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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1048365
異議申立番号 異議2000-73074  
総通号数 24 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-02-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-08-14 
確定日 2001-07-18 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3008038号「平行平板型プラズマ装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3008038号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 [1]手続の経緯
本件特許第3008038号(平成3年8月9日出願、平成11年12月3日設定登録。)は、異議申立人佐藤 正より異議申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成13年1月29日に訂正請求がなされたものである。

[2]訂正の適否についての判断
(1)訂正事項
(1-1)願書に添付した明細書及び図面(以下、「特許明細書」という。)の請求項1における「前記高周波電源の各高調波成分における高調波含有率の合計が-30dB以下に設定」を、「前記高周波電源の各高調波成分における高調波含有率の合計が-30dB以下、前記高周波電源の出力が1800w以下、並びに前記上部電極及び下部電極を備える反応室内の圧力が300mTorr以下に設定」と訂正する。

(1-2)特許明細書の発明の詳細な説明の段落【0006】における「前記高周波電源の各高調波成分における高調波含有率の合計が-30dB以下に設定」を、「前記高周波電源の各高調波成分における高調波含有率の合計が-30dB以下、前記高周波電源の出力が1800w以下、並びに前記上部電極及び下部電極を備える反応室内の圧力が300mTorr以下に設定」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、及び拡張・変更の存否
(2-1)上記訂正事項(1-1)については、特許請求の範囲に記載された「前記高周波電源の各高調波成分における高調波含有率の合計が-30dB以下に設定」する点を、より下位概念である「前記高周波電源の各高調波成分における高調波含有率の合計が-30dB以下、前記高周波電源の出力が1800w以下、並びに前記上部電極及び下部電極を備える反応室内の圧力が300mTorr以下に設定」と限定したものである。
そして、高周波電源の出力を1800w以下に設定する点は、特許明細書の段落【0007】、【0015】、表1、及び図2に記載され、また前記上部電極及び下部電極を備える反応室内の圧力を300mTorr以下に設定する点は、特許明細書の段落【0004】に記載されている。
したがって、この訂正は、特許法第120条の4第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当する。

(2-2)上記訂正事項(1-2)については、特許請求の範囲との整合を図るために明確化したものであり、その訂正内容も特許明細書の段落【0007】、【0015】、表1、及び図2、並びに段落【0004】に記載されている。
したがって、特許法第120条の4第2項ただし書き第3号に規定する明りょうでない記載の釈明に該当する。

そして、上記訂正事項(1-1)、(1-2)については、それぞれ願書に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内においてした訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張しまたは変更するものではない。

(3)まとめ
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、同法第120条の4第3項において準用する同法による改正前の特許法(平成5年改正法)第126条第1項ただし書き、及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

[3]特許異議申立てについての判断
(1)異議申立ての理由の概要
異議申立人佐藤 正は、甲第1〜6号証及び参考資料1〜4を提出して、本件特許明細書の請求項1に係る発明は、甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、取り消されるべきものである旨主張している。

(2)本件発明
上記[2]において説示したように上記訂正が認められるから、本件訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、訂正明細書の請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「互いに対向して配置された上部電極及び下部電極を備え、前記上部電極と前記下部電極との間に高周波電源が接続された平行平板型プラズマ装置において、前記上部電極及び下部電極間の間隔が0.9cmを超える場合に、プラズマ状態の安定を得るために、前記高周波電源の各高調波成分における高調波含有率の合計が-30dB以下、前記高周波電源の出力が1800w以下、並びに前記上部電極及び下部電極を備える反応室内の圧力が300mTorr以下に設定されていることを特徴とする平行平板型プラズマ装置。」

(3)提出された証拠の記載事項
(3-1)甲第1号証
甲第1号証の特開昭64-53615号公報には、トランジスタ増幅器で発生する不要な高調波の影響を除去したトランジスタ型高周波電源が記載されている。

(3-2)甲第2号証
甲第2号証の「最新アモルファスSiハンドブック」(株)サイエンスフォーラム(昭58-3-31)の写しには、グロー放電によるa-Si膜の製造と装置に関する発明が開示され、さらに、図-2には、互いに対向して配置された上部電極及び下部電極を備え、上部電極と下部電極との間に高周波電源が接続された平行平板型プラズマ装置が記載されており、また図-4には、この上部電極及び下部電極の間隔(電極間距離)を10mm、20mm、30mmに設定して膜生成を行ったことが示されている。

(3-3)甲第3号証
甲第3号証の特開昭61-64121号公報には、平行平板電極を有するCVD装置に関する発明が第3図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。
「電極間の電位分布を均一とするための電極構造に関する重要なパラメータは、第3図に示した電極21,22の間隔Dと、電極21の側面と反応容器11の内壁との距離Gである。電極間隔Dは電極間の電界分布を一様とするためできるだけ短い方が好ましく、通常10〜50〔mm〕の範囲の値が採られている。」(2頁左上欄4〜10行)

(3-4)甲第4号証
甲第4号証の特開昭62-128122号公報には、平行平板型枚葉式ドライエッチング装置に関する発明が第4〜6図とともに開示され、さらに以下の事項が記載されている。
「本発明装置を用いてエッチングを行った場合の均一性の実測値を第4図および第5図に示す。測定はいずれも第4図右側に示すようなウエハ4(径100mm)に対し矢印Aの測定方向に沿って、測定位置を左端を0,右端を100としてウエハ全面に亙ってエッチング深さを測定したものである。矢印Bは排気方向を示す。
第4図は電極間隔および補正リングの高さを一定にして補正リングの径を変えた場合の測定結果である。電極間隔d=70mmとし、補正リングは0.3mm厚アルマイト製、高さが60mmで、径がそれぞれ80の,90の,および100のものについて各各エッチング時間2分,2分,1分30秒としてエッチングしたものである。
第5図は補正リングの高さと径を一定にして、電極間隔dを75mm,80mm,85mm,90mmと変えてエッチングしたものである。補正リングは高さを60mm,径を100mmとした。
比較のため、補正リング無しでエッチングした場合のエッチング深さを第6図に示す。但し、電極間隔dは70mm、ウエハ4の径は5インチ(127mm)とした。
第4〜6図から分るように、ウエハ寸法に対し最適の補正リングの径および電極間隔を選定すればエッチングの均一性を著しく向上させることができる。」(3頁左上欄末行〜左下欄5行)

(3-5)甲第5号証
甲第5号証の特開昭62-204529号公報には、ドライエッチング方法に関する発明が開示され、さらにドライエッチングに使用する容器内のガス圧を2×10‐4〜8×10‐3[torr]に設定すること(特許請求の範囲請求項1参照)、第1及び第2の電極間の距離を10〜100[mm]に設定すること(同請求項4参照)が、それぞれ記載されている。

(3-6)甲第6号証
甲第6号証の特開平2-268428号公報には、平行平板型のプラズマエッチング装置に関する発明が開示され、さらに実験の際のエッチング条件として、圧力325mTorr、RFパワー150w、電極間隔1cmとしたものが記載されている。

(3-7)参考資料1
参考資料1のカタログ「プラズマ用可変低周波電源LGシリーズ」アステック(株)(89.6)の写しには、プラズマ・チェンバの電極間に十分な高周波電界を発生させるとともに、有害な高調波出力を抑制することが記載され、さらに、LG-30T型について出力電力0-3KW、高調波出力-40dBとすること、LG-45Tについて出力電力0-4.5KW、高調波出力-40dBとすることが記載されている。

(3-8)参考資料2
参考資料2のカタログ「プラズマ用高周波電源」パール工業(株)(1987.11)の写しには、半導体製造装置、その他、RF/DCのコンビネーションを必要とする使用条件下で、有利な電源として、形式RP-1000rcについて、RFの定格出力1000W、スプリアス(すなわち、発振周波数以外の高調波及び低調波などの不要周波数成分)-45dB以下のものが記載されている。

(3-9)参考資料3
参考資料3のカタログ「プラズマ用DC/RFコンビネーション電源」パール工業(株)(1988.1)の写しには、最終頁の仕様欄に記載の形式DP-800-10/RP-1000RCのものについて、RFの定格出力1000W、スプリアス(発振周波数以外の高調波及び低調波などの不要周波数成分)が-45dB以下のものが記載されている。

(3-10)参考資料4
参考資料4のカタログ「プラズマ用高周波電源」パール工業(株)(1989.1)の写しには、最終頁仕様欄の、型式RP-200、RP-300、RP-500について、それぞれ定格出力を200W、300W、500Wとし、スプリアスをいずれも-45dBとすることが記載されている。

(4)対比・判断
本件発明と上記参考資料2〜4に記載されたものとを対比すると、以下のとおりである。
参考資料2の記載(最終頁仕様欄の、型式RP-1000rcについてスプリアスを-45dB以下とする記載。)、参考資料3の記載(最終頁仕様欄の型式RP-200、RP-300、RP-500について、スプリアスを-45dB以下とする記載。)、参考資料4の記載(最終頁仕様欄の型式RP-200、RP-300、RP-500について、スプリアスを-45dBとする記載。)からみて、プラズマ装置の高周波電源において、高調波成分の高調波含有率を-30dB以下とするようなことは本件特許の出願前普通に採用されていた技術的事項にすぎないし、仮に普通に採用されていたものではないとしても、公知の技術的事項であることは明らかである(参考資料2〜4に記載された日付からみて、参考資料2が1987年11月頃に、参考資料3が1988年1月頃に、また参考資料4が1989年1月頃に印刷、頒布されたものであると推認できる。)。
してみると、本件発明と上記参考資料2〜4に記載された周知ないしは公知の技術的事項とは、高周波電源の高調波含有率を-30dB以下としたプラズマ装置の点で一致するものの、以下の点で相違する。

本件発明は、上部電極及び下部電極を備え、それぞれの電極の間に高周波電源が接続された平行平板型プラズマ装置において、上部電極及び下部電極間の間隔を0.9cmを超えるものとし、プラズマ状態の安定を得るために、高周波電源の出力を1800w以下、反応室内の圧力を300mTorr以下に設定しているのに対し、上記参考資料2〜4に記載された周知ないしは公知の技術的事項では、電極間の間隔、高周波電源の出力、及び反応室内の圧力が上記の範囲にあることが明らかではない点。

そこで、上記相違点について以下検討する。
電極間の間隔については、甲第2〜6号証に記載されているように、平行平板型プラズマ装置の上部電極及び下部電極の間隔が0.9cmを越えるものは本件特許の出願前普通に知られており、高周波電源の出力については、参考資料1〜4に記載された定格出力(参考資料1の、高調波出力-40dBのときに出力電圧を0-3KWとする記載。参考資料2、3の、スプリアス-45dBのときに高周波の定格出力を500W、1000Wとする記載。参考資料4の、スプリアス-45dBのときに高周波の定格出力を200W、300W、500Wとする記載。)は、本件発明における高周波電源の出力が1800W以下に設定されている範囲に包含され、そして、反応室内の圧力については、甲第6号証に、平行平板型のプラズマエッチング装置の圧力を325mTorrとすることが記載されている。
しかしながら、参考資料1〜4、甲第1〜6号証のいずれにも、電極間の間隔が0.9cmを越え、且つ高周波電源の高調波含有率を-30dB以下としたプラズマ装置において、プラズマ状態の安定を得るために、高周波電源の出力の上限を1800Wとするとともに、反応室内の圧力を300mTorr以下に設定することについては、何らの示唆もされていないし、本件特許の出願前普通に知られていたものとも認められない。
してみると、本件発明のように、電極間の間隔が0.9cmを越え、且つ高周波電源の高調波含有率を-30dB以下としたプラズマ装置において、プラズマ状態の安定を得るために、高周波電源の出力を1800W以下、反応室内の圧力を300mTorr以下に設定することは、容易に想到することはできない。

したがって、本件発明は、甲第1〜6号証及び参考資料1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(5)異議申立人の主張について
異議申立人は、本件発明と甲第1号証に記載されたものとを対比して、相違点1〜3を挙げ、相違点1の平行平板型プラズマ装置の点は甲第2〜6号証により周知であり、相違点2の電極間隔を0.9cm超に設定する点は甲第2〜4号証により周知であり、さらに相違点3の高調波含有率の合計を-30dB以下に設定された高周波電源の点は参考資料1〜4により周知である旨主張している。
しかしながら、上記甲第2〜6号証に記載されているように、電極間の間隔を0.9cm越に設定したものが周知であり、また、参考資料1〜4に記載されているように、高調波含有率の合計を-30dB以下に設定された高周波電源は周知であるにしても、甲第1号証には、上記(4)において説示した本件発明との相違点については何も記載していないし示唆もないから、甲第1号証に記載されたものに上記周知の技術を組み合わせてみても、本件発明を容易に想到することはできない。
したがって、申立人の主張は採用しない。

[6]むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立てによっては、本件発明につての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してなされたものとは認められない。
よって、特許法(平成6年改正法)附則第14条の規定に基づく、平成7年政令第205号第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
平行平板型プラズマ装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 互いに対向して配置された上部電極及び下部電極を備え、前記上部電極と前記下部電極との間に高周波電源が接続された平行平板型プラズマ装置において、前記上部電極及び下部電極間の間隔が0.9cmを超える場合に、プラズマ状態の安定を得るために、前記高周波電源の各高調波成分における高調波含有率の合計が-30dB以下、前記高周波電源の出力が1800w以下、並びに前記上部電極及び下部電極を備える反応室内の圧力が300mTorr以下に設定されていることを特徴とする平行平板型プラズマ装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は平行平板型プラズマ装置、より詳細には上部電極、下部電極及びウェハクランプ等を備え、前記上部電極と前記下部電極との間に高周波電源(以下RF電源と記す)が接続されウェハ上に集積回路の微細パターンを形成する際等に使用される平行平板型プラズマ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
大規模集積回路の製造においては、半導体ウェハ上に微細なパターンを形成する必要があり、このために主にドライエッチング装置が用いられている。ドライエッチング装置としてこれまで種々の形式の装置が提案されているが、集積度の高い大規模集積回路の製造においては、微細パターンを再現性良く形成することのできる平行平板型プラズマエッチング装置が主流となってきている。この種平行平板型プラズマエッチング装置の概略を図1に示す。図中10は反応室を示しており、この反応室10の上部には上部電極11が配設され、この上部電極11に対向して反応室10の下部には、下部電極12が配設されている。下部電極12の上面にはウエハ13が載置されており、下部電極12の外周にはフォーカスリング14が配設され、さらにフォーカスリング14の外周には排気リング15が配設され、フォーカスリング14と排気リング15の間に排気路16が形成されている。上部電極11の上方にはシールプレート18が配設され、このシールプレート18の中央部にガス導入路19が形成されており、ガス導入路19はガス供給源(図示せず)に接続されている。上部電極11の外周にはコンファインメントリング21が当接して配設され、さらにコンファインメントリング21の外周にはアタッチメントリング22が配設されており、アタッチメントリング22にはウェハ13を下部電極12に固定するためのクランプ板23が取り付けられている。上部電極11と下部電極12との間にはRF電源25が接続されており、このRF電源25から上部電極11及び下部電極12にRF電力を印加することにより、ガス導入路19から供給された反応ガスがプラズマ化されてウェハ13にエッチング処理が施されるようになっている。
【0003】
このエッチング処理を行なう際、ウェハ13の径が大きくなるにつれてプラズマのウェハ13への集中及びプラズマ安定領域の拡大が要求されるようになってきており、またパターンの微細化につれて大口径のウェハ13ではプラズマイオンの指向性がより求められてきている。このため反応室10の低圧化が図られると共にRF電力の高出力化、上部電極11と下部電極12との間隔の拡張が図られてきている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の多用されていた6インチウェハを8インチウェハに大口径化を図り、該ウエハに0.5μm以下の微細加工を施し、しかも高スループット化を図るためには、例えば上部電極11と下部電極12との間隔を従来の0.8cmから1.0cm程度とし、反応室10内の、圧力を従来の800mTorrから300mTorr以下とし、RFパワーを1200W以上とすることが要求される。
しかしながら従来のRF電源は、その高調波含有率の合計が-20dB程度であり、このようなRF電源を用いた場合、上部電極11と下部電極12との間隔を1.0cm程度とし、RFパワーを1200Wに設定すると、図2に示すように、安定したプラズマ状態を維持することができない。なお、図2は後述するように、RF電源の各高調波含有率におけるプラズマの安定領域を示す図であり、高調波含有率の合計が-20dBの場合、電極間間隔は0.9cm以下、RFパワーは1400W以下が安定領域であり、前述した電極間隔1.0cm、RFパワー1200Wはこの範囲を逸脱している。このため大口径ウェハを歩留り良く、精度良く、しかも高スループットで処理することは困難であるといった課題があった。
【0005】
本発明は上記課題に鑑み発明されたものであって、電極間間隔を広くし、反応室を低圧としても、またRFパワーを高パワーとしても安定したプラズマを立てることができ、大口径ウェハに微細加工を高スループットで施すことができる平行平板型プラズマエッチング装置を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明に係る平行平板型プラズマ装置は、互いに対向して配置された上部電極及び下部電極を備え、前記上部電極と前記下部電極との間に高周波電源が接続された平行平板型プラズマ装置において、前記上部電極及び下部電極間の間隔が0.9cmを超える場合に、プラズマ状態の安定を得るために、前記高周波電源の各高調波成分における高調波含有率の合計が-30dB以下、前記高周波電源の出力が1800w以下、並びに前記上部電極及び下部電極を備える反応室内の圧力が300mTorr以下に設定されていることを特徴とする。
【0007】
【作用】
図2は低圧下におけるプラズマ安定領域を示す図であり、反応室内の圧力を200mTorr、CF4ガスを25SCCM、CHF3ガスを25SCCM、Arガスを650SCCM、Heのガス分圧を9Torrの条件下で実験を行ない、RF電源の各高調波成分における高調波含有率の合計をそれぞれ約-20dB、約-30dB、約-45dBに設定し、電極間間隔とRFパワーとの関係に基づくプラズマ安定領域の範囲を調べた結果である。プラズマ安定領域は、高調波含有率の合計が約-20dBの場合は、電極間間隔が0.9cm以下でかつRFパワーが1400W以下の範囲であり、高調波含有率の合計が約-30dBの場合は、電極間間隔が1.15cm以下でかつRFパワーが1300W以下の範囲と電極間間隔が1.05cm以下でかつRFパワーが1800W以下の範囲とを加えた範囲であり、高調波含有率の合計が約-45dBの場合は、高調波含有率の合計が約-30dBの範囲にさらに電極間間隔が0.9cm以下でかつRFパワーが2000W以下の範囲を加えた範囲である。
従来のRF電源はその高調波含有率の合計が-20dB程度であり、電極間間隔を1.0cmとし、1200WのRFパワーを印加すると、プラズマ安定領域を外れてしまう。
【0008】
一方、RF電源の高調波含有率の合計を-30dB程度に設定すると、大口径ウェハに微細加工を高スループットで施すために、電極間間隔を1.0cm程度まで広げ、RFパワーを1200W以上印加しても十分にプラズマ安定領域内に入ることとなる。従って、大口径ウェハを精度良く、また高スループットで処理するために、上部電極と下部電極の間隔を1.0cm程度あるいはそれ以上に広げ、またRFパワーを1200W以上印加しても安定したプラズマ処理を施すことができる。
【0009】
【実施例及び比較例】
以下、本発明に係る平行平板型プラズマ装置の実施例及び比較例を説明する。
【0010】
図1に示した装置を用い、種々の条件下でプラズマ安定領域の確認を行なった。
RF電源25を除く平行平板型プラズマ装置の構成は従来のものと同様であるので、ここではその説明を省略する。
なお、本装置において上部電極11と下部電極12とに印加する高周波の位相は180°ずらしてある。
【0011】
本装置における反応室10内の圧力を200mTorrとし、反応室10への供給するCF4ガスの流量を25SCCM、CHF3ガスの流量を25SCCM、Arガスの流量を650SCCMとし、Heガスの分圧を9Torrに設定した。またRF電源25における高調波含有率を除く条件は、電源入力が200V±5%、50/60Hz、3相、最大入力電源が3KVA、発振周波数400KHz±0.05%、定格出力2KW連続、出力調整5〜100%、リップル含有率3%以下、出力安定度±0.75%(負荷変動時の電源電圧変動)、出力インピーダンス50〜52Ω(同軸出力)、使用環境は周囲温度が5〜40℃、周囲湿度が15〜80%のものを使用した。
【0012】
RF電源25の各高調波成分及びその高調波含有率の合計は下記の表1に示したものを使用した。
【0013】
【表1】

【0014】
このうち高調波含有率の合計が約-44.6dB(各次高調波ひずみ率の合計が0.0035%)であるものの基本波形を図3(a)に、スペクトル分布を図3(b)に示し、また高調波含有率の合計が約-20.7dB(各次高調波ひずみ率の合計が0.85%)であるものの基本波形を図4(a)に、スペクトル分布を図4(b)にそれぞれ示した。これらの図から高調波含有率の合計が約-44.6dBであるものの2次、3次、4次の各高調波成分は、高調波含有率の合計が約-20.7dBであるものの2次、3次、4次の各高調波成分に比べて急激に減衰していることがよくわかる。
【0015】
以上のような条件下で上部電極11と下部電極12との間隔、及び印加するRFパワーを種々に変更して反応室10内におけるプラズマ安定状況を調査した。
これらの結果を図2及び表1に示した。
各高調波成分の高調波含有率の合計が約-30.7dEである実施例のものでは、低圧下(200mTorr)、上部電極11と下部電極12との間隔を1.0cmに設定しても、RFパワーが1800Wまでは、プラズマ放電状態が安定している。従ってウェハ13の径が8インチの大口径となっても微細加工を歩留り良く、しかも高スループットで処理することが可能となる。
【0016】
他方、その高調波含有率の合計が約-20.7dBである比較例のものでは、RFパワーを1200Wまで取ろうとすると上部電極11と下部電極12との間隔は0.9cmまでしか広げることはできず、大口径のウェハ13を精度良く、高歩留り、高スループットで処理することは不可能である。
【0017】
【発明の効果】
以上の説明により明らかなように、本発明に係る平行平板型プラズマエッチング装置にあっては、RF電源の各高調波成分における高調波含有率の合計が-30dB以下に設定されているので、上部電極と下部電極との間隔を広くとり、RFパワーを高くして低圧化を図ってもプラズマを安定した状態で立てることができる。
従って、大口径ウェハに微細加工を高歩留り、高スループットで施すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
平行平板型プラズマエッチング装置を示す概略断面図である。
【図2】
高調波含有率をパラメータにとり、電極間間隔とRFパワーとの関係に基づくプラズマ安定領域の範囲を示した図である。
【図3】
(a)は-44.6dBにおけるRFの基本波形を示す図、(b)はスペクトル分布を示す図である。
【図4】
(a)は-20.7dBにおけるRFの基本波形を示す図、(b)はスペクトル分布を示す図である。
【符号の説明】
11 上部電極
12 下部電極
16 排気路
19 ガス導入路
23 クランプ板
25 RF電源
 
訂正の要旨 訂正の要旨
(1)特許請求の範囲の減縮を目的として、願書に添付した明細書の請求項1における「前記高周波電源の各高調波成分における高調波含有率の合計が-30dB以下に設定」を、「前記高周波電源の各高調波成分における高調波含有率の合計が-30dB以下、前記高周波電源の出力が1800w以下、並びに前記上部電極及び下部電極を備える反応室内の圧力が300mTorr以下に設定」と訂正する。
(2)明りょうでない記載の釈明を目的として、同明細書の発明の詳細な説明の段落【0006】における「前記高周波電源の各高調波成分における高調波含有率の合計が-30dB以下に設定」を、「前記高周波電源の各高調波成分における高調波含有率の合計が-30dB以下、前記高周波電源の出力が1800w以下、並びに前記上部電極及び下部電極を備える反応室内の圧力が300mTorr以下に設定」と訂正する。
異議決定日 2001-07-02 
出願番号 特願平3-200198
審決分類 P 1 651・ 121- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大日方 和幸  
特許庁審判長 関根 恒也
特許庁審判官 雨宮 弘治
大橋 賢一
登録日 1999-12-03 
登録番号 特許第3008038号(P3008038)
権利者 東京エレクトロン株式会社
発明の名称 平行平板型プラズマ装置  
代理人 河野 登夫  
代理人 河野 登夫  

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