは、本件の出願前に実施されていた機械であり、充填包装手段であることを立証するもの。 (4)甲第4号証:型式JKL-1300-3Pの写真 (5)甲第5号証:甲第4号証の仕様書 申立人株式会社マル井(以下「申立人B」という。)は、証拠方法として、下記甲第1号証〜甲第5号証を提出し、本件特許明細書の請求項1〜5に係る発明は、甲第1号証〜甲第5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、従って、本件特許明細書の請求項1〜5に係る特許はいずれも取り消すべきものである旨主張する。 [証拠方法] (1)甲第1号証:特開平3-15370号公報 (2)甲第2号証:特開昭53-136539号公報 (3)甲第3号証:特開平4-79869号公報 (4)甲第4号証:特開平9-154531号公報 (5)甲第5号証:特開平5-318550号公報 申立人青木暢子(以下「申立人C」という。)は、証拠方法として、下記甲第1号証〜甲第3号証を提出し、本件特許明細書の請求項1〜5に係る発明は、甲第1号証〜甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、また、本件特許明細書の特許請求の範囲請求項1中には、「前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品から揮発する辛味成分は前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側で、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側から遠い中心に近い部分には、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品本来の辛味成分は残存しており、前記包装材を破いて前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品を食することができる」とあるが、その具体的な実現手段が記載されておらず、このような機能、現象ないしは効果の記載のみでは発明を特定するために必要な事項が不明りょうであり、当業者が容易に実施できる程度に記載されているとはいえないから、本件の出願は特許法第36条第5項に規定する要件を満たしていないものであり、従って、本件特許明細書の請求項1〜5に係る特許はいずれも取り消すべきものである旨主張する。 [証拠方法] (1)甲第1号証;特開昭53-136539号公報 (2)甲第2号証;持開平10-57029号公報 (3)甲第3号証;特開平6-99952号公報 申立人カネク株式会社(以下「申立人D」という。)は、証拠方法として、下記甲第1号証〜甲第4号証を提出し、本件特許明細書の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないものであり、本件特許明細書の請求項1〜5に係る発明は、甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、また、本件特許明細書の特許請求の範囲請求項1中には、「前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品から揮発する辛味成分は前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側で、」とあるが、揮発する辛味成分がアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側でどうなるかについて記載しておらず、発明の詳細な説明の記載を参酌しても不明確であるから、特許請求の範囲の記載要件を充足しておらず、本件の出願は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないものであり、従って、本件特許明細書の請求項1〜5に係る特許はいずれも取り消すべきものである旨主張する。 [証拠方法] (1)甲第1号証:特開平3-15370号公報 (2)甲第2号証:特公昭51-30148号公報 (3)甲第3号証:実願平2-35763号(実開平3-126489号 )のマイクロフィルム (4)甲第4号証:特開平7-222574号公報 3-2.本件の請求項1〜4に係る発明 上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1〜4に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」〜「本件発明4」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定されるとおりである。 3-3.刊行物等 特許異議申立人が証拠として提出した次の刊行物には、それぞれ、以下の事項が記載されている。 (ア)特開平3-15370号公報(申立人A、B、Dの提出した甲第1号証、平成13年3月15日付取消理由通知書で引用した刊行物1) ワサビを通気性を有するシートで包装したものからなる食品のカビ発生防止剤について (アa)「本発明はパン、餅、あられ、ケーキ、菓子等の食品を保存する場合、カビの発生を防止して長期保存を可能にするための食品のカビ発生防止剤に関するものである。」(1頁左下欄13行〜16行) (アb)「本願第1の発明のカビ発生防止剤を食品とともに保存すれば、ワサビ又はカラシ中の有効成分が、シート材を通って食品の保存されている空間に揮散してカビの増殖活動を抑制する。」(1頁右下欄19行〜2頁左上欄2行) (アc)「本実施例のワサビを用いたカビ発生防止剤は、第1,2図に示すように粉末状の合成ワサビと水とを1:1の割合で十分練り合わせた練りわさびを、通気性のあるか紙製の袋2で包装したものである。この紙は、西洋紙の材質と和紙の材質とが混合されてできたものであって、WOP加工(水分及び油分を通さないようにするための加工)後、更にPEラミネート加工(微細な穴が形成されているポリエチレンをラミネートする加工(アナポリ加工))を施したものである。」(2頁左上欄12行〜同頁右上欄1行) (アd)「この試験報告書記載の試験において使用したハイビックAワサビは前記実施例の練ワサビ1を紙製の袋2で包装したものである。 ・・・・ 表-1記載の試験区は前記ハイビックAワサビ又はハイビックBカラシと食パン1枚とを袋に入れシール後、室温(約20℃)で保存して経時的に観察したものである。 ・・・ 表-1からわかるようにハイビックAワサビを使用した試験区においては、12日間放置してもカビの発生は認められなかった。」(2頁左下欄14行〜同頁右下欄9行) (アe)「なお、ワサビ及びカラシはそのもの自体、食用に供される食品であり、仮にワサビ又はカラシ中の成分がパン等の表面に付着して、人体に摂取されることがあったとしても、食品添加物のような人体への悪影響はまったく考えられない。」(3頁左上欄16行〜20行) (アf)「本発明においてワサビ又はカラシを包装するシート材としては、紙の他通気性を有するポリエチレン等でもよい。 更に、本発明のカビ発生防止剤としては前述の練ワサビ1練カラシに限定されることなく、次のようなものも使用してもよい。 ・・・ すりおろした新鮮なワサビにする。すりおろした場合にはワサビの細胞が破壊され、細胞中離れて存在していた前駆体にミロシナーゼが反応し、抗菌性物質であるアリルイソチオシアネートが多量に生成される。」(3頁右上欄15行〜同頁左下欄8行) (イ)「コマック特選カタログ」(申立人Aの提出した甲第2号証) 株式会社小松製作所が作成し頒布したカタログであり、その第1頁左上に「液体・粘体物を対象にする、充填包装機のラインナップ慨略図」が示されており、2頁下半部に「型式JKL-1300Vの汎用型高速液体・粘体自動充填包装機」が掲載されている。 (ウ)「型式JKL-1300-Vの高速液体粘体自動充填包装機」のカタログ(申立人Aの提出した甲第3号証) 株式会社小松製作所が作成したカタログであり、本件の出願日前である1996年8月(該カタログの裏表紙下隅に記載)に印刷発行したカタログである。 (エ)機械写真(申立人Aの提出した甲第4号証) 撮影対象:NO.1は、「型式JKL-1300-3Pの高速液体粘体自動充填包装機」の全体を示し、該機械は、甲第2号証の第2頁及び甲第3号証に掲載された、「型式KL-1300-V高速液体粘体自動充填包装機」と同じ系統の機械であり、撮影対象:NO.2の標示板には、1995年8月21日の日付が記載されている。 (オ)機械写真の仕様書の抜粋(申立人Aの提出した甲第5号証) 甲第4号証に示す「型式JKL-1300-3Pの高速液体粘体自動充填包装機」の仕様書であり、該使用書中の表紙、第1頁、第10頁、第11頁、第12頁、第14頁、第17頁を抜粋したものである。その第1頁に、「機能、目的の概要」として、1本の巻取りフィルムをフィルムリードを経由させ、フィルムを2ッ折りにし、縦熱シールロールにより縦シールを行いながら充填ポンプにて被包装物を先端のノズルから充填し、縦シールに対して、袋天地の横熱シールを行い、そして、冷却シールプレスロールにて横シールした個所を冷圧着して、縦シール部横側にノッチを入れ、カッター装置で一定寸法にカットし、製品排出シュートに排出する高速液体粘体自動充填包装機が載されており、また、充填物としては、練りわさび・おろし生妾を2.5g・cc/袋 充填することもと記載されている。 (カ)特開昭53-136539号公報(申立人Bの提出した甲第2号証、申立人Cの提出した甲第1号証、平成13年3月15日付取消理由通知書で引用した刊行物2) 食品の密封保存方法について (カa)「粉末カラシならびに粉末ワサビを少量の微温湯でねりあわせたもの・・・をガスヴァリア性の低いプラスチックフィルム、和紙等で密封したものを使用することを特徴とする食品の密封保存方法。」(1頁左下欄13行〜17行) (カb)「従って本発明は、天然物を使用して生鮮食料品ならびに加工食品の腐敗防止をはかることを目的とするものであり、本発明者は研究の結果、カラシおよびワサビを使用することによりこの目的を達成できることを知った。」(2頁7行〜11行) (キ)特開平4-79869号公報(申立人Bの提出した甲第3号証、平成13年3月15日付取消理由通知書で引用した刊行物3) 山葵等からの抽出物を、通気性材料で一部又は全部が作られており、袋状、スティック状、ピロー状等の形状に作製することができる容器内に収納してなる食品保存用具を食品収容器内部に食品と共存ぜしめることからなる食品保存方法について (キa)「本発明において使用する酸素透過度1000ml/m2・24h・atm・・・以上である通気性材料の材質は特に限定されず、例えば各種プラスチックフィルム、穴空きフィルム、多孔性フィルム、紙、不織布、布及びこれらを組み合わせた積層フィルムを使用することができる。 具体的な好ましい通気性材料としては、例えばプラスチックフィルムとしてはポリエチレンフィルム・・・を挙げることができる。」(2頁左下欄9行〜同頁右下欄3行) (ク)特開平9-154531号公報(申立人Bの提出した甲第4号証) 練りわさび組成物及びその製造方法について記載されている。 (ケ)特開平5-318550号公報(申立人Bの提出した甲第5号証、平成13年3月15日付取消理由通知書で引用した刊行物4) 縦ピロー包装装置が記載されており、また、縦ピロー包装用積層包装材料として、シーラント層がポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー等からなるヒートシール性熱可塑性樹脂フィルムを使用することも記載されている。 (コ)特開平10-57029号公報(申立人Cの提出した甲第2号証) 鮮度保持剤および鮮度保持剤を収納した容器ならびに容器を備えた食品収納容器について (コa)「イソチオシアン酸アリルやヒノキチオール等の天然抽出物を主成分とする抗菌剤12を封入し、温度によってガス透過性を制御できるポリウレタン系の形状記憶樹脂で構成されるガス透過膜14を表面の少なくとも一部に設けた鮮度保持剤容器22を密閉型食品保存容器20の天面の蓋体24を着脱自在に設ける。」(1頁左下欄11行〜16行) (コb)「イソチオシアン酸アリルやヒノキチオール等の天然抽出物を主成分とする抗菌剤を封入し、温度によってガス透過性を制御できる感温素材を設けた容器。」(2頁左上欄5行〜8行) (コc)「イソチオシアン酸アリルやヒノキチオール等の天然抽出物を主成分とする抗菌剤を封入し、温度によってガス透過性を制御できる感温素材を備えた容器を着脱自在に取付けてなる食品収納容器。」(2頁左上欄11行〜14行) (サ)特開平6-99952号公報(申立人Cの提出した甲第3号証) 充填包装機について 「縦ヒートシールロールにより縦シールしてフイルムを筒状に形成するとともに、横ヒートシールロールにより横シールして包装袋となる底部を形成し、この有底筒状に形成したフイルム内に内容物を充填し、さらにフイルムを送りつつフィルムの袋口部側となる箇所を横ヒートシールロールにより横シールして連続包装し、この横シール部分の中間部をカッター部で切断可能に設けた充填包装機」(2頁6行〜13行) (シ)特公昭51-30148号公報(申立人Dの提出した甲第2号証) おろしわさびの製造法について (シa)「イソチオシアン酸エステルが辛味および風味の主成分である」(2頁左欄18行〜19行) (シb)「辛味含有量は長島法・・・を用いて、各試料中の辛味成分をアリルイソチオシアネートとして測定することによって行った。」(3頁左欄17行〜21行) (ス)実願平2-35763号(実開平3-126489号)のマイクロフィルム(申立人Dの提出した甲第3号証) シート状保存剤について (スa)「アミド類、イソチオシアナート類、スルフイド類、バニリルケトン類、キノン類及びテルペン類に属する群からなる植物成分の少なくとも1つをシート状物に含有又は挟持させてなるシート状保存剤。」実用新案登録請求の範囲(1)) (スb)「本考案は、特定の植物成分を含み、…に関するものであり、特に…魚肉等の食品類…の保存に好適で」(2頁11行〜15行) (スc)「植物成分は、安全性及び入手容易性の観点から天然の植物から抽出された成分又は該成分を含有する天然植物をそのまま使用するのが好ましい。・・・ 上記植物成分のうち、・・・イソチオシアナート類としてはアリルイソチオシアナート・・・等が挙げられ」(5頁5行〜13行) (スd)「シート状物としては、上記植物成分・・・の作用を阻害しない通気性の有るもの・・・であれば何等限定されない。たとえば、紙、・・・プラスチックフィルム、・・・等のシート状物を使用することができる。」(8頁12行〜18行) (セ)特開平7‐222574号公報(申立人Dの提出した甲第4号証) 食品用鮮度保持体について 「可食処理された固体状の穀粒、ないしは粒状、紐状、シート状、塊状に整形されて可食処理してある固体状の乾燥食品からなる担持体2を有し、担持体2の外面にイソチオシン酸アリルを抗菌成分とする抗菌剤3が付着されていることを特徴とする食品用鮮度保持体。」(特許請求の範囲) 3-4.対比・判断 [本件発明1について] 本件発明1と刊行物(ア)に記載された発明とを対比する。 刊行物(ア)記載の発明における「ワサビ」は、アリルイソチオシアネートを生成し、このアリルイソチオシアネートが揮発性の抗菌物質として作用し(アc、アe参照)、このアリルイソチオシアネートは辛味物質であり(必要ならば、刊行物(カ)の2頁左上欄19行〜同頁右上欄2行参照)、ワサビはそのもの自体、食用に供される食品であり、仮にワサビ中の成分がパン等の表面に付着して、人体に摂取されることがあったとしても、食品添加物のような人体への悪影響はまったく考えられない(アe参照)ものであるから、本件発明1における「アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品」に相当するものと認められる。また、刊行物(ア)記載の発明における「通気性を有するシート材」は、その機能からみて、本件発明1における「ガス透過性の包装材」に対応する。 また、刊行物(ア)に記載された発明において、アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品であるワサビをガス透過性の包装材に包装すれば、本件発明1におけると同様に、揮発性の辛味成分であるアリル・イソ・チオシアネートはワサビの表面側で揮発し、アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側から遠い中心に近い部分からの辛味成分も、アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側に移行し、最終的には表面側で揮発し、そのことにより、周囲に抗菌作用を及ぼすものであると認められ、他に解すべき根拠も見当たらない。そして、練ワサビの場合であるとはいえ、同様にガス透過性の包装材に包装すれば、12日間というような長期にわたってカビの発生又は発育を防止及び抑制しうるということは、辛味成分が一気にではなく、徐々に日数をかけて揮発することを表しているものと認められ、他の、例えば、すりおろした新鮮なワサビであっても同様な傾向を示すものと認められるから、少なくとも包装した当座は、アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側から遠い中心に近い部分には、アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品本来の辛味成分は残存しているものと認められる。 してみると、両者は、 「アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品をガス透過性の包装材で包装し、 前記包装材を破らない段階では、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品から揮発する辛味成分により、周囲に抗菌作用を及ぼし、 前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品から揮発する辛味成分は前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側で、 前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側から遠い中心に近い部分には、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品本来の辛味成分は残存しており、 前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品は、ワサビである ことからなる前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法」 である点において一致し、次の点において相違するものと認められる。 (i)アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品であるワサビが、本件発明1においては、包装材を破いて食することができるものであり、さしみと共に使用するものであるのに対して、刊行物(ア)に記載された発明においては包装材を破いて食する必要性があったか否か明らかでない点。 そこで、この点について検討するに、刊行物(ア)に記載された発明においては、ワサビはガス透過性の包装材により包装されてカビ発生防止剤となるものであり、このカビ発生防止剤を使用してカビの発生を防止して長期保存を可能にする食品として例示されているものは、パン、餅、あられ、ケーキ、菓子等であり、いずれも一般的にワサビと共に食する必要性のあるものではない。 それ故に、刊行物(ア)に記載された発明において、ガス透過性の包装材により包装されたワサビが、.包装材を破いて食することができるものであり、さしみと共に使用するものであるとするに足る根拠を見いだすことはできない。 この点について、他の上記刊行物をみるに、刊行物(カ)には、生鮮食料品の腐敗防止をはかることを目的として、天然物である粉末ワサビを少量の微温湯でねりあわせたものをガスヴァリア性の低いプラスチックフィルム、和紙等で密封したものを使用する生鮮食料品の密封保存方法が記載されている。しかし、生鮮食料品が必ずしもさしみを意味するものではなく、一般的にワサビと共に食するものということもできないから、刊行物(カ)に、生鮮食料品の腐敗防止をはかることを目的として使用されるものとして開示されている練りワサビが包装材を破いて食しうることも示唆されていたとすることはできない。また、その他の上記刊行物をみても、ガス透過性の包装材に包装されたワサビが、包装材を破いて食することができるものであり、さしみと共に使用するものであることを示唆するに足る記載あるいは証拠は見当たらない。 したがって、本件発明1が、上記刊行物(ア)〜(セ)に記載された発明、あるいは、上記刊行物(ア)〜(セ)に記載された発明から容易に発明をすることができた発明とは認められない。 なお、念のために申し添えるならば、刊行物(ア)に記載された発明においては、ワサビを包装するガス透過性の包装材として具体的には、通気性のある紙あるいは通気性のあるポリエチレンが使用されている。この通気性のある紙は、西洋紙の材質と和紙の材質とが混合されてできたものであって、WOP加工(水分及び油分を通さないようにするための加工)後、更にPEラミネート加工(微細な穴が形成されているポリエチレンをラミネートする加工(アナポリ加工))を施したものである(アc)。また、通気性のあるポリエチレンについてはそれ以上の詳しい記載は見当たらない(アf)。してみると、刊行物(ア)に記載された発明において、ガス透過性の包装材として具体的に使用されているものは、本件発明1においてガス透過性の包装材として具体的に使用されている、内面がポリエチレンフィルムで外層が紙あるいは孔を有するフィルムからなるものと同一とはいえない。また、他の上記刊行物をみても、さしみと共に使用するワサビが、内面がポリエチレンフィルムで外層が紙あるいは孔を有するフィルムからなる包装材により包装されているものは見当たらない。それ故に、本件発明1が、上記刊行物(ア)〜(セ)に記載された発明と実施例同一であるともいえない。 [本件発明2〜4について] 本件発明2は、本件発明1における「さしみと共に使用するものである」を「さしみを入れる容器内に前記ワサビを内在する包装材を共に入れる」に限定するものであり、本件発明3及び4は本件発明2を引用するものであるから、本件発明1が、上記刊行物(ア)〜(セ)に記載された発明、あるいは、上記刊行物(ア)〜(セ)に記載された発明から容易に発明をすることができたものとも認められない以上、本件発明2〜4が、上記刊行物(ア)〜(セ)に記載された発明、あるいは、上記刊行物(ア)〜(セ)に記載された発明から容易に発明をすることができた発明とは認められない。 3-5.記載不備について 申立人Cは、本件特許明細書の特許請求の範囲請求項1中には、「前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品から揮発する辛味成分は前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側で、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側から遠い中心に近い部分には、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品本来の辛味成分は残存しており、前記包装材を破いて前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品を食することができる」とあるが、その具体的な実現手段が記載されておらず、このような機能、現象ないしは効果の記載のみでは発明を特定するために必要な事項が不明りょうであり、当業者が容易に実施できる程度に記載されているとはいえないから、本件の出願は特許法第36条第5項に規定する要件を満たしていないものである旨主張する。 しかしながら、上記訂正により、特許明細書の請求項1に記載された「アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品」をワサビに、該ワサビは更に「さしみと共に使用する」と限定され、上記3-4.で述べたように、アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品であるワサビをガス透過性の包装材に包装すれば、揮発性の辛味成分であるアリル・イソ・チオシアネートはワサビの表面側で揮発し、アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側から遠い中心に近い部分には、アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品本来の辛味成分は残存しているものと認められるから、ガス透過性の包装材により包装されたワサビが、包装材を破いて食しうるものとするために必要な事項は記載されており、また、これに相当する実施例もあるから、申立人Cの上記主張には理由がない。 また、申立人Dは、本件特許明細書の特許請求の範囲請求項1中には、「前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品から揮発する辛味成分は前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側で、」とあるが、揮発する辛味成分がアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側でどうなるかについて記載しておらず、発明の詳細な説明の記載を参酌しても不明確であるから、特許請求の範囲の記載要件を充足していない旨主張する。 しかしながら、上記3-4.で述べたように、アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品であるワサビをガス透過性の包装材に包装すれば、揮発性の辛味成分であるアリル・イソ・チオシアネートはワサビの表面側で揮発し、アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側から遠い中心に近い部分からの辛味成分も、アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側に移行し、最終的には表面側で揮発し、そのことにより、周囲に抗菌作用を及ぼすものであることを勘案すると、上記の点で記載不備があるとするには当たらないから、申立人Dの上記主張には理由がない。 3-6.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件の請求項1〜4に係る特許を取り消すことができない。 また、他に本件請求項1〜4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品をガス透過性の包装材で包装し、 前記包装材を破らない段階では、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品から揮発する辛味成分によう、周囲に抗菌作用を及ぼし、 前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品から揮発する辛味成分は前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側で、 前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側から遠い中心に近い部分には、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品本来の辛味成分は残存しており、 前記包装材を破いて前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品を食することができ、 前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品は、ワサビであり、このワサビは、さしみと共に使用するものである ことを特徴とするアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法。 【請求項2】 アリル・イソ・チオシアネート存含有する食品をガス透過性の包装材で包装し、 前記包装材を破らない段階では、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品から揮発する辛味成分により、周囲に抗菌作用を及ぼし、 前記アリル・イソ・チオシアネート表含有する食品から揮発する辛味成分は前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側で、 前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側から遠い中心に近い部分には、前記アリル・イソ・チオシアネート寿含有する食品本来の辛味成分は残存しており、 前記包装材を破いて前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品を食することができ、 前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品は、ワサビであり、さしみを入わる容器内に前記ワサビを内在する包装材を共に入れる ことを特徴とするアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法。 【請求項3】 ガス透過性の包装材は、内面がポリチレンフィルムで、該ポリエチレンフィルムをガス透過性の紙で被覆し、 前記内面が互いに向き合うように折り、縦シーラーで縦シールし、横シーラーで横シールすると共にアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品を充填し、再び、横シーラーで横シールし、前記アリル・イソ・チオシアネートを密封し、その後、カッタでカットするものであり、 前記縦シール及び前記横シールは、熱圧着によるものである ことを特徴とする請求項2記載のアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法。 【請求項4】 ガス透過性の包装材は、内面がポリエチレンフィルムで、該ポリエチレンフィルムの外側に孔を有したバリア性フィルムの多層フィルム講造で構成され、 前記内面が互いに向き合うように折り、縦シーラーで縦シールし、 横シーラーで横シールすると共にアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品を充填し、再び、横シーラーで横シールし、前記アリル・イソ・チオシアネートを密封し、その後、カッタでカットするものであり、 前記縦シール及び前記横シールは、熱圧着によるものである ことを特徴とする請求項2記載のアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】本発明は、アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法に係り、特に、アリル・イソ・チオシアネートの抗菌件用の有効活用を図ったアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法に関する。 【0002】 【従来の技術】アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品、例えば、ワサビに含まれる辛味成分であるアリル・イソ・チオシアネート(アリルカラシ油)に抗菌作用があることは知られ、フィルムシートの内面側にカラシ抽出物を塗布して抗菌層を形成したものがある。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、この抗菌層を形成したものは、フィルムシートの内面側にカラシ抽出物を塗布しなければならず、カラシ抽出工程、カラシ抽出物塗布工程と成形過程において、非常に面倒で、しかも、カラシ抽出物を塗布した抗菌層は、抗菌作用を施すのみで、カラシ抽出物を食することもできないという問題点があった。 【0004】本発明は、上記問題点を除去するようにしたアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法を提供することを目的としている。 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明のアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法は、アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品をガス透過性の包装材で包装し、前記包装材を破らない段階では、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品から揮発する辛味成分により、周囲に抗菌作用を及ぼし、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品から揮発する辛味成分は前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側で、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側から遠い中心に近い部分には、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品本来の辛味成分は残存しており、前記包装材を破いて前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品を食することができ、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品は、ワサビであり、このワサビは、さしみと共に使用するものである。 また、請求項2記載のアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法は、アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品をガス透過性の包装材で包装し、前記包装材を破らない段階では、前記アリル・イソ・チオシアートを含有する食品から揮発する辛味成分により、周囲に抗菌作用を及ぼし、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品から揮発する辛味成分は前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側で、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側から遠い中心に近い部分には、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品本来の辛味成分は残存しており、前記包装材を破いて前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品を食することができ、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品は、ワサビであり、さしみを入れる容器内に前記ワサビを内在する包装材を共に入れるものである。 【0006】又、請求項3記載のアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法は、請求項2記載のアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法において、ガス透過性の包装材は、内面がポリエチレンフィルムで、該ポリエチレンフィルムをガス透過性の紙で被覆し、前記内面が互いに向き合うように折り、縦シーラーで縦シールし、横シーラーで横シールすると共にアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品を充填し、再び横シーラーで横シールし、前記アリル・イソ・チオシアネートを密封し、その後カッタでカットするものであり、前記縦シール及び前記横シールは、熱圧着によるものである。 【0007】又、請求項4記載のアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法は、請求項2記載のアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法において、ガス透過性の包装材は、内面がポリエチレンフィルムで、該ポリエチレンフィルムの外側に孔を有したバリア性フィルムの多層フィルム構造で構成され、前記内面が互いに向き合うように折り、縦シーラーで縦シールし、横シーラーで横シールすると共にアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品を充填し、再び、横シーラーで横シールし、前記アリル・イソ・チオシアネートを密封し、その後、カッタでカットするものであり、前記縦シール及び前記横シールは、熱圧着によるものである 【0008】 【実施例】本発明の一実施例のアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法について図面を参照して説明する。 【0009】1は、ガス透過性の包装材で、包装材1内には、辛み成分が揮発する状態でアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品が収納され、アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品としては、例えば、ワサビ2が入っている。このワサビ2は、例えば、生おろしわさびで、生おろしわさびは本わさびと西洋わさびをおろし状にして着色料(天然・合成)で着色したものである。 【0010】なお、アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品としては、ワサビ2の他に、図示しないが、からし、わさび漬等がある。 【0011】ガス透過性の包装材1は、例えば、内面がポリエチレンフィルム1a、該ポリエチレンフィルム1aをガス透過性の紙1bで被覆した二層構造となっている。内面にポリエチレンフィルム1aを使用したのは、ポリエチレンフィルム1aがワサビ2に含まれるアリル・イソ・チオシアネート(アリルカラシ抽)の揮発性ガスを通過させることができ、しかも、最外層にガス透過性の紙(例えば、20g/m2)を使用すれば、既存の自動包装シール装置を使って、ポリエチレンフィルムを低い温度で溶融させてシール(熱圧着)させ易いためである。 【0012】このように二層構造となったガス透過性の包装材1にワサビ2を内在し、さしみ、弁当の生食品と共に使用すれば、包装材1を破らない段階では、ワサビ2から揮発する辛味成分により、周囲に抗菌作用を及ぼすことができる。 【0013】特に、さしみ、弁当の生食品を入れる容器内に、ワサビ2を内在する包装材1を共に入れる場合、さしみ、弁当の生食品を入れる容器がガス不透過性で形成し、ワサビ2から揮発する辛味成分を容器の外へと飛散しないようにして、容器内に留まって抗菌作用を及ぼすようにすることが望ましい。 【0014】上述の実施例では、例えば、さしみと共にワサビ2内在した包装材1があった場合、さしみの表面に残っている水分、血等が包装材1の最外層(外表面)に位置する紙1により吸収され、包装材1の外観を損なう欠点を有する。この欠点を除去したガス透過性の包装材1について説明する。 【0015】このガス透過注の包装材1は、内面がポリエチレンフィルム1a(厚さは、例えば、40μ)で、該ポリエチレンフィルム1aの外側[最外層(外表面)]に孔1d(孔1dは、つきぬけた穴で、ワサビ2から揮発する辛味成分を通過させ、例えば、直径1mm〜30mm程度の丸い穴である。)を有したバリア性フィルム1c(例えば、ガス不透過のポリエステルで、厚さは、例えば、12μ)の多層フィルム構造で構成されている。この多層フィルム構造であれば、包装材1への印刷も、食品が面する側ではなく、透明性のあるポリエチレンフィルム1a、または、透明性のあるバリア性フィルム1cのポリエチレンフィルム1a側にすることができる。 【0016】なお、上述した2つの実施例のような「内面(最内層)がポリエチレンフィルム1aで形成された包装材1」は、図5に示すように、既存の自動包装シール装置を使って、ポリエチレンフィルム1aを溶融してシールすることができる。 【0017】即ち、二層構造となったガス透過性の包装材1の内面が互いに向き合うように折り、縦シーラー10で縦シール(熱圧着)S1し、横シーラー20で横シール(熱圧着)S2すると共に図5の矢印方向Yにワサビ2を充填し、再び、横シーラー20で横シール(熱圧着)S2し、ワサビ2を密封し、その後、図示しないカッタでカットし、図1記載のワサビ2を内在した包装材1を形成することができる。 【0018】 【発明の効果】請求項1記載のアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法によれば、アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品をガス透過性の包装材で包装したから、包装材を破いてアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品を直接又は、他の商品と共に食してもアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品から揮発する辛味成分はアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側で、アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側から遠い中心に近い部分には、アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品本来の辛味成分は残存しており、アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の味の低下もそれ程なく、しかも、包装材を破らない段階では、アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品から揮発する辛味成分によむ、周囲に抗菌作用を及ぼすことができる。 【0019】また、請求項3記載のアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法によれば、請求項1記載の発明の効果に加え、内面がポリエチレンフィルムであれば、該ポリエチレンフィルムをガス透過性の紙で被覆し、既存の自動包装シール装置を使って、ポリエチレンフィルムを溶融してシールすることができ、包装材を破らない段階では、アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品から揮発する辛味成分は、ポリエチレンフィルム、紙と通過し、周囲に抗菌作用を及ぼすことができる。 【0020】また、請求項4記載のアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法によれば、請求項1記載の発明の効果に加え、内面がポリエチレンフィルムであれば、該ポリエチレンフィルムをガス透過性の紙で被覆し、既存の自動包装シール装置を使って、ポリエチレンフィルムを溶融してシールすることができ、包装材を破らない段階では、ワサビから揮発する辛味成分は、ポリエチレンフィルム、紙と通過し、周囲に抗菌作用を及ぼすことができ、しかも、請求項3記載のアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法によれば、例えば、アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品がワサビで、さしみと共に包装された場合、さしみの表面に残っている水分、血等が包装材の外表面に位置する紙により吸収され、包装材の外観を損なう欠点を有するが、請求項4記載のアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法は、ポリエチレンフィルムの外側にバリア性フィルムが位置するため、上述した欠点は除去され、ガス透過性は、ポリエチレンフィルム、バリア性フィルムの孔により確保することができる。 更に、包装材への印刷も、ポリエチレンフィルム、または、バリア性フィルムのポリエチレンフィルム側にすることができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】図1は、本発明の一実施例のアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法の使用例を示すアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品(例えば、ワサビ)を内在した包装材の概略的斜視図である。 【図2】図2は、図1の包装材のA-A線による概略的断面図である。 【図3】図3は、図2の一部を拡大して示す概略的一部拡大断面図である。 【図4】図4は、図3と異なる他の実施例を示す概略的一部拡大断面図である。 【図5】図5は、図2、図3、図4記載の包装材の製造過程を示す概略的斜視図である。 【符号の説明】 1・・・包装材 2・・・アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品 |
訂正の要旨 |
この訂正は、特許明細書の記載を訂正明細書の記載のとおり訂正するものであるが、その概要は次のとおりである。 (1)特許請求の範囲請求項1乃至5を、特許請求の範囲の減縮を目的として、次のとおりに訂正する。 「【請求項1】 アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品をガス透過性の包装材で包装し、 前記包装材を破らない段階では、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品から揮発する辛味成分により、周囲に抗菌作用を及ぼし、 前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品から揮発する辛味成分は前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側で、 前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側から遠い中心に近い部分には、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品本来の辛味成分は残存しており、 前記包装材を破いて前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品を食することができ、 前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品は、ワサビであり、このワサビは、さしみと共に使用するものである ことを特徴とするアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法。 【請求項2】 アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品をガス透過性の包装材で包装し、 前記包装材を破らない段階では、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品から揮発する辛味成分により、周囲に抗菌作用を及ぼし、 前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品から揮発する辛味成分は前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側で、 前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側から遠い中心に近い部分には、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品本来の辛味成分は残存しており、 前記包装材を破いて前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品を食することができ、 前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品は、ワサビであり、さしみを入れる容器内に前記ワサビを内在する包装材を共に入れる ことを特徴とするアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法。 【請求項3】 ガス透過性の包装材は、内面がポリエチレンフィルムで、該ポリエチレンフィルムをガス透過性の紙で被覆し、 前記内面が互いに向き合うように折り、縦シーラーで縦シールし、横シーラーで横シールすると共にアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品を充填し、再び、横シーラーで横シールし、前記アリル・イソ・チオシアネートを密封し、その後、カッタでカットするものであり、 前記縦シール及び前記横シールは、熱圧着によるものである ことを特徴とする請求項2記載のアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法。 【請求項4】 ガス透過性の包装材は、内面がポリエチレンフィルムで、該ポリエチレンフィルムの外側に孔を有したバリア性フィルムの多層フィルムで構成され、 前記内面が互いに向き合うように折り、縦シーラーで縦シールし、 横シーラーで横シールすると共にアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品を充填し、再び、横シーラーで横シールし、前記アリル・イソ・チオシアネートを密封し、その後、カッタでカットするものであり、 前記縦シール及び前記横シールは、熱圧着によるものである ことを特徴とする請求項2記載のアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法。」 (2)「発明の詳細な説明」の欄の記載を、上記の特許請求の範囲の訂正に伴う明りょうでない記載の釈明を目的として、次のとおり訂正する。 a.段落番号【0005】の記載を 「【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明のアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法は、アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品をガス透過性の包装材で包装し、前記包装材を破らない段階では、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品から揮発する辛味成分により、周囲に抗菌作用を及ぼし、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品から揮発する辛味成分は前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側で、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側から遠い中心に近い部分には、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品本来の辛味成分は残存しており、前記包装材を破いて前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品を食することができ、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品は、ワサビであり、このワサビは、さしみと共に使用するものである。 また、請求項2記載のアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法は、アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品をガス透過性の包装材で包装し、前記包装材を破らない段階では、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品から揮発する辛味成分により、周囲に抗菌作用を及ぼし、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品から揮発する辛味成分は前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側で、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の表面側から遠い中心に近い部分には、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品本来の辛味成分は残存しており、前記包装材を破いて前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品を食することができ、前記アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品は、ワサビであり、さしみを入れる容器内に前記ワサビを内在する包装材を共に入れるものである。」と訂正する。 b.段落番号【0006】の記載を 「又、請求項3記載のアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法は、請求頃2記載のアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法において、ガス透過性の包装材は、内面がポリエチレンフィルムで、該ポリエチレンフィルムをガス透過性の紙で被覆し,前記内面が互いに向き合うように折り、縦シーラーで縦シールし、横シーラーで横シールすると共にアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品を充増し、再び、横シーラーで横シールし、前記アリル・イソ・チオシアネートを密封し、その後、カッタでカットするものであり、前記縦シール及び前記横シールは、熱圧着によるものである。」と訂正する。 c.段落番号【0007】の記載を 「又、請求項4記載のアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法は、請求頃2記載のアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法において、ガス透過性の包装材は、内面がポリエチレンフィルムで、該ポリエチレンフィルムの外側に孔を有したバリア性フィルムの多層フィルム構造で構成され、前記内面が互いに向き合うように折り、縦シーラーで縦シールし、横シーラーで横シールすると共にアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品を充填し、再び、横シーラーで横シールし、前記アリル・イソ・チオシアネートを密封し、その後、カッタでカットするものであり、前記縦シール及び前記横シールは、熱圧着によるものである。」と訂正する。 d.段落番号【0019】の記載を 「また、請求項3記載のアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法によれば、請求項1記載の発明の効果に加え、内面がポリエチレンフィルムであれば、該ポリエチレンフィルムをガス透過性の紙で被覆し、既存の自動包装シール装置を使って、ポリエチレンフィルムを溶融してシールすることができ、包装材を破らない段階では、アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品から揮発する辛味成分は、ポリエチレンフィルム、紙と通過し、周囲に抗菌作用を及ぼすことができる。」と訂正する。 e.段落番号【0020】の記載を 「また、請求項4記載のアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法によれば、請求項1記載の発明の効果に加え、内面がポリエチレンフィルムであれば、該ポリエチレンフィルムをガス透過性の紙で被覆し、既存の自動包装シール装置を使って、ポリエチレンフィルムを溶融してシールすることができ、包装材を破らない段階では、ワサビから揮発する辛味成分は、ポリエチレンフィルム、紙と通過し、周囲に抗菌作用を及ぼすことができ、しかも、請求項3記載のアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法によれば、例えば、アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品がワサビで、さしみと共に包装された場合、さしみの表面に残っている水分、血等が包装材の外表面に位置する紙により吸収され、包装材の外観を損なう欠点を有するが、請求項4記載のアリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法は、ポリエチレンフィルムの外側にバリア性フィルムが位置するため、上述した欠点は除去され、ガス透過性は、ポリエチレンフィルム、バリア性フィルムの孔により確保することができる。更に、包装材への印刷も、ポリエチレンフィルム、または、バリア性フィルムのポリエチレンフィルム側にすることができる。」と訂正する。 |
異議決定日 | 2001-06-27 |
出願番号 | 特願平10-140639 |
審決分類 |
P
1
651・
536-
YA
(B65D)
P 1 651・ 113- YA (B65D) P 1 651・ 112- YA (B65D) P 1 651・ 111- YA (B65D) P 1 651・ 121- YA (B65D) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 溝渕 良一 |
特許庁審判長 |
佐藤 雪枝 |
特許庁審判官 |
祖山 忠彦 船越 巧子 |
登録日 | 1999-10-01 |
登録番号 | 特許第2986450号(P2986450) |
権利者 | 株式会社万城食品 |
発明の名称 | アリル・イソ・チオシアネートを含有する食品の包装方法 |
代理人 | 門奈 清 |
代理人 | 藤田 耕三 |
代理人 | 野末 寿一 |
代理人 | 堀米 和春 |
代理人 | 入江 一郎 |
代理人 | 野末 寿一 |
代理人 | 加藤 静富 |
代理人 | 加藤 静富 |
代理人 | 綿貫 隆夫 |
代理人 | 入江 一郎 |