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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C04B
審判 全部申し立て 2項進歩性  C04B
管理番号 1048526
異議申立番号 異議1998-71375  
総通号数 24 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1989-06-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 1998-03-23 
確定日 2001-10-20 
異議申立件数
事件の表示 特許第2655699号「耐火性物質および該物質の製造方法」の特許に対する特許異議の申立てについてした決定(平成12年6月13日付)に対し、東京高等裁判所において取消決定取消の判決(平成12年(行ケ)第438号、平成13年5月30日判決言渡)があったので、更に審理の結果、次のとおり決定する。 
結論 特許第2655699号の請求項1ないし11に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第2655699号に係る発明(請求項の数11)は、昭和63年10月5日(パリ条約に基づく優先権主張1987年11月23日、1987年12月17日 ドイツ国)に特許出願され、平成9年5月30日にその特許の設定の登録がなされ、その後、平成10年3月23日に日本碍子株式会社より特許異議の申立てがなされ、平成12年6月13日付けで、請求項1〜5,9〜11,16〜19に係る特許について取り消す決定がされ、その後、請求項1及び請求項9に係る発明を減縮するとともに、請求項2ないし4,請求項11及び請求項16ないし19を削除する訂正を求める訂正審判が請求され(訂正2000年39152号)、平成13年3月28日に訂正を認める審決がされ(この審決は平成13年4月11日に確定)、平成13年5月30日に前記平成12年(行ケ)第438号の取消決定取消請求事件について「特許庁が平成10年異議第71375号事件について平成12年6月13日にした決定を取り消す。」との判決の言渡があった。
2.本件特許発明
本件特許発明は、訂正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜11に記載された事項によって特定される下記のとおりのものである。
【請求項1】
63〜82重量パーセントのSiC、15〜27重量パーセントのSi3N4および3〜10重量パーセントの、酸化鉄及び酸化アルミニウムである無機酸化物からなる耐火性物質。
【請求項2】
無機酸化物の量が5〜8重量パーセントであることを特徴とする、請求項1記載の耐火性物質。
【請求項3】
無機酸化物が酸化鉄、酸化アルミニウムおよび酸化ナトリウムであることを特徴とする、請求項1記載の耐火性物質。
【請求項4】
無機酸化物が酸化鉄、酸化アルミニウムおよび酸化ナトリウムであることを特徴とする、請求項2記載の耐火性物質。
【請求項5】
完全にあるいは一部、酸化鉄を酸化亜鉛に、酸化アルミニウムを酸化チタンおよび酸化ジルコニウムの少なくとも1種に、そして酸化ナトリウムを酸化カルシウム、カリウムおよびマグネシウムの少なくとも1種に置換することを特徴とする、請求項3記載の耐火性物質。
【請求項6】
請求項1記載の耐火性物質の製造方法であって、a)63〜82重量パーセントの炭化珪素粉末、10〜36重量パーセントの珪素粉末および10重量パーセントまでの、最大300μmの粒度を有する、酸化鉄及び酸化アルミニウムである無機酸化物、を安定な懸濁液に混合し、b)成形し、c)乾燥し、そしてd)窒素大気中で1380〜1450℃で焼結すること、を特徴とする方法。
【請求項7】
70〜80重量パーセントの炭化珪素粉末、15〜22重量パーセントの珪素粉末および8重量パーセントまでの無機酸化物粉末を混合することを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
酸化鉄、酸化アルミニウムおよび酸化ナトリウムを酸化物として用いることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項9】
2重量パーセントまでの酸化鉄、1〜6重量パーセントの酸化アルミニウムおよび0.4重量パーセントまでの酸化ナトリウムを用いることを特徴とする、請求項8記載の方法。
【請求項10】0.5〜1.5重量パーセントの酸化鉄および0.1重量パーセントまでの酸化ナトリウムを用いることを特徴とする、請求項9記載の方法。
【請求項11】
完全にあるいは一部、酸化鉄を酸化亜鉛に、酸化アルミニウムを酸化チタンおよび酸化ジルコニウムの少なくとも1種に、酸化ナトリウムを酸化カルシウム、酸化カリウム、および酸化マグネシウムの少なくとも1種に置換することを特徴とする、請求項8記載の方法。
3.特許異議申立理由の概要
特許異議申立人日本碍子株式会社は、甲第1〜5号証を提出し以下のように主張している。(但し、請求項の数は訂正前のもの)
(1)本件請求項1〜7に係る発明は、甲第1〜5号証に記載された発明であり、本件請求項9〜12,請求項17,19に係る発明は甲第3,5号証に記載された発明であるから、訂正前の本件請求項1〜7,9〜12,17,19に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきである。
(2)本件請求項8、13〜16,18に係る発明は、甲第1〜5号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項8,13〜16,18に係る発明の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきである。
(3)本件請求項1〜3,及び5に係る発明は、本件明細書で従来の耐火物物質であると認めている耐火物質に該当するものであり、本件は特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない。
甲第1号証:セラミックデータブック編集委員会編「セラミックデータブ ック1982」(昭57-3-5)工業製品技術協会,P. 266-271
甲第2号証:山下景久編「セラミックデータブック’76」(昭51-1 1-29)工業製品技術協会,P.250-251
甲第3号証:特公昭45-10070号公報
甲第4号証:特開昭60-166265号公報
甲第5号証:西独国特許出願公開第3,343,577号明細書(1984)
4.引用刊行物の記載事項
特許異議申立人が提出し、取消理由で引用された刊行物には各々次のとおりの記載がある。
【刊行物1(甲第1号証)】
(1-1)「高炉に使用される炭化けい素耐火物」(第266頁の論文の表題)
(1-2)商品名「レアフラクス」の化学成分が次のとおりであること。(第266〜267頁表1参照)
化学成分 各成分の組成割合(%)
SiO2 2.9
Al2O3 0.3
Fe2O3 0.5
CaO 0.1
SiC 73.3
Si3N4 22.3
【刊行物2(甲第2号証)】
(2-1)「レアフラクスは、窒化珪素を結合材とした炭化珪素質耐火物で、…(中略)…レアフラクスの窒化珪素の量は用途、形状等により10%〜100%の範囲に各種のものを製造しますが一般には23%を標準としています。」(第250頁右欄第2〜8行)
(2-2)レアフラクスの標準的化学成分が次のとおりであること。(第250頁右欄「レアフラクスの標準的化学成分及び物理的性質」の表参照)
化学成分 各成分の組成割合(%)
SiC 73.30
Si3N4 22.30
SiO2 2.90
Al2O3 0.30
Fe2O3 0.50
CaO 0.10
【刊行物3(甲第3号証)】
(3-1)「実施例3 炭化けい素の粒度30〜40μ9.0%、30〜25μ14.0%、25〜20μ25.4%、20〜15μ46.0%、15〜5μ5.6%のものを900〜950℃で3時間酸素気圏で撹拌して酸化し、このもの60.0%と44μ以下の粉末金属けい素40.0%との混合物となし、…(中略)…この成型体を…(中略)…乾燥した。次に窒化窯内に装入し、窒素気圏となし、1000℃までに3日間で昇温し、更に1300℃で1日間、1400℃で1日間、1450℃で1日間加熱して窒化を完了した。」(第7欄第15〜35行)
(3-2)「実施例においては代表的な粒度配合による製造法及び製品の特性について述べたのみであるが、炭化けい素粒子の小なるものほど、また配合量を少くする程耐食性も耐スポーリング性も良好になる。」(第8欄第19〜23行)
(3-3)第1表において、実施例2の比較例として挙げられている「複合窒化けい素結合」及び「成品の窒化率約98.6%」と表示されているものが次の原料配合割合を示すこと。
原料成分 配合割合(wt%)
炭化珪素 76
金属珪素粉末 17
シリカ粉末 7
【刊行物4(甲第4号証)】
(4-1)「炭化珪素に対する結合相として窒化珪素を用いることはアメリカ合衆国特許第2,752,258号に記載されており…(中略)…その場合結合剤中の事実上すべての珪素はSi3N4なる化学式を有する窒化珪素として窒素と結合している。…(中略)…少くとも200メッシュ(アメリカ合衆国標準篩)及びそれ以下の珪素粉末と水分を緻密に混合して成形可能な混合物を作り、次に該混合物から所望の塊または形に成形し、得られた成形物を乾燥しそしてそれを非酸化性窒素雰囲気中で事実上すべての金属珪素が窒化珪素に転化するのに十分な温度及び時間にて焼成することにより得られる窒化珪素の結合相により炭化珪素粒子が保持される。乾燥リグノン(Lignone)及びベントナイトゲル(水4部に対して乾燥ベントナイト1部)が処理助剤及び一時的バインダーとして用いられる。(第3頁右下欄第5行〜第4頁左上欄第7行)
(4-2)「本発明は、本質的に粒状炭化珪素及び酸素及びアルミニウムの存在により変性されたSi3N4を含む結合剤から成る結合炭化珪素製品を提供する。」(第6頁左上欄第9〜11行)
(4-3)「本方法は、約4乃至約8パーセントのアルミニウム粉末、及び約10乃至約16パーセントの珪素粉末と粒状炭化珪素及び水及び場合により加工助剤及び一時的バインダー、例えば乾燥リグノン及びベントナイトを含む均一可塑性混合物を作り、該混合物を成形して製品の形の未焼緻密化物とし、該成形混合物を乾燥し、そして該未焼緻密体を窒素系非酸化性雰囲気中で珪素及びアルミニウムの事実上すべてが窒素と結合して該製品の生成が完了するまで焼成することを含む。Si-Al-O-Nを生成するのに必要な酸素は珪素及び炭化珪素粉末に含まれる表面酸素により供給される。(第6頁右上欄第2〜14行)
(4-4)「好ましくは、原料バッチは約76乃至約88パーセントの粒状炭化珪素、約10乃至約16パーセントの珪素、約4乃至約8パーセントのアルミニウム、約0.5パーセントのベントナイト粘土及び約4乃至約41/2パーセントの乾燥リグノンを含む。」(第6頁左下欄第4〜9行)
(4-5)一時的バインダーとして用いられるベントナイト粘土が典型的には主成分としての酸化珪素、酸化アルミニウム、微量成分としての酸化鉄、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カリウム、酸化ナトリウムからなること(第7頁左下欄第1〜12行参照)
(4-6)乾燥リグノンの典型的分析値が、揮発性酸が3.9%、全Sが4.1%、遊離SO2が0.2%、SO3が0.9%、スルホンSO2が5.5%、CaOが4.9%、Feが0.02%、MgOが1.5%、Na20が0.3%、SiO2が0.16%、残余が有機物質であること(第7頁左下欄第13行〜同頁右下欄第12行参照)
(4-7)「結合相の量は製品全重量に対して約15乃至25パーセントにすることが望ましい。この範囲は原料バッチ中に約10乃至約16パーセントの金属珪素粉末を用いることにより達成される。」(第8頁右上欄第15行〜同頁左下欄第2行)
(4-8)「未焼緻密体の焼成は非酸化性窒素雰囲気中で行われる。…(中略)…窒化温度は工業的に実際的な反応速度を達成するために1300℃以上にすべきである。温度は生成した結合相の分解を避けるために約1600℃以上にすべきではない。好ましくは、窒化は約1420℃の温度で行われる。」(第8頁右下欄第9行〜第9頁左上欄第3行)
【刊行物5(甲第5号証)】
(5-1)「窒化珪素結合の炭化珪素耐火物であって、下記事項を特徴とする。約80〜90重量%の粗粒と微細粒からなる炭化珪素粒子で、少なくとも60重量%の粒子径が-3.4〜0.105mm(-6〜+140m.)で残部が-0.105mm(-140m.)の炭化珪素と、約10〜20重量%の粒子径の大部分が-0.074mm(-200m.)のSi元素と、揮発性の結合材と水と少なくとも一種の耐火性酸化物が約0.5〜10重量%添加された原料結合体であって、該耐火性酸化物は、MgO、イットリア安定化ジルコニア、イットリア、アルミナから選ばれたものであり、その全てが実質的に-0.084mm(-150m.)の粒子径であり、耐火性骨材は、アルカリアタックに対して改良された耐蝕性を示し、また、本質的な耐摩耗性と耐熱性は約1315.5℃の高温で維持される。」(特許請求の範囲第1項)
(5-2)「2.…(略)…耐火性酸化物が0.5〜5重量%のイットリアから成る…(略)…。3.…(略)…耐火性酸化物が2〜5重量%のMgOから成る…(略)…。4.…(略)…耐火性酸化物が2〜5重量%のイットリア安定化ジルコアから成る…(略)…。5.…(略)…耐火性酸化物が5〜10重量%のアルミナから成る…(略)…。」(特許請求の範囲第2〜5項)
(5-3)「発明に適合した窒化珪素結合の炭化珪素耐火物は、本来的に有している耐摩耗性と約1315℃までの高温耐熱性を有している。…(中略)…耐火性骨材は原料の混合物からなり、それは約80〜90重量%の炭化珪素と、約10〜20重量%の珪素と、約1〜4重量%の揮発性の結合材、例えばリグニンまたはデキストリンと約4〜8重量%の水と、約0.5〜10重量%のMgO、イツトリア安定化ジルコニア又はアルミナから選ばれた少なくとも一種の耐火性酸化物を含んでいる。炭化珪素の少なくとも60重量%の粒子径は、-3.4〜+0.105mm(-6〜+140m.)で、40重量%の部分の大きさは-0.105mm(-140m.)である。…(中略)…Si元素の大きさの主流は-0.074mm(-200m.)である。」(第8頁第7〜29行)
(5-4)「本発明の第1の実施例は、原料混合比はSiCが88wt%、金属Siが12wt%からなる。…(中略)…原料混合体は、2wt%のリグニンの揮発性結合材と、5wt%の水と5wt%の98.5%MgOで…(中略)…成形体を室温で24時間乾燥する。…(中略)…4)その後、試験体を1204℃まで加熱し、この温度で12時間保持する。5)試験体を1427℃まで加熱し、この温度で4時間保持する。」(第17頁第31行〜第19頁第8行)
4.当審の判断
(1)特許法第29条第1項第3号及び同条第2項違反について
ア.請求項1ないし2に係る発明
(ア-1)請求項1に係る発明と刊行物1ないし5に記載の発明との対比
刊行物1ないし5に記載の発明は、請求項1に係る発明の構成要件である「酸化鉄及び酸化アルミニウムである無機酸化物を3〜10重量%含む」という要件を備えていないし、刊行物1ないし5には当該要件を示唆する記載もない。請求項1に係る発明と各刊行物記載の発明とを個別に対比すると以下のとおりである。
刊行物1ないし2に記載の発明との対比:
刊行物1ないし2には、73.3重量%のSiC、22.3重量%のSi3N4、2.9重量%のSiO2、0.3重量%のAl2O3、0.5重量%のFe2O3及び0.1重量%のCaOからなる耐火性物質が記載されているが、酸化鉄と酸化アルミニウムの含有量の合計は0.8重量%であり、請求項1に係る発明の構成要件である「酸化鉄及び酸化アルミニウムである無機酸化物を3〜10重量%含む」という事項については記載がないし、酸化鉄と酸化アルミニウムの含有量を増大させるとの示唆もない。
刊行物3に記載の発明との対比:
刊行物3に記載の発明における無機酸化物はシリカ粉末であり、刊行物3には、酸化鉄及び酸化アルミニウムである無機酸化物を3〜10重量%含ませることについては何ら記載がないし、示唆もない。刊行物3には、耐火物の製造原料としてベントナイトを使用することが記載されているが(第3頁第6欄23〜26行参照)、当該記載が無機酸化物として酸化鉄及び酸化アルミニウムを3〜10重量%含有させることを示唆するものではないし、刊行物3記載のベントナイトの添加量で耐火物中の酸化鉄及び酸化アルミニウムの含有量が3〜10重量%になるものでもない。
刊行物4に記載の発明との対比:
刊行物4には、約76〜約88重量%のSiC、約10〜約16%のSi、約4〜約8%のAl、約0.5%のベントナイト粘土、約4〜約4.5%の乾燥リグノンからなる混合物を窒素中で全てのSiとAlが窒化するまで焼成することが記載されているが、酸化鉄及び酸化アルミニウムである無機酸化物を3〜10重量%含むようにすることについては、記載も示唆もない。また、刊行物4には、ベントナイトが、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化カリウム、酸化ナトリウム等からなり、また、乾燥リグノンが酸化カルシウム、Fe、酸化マグネシウム、酸化ナトリウム、酸化珪素を含み、それぞれ結合材として使用されることが記載されているが、これらの記載は無機酸化物として酸化鉄及び酸化アルミニウムを3〜10重量%含有させることを示唆するものではないし、刊行物4記載のベントナイト及び乾燥リグノンの添加量で耐火物中の酸化鉄及び酸化アルミニウムの含有量が3〜10重量%になるものでもない。
刊行物5に記載の発明との対比:
刊行物5には、約80〜90重量%のSiC、約10〜20重量%の珪素と、1〜4重量%の揮発性の結合材、約4〜8重量%の水、約0.5〜10重量%の耐火性酸化物からなる原料混合物から耐火物を製造することが記載され、耐火性酸化物としてアルミナが約5〜10重量%使用されることが記載されている。しかしながら、アルミナと共に、酸化鉄を加えて耐火物中の酸化鉄及び酸化アルミニウムの含有量を3〜10重量%にするという技術思想は、刊行物5に記載されていないし、その示唆もない。
請求項1に係る発明は、請求項1記載の構成を採用することにより、すぐれた曲げ強度及び熱安定性を有するという効果を奏するものと認める。
以上のとおりであるから、請求項1に係る発明は、刊行物1ないし5に記載された発明ではないし、また刊行物1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることもできない。
(ア-2)請求項2に係る発明と刊行物1ないし5に記載の発明との対比
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明を引用し、無機酸化物の量を更に限定するものであるから、請求項1に係る発明についての検討における理由と同様の理由により、刊行物1ないし5に記載された発明ではないし、また刊行物1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることもできない。
イ.請求項3ないし4に係る発明
請求項3ないし4に係る特許については、請求項1を引用し、無機酸化物がさらに酸化ナトリウムを含むことを限定した発明であるから、請求項1についての検討における理由と同様な理由により刊行物1ないし5に記載された発明ではないし、刊行物1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることもできない。
したがって、請求項1ないし4に係る発明は、刊行物1ないし5に記載された発明ではないし、また刊行物1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることもできない。
ウ.請求項5に係る発明
請求項5に係る発明は、請求項3に係る発明において、完全にあるいは一部、酸化鉄を酸化亜鉛に、酸化アルミニウムを酸化チタンおよび酸化ジルコニウムの少なくとも1種に、そして酸化ナトリウムを酸化カルシウム、カリウムおよびマグネシウムの少なくとも1種に置換したものであり、係る発明も刊行物1ないし5に記載された発明ではないし、また刊行物1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることもできない。
エ.請求項6ないし11に係る発明
請求項6ないし11に係る発明は、請求項1ないし請求項5に係る発明の耐火性物質の製造方法に係るものである。
請求項1ないし請求項5に係る発明の耐火性物質について刊行物1ないし5に記載及び示唆がないことは、上述のとおりである。
したがって、請求項6ないし11に係る発明は、刊行物1ないし5に記載された発明ではないし、また刊行物1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることもできない。
オ.まとめ
上述のとおり、訂正された請求項1ないし11に係る発明は刊行物1ないし5に記載された発明ではないし、また刊行物1ないし5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとすることもできない。
(2)特許法第36条違反について
本件請求項1に係る発明における「無機化合物」が、「酸化鉄及び酸化アルミニウムである無機化合物」に訂正された結果、本件請求項1及び当該請求項を引用する請求項2(訂正前の請求項5)に係る発明は、従来技術を含まなくなったことは上述したとおりであるから、本件特許明細書は特許法第36条に規定する要件を満たしている。なお、特許異議申立人が記載不備を指摘する請求項2〜3は、訂正により削除されている。
5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立に理由及び証拠方法によっては、本件請求項1ないし11に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし11に係る発明が特許を受けることができない理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-06-13 
出願番号 特願昭63-250022
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C04B)
P 1 651・ 113- Y (C04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 板橋 一隆  
特許庁審判長 石井 良夫
特許庁審判官 山田 充
唐戸 光雄
登録日 1997-05-30 
登録番号 特許第2655699号(P2655699)
権利者 ノートン ベタイリグングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
発明の名称 耐火性物質および該物質の製造方法  
代理人 福本 積  
代理人 大庭 咲夫  
代理人 鶴田 準一  
代理人 高木 幹夫  
代理人 樋口 外治  
代理人 石田 敬  
代理人 西山 雅也  
代理人 長谷 照一  

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