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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H01L
管理番号 1048375
異議申立番号 異議2000-72231  
総通号数 24 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-12-11 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-05-29 
確定日 2001-07-18 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2983244号「表面処理方法」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2983244号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 (I)手続きの経緯
本件特許第2983244号の請求項1および2に係る発明は、平成2年3月29日に特許出願され、平成11年9月24日に設定登録され、平成12年5月29日に坂本典子(以下、申立人という。)から特許異議の申立がなされ、その後の取消理由通知に対し、その指定期間内である平成12年12月22日付けで訂正請求(後日取り下げ)がなされた後、再度の取消理由通知に対し、その指定期間内である平成13年3月14日付けで訂正請求がなされたものである。
(II)訂正請求について
(II-1)訂正事項
(1)特許請求の範囲の記載を、
『【請求項1】表面に酸化膜が形成された被処理基体を反応容器に収納した後、前記被処理基体を20℃以下に冷却しながら水素元素、ハロゲン元素及び他の元素を含むガスを前記反応容器とは別の領域で活性化し、前記被処理基体がイオン衝撃に曝されないようにして前記反応容器内に導入することにより、前記水素元素、ハロゲン元素及び他の元素を含む薄膜又は液体を前記被処理基体表面に形成し、前記酸化膜をエッチング除去することを特徴とする表面処理方法。
【請求項2】前記ガスは、SF6 とH2Oの混合ガス、またはNF3 とNH3 の混合ガスであることを特徴とする請求項1記載の表面処理方法。』
と訂正する。
(2)願書に添付された明細書(以下、「特許明細書」という。)の第4頁2行、第7頁16〜17行の「被処理基体を冷却しながら」という記載を、「被処理基体を20℃以下に冷却しながら」と訂正し、特許明細書の第4頁3〜4行、第7頁18〜19行の「ガスを前記反応容器とは別の領域で活性化して前記反応容器内に導入」という記載を、「ガスを前記反応容器とは別の領域で活性化し、前記被処理基体がイオン衝撃に曝されないようにして前記反応容器内に導入」と訂正する。
(II-2)訂正の適否
訂正事項(1)は、特許明細書の請求項1に記載された「被処理基体を冷却しながら」および「ガスを前記反応容器とは別の領域で活性化して前記反応容器内に導入する」という記載を、それぞれ、「被処理基体を20℃以下に冷却しながら」および「ガスを前記反応容器とは別の領域で活性化し、前記被処理基体がイオン衝撃に曝されないようにして前記反応容器内に導入する」という記載に訂正したものであるところ、「被処理基体を20℃以下に冷却しながら」との訂正は、特許明細書中の「ウェハ温度は20℃以下(・・・)が望ましい。」との記載(特許公報第8欄48〜50行参照)に基づきなされたものであり、「ガスを前記反応容器とは別の領域で活性化し、前記被処理基体がイオン衝撃に曝されないようにして前記反応容器内に導入する」との訂正は、特許明細書中の「ガス種の活性化手段である放電管5等の部材は、反応容器1に付設され、エッチング対象であるシリコンウェハ11と離れているため、該シリコンウェハ11がイオン衝撃に曝されることなく、全くダメージを受けない。」との記載(特許公報第8欄6〜9行参照)に基づきなされたものであり、ともに、特許請求の範囲の減縮に該当するものであり、明細書に記載した事項の範囲内であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
訂正事項(2)は、訂正事項(1)と整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当し、訂正事項(1)と同様の理由で、明細書に記載した事項の範囲内であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでない。
したがって、本件の訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び同条第2項の規定に適合するものであり、適法なものと認める。
(III)特許異議申立について
(III-1)本件発明
本件の請求項1および2に係る発明(以下、「本件発明1」および「本件発明2」という。)は、訂正明細書の請求項1および2に記載されたとおりのものである[上記(II-1)の(1)参照]。
(III-2)特許異議申立の理由
申立人は、甲第1号証[第11回ドライブロセスシンボジウム(社団法人電気学会主催、1989年10月30〜31日)の予稿集、p.90〜93]および甲第2号証[特開昭61‐240635号公報]を提示し、
(イ)本件の訂正前の請求項1および2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の発明に該当し特許を受けることができないものである、
(ロ)本件の訂正前の請求項1および2に係る発明は、甲第1号証および甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである、
との理由で、本件の訂正前の請求項1および2に係る発明の特許は取り消されるべきである旨を主張する。
(III-3)甲各号証に記載された発明
甲第1号証[第11回ドライブロセスシンボジウム(社団法人電気学会主催、1989年10月30〜31日)の予稿集、p.90〜93]:
NF3 /NH3 混合ガスを用いたダウンフローエッチングによるSi自然酸化膜の除去に関する発明が記載され、
その発明において、NF3 とNH3 の混合物を2.45GHzマイクロ波放電管内に導入しフッ素原子と水素化窒素を生成し、石英管を経て20cm離れた反応室内へ送ると、反応室内のSiO2 表面を有するウェハは荷電粒子の衝撃に曝されることなく、その表面に薄膜が形成され、その後の加熱でSiO2 表面のみがエッチング除去されること、および、ウェハの温度を25℃に維持することが、第1図の実験装置を用いて記載されている(90頁左下欄の「2.Experimental」の欄、同頁右下欄の「3.1 Selective removal of native oxide」の欄及びFig.1、91頁のFig.2参照)。
甲第2号証[特開昭61‐240635号公報]:
被エッチング物質である酸化シリコン膜を有するウエハに実質的に垂直に反応性ガスを付与して該酸化シリコン膜をエッチングするに際して、ウエハを0℃以下に保持し、反応性ガスの進行方向に垂直に対面する酸化シリコン膜へのエチャントの吸着量を増加させることが、高い異方性のエッチングを行う上で有効であること、および、ドライエッチング装置としてイオン、電子照射機構を持つものを用いた実施例が記載されている。(特許請求の範囲、2頁左下欄6〜9行、2頁右下欄3〜19行参照)。
(III-4)比較・検討
(III-4-1)本件発明1について
本件発明1と甲第1号証に記載された発明とを比較すると、後者における「ウェハ」、「反応容器」、「水素元素、ハロゲン元素及び他の元素を含むガス」、「石英管を経て20cm離れた反応室内へ送る」、「2.45GHzマイクロ波放電管内に導入しフッ素原子と水素化窒素を生成し」、「ウェハは荷電粒子の衝撃に曝されることなく」、「表面に薄膜が形成され、その後の加熱でSiO2 表面のみがエッチング除去される」は、それぞれ、前者の「被処理基体」、「反応室」、「NF3 とNH3 の混合物」、「別の領域で」、「活性化」、「被処理基体がイオン衝撃に曝されないようにして」、「薄膜を前記被処理基体表面に形成し、前記酸化膜をエッチング除去する」に相当するものであることは明らかであるから、両者は、以下(a)の点で共通し、以下の(b)の点で相違する。
(a)表面に酸化膜が形成された被処理基体を反応容器に収納した後、前記被処理基体を水素元素、ハロゲン元素及び他の元素を含むガスを前記反応容器とは別の領域で活性化し、前記被処理基体がイオン衝撃に曝されないようにして前記反応容器内に導入することにより、前記水素元素、ハロゲン元素及び他の元素を含む薄膜又は液体を前記被処理基体表面に形成し、前記酸化膜をエッチング除去することを特徴とする表面処理方法ある点、
(b)前者が、「被処理基体を20℃以下に冷却しながら」としているのに対し、後者は被処理基体を「25℃に維持する」としている点。
そこで、上記相違点(b)について検討すると、甲第1号証には、被処理基体を25℃に維持すると記載されているのみで、他の温度に維持すること、さらには「20℃以下に冷却」することを示唆する記載はない。
また、甲第2号証には、被処理基体を0℃以下に冷却しながらドライエッチングすることが示されているものの、当該「0℃以下に冷却しながら」とは、被処理基体に実質的に垂直に反応性ガスを付与し、したがって、被処理基体をイオン衝撃に曝されるような方法でエッチングを行うに際して、反応性ガスの進行方向に垂直に対面する酸化シリコン膜へのエチャントの吸着量を増加させ、高い異方性のエッチングとするというものであり、甲第1号証に記載の発明とはイオン衝撃を伴うという点でエッチング機構を異にするうえに、甲第1号証に甲第2号証の発明と同様の高い異方性のエッチングを行うという課題が示されているわけでもないから、甲第1、2号証の記載を総合しても、前記相違点(b)に係る本件発明1の構成に想到することが当業者にとって容易であるとすることはできない。
そして、本件発明1は、前記相違点(b)に係る構成を採用することにより、等方的で高速のエッチングができるという、特許明細書に記載されたとおりの効果を奏するものである。
してみると、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるとも、甲第1、2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともすることはできない。
(III-4-2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1で用いるガスをさらに限定したものであり、本件発明2と甲第1号証に記載された発明とは前記相違点(b)を含むものであるから、本件発明2は、本件発明1に対して前記したと同様の理由で、甲第1号証に記載された発明であるとも、甲第1、2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(III-5)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由および証拠によっては、本件発明1および2に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1および2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
表面処理方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 表面に酸化膜が形成された被処理基体を反応容器に収納した後、前記被処理基体を20℃以下に冷却しながら水素元素、ハロゲン元素及び他の元素を含むガスを前記反応容器とは別の領域で活性化し、前記被処理基体がイオン衝撃に曝されないようにして前記反応容器内に導入することにより、前記水素元素、ハロゲン元素及び他の元素を含む薄膜又は液体を前記被処理基体表面に形成し、前記酸化膜をエッチング除去することを特徴とする表面処理方法。
【請求項2】 前記ガスは、SF6とH2Oの混合ガス、またはNF3とNH3の混合ガスであることを特徴とする請求項1記載の表面処理方法。
【発明の詳細な説明】
[発明の目的]
(産業上の利用分野)
本発明は、半導体装置の製造に用いられるシリコンウェハ等の被処理基体表面に生成された酸化膜をエッチング除去する表面処理方法に関する。
(従来の技術)
半導体装置の製造において、半導体表面や金属表面の自然酸化膜は▲1▼コンタクト抵抗や多層配線の配線抵抗を増大させる、▲2▼選択CVDや選択エッチングの選択性を低下させる、▲3▼半導体や金属の薄い酸化膜の膜質、均一性を低下させる、▲4▼不純物拡散やエピタキシャル成長を阻害させる、等の問題を招くため、ドライエッチングにより前記自然酸化膜を除去することが望まれている。また、トレンチキャパシタの形成に際しての溝角部の曲面化、溝川壁の表面の荒れ除去を目的として行われる犠牲酸化で形成される酸化膜、固相拡散に用いられる不純物を含む酸化膜、コンタクトホールやヴィアホール部の層間絶縁膜等、半導体装置の製造時での種々のプロセスにおいて酸化膜の除去が必要となる。
上述した種々の酸化膜を除去する方法としては、従来よりプラズマ等により生成したイオンで自然酸化膜等をイオンエッチングする方法が行われている。しかしながら、かかる方法ではイオン衝撃により下地である半導体基板、金属膜等にダメージが与えられるという問題を招く。
(発明が解決しようとする課題)
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたもので、下地である半導体基板等の被処理基体にダメージを与えることなく、基体表面の酸化膜を高速でエッチングし得る表面処理方法を提供しようとするものである。
[発明の構成]
(課題を解決するための手段)
本発明に係わる表面処理方法は、表面に酸化膜が形成された被処理基体を反応容器に収納した後、前記被処理基体を20℃以下に冷却しながら水素元素、ハロゲン元素及び他の元素を含むガスを前記反応容器とは別の領域で活性化し、前記被処理基体がイオン衝撃に曝されないようにして前記反応容器内に導入することにより、前記水素元素、ハロゲン元素及び他の元素を含む薄膜又は液体を前記被処理基体表面に形成し、前記酸化膜をエッチング除去することを特徴とするものである。
上記酸化膜としては、例えばシリコン酸化膜、シリコンナイトライドの酸化膜、又はAl、Cu、W、Mo、Ti、Ta、Bなどの酸化物、それらのシリサイド、ナイトライドの酸化膜等を挙げることができる。
上記被処理基体表面の酸化膜上に生成される水素、ハロゲン元素及び他の元素を含む薄膜を具体的に例示すると、NH4H(X;フッ素、塩素などのハロゲン元素)、NH4HX2、PH4X、AsHX等が挙げられる。前記液体を具体的に例示すると、HVF4、HPF6、HSO3F等が挙げられる。また、前記液体はハロゲン化水素を溶解したものでも良い。かかる液体としては、例えばHCN、CH3CN、H2S、POCl3、H2O、液状有機化合物(CH3OH、C3H8など)、H2SO4、H2SO3、HNO3、H2CO3、H3PO4、H3BO3、H3AsO4等が挙げられる。
上述した薄膜、液体は、それらの構成元素を含むガスを活性化し、反応させることで形成することができる。かかる薄膜、液体の構成元素を含むガス種を、下記第1表に具体的に例示する。なお、下記第1表において1つのガス種で2種以上の元素のガス種として兼用できる。例えば、ホウ素のハロゲン化物でハロゲン元素とホウ素とを、炭素のハロゲン化物ではハロゲン元素と炭素とを、リンのハロゲン化物ではハロゲン元素とリンとを、イオウのハロゲン化物ではハロゲン元素とイオウとを、それぞれ兼用できる。

本発明に係わる表面処理方法に用いられる装置としては、例えば表面に酸化膜が形成された被処理基体が収納される反応容器と、前記被処理基体を冷却する手段と、水素元素、ハロゲン元素及び他の元素を含むガスを前記反応容器内とは別の領域で活性化する手段と、前記水素元素、ハロゲン元素及び他の元素を含む活性化されたガスを前記反応容器内に導入する手段とを具備した構成を有する。
前記表面処理装置は、単独でも或いは酸化膜形成装置(酸化炉)、CVD装置などの成膜装置、エピタキシャル成長装置、イオン注入装置、エッチング装置の前処理装置として用いることが可能である。
(作用)
本発明によれば、表面に酸化膜が形成された被処理基体を反応容器に収納した後、前記被処理基体を20℃以下に冷却しながら水素元素、ハロゲン元素及び他の元素をガスを前記反応容器とは別の領域で活性化し、前記被処理基体がイオン衝撃に曝されないようにして前記反応容器内に導入し、前記水素元素、ハロゲン元素及び他の元素を含む薄膜又は液体を前記被処理基体表面に形成し、前記酸化膜をエッチング除去することによって、下地としてのシリコンウェハ等の被処理基体にダメージを与えることなく、酸化膜を高速でエッチング除去できる。その結果、シリコンウェハ等の被処理基体に形成された素子特性の劣化を防止できると共に半導体装置のスループットを著しく向上できる。また、本発明の表面処理装置によれば極めて簡単な構造でシリコンウェハ等の被処理基体にダメージを与えることなく、酸化膜の高速エッチング除去を実現でき、酸化膜形成装置(酸化炉)、CVD装置などの成膜装置、エピタキシャル成長装置、イオン注入装置、エッチング装置の前処理装置等として有効に利用できる。
(実施例)
以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
実施例1
第1図は、本実施例1〜3で用いられる表面処理装置を示す概略図である。反応容器1内には、被処理基体を載置するための支持台2が設置されている。冷却用パイプ3は、前記支持台2に載置される被処理基体を冷却するために該支持台3に埋設されている。前記パイプ3の両端は、前記反応容器1の外部に延出され、冷却ガスや冷却液体が一端側から供給され、他端側から流出される。これにより、被処理基体を約-50℃まで冷却することができる。また、図示しないヒータは前記支持台2に埋設され、該支持台2上に設置される被処理基体を1000℃位まで加熱できるようになっている。
一端にガス導入口4を有するアルミナ製の放電管5は、前記反応容器1の側壁に連結されている。導波管6は、前記放電管5に設けられており、かつ該導波管6の他端には該導波管6通して前記放電管5に例えば2.45Ghzの高周波を印加するための高周波電源7が連結されている。石英製の窓8は、前記反応容器1の上壁に設けられ、該窓8を通して前記支持台2上に設置される被処理基体に光を照射できるようになっている。ガス導入管9は、前記反応容器1の上壁に連結され、該導入管9を通して該容器1内にアルゴン、窒素などの不活性ガスが導入される。排気管10は、前記反応容器1の側壁に連結され、該排気管10の他端には前記容器1内のガスを排気して所定の真空度にするための真空ポンプ(図示せず)が連結されている。
次に、前述した第1図図示の表面処理装置を用いて被処理基体であるシリコンウェハ表面の酸化膜(シリコン酸化膜)のエッチング除去方法を説明する。
まず、反応容器1内の支持台2上に表面にシリコン酸化膜が形成されたシリコンウェハ11を約5℃の温度に冷却して設置した後、図示しない真空ポンプを作動し、排気管10を通して反応容器1内のガスを排気して所定の真空度とした。つづいて、ガス導入口4から放電管5内にSF6を1Torr、H2Oを2Torrそれぞれ導入し、高周波電源7及び導波管6により5W、2.45Ghzのマイクロ波を前記放電管5に印加して各ガスを放電分解させ、活性化されたガスを前記容器1内に導入した。
その結果、支持台2に設置されたシリコンウェハ11表面のシリコン酸化膜は良好にエッチングされたが、シリコンウェハ11そのもののエッチングは皆無であった。また、ガス種の活性化手段である放電管5等の部材は、反応容器1に付設され、エッチング対象であるシリコンウェハ11と離れているため、該シリコンウェハ11がイオン衝撃に曝されることなく、全くダメージを受けない。従って、シリコンウェハ11表面のシリコン酸化膜をウェハ11に対して選択的にかつウェハ11へのダメージを与えることなくエッチング除去することができた。
実施例2
冷却液体を支持台2に埋設された冷却パイプ3を通して循環させたり、ヒータを作動させたりしてシリコンウェハ11の温度を5℃、20℃、40℃および60℃に保持した状態で、前述した実施例1と同様な条件でウェハ11の処理を行った。第2図にシリコンウェハの温度とエッチング速度との関係を示す。第2図からシリコンウェハの温度が低い程、シリイコン酸化膜のエッチング速度が高くなり、5℃では25℃の時に比べて約1桁速い1000Å/minにも達する。このようなシリコン酸化膜のエッチング速度の温度依存性は、次のように説明される。
SF6とH2Oを放電分解すると、F、Oを生じ、かつこれらF、OはF+H2O、O+SF6などの反応を誘起してHFやSO3などを生成する。比較的蒸気圧の低いSO3の一部はウェハ表面に凝縮した後、気相中に多量に存在するH2Oと反応して、ウェハのシリコン酸化膜表面にH2SO4の化合物として付着される。極性を有するH2SO4と、同様に高い極性を有するHFは相互に作用し易く、HFガスはH2SO4中に取り込まれる。その結果、ウェハのシリコン酸化膜表面にH+やF-、HF2-等のイオンを含む液体が生成される。一方、シリコン酸化膜を構成するSiとOは電機陰性度が異なるため、SiO2中でSiは僅かに正の電荷を、Oは負の電荷を帯びている。従って、ウェハのシリコン酸化膜表面に生成される液体中のH+はその酸化膜のOと、F-、HF2-はSiとクローン力で引合い、SiO2がエッチングされる。これに対し、等極性のシリコンウェハ(Si)はエッチングされない。このようにシリコンウェハ表面のシリコン酸化膜(SiO2)は、その酸化膜表面にHF、SO3、H2Oが凝縮されることによりエッチングが進行するため、ウェハ温度を低くする程、前記各成分の凝縮が促進され、SiO2のエッチング速度は増加する。
従って、表面処理として自然酸化膜等の薄膜(数10Å程度)を除去する場合には実用的なウェハ温度は40℃以下(40℃の場合は約5分間で除去できる)が望ましく、またウェハに形成した溝の表面に例えば1000Åの厚さの酸化膜を形成した後、除去する場合には実用的なウェハ温度は20℃以下(20℃の場合は約10分間で除去できる)が望ましい。
なお、上述した実施例1、2でのシリコンウェハ表面のシリコン酸化膜の除去後において、ウェハ表面に単原子層以下のフッ素が残留する。かかる残留フッ素は、反応容器1の上壁に設けた窓8を通して水銀灯等の光をウェハ11表面に照射したり、ガス導入口4から放電管5内にH2ガスを導入し、高周波電源7及び導波管6により2.45Ghzのマイクロ波を前記放電管5に印加してH2ガスを放電分解させ、活性化されたH2ガスを前記容器1内に導入したりすることにより除去することができる。
実施例3
本実施例3では、前述した第1図に示す表面処理装置に図示しないエピタキシャル成長装置をゲートバルブを介して連結した製造設備を用いてウェハ表面にシリコンエピタキシャル層を成長する方法を説明する。
まず、(100)面のシリコンウェハ11を酸処理で洗浄し、表面の有機物汚染、重金属汚染を除去した後、該ウェハ11を反応容器1内の支持台2に設置し、図示しない真空ポンプを作動し、排気管10を通して反応容器1内のガスを排気して所定の真空度とした。つづいて、ガス導入口4から放電管5内にNF3を0.05Torr、NH3を0.25Torrそれぞれ導入し、高周波電源7及び導波管6により50W、2.45Ghzのマイクロ波を前記放電管5に5分間印加して各ガスを放電分解させ、活性化されたガスを前記容器1内の導入した。かかる処理に際しては、ウェハ11表面での後述するNH4Fの生産量を増加させるために、冷却液体を冷却用パイプ3を通して支持台2に循環させてウェハ11を約5℃に冷却した。この冷却処理により、冷却を行わない場合と比較して数倍程度のエッチング時間の短縮が可能となる。前記処理によりシリコンウェハ11表面の自然酸化膜は、(NH4)2SiF6を主成分とする薄膜に変化した。これは、NF3/NH3混合ガスの放電で生成したHFとNH3によりウェハ表面でNH4Fが形成され、下記式の反応により生じたものと考えられる。
6NH4F+SiO2
→(NH4)2SiF6+2H2O
次いで、支持台2に埋設したヒータを作動させてシリコンウェハ11の温度を150℃まで昇温し、3分間保持したところ、前記薄膜が昇華されて除去された。この時、シリコンウェハ11表面には微量のフッ素が残留した。このフッ素は、反応容器1を真空に保持した状態で反応容器1の上壁に設けた窓8を通して図示しない水銀灯の光をウェハ11表面に5分間照射したところ、除去された。
次いで、反応容器1の側壁に設けた図示しないゲートバルブを開け、反応容器1内のウェハを該容器1に連結したエピタキシャル成長装置に搬送し、ここでウェハ温度を900℃まで昇温し、20分間保持してウェハ表面に厚さ10μmの単結晶シリコン層をエピタキシャル成長した。
本実施例3によりウェハ表面にエピタキシャル成長された単結晶シリコン層は、転位等の欠陥が皆無であった。これに対し、ウェハ表面の自然酸化膜を除去しなかった場合には、エピタキシャル成長がなされなかった。また、本実施例3において、自然酸化膜を除去しても、残留フッ素の除去を行わない場合には、成長した単結晶シリコン層に転位が見られた。このように本実施例3の如く、ウェハ表面の自然酸化膜及び残留フッ素の除去を行うことによりウェハ表面に良好な単結晶シリコン層を成長させることができた。
なお、上記実施例3においてNF3/NH3混合ガスを放電してNH4Fを生成したが、これに限定されない。例えば、NH4F粉末を加熱してガス化し、そのガスを反応容器内に導入してもウェハ表面にNH4Fが再生成され、実施例2と同様に自然酸化膜の除去がなされ、良好な単結晶シリコン層を成長させることができた。
実施例4
第3図は、本実施例4で用いられる表面処理装置を示す概略図である。反応容器21内には、被処理基体を載置するための支持台22が設置されている。冷却用パイプ23は、前記支持台22に載置される被処理基体を冷却するために該支持台22に埋設されている。前記パイプ23の両端は、前記反応容器21の外部に延出され、冷却ガスや冷却液体が一端側から供給され、他端側から流出される。また、図示しないヒータは前記支持台22に埋設され、該支持台22上に設置される被処理基体を1000℃暗いまで加熱できるようになっている。
一端にガス導入口24を有するアルミナ製の放電管25は、前記反応容器21の上壁に連結されている。導波管26は、前記放電管25に設けられており、かつ該導波管26の他端には該導波管26通して前記放電管25に例えば2.45GHzの高周波を印加するための高周波電源27が連結されている。ガス導入管28は、前記反応容器21の上壁に連結され、該導入管28を通して該容器21内にアルゴン、窒素などの不活性ガスが導入される。排気管29は、前記反応容器21の底部に連結され、該排気管29の他端には前記容器21内のガスを排気して所定の真空度にするための真空ポンプ(図示せず)が連結されている。
ロード/アンロード室30は、前記反応容器21の一側壁にゲートバルブ31を介して連結されてている。ガス導入管32及びガス排気管33は、前記ロード/アンロード室30の上壁及び底部にそれぞれ連結され、かつ該排気管33の他端には該室30内のガスを排気して所定の真空度にするための真空ポンプ(図示せず)が連結されている。かかる前記ロード/アンロード室30は、大気中から被処理基体(例えばシリコンウェハ)を搬入した後に真空排気されたり、予め真空排気された前記反応容器21にウェハを搬送したり、逆に反応容器21からウェハが搬入された後に大気圧に戻してウェハを取り出すことができるようになっている。
一端側にガス導入口34を有する酸化炉35は、前記ロード/アンロード室30と対向する前記容器21の側壁にゲートバルブ36を介して連結されている。コイル状のヒータ37は、前記酸化炉24の外側に巻装されている。ガス排気管38は、前記酸化炉35の底部に連結され、かつ該排気管38の他端には該酸化炉35内のガスを排気して所定の真空度にするための真空ポンプ(図示せず)が連結されている。
次に、前述した第3図図示の表面処理装置を用いて被処理基体であるシリコンウェハにトレンチキャパシタを形成する方法を第4図(a)〜(f)を参照して説明する。
まず、第4図(a)に示すようにp型シリコンウェハ41に反応性イオンエッチングにより溝(トレンチ)42を形成した。この時、トレンチ42の開口部及び底部の角部は急峻であり、かつ側面には荒れが生じている。つづいて、このウェハ41を第3図に示すロード/アンロード室30に搬送した後、ゲートバルブ31、36を開け、ウェハ41を反応容器21を通して酸化炉35内に搬送した。ひきつづき、ゲートバルブ36、31を閉じ、ガス導入口34から酸素ガスを酸化炉35内に導入しながらコイル状のヒータ37によりウェハを1000℃に加熱して酸化処理(犠牲酸化処理)を施すことにより、第4図(b)に示すようにトレンチ42内を含むウェハ41表面に厚さ2000Åの酸化膜43を形成した。
次いで、酸化炉35内にアルゴンガスをガス導入口34から供給しながら、排気管38に連結された図示しない真空ポンプを作動して排気し、酸化炉35内をアルゴンガスに置換した後、ゲートバルブ36を開けて酸化炉35内のウェハを反応容器21内の支持台22上に載置下。つづいて、ゲートバルブ36を閉じ、排気管29を通して反応容器21内を真空排気して所定の真空度とした後、冷却液体を支持台22に埋設された冷却用バルブ23を通して循環させてウェハ41を5℃に保持した状態で、ガス導入口24から放電管25内にSF6を1Torr、H2Oを2Torrそれぞれ導入し、高周波電源27及び導波管26により50W、2.45Ghzのマイクロ波を前記放電管25に印加して各ガスを放電分解させ、活性化されたガスを前記容器21内に導入した。この処理を3分間行うことにより、第4図(c)に示すように酸化膜43が完全に除去され、トレンチ42の開口部及び底部の角部が曲面形状になると共に、側面も滑らかになった。
次いで、放電管25から反応容器21内への活性ガスの導入を停止し、ガス導入管28からアルゴンガスを反応容器21内に導入し、真空ポンプを作動して反応容器1内のガスを真空排気してアルゴンガスに置換した後、ゲートバルブ31を開け、支持台22上のウェハを該ゲートバルブ31を通して予め排気管33を通して真空排気されたロード/アンロード室30内に搬送した。つづいて、ゲートバルブ31を閉じ、ロード/アンロード室30内を大気圧に戻した後、該室30内のウェハを取り出し、イオン注入装置に搬送し、ここで砒素のイオン注入を行うことにより第4図(d)に示すようにトレンチ42の内面を含むウェハ表面にn+型拡散層からなる下部電極44を形成した。この工程において、トレンチ42を含むウェハ41表面に薄い自然酸化膜45が形成された。
次いで、ウェハをロード/アンロード室30内に搬送し、該室30内を排気管33を通して真空排気した後、ゲートバルブ31を開け、ウェハを該ゲートバルブ31を通して反応容器21内の支持台22上に設置した。つづいて、ゲートバルブ31を閉じ、排気管29を通して反応容器21内を所定の真空度とした後、冷却液体を支持台22に埋設された冷却用パイプ23を通して循環させてウェハ41を5℃に保持した状態で、ガス導入口24から放電管25内にSF6を1Torr、H2Oを2Torrそれぞれ導入し、高周波電源27及び導波管26により50W、2.45のGhzのマイクロ波を前記放電管25に印加して各ガスを放電分解させ、活性化されたガスを前記容器21内に導入した。この処理を1分間行うことにより、第4図(e)に示すよう自然酸化膜45が完全に除去された。この処理後において、ウェハ表面にフッ素が残留する。このため、ガス導入口24から放電管25内にH2ガスを0.3Torr導入し、高周波電源27及び導波管26により50W、2.45Ghzのマイクロ波を前記放電管5に印加してH2ガスを放電分解させ、活性化されたH2ガスを反応容器21内に導入し、10分間保持させることにより前記ウェハ表面のフッ素を除去した。
次いで、放電管25から反応容器21内への活性ガスの導入を停止し、ガス導入管28からアルゴンガスを反応容器21内に導入し、真空ポンプを作動して反応容器1内のガスを真空排気してアルゴンガスに置換した後、ゲートバルブ36を開けてウェハを予め所定の真空度に保持された酸化炉35内に搬送した。つづいて、ゲートバルブ36を閉じ、ガス導入口34から酸素ガスを酸化炉35内に導入しながらコイル状のヒータ37によりウェハを900℃に加熱して酸化処理を施すことにより、トレンチ42内を含むウェハ41表面に厚さ50Åのキャパシタ酸化膜46を形成した。ひきつづき、排気管38に連結された図示しない真空ポンプを作動して排気し、酸化炉35内をアルゴンガスに置換した後、ゲートバルブ36、31を開けて酸化炉35内のウェハを反応容器21を通して予め真空排気されたコード/アンロード室30内に搬送した。この後、ゲートバルブ31を閉じ、ロード/アンロード室30内を大気圧に戻した後、該室30内のウェハを取り出し、CVD装置に搬送し、ここでリン添加多結晶シリコンの堆積を行うことにより第4図(f)に示すようにトレンチ42の内面を含むウェハ41のキャパシタ酸化膜46上にリン添加多結晶シリコンからなる上部電極47を形成した。
本実施例4で形成された複数のトレンチキャパシタの絶縁破壊耐圧を調べた。その結果、トレンチキャパシタの内95%が8MV/cm以上の耐圧を示した。これに対し、キャパシタ酸化膜の形成前に自然酸化膜を除去しなかった場合には、8MV/cm以上の耐圧を示すトレンチキャパシタが全体の30%以下であった。このように本発明に係わる表面処理装置を用いることにより、膜質が良好なキャパシタ酸化膜を形成できる。
また、犠牲酸化により形成した酸化膜を第3図に示す装置の反応容器内で除去する際、ウェハ温度を室温に保持した場合には20分間の処理が必要であったが、冷却用パイプへの冷却液体の循環によるウェア温度を5℃に冷却することにより前記酸化膜を2分間で除去でき、処理時間の短縮を図ることができる。かかる冷却による作用は、反応容器内に活性なNH4F等を導入して酸化膜をエッチング除去する場合も同様である。
なお、上記各実施例ではシリコンウェハを被処理基体として反応容器等に設置して表面の酸化膜を除去する方法について説明したが、反応容器の内壁、放電管内壁、ガス導入管や排気管の内壁の清浄化のためにそれら内壁の付着物を除去してもよい。
[発明の効果]
以上詳述した如く、本発明によれば下地である半導体基板等の被処理基体にダメージを与えることなく、基体表面の酸化膜を高速でエッチングし得る表面処理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の実施例1〜3で用いられる表面処理装置を示す概略図、第2図はシリコンウェハの温度とエッチング速度との関係を示す特性図、第3図は本発明の実施例4で用いられる表面処理装置を示す概略図、第4図(a)〜(f)は実施例4のトレンチキャパシタの製造工程を示す断面図である。
1、21…反応容器、 2、22…支持台、 5、25…放電管、 6、26…導波管、 7、27…高周波電源、 8…窓、 11、41…シリコンウェハ、 30…ロード/アンロード室、 31、36…ゲートバルブ、 35…酸化炉、 37…コイル状のヒータ、 42…トレンチ、 43…酸化膜、 44…下部電極、 46…キャパシタ酸化膜、 47…上部電極。
 
訂正の要旨 訂正事項
(1)特許請求の範囲の記載を、
『【請求項1】表面に酸化膜が形成された被処理基体を反応容器に収納した後、前記被処理基体を20℃以下に冷却しながら水素元素、ハロゲン元素及び他の元素を含むガスを前記反応容器とは別の領域で活性化し、前記被処理基体がイオン衝撃に曝されないようにして前記反応容器内に導入することにより、前記水素元素、ハロゲン元素及び他の元素を含む薄膜又は液体を前記被処理基体表面に形成し、前記酸化膜をエッチング除去することを特徴とする表面処理方法。
【請求項2】前記ガスは、SF6とH2Oの混合ガス、またはNF3とNH3の混合ガスであることを特徴とする請求項1記載の表面処理方法。』
と訂正する。
(2)願書に添付された明細書(以下、「特許明細書」という。)の第4頁2行、第7頁16〜17行の「被処理基体を冷却しながら」という記載を、「被処理基体を20℃以下に冷却しながら」と訂正し、特許明細書の第4頁3〜4行、第7頁18〜19行の「ガスを前記反応容器とは別の領域で活性化して前記反応容器内に導入」という記載を、「ガスを前記反応容器とは別の領域で活性化し、前記被処理基体がイオン衝撃に曝されないようにして前記反応容器内に導入」と訂正する。
異議決定日 2001-06-26 
出願番号 特願平2-81853
審決分類 P 1 651・ 113- YA (H01L)
P 1 651・ 121- YA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 山中 真  
特許庁審判長 影山 秀一
特許庁審判官 雨宮 弘治
中村 朝幸
登録日 1999-09-24 
登録番号 特許第2983244号(P2983244)
権利者 株式会社東芝
発明の名称 表面処理方法  
代理人 外川 英明  
代理人 外川 英明  

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