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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B28B
管理番号 1048516
異議申立番号 異議1999-73897  
総通号数 24 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1991-12-06 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-10-18 
確定日 2001-09-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第2883150号「オートクレーブ養生における降温方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2883150号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続きの経緯
特許第2883150号の請求項1に係る発明は、平成2年3月26日に特許出願され、平成11年2月5日にその特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、異議申立人株式会社大阪ボイラー製作所により特許異議の申立がなされ、平成12年2月8日に取消の理由が通知され、その指定期間内である平成12年4月10日に訂正請求がなされ、平成12年12月8日に訂正拒絶の理由が通知され、その指定期間内である平成13年2月6日に手続補正(訂正請求)がなされたものである。
2.平成13年2月6日付手続補正(訂正請求)の適否についての判断
(1)補正の内容
全文訂正明細書中の特許請求の範囲、及び訂正請求書中の訂正の要旨、訂正事項aについて、「炉内へのスチームの供給を停止して自然放熱させた後に、」を「炉内へのスチームの供給を停止し、炉内のスチームが結露を開始する前まで自然放熱させた後に、」と補正する。
(2)補正の適否
上記手続補正は、「炉内へのスチームの供給を停止して自然放熱させた後に、」という訂正事項に「炉内のスチームが結露を開始する前まで」という新たな訂正事項を付け加わえるものであり、実質的に訂正請求書の要旨を変更するものであるから、特許法第120条の4第3項で準用する同法第131条第2項の規定により、採用することができない。
3.訂正請求の適否
(1)訂正の内容
特許請求の範囲の請求項1、及び明細書第5頁5行〜同頁7行の「所定の高圧力下で養生後、」と「炉内を大気圧よりも低い圧力まで減圧して」の間に「炉内へのスチームの供給を停止して自然放熱させた後に、」を挿入するものである。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項の内、特許請求の範囲の訂正は、本件発明の降温方法を、本件特許明細書の第2図及びその説明(第6頁13〜18行)に記載される、養生が終了した後に「炉内へのスチームの供給を停止して自然放熱」させる工程を設けたものに限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮に該当し、新規事項を追加するものではない。
また、上記訂正事項の内、明細書の訂正は、明細書の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明に該当し、新規事項を追加するものではない。
そして、これらの訂正は実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(3)独立特許要件について
ア.訂正後の本件発明
訂正後の本件発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「請求項1 軽量気泡コンクリート製原版を炉内に収納した後、炉内にスチームを供給して所定の高温度、所定の高圧力下で前期原版を養生することにより軽量気泡コンクリート製パネルを製造するオートクレーブ養生において、前記所定の高温度、所定の高圧力下での養生後、炉内へのスチームの供給を停止して自然放熱させた後に、炉内を大気圧よりも低い圧力まで減圧して前記パネルの温度および炉内の温度を降温させることを特徴とするオートクレーブ養生における降温方法」
イ.引用刊行物記載の発明
当審が通知した訂正拒絶の理由において引用した刊行物1(特公昭58-29271号公報)には、セメント系板材、例えば石綿セメント板材の養生乾燥装置であって、石綿セメント板材のオートクレーブ養生直後にオートクレーブ釜内を真空引きすることにより、石綿セメント板材を乾燥させる養生乾燥装置の発明が記載され、その実施例を示す第2図の説明として、「製品P,P・・・の養生が終了すれば、バルブ21が閉鎖され蒸気の供給が中断される。次いで、バルブ4の開路と共に真空引き系統Aが作動され、釜1内が所定の真空度、例えば110Torrに所定の時間保持される。」(第2頁4欄18〜22行)と記載されている。同じく刊行物2(クボタ技報1980,Vol.5 No.2)には、住宅用けい酸カルシウム外壁材を真空乾燥させる技術が記載され、「オートクレーブ熱処理状態の高温高圧の状態・・・から100mmHgの真空まで減圧して数時間放置した」(第171頁右欄21〜23行)という記載があり、第172頁図6には、連続処理における圧力容器内各部の温度測定値が示されている。同じく刊行物3(特公昭32-6371号公報)には、軽量コンクリートの養生において、オートクレーブ養生前に釜内を減圧する蒸気養生法の発明が記載され(特許請求の範囲)、軽量コンクリートとして気泡コンクリートが例示されている(第3頁左欄5〜10行)。
ウ.訂正後の発明と刊行物記載の発明との対比
刊行物1及び2には、石綿セメントやけい酸カルシウムの板材(パネル)のオートクレーブ養生後に、オートクレーブ内を真空減圧することにより、該板材を乾燥させる方法が記載されているが、当該乾燥は、石綿セメントやけい酸カルシウムに含まれる水分の蒸発を伴うものであるから、石綿セメントやけい酸カルシウムの板材の降温も同時に行われることが明らかである。
本件訂正後の請求項1に係る発明と刊行物1または2記載の発明とを対比すると、刊行物1または2には、養生工程と大気圧以下の減圧工程との間に、「炉内へのスチームの供給を停止して自然放熱」させる工程を設けることについて明確な記載がない点、軽量気泡コンクリートを降温することについて記載がない点、で相違する。
しかしながら、「自然放熱」は周囲よりも高温である物体の降温手段として最も簡便な周知の方法であり、刊行物1記載の発明でも、バルブ21を閉鎖することにより、養生用水蒸気の供給を中断させた後、「次いで」バルブ4を開路して真空引きを行うことが記載され、養生終了後、バルブ4を開路するまでの期間に自然放熱が生じることは自明である。また、刊行物2では、約140℃の「保持10min」と「真空30min」の間の「降圧20min」が、本件発明の「養生」工程と「大気圧よりも低い圧力まで減圧する」工程との間に相当し、この期間にけい酸カルシウム板の降温が生じていることは、図6のグラフより明らかである。
したがって、刊行物1または2には、石綿セメント板材やけい酸カルシウム板の養生乾燥方法において、養生工程と大気圧以下の減圧工程との間に、「炉内へのスチームの供給を停止して自然放熱」させる工程を設けることについて実質的には記載されているといえる。
更に、軽量気泡コンクリートがオートクレーブ養生を必要とすることは刊行物3にみられるように周知であり、養生後、乾燥や降温の必要性が生じることも、刊行物1または2の石綿セメント板材やけい酸カルシウム外壁材などと同様であるから、刊行物1また2の乾燥・降温方法を軽量発泡コンクリートの乾燥・降温に適用することは、当業者が容易に想到しうることである。
よって、本件訂正後の請求項1に係る発明は、刊行物1乃至3の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
エ.むすび
以上のように、訂正明細書請求項1に係る発明は、特許出願の際、特許法第29条第2項の規定により独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第120条の4第3項において準用する同法第126条4項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。
4.異議申立についての判断
(1)特許異議申立の概要
異議申立人は、甲第1〜7号証を提出し、請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから請求項1に係る発明の特許を取り消すべきであると主張している。
(2)本件発明
本件特許2883150号の請求項1に係る発明は、明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「請求項1 軽量気泡コンクリート製原版を炉内に収納した後、炉内にスチームを供給して所定の高温度、所定の高圧力下で前記原版を養生することにより軽量気泡コンクリート製パネルを製造するオートクレーブ養生において、前記所定の高温度、所定の高圧力下での養生後、炉内を大気圧よりも低い圧力まで減圧して前期パネルの温度および炉内の温度を降温させることを特徴とするオートクレーブ養生における降温方法」
(3)対比・判断
当審で通知した取消理由で引用した刊行物1ないし3(異議申立人が提出した甲第1乃至3号証)は、当審で通知した訂正拒絶の理由で引用した刊行物1乃至3と同じであり、それぞれ「3.訂正請求の適否 (2)」で、摘示した発明が記載されている。
本件請求項1に係る発明は、上記訂正後の発明から、「炉内へのスチームの供給を停止して自然放熱させた後に、」という限定的要件を除いたものであり、訂正後の発明を包含する発明であるから、「3.訂正請求の適否 (3)」で述べたのと同様な理由で、本件訂正後の請求項1に係る発明の特許は、刊行物1乃至3の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明に対してなされてものであるから、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-08-02 
出願番号 特願平2-75972
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (B28B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 八原 由美子  
特許庁審判長 石井 良夫
特許庁審判官 唐戸 光雄
冨士 良宏
登録日 1999-02-05 
登録番号 特許第2883150号(P2883150)
権利者 ミサワホーム株式会社
発明の名称 オートクレーブ養生における降温方法  
代理人 杉本 丈夫  

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