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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H04N
管理番号 1048439
異議申立番号 異議2000-70337  
総通号数 24 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-06-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-01-28 
確定日 2001-07-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2926793号「画像処理装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2926793号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 [1]手続の経緯
特許第2926793号の請求項1に係る発明は、平成1年11月6日に特許出願され、平成11年5月14日にその特許の設定登録がなされ、その後、溝呂木寛(以下、「申立人」という。)より特許異議の申立てがなされ、平成12年4月11日付けで取消理由通知がなされ、さらに、平成12年7月27日付けで取消理由通知がなされ、平成12年10月10日付けで訂正請求がなされたものである。

[2]訂正の適否についての判断
訂正事項aないしdは、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明を目的としたものであり、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではないから、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下、「平成6年改正法」という。)付則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法(平成5年改正法)第126条第1項ただし書き、及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

[3]特許異議の申立てについての判断
1.本件の請求項1に係る発明
上記[2]で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1に係る発明は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下に示す事項に特定されるとおりのものである。

対象画像を光電変換して入力された画像信号を、与えられたプログラムに従って入力した画像信号とは異なる別の信号形態に変換する変換手段、前記変換手段に前記入力画像信号を圧縮処理した変換を行なわせる第1のプログラムを与える第1の手段、及び、前記変換手段に前記入力画像信号から記録媒体への記憶形式に適合する所定の信号形式への変換を行なわせる第2のプログラムを与える第2の手段を有し、前記変換手段は前記第1のプログラムが与えられた場合は前記入力画像信号を圧縮処理し、前記第2のプログラムが与えられた場合は前記入力画像信号から記憶媒体への記憶形式に適合する所定の信号形式への変換を行うことを特徴とする画像処理装置。

2.引用刊行物に記載された発明
(a)当審が平成12年7月27日付けで通知した取消理由で引用した刊行物1(特開昭59-70091号公報、申立人が提出した甲第1号証)には、以下の事項が記載されている。
「第1図は、従来試作された電子スチルカメラの一例を示すブロック図である、図中(1)はCCD固体撮像素子、(2)はその駆動回路、(3)はCCDの出力信号を増幅するブリアンプであり、(4)はγ補正等を行なうプロセス増幅器である。但し、CCD固体撮像素子(1)が単板カラー撮像素子の場合は、プロセス増幅器(4)には、単板カラー撮像素子の各カラーフィルタに対応する出力を分離する色分離回路及びNTSCカラーエンコーダ回路が含まれる。このプロセス増幅器(4)の出力映像信号は、通常8bitのA/D変換器(5)によりディジタル化され、バッファーメモリ(6)にテレビジョンの映像信号の1フィールド又は1フレーム分が記録される。この場合、CCD固体撮像素子(1)を白黒撮像素子とし、その水平方向画素数を仮に512画素とすれば、バッファーメモリ(6)の記憶容量は、フィールドメモリの場合は1Mbitを、フレームメモリの場合は2Mbitを用意する必要がある。バッファーメモリ(6)に接続されたD/A変換器(7)は、記憶した画像をディスプレイするために用いられる。バッファーメモリ(6)に対しては、更にメモリインターフェイス(8)を介してマイクロコンピュータのCPU(9)が接続され、このCPU(9)は周辺装置としてプログラム等を格納するRAM-ROMメモリ(10)と、画素データの記憶・保存に用いられる磁気バブル素子(11)とに、マイコンバスを介して接続されている。」(1頁左下欄14行ないし2頁左上欄下から2行目)
「・・・バッファーメモリ(6)の内容を磁気バブル(11)に移す際してCPU(9)を介する点にある。CPU(9)を介してデータの処理、例えば符号化による圧縮を行なう・・・」(2頁右上欄16行ないし19行)

(b)同取消理由で引用した刊行物3(特開昭62-184529号公報、申立人が提出した甲第3号証)には、以下の事項が記載されている。
「本発明のデータ圧縮伸張装置は、圧縮伸張プログラムを格納するメモリであるRAMと、ホストコンピュータより圧縮伸張プログラムをRAMへロードする手段を有している。したがって、1台の装置で、多種多様なデータを圧縮伸張処理できる。
したがって、1台の装置で多種多様なデータを圧縮できる。」(1頁右下欄7行ないし12行)

(c)同取消理由で引用した刊行物4(特開平1-269379号公報、申立人が提出した甲第4号証)には、以下の事項が記載されている。
「本発明は、ディジタル式電子スチル・カメラのおける画像信号処理回路に関する。」(1頁左下欄14行ないし15行)
「そこで本発明は、高圧縮率が得られると共に、原信号に戻すことなく、所望の映像信号で形成できる画像信号処理回路を提示することを目的とする。」(1頁右下欄9行ないし12行)
「上記式(1)ないし(6)の演算は勿論、マイクロコンピュータのプログラム動作によっても実現できる。」(4頁左下欄14行ないし15行)

(d)同取消理由で引用した刊行物6(特開昭61-198495号公報)には、以下の事項が記載されている。(なお、刊行物5は誤記であった。この点について指定期間内に代理人から電話の問い合わせがあったので、「刊行物5は刊行物6と同様なものなので、刊行物5は無視してください」と回答した。)
「本発明はフロッピィディスク装置をアクセスするためのフロッピィディスクコマンドでアクセスするバブルメモリ装置に関する。」(1頁左下欄下から3行目ないし最下行)

3.対比
本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)と刊行物1に記載された発明(以下、「刊行物1発明」という。)を対比すると、
両者は、
「対象画像を光電変換して入力された画像信号を、与えられたプログラムに従って入力した画像信号とは異なる別の信号形態に変換する変換手段、及び前記変換手段に前記入力画像信号を圧縮処理した変換を行なわせる第1のプログラムを与える第1の手段を有する画像処理装置。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点
本件発明においては、
「前記変換手段に前記入力画像信号から記録媒体への記憶形式に適合する所定の信号形式への変換を行なわせる第2のプログラムを与える第2の手段を有し、前記変換手段は前記第1のプログラムが与えられた場合は前記入力画像信号を圧縮処理し、前記第2のプログラムが与えられた場合は前記入力画像信号から記憶媒体への記憶形式に適合する所定の信号形式への変換を行う」のに対して、
刊行物1発明においては、
バッファーメモリ(6)の内容を磁気バブル(11)に移すに際してCPU(9)を介し、また、CPU(9)を介して符号化による圧縮を行う点。

4.判断
刊行物6には、フロッピィディスク装置をアクセスするためのフロッピィディスクコマンドでアクセスするバブルメモリ装置が記載されており、刊行物1の磁気バブル(11)としてこのようなバブルメモリ装置を使用すれば、CPU(9)を介してバッファーメモリ(6)の内容を磁気バブル(11)に移す場合に、本件発明の実施例の磁気ディスク(フロッピィディスク)に記憶するときと同様に記憶させることになる。そして、刊行物1の磁気バブル(11)が刊行物6のようなものであってもなくても、申立人が特許異議申立書7頁4行ないし7行で述べているように、何らかの記録媒体への記憶形式に適合する所定の信号形式への変換をプログラムによって行なわせるのは当然のことである(本件発明の「入力画像信号から記録媒体への記憶形式に適合する所定の信号形式への変換を行なわせる」を本件特許公報3頁5欄12行ないし35行に記載されているように限定して解釈することはできず、あらゆる記憶形式に適合する所定の信号形式への変換を含むと解釈せざるを得ない。仮に、請求項を限定して解釈したとしても、刊行物4には所望の映像信号を形成できる画像信号回路による演算をマイクロコンピュータのプログラム動作によっても実現できる旨記載されているから、そのようなプログラムで変換を行わせることは当業者にとって格別困難ではない。)。したがって、刊行物1発明が、変換手段に記録媒体への記憶形式に適合する所定の信号形式への変換を行なわせるプログラムを与える手段を有していることは明らかであり、仮にそうでないとしても、そのようにすることは当業者にとって格別困難なことではない。
したがって、刊行物1発明において、「プログラム等を格納するRAM-ROMメモリ(10)」には、「入力画像信号を圧縮処理した変換を行なわせる第1のプログラム」及び「記録媒体への記憶形式に適合する所定の信号形式への変換を行なわせるプログラム」が記憶されていることは明らかであり、仮にそうでないとしても、そのようにすることは当業者にとって格別困難なことではない。
特許権者は平成12年10月10日付け特許異議意見書において、「刊行物1には、単に光電変換された画像を圧縮し、圧縮された信号を磁気バブルメモリに記憶することが記載されているだけで、光電変換した画像を圧縮する処理とは別に、光電変換した画像を記録媒体の記録形式に適合する信号形式に変換することは何ら記載されていません。刊行物1に記載の発明では、記録形式に適合した形式変換することも明確ではありません。即ち、刊行物1に記載の発明では、光電変換された画像に対して、圧縮処理した変換と、光電変換された画像に対して記録形式に適合した形態への変換とを独立に行わせているのではなく、光電変換された画像を圧縮処理する変換と、圧縮処理された信号の記録形式に適合した形式への変換とが順番に行われることを示唆しているに過ぎません。」と主張している。
特許権者が主張するように、刊行物1発明においては、光電変換された画像を圧縮処理する変換と、圧縮処理された信号の記録形式に適合した形式への変換とが順番に行われる可能性もあると考えられる。これに対して、本件の請求項の記載は曖昧であり、本件発明が第1のプログラムの処理と第2のプログラムの処理を順番に行うものを含むように解釈できるかもしれないが、本件明細書に記載された実施例は、ICカード90に書き込むときには圧縮処理だけを行い、記録媒体(ICカード90)への記録形式に適合する所定の信号形式への変換は行わず(本件特許公報2頁4欄11行ないし14行参照)、磁気ディスク48に記憶するときには、記録媒体への記録形式に適合する所定の信号形式への変換だけを行い、圧縮処理は行わない(本件特許公報3頁5欄12行ないし35行参照)ものであり、また、請求項には、第1のプログラムが「前記入力画像信号を圧縮処理し」、第2のプログラムが「前記入力画像信号から・・・変換を行う」旨記載されていることからすれば、本件発明は、「前記入力画像信号を圧縮処理」を行うか、「前記入力画像信号から・・変換を行う」かのどちらかを行い、第1のプログラムと第2のプログラムを順番に行うものは含まないものと解釈することもできる。
本件発明が上記のいずれに解釈されるとしても、申立人が特許異議申立書7頁20行ないし25行で述べているように、一般に、同じ処理装置(コンピュータ)に対してプログラムを選択的にロードすることによって、処理回路を複数備えることなく、圧縮処理などの種々のデータ処理を行うことは当業者における常識であり(申立人は例として刊行物3を挙げている。)、また、刊行物1発明において圧縮を行わずにバッファーメモリ(6)の内容を磁気バブル(11)に移すことをCPU(9)を介して行うようにすることは当業者にとって格別困難なことではないから、刊行物1発明において、「前記変換手段に前記入力画像信号から記録媒体への記憶形式に適合する所定の信号形式への変換を行なわせる第2のプログラムを与える第2の手段を有し、前記変換手段は前記第1のプログラムが与えられた場合は前記入力画像信号を圧縮処理し、前記第2のプログラムが与えられた場合は前記入力画像信号から記憶媒体への記憶形式に適合する所定の信号形式への変換を行う」ようにすることは当業者が容易に想到できたことである。

5.むすび
以上のとおり、本件発明は、刊行物1、3、4及び6に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件の請求項1に係る発明の特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
画像処理装置
(57)【特許請求の範囲】
対象画像を光電変換して入力された画像信号を、与えられたプログラムに従って入力した画像信号とは異なる別の信号形態に変換する変換手段、前記変換手段に前記入力画像信号を圧縮処理した変換を行なわせる第1のプログラムを与える第1の手段、及び、前記変換手段に前記入力画像信号から記録媒体への記憶形式に適合する所定の信号形式への変換を行なわせる第2のプログラムを与える第2の手段を有し、前記変換手段は前記第1のプログラムが与えられた場合は前記入力画像信号を圧縮処理し、前記第2のプログラムが与えられた場合は前記入力画像信号から記録媒体への記憶形式に適合する所定の信号形式への変換を行うことを特徴とする画像処理装置。
【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
本発明は画像処理装置に関する。
[従来の技術]
従来の光学式銀塩カメラに代わって、撮像素子で被写体像を電気信号に変換して記録媒体に記録する電子スチル・カメラが開発され、また再生機能を具備する電子スチル・カメラも開発されている。従来の電子スチル・カメラでは記録媒体である例えば磁気ディスクの記録形式に合わせて信号の変換を行なっていた。即ち、撮像素子の画像信号を読み出し、例えば色差信号は線順次化し、輝度信号及び線順次色差信号のそれぞれをFM変調して周波数多重化し、磁気ディスクに磁気記録していた。
また、再生回路では、磁気ヘッドの出力をフィルタにより輝度成分と線順次色差成分とに分離し、それぞれにFM復調して輝度信号及び線順次色差信号に戻し線順次色差信号をライン・センス回路、ライン遅延回路及びスイッチからなる線同時化回路で同時化する。このようにして得られた輝度信号及び線同時色差信号をNTSCエンコーダでNTSC映像信号に変換してNTSC映像モニター装置に供給する。これにより、再生画像が映し出される。
[発明が解決しようとする課題]
従来例では、記録媒体への記録のための記録回路や、再生のための回路を別に設けていた。特に再生の回路には、線同時化回路やフィールド再生時のスキュー補償のために1H(水平同期期間)の遅延線を使用するので、回路が複雑化するだけでなく、その分、消費電力が多くなる。
また、従来は、上述したカメラの例に限らず、記録のための処理或いは再生圧縮のための処理それぞれ専用の回路を用いているため、回路構成が複雑になるという問題があった。
そこで本発明はこのような欠点を解消した画像処理装置を提示することを目的とする。
[課題を解決するための手段]
本発明に係る画像処理装置は、対象画像を光電変換して入力された画像信号を与えられたプログラムに従って入力した画像信号とは異なる別の信号形態に変換する変換手段、前記変換手段に前記入力画像信号を圧縮処理した変換を行なわせる第1のプログラムを与える第1の手段、及び、前記変換手段に前記入力画像信号から記録媒体への記憶形式に適合する所定の信号形式への変換を行なわせる第2のプログラムを与える第2の手段を有し、前記交換手段は前記第1のプログラムが与えられた場合は前記入力画像信号を圧縮処理し、前記第2のプログラムが与えられた場合は前記入力画像信号から記録媒体への記憶形式に適合する所定の信号形式への変換を行うことを特徴とする
[実施例]
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
第1図は本発明の一実施例の構成ブロック図を示す。10は撮影レンズ、12は絞り、14はCCD撮像素子からなる撮像回路、16は撮像回路14の出力信号又は外部又は再生画像信号を選択するスイッチ、18,20はA/D変換器、22はフレーム・メモリ、24はフレーム・メモリ22を制御するメモリ制御回路、26はフレーム・メモリ22の記憶データを出力形式に変換する高速演算処理回路、28,29,30はD/A変換器、32,33,34はD/A変換器28,29,30による不要帯域成分を除去するローパスフィルタ(LPF)、36は輝度信号に同期信号を加算する加算器、38,39はFM変調回路、40は加算器、42は記録アンプ、44は記録/再生の切換えスイッチ、46は磁気ヘッド、48は磁気ディスク、49は磁気ヘッド46を磁気ディスク48の指定トラック位置に搬送するヘッド搬送装置、50は磁気ディスク48の回転位相を検出するためのPGコイル、52は磁気ディスク48を回転するモータ、54はモータ52のサーボ回路である。56はNTSCエンコーダ、57は映像出力端子、58は映像モニタ装置である。
60は再生アンプ、62は再生信号から輝度成分を抽出するBPF、63は再生信号から色差成分を抽出するLPF、64,65はFM復調回路である。66は外部映像入力端子、68は外部映像信号を輝度信号と2つの色差信号に分離するNTSCデコーダ、70は色差信号R-Y,B-Yを線順次化すると共に、各色差信号R-Y,B-Yの直流レベルを、スチル・ビデオ・フォーマットに規定されるレベルに変換する色差レベル変換回路、72は、外部映像信号又は再生映像信号を選択するスイッチ、74はスイッチ72で選択された輝度信号から同期信号を分離する同期分離回路である。
76は図示システムの全体を制御するシステム制御回路、78は各部に基準信号を供給する基準信号発生回路(SSG)である。80はシステム制御回路76に各種の動作指示を入力するスイッチ・ボックスであり、シャッタ・スイッチ81、レリーズ・スイッチ82、記録/再生スイッチ83、入力ビデオ・スイッチ84、トラック送りスイッチ85、トラック戻しスイッチ86が接続している。88は電池、90は画像信号をディジタル記録するICカードであり、高速演算回路26により画像圧縮されたデータが書き込まれる。92はICカード90との入出力端子である。
100は高速演算回路26においてICカード90ヘデータを出力するに際して行なわれる高圧縮率の圧縮(例えば、直交変換を用いた圧縮アルゴリズム)を行なうためのアルゴリズムが格納されているROMであり、当該ROM100の内部には、撮像素子14からの出力信号を処理するためのアルゴリズムと、磁気ディスク48からの出力信号を処理するためのアルゴリズムが格納されている。ROM110には、NTSCエンコーダ56へデータを出力するに際して行なわれる第7図に示す画像データからNTSC規格に合わせるための色差線順次信号を同時化した画像データを出力するためのアルゴリズムが格納されている。
また高速演算処理回路26の内部には、第8図に示すように、メモリ22から読み出した信号を入力する入力部及DSP(ディジタル・シグナル・プロセッサ)110からの出力データをラッチするラッチ回路120,122,124を有しており、それぞれのラッチ回路に輝度信号及び色差信号R-Y,B-Yがラッチされる。126はICカード90に高圧縮のデータを出力させるための出力ポートである。112はプログラム格納用RAMであって、第1図図示のROM100または101からのプログラムが格納される。かかるプログラムの格納はシステム制御76からの指示により行なわれる。114はDSP110においてデータ処理を行なうに際して用いられるデータ処理用のワークエリアである。
本実施例においてはDSP110により種々の処理を行なうに際してROM100,101からのプログラムを読み出して出力先に応じた処理を行なわせることができる。
以下、第1図の記録(撮影)時の動作を説明する。レリーズ・ボタンを軽く押すと、レリーズ・スイッチ82が先ず閉成し、更に押し下げると、シャッタ・スイッチ81が閉成する。レリーズ・スイッチ82の閉成がスイッチ・ボックス80を介してシステム制御回路76に転送され、システム制御回路76は、撮像回路14、A/D変換器18,20、基準信号発生回路78、フレーム・メモリ22、メモリ制御回路24、サーボ回路54及びモータ52に電源を供給開始する。基準信号発生回路78は、PGコイル50からのPG信号に応じて、磁気ディスク48の回転の基準となる基準信号をサーボ回路54に印加し、サーボ回路54はこの基準信号とモータ52からのFG信号に従いモータ52の回転を制御する。
シャッタ・スイッチ81の閉成に応じて、適正露出になるように絞り12が制御され、撮像回路14は、予め設定された時間、被写体光を電荷量に変換して蓄積する。この電荷は、基準信号発生回路78からのクロックにより読み出される。撮像回路14の回路構成及び光電変換部のフィルタ構成を第2図に示す。この構成は周知であるので、詳細な説明は省略する。撮像回路14の出力はスイッチ16を介してA/D変換器18に印加され、ディジタル化されてフレーム・メモリ22に順次格納される。磁気ディスク48の回転が所定値に達して安定すると、サーボ回路54はサーボ・ロック信号をシステム制御回路76に印加する。システム制御回路76はこれに応じて高速演算回路26を起動し、フレーム・メモリ22の記憶データを磁気ディスク48への記録形態に変換させながら出力させる。即ち、第3図に示すように、撮像回路14の光電変換部の色フィルタ配置のままにフレーム・メモリ22に格納されている画素データを、第1フィールドでは、実線で示すように奇数ラインとその次のラインのデータを使い、第2フィールドでは破線で示すように偶数ラインとその次のラインのデータを使って、輝度データY及び色差データR-Y,B-Yを形成する。例えば、第1フィールドの第1画素では、
Y00=K1G(P01)+K2R(P00)+K3B(P10)
(R-Y)00=R(P00)-Y00
(B-Y)00=B(P10)-Y00
であり、第2画素では、
Y00=K1G(P01)+K2R(P00)+K3B(P10)
(R-Y)00=R(P00)-Y00
(B-Y)00=B(P10)-Y00
となる。但し、K1=0.59、K2=0.3、K3=0.11であり、Pijはフレーム・メモリ22のアドレス(第3図参照)である。
高速演算回路26で得られた輝度データはD/A変換器29に印加され、色差データR-Y,B-Yは、1ライン毎に交互にD/A変換器30に印加される。D/A変換器29,30の変換周波数は、磁気ディスク48の記録帯域によって決められている。D/A変換器29,30の出力はLPF33,34により不要帯域成分を除去され、輝度信号には加算器36により同期信号が付加され、それぞれFM変調回路38,39でFM変調される。輝度信号及び色差信号の周波数アロケーションを第4図に示す。FM変調された輝度信号及び色差信号は、加算器40により周波数多重され、記録アンプ42で増幅されて磁気ヘッド46に印加され、磁気ディスク48に記録される。
1枚の画像が記録されると、システム制御回路76はヘッド・キャリア49により磁気ヘッド46を内周側に移動させ、次の撮影を待つ。この時点で、レリーズ・スイッチ82が閉成状態であれば、モータ52を回転状態に維持し、開放されていれば、モータ52を停止させ、回路14,18,20,22,26,28,29,30,38,39への電力供給を断つ。
次に、磁気ディスク48の記録画像の再生動作を説明する。記録/再生スイッチ83を再生側にすると、再生モードになり、スイッチ44,72は共にb接点側に接続する。磁気ヘッド46の再生出力はスイッチ44及び再生アンプ60を介してBPF62及びLPF63に印加され、輝度信号の変調波と色差信号の変調波に分離される。そして、FM復調回路64,65によりベースバンドの輝度信号及び色差信号に復調され、スイッチ72を介してA/D変換器18,20に印加され、ディジタル化されてフレーム・メモリ22に格納される。同期分離回路74は復調された輝度信号から水平垂直同期信号を分離し、それを基準信号発生回路78及びシステム制御回路76に供給する。
システム制御回路76は基準信号発生回路78に命令を出してフレーム・メモリ22のデータ取り込みタイミングを決定するタイミング信号を出力させ、メモリ制御回路24は同期分離回路74で分離された水平同期信号H及び垂直同期信号Vに同期した変換タイミング信号をA/D変換器18,20に供給する。メモリ制御回路24はまた、基準信号発生回路78からの制御信号の下で、書込みアドレスをフレーム・メモリ22に印加する。なお、フレーム・メモリ22に1枚分の画像データが取り込まれる間、D/A変換器28,29,30はミュートされる。
A/D変換器20に入力する信号は、線順次色差信号であり、第5図に示すように、R-Y成分とB-Y成分とでは直流レベルが異なる。この信号がそのままA/D変換器20でディジタル化されてフレーム・メモリ22に格納される。R-Y成分かB-Y成分かは、その直流レベルにより判定でき、具体的には、高速演算回路26により、フレーム・メモリ22への書込み時、又はフレーム・メモリ22から読み出す時に、判定される。
撮影時には、フレーム・メモリ22には撮像素子の画素データが第6図に示すように撮像素子からの出力順に格納されるが、磁気ディスク46の再生時には、第7図に示すように、輝度信号及び線順次色差信号の信号形態で格納される。
フレーム・メモリ22への取り込みが終了すると、基準信号発生回路78は高速演算回路26に演算開始のタイミング信号を印加し、高速演算回路26はフレーム・メモリ22の輝度データをD/A変換器29に、線同時化した色差データB-YをD/A変換器28に、線同時化した色差データR-YをD/A変換器30に出力する。D/A変換器28,29,30は、高速演算回路26からの変換クロックに従って、上記各データをアナログ信号に変換する。アナログ化された輝度信号及び色差信号はLPF32,33,34により不要帯域成分を除去され、輝度信号には加算器36により同期信号が加算され、NTSCエンコーダ56に供給されてNTSCビデオ信号に変換される。NTSCエンコーダ56の出力は出力端子57からモニタ装置58に供給される。
外部映像信号を磁気ディスク48に記録する場合の動作を説明する。この場合には、入力ビデオ・スイッチ84に応じて、スイッチ44,72は共にa接点側する。外部映像入力端子66に入力する映像信号はNTSCデコーダ68により、同期信号を含む輝度信号と、色差信号R-Y,B-Yに変換される。色差信号R-Y,B-Yは色差レベル変換回路70により、磁気ディスク48の記録時と同様に、所定の直流オフセットを付けて線順次化される。NTSCデコーダ68から出力される輝度信号及び色差レベル変換回路70から出力される線順次色差信号は、スイッチ72,16を介してA/D変換器18,20に印加される。
この状態で、レリーズ・ボタンが押されると、レリーズ・スイッチ82の閉成に応じて、A/D変換器18,20、フレーム・メモリ22、メモリ制御回路24、モータ52及びサーボ回路54に電源が供給され、磁気ディスク48を回転させる。シャッタ・スイッチ81の閉成に応じて、メモリ制御回路24はA/D変換器18,20に変換クロックを印加し、フレーム・メモリ22に書込み信号及び書込みアドレス信号を印加する。これにより、フレーム・メモリ22には第7図に示すように信号が格納される。
磁気ディスク48の回転が安定すると、サーボ回路54がサーボ・ロック信号をシステム制御回路76に印加し、これに応じて高速演算回路26を動作させ、輝度データをD/A変換器29に、線順次色差データをD/A変換器30に供給させる。以下、撮影記録時と同様にして、磁気ディスク48に記録される。
記録媒体として磁気ディスクを例に説明したが、光磁気ディスクやICカード、磁気テープなどを利用できることはいうまでもない。
本実施例では、画像メモリを設けたことにより、再生時に記録媒体を常時駆動する必要が無くなり、消費電力を節減できる。また、記録媒体の記録信号の再生のために、ライン・センス回路が不要になり、製造コストを低減できる。
[発明の効果]
以上の説明から容易に理解できるように、本発明によれば、変換手段に与えるプログラムを変更するだけで、対象画像を光電変換して得られた入力画像信号を圧縮処理したり、記録媒体への記録形式に適合する信号形式に変換できるので、圧縮処理及び記録のための信号処理を簡単なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例の構成ブロック図、第2図は撮像素子の回路構成及び色フィルタ配置を示す図、第3図は撮影記録時のフレーム・メモリ22のデータ読出し及び処理順序の説明図、第4図は磁気ディスク48の記録信号の周波数アロケーション、第5図は線順次色差信号の直流レベル説明図、第6図は撮像回路14の出力データのフレーム・メモリ22への格納位置の説明図、第7図は磁気ディスク48の再生信号のフレーム・メモリ22への格納位置の説明図、第8図は高速演算回路26の内部構成ブロック図である。
10:撮影レンズ 12:絞り 14:撮像回路 22:フレーム・メモリ 24:メモリ制御回路 26:高速演算回路 46:磁気ヘッド 48:磁気ディスク 49:ヘッド搬送装置 50:PGコイル 52:モータ 66:外部映像入力端子 76:システム制御回路 78:基準信号発生回路 81:シャッタ・スイッチ 82:レリーズ・スイッチ 83:記録/再生スイッチ 84:入力ビデオ・スイッチ 85:トラック送りスイッチ 86:トラック戻しスイッチ 100:データ圧縮アルゴリズムROM 101:データ変換アルゴリズムROM
 
訂正の要旨 訂正の要旨
a)訂正事項a
特許請求の範囲に
「対象画像を光電変換して入力された画像信号を、与えられたプログラムに従って入力した画像信号とは異なる別の信号形態に変換する変換手段、前記変換手段に前記入力画像信号を圧縮処理した変換を行なわせる第1のプログラムを与える第1の手段、及び、前記変換手段に前記入力画像信号から記録媒体への記憶形式に適合する所定の信号形式への変換を行なわせる第2のプログラムを与える第2の手段を有することを特徴とする画像処理装置。」
とあるのを、特許請求の範囲の減縮を目的として、
「対象画像を光電変換して入力された画像信号を、与えられたプログラムに従って入力した画像信号とは異なる別の信号形態に変換する変換手段、前記変換手段に前記入力画像信号を圧縮処理した変換を行なわせる第1のプログラムを与える第1の手段、及び、前記変換手段に前記入力画像信号から記録媒体への記憶形式に適合する所定の信号形式への変換を行なわせる第2のプログラムを与える第2の手段を有し、前記変換手段は前記第1のプログラムが与えられた場合は前記入力画像信号を圧縮処理し、前記第2のプログラムが与えられた場合は前記入力画像信号から記録媒体への記憶形式に適合する所定の信号形式への変換を行うことを特徴とする画像処理装置。」
と訂正する。
b)訂正事項b
明細書の第4頁第7行乃至第19行に、
「本発明に係る画像処理装置は、対象画像を光電変換して入力された画像信号を、与えられたプログラムに従って入力した画像信号とは異なる別の信号形態に変換する変換手段、前記変換手段に前記入力画像信号を圧縮処理した変換を行なわせる第1のプログラムを与える第1の手段、及び、前記変換手段に前記入力画像信号から記録媒体への記憶形式に適合する所定の信号形式への変換を行なわせる第2のプログラムを与える第2の手段を有することを特徴とする。」
とあるのを、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るため、明りょうでない記載の釈明を目的として、
「本発明に係る画像処理装置は、対象画像を光電変換して入力された画像信号を、与えられたプログラムに従って入力した画像信号とは異なる別の信号形態に変換する変換手段、前記変換手段に前記入力画像信号を圧縮処理した変換を行なわせる第1のプログラムを与える第1の手段、及び、前記変換手段に前記入力画像信号から記録媒体への記憶形式に適合する所定の信号形式への変換を行なわせる第2のプログラムを与える第2の手段を有し、前記変換手段は前記第1のプログラムが与えられた場合は前記入力画像信号を圧縮処理し、前記第2のプログラムが与えられた場合は前記入力画像信号から記録媒体への記憶形式に適合する所定の信号形式への変換を行うことを特徴とする。」
と訂正する。
c)訂正事項c
明細書の第8頁第3行目に「化色26」とあるのを、誤記の訂正を目的として、「回路26」と訂正する。
d)訂正事項d
明細書の第8頁第20行目に「出力共」とあるのを、明りょうでない記載の釈明を目的として「出力先」と訂正する。
異議決定日 2001-05-25 
出願番号 特願平1-288561
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (H04N)
最終処分 取消  
前審関与審査官 鈴木 明  
特許庁審判長 井上 雅夫
特許庁審判官 小林 秀美
橋本 恵一
登録日 1999-05-14 
登録番号 特許第2926793号(P2926793)
権利者 キヤノン株式会社
発明の名称 画像処理装置  
代理人 田中 常雄  
代理人 田中 常雄  

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