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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  H04R
管理番号 1048604
異議申立番号 異議2001-71995  
総通号数 24 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-06-18 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-07-17 
確定日 2001-11-28 
異議申立件数
事件の表示 特許第3134955号「スピーカ装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3134955号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.本件発明
特許第3134955号(平成3年11月26日出願、平成12年12月1日設定登録)の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次に掲げるとおりのものである。
「スピーカユニットと、前記スピーカユニットを収納するキャビネットと、前記キャビネット内に配され、前記キャビネットに固定される第1の部分と、前記キャビネット内から前記キャビネット外に導出される第2の部分を有する支持手段とを備え、前記スピーカユニットを前記支持手段に配したことを特徴とするスピーカ装置。」


2.特許異議申立ての理由の概要
申立人村戸良至は、証拠として甲第1号証(実願昭61-37735号(実開昭62-151292号)のマイクロフィルム)、甲第2号証(実願昭58-79449号(実開昭59-187280号)のマイクロフィルム)、甲第3号証(実願昭61-114448号(実開昭63-20696号)のマイクロフィルム)、甲第4号証(実願昭61-202329号(実開昭63-106292号)のマイクロフィルム)を提出し、本件発明に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、特許を取り消すべき旨主張をしている。


3.申立人が提出した甲各号証記載の発明
(ア)甲第1号証(実願昭61-37735号(実開昭62-151292号)のマイクロフィルム)には、「スピーカ装置」(考案の名称)に関し、次に掲げる事項が図面とともに記載されている。
(ア-1)「音響振動的にスピーカユニット(3)および支柱(5)とキャビネット(1)とが絶縁されているのでスピーカユニットに発生した駆動力の反作用は遮断されてキャビネット(1)に伝達されず、従って、反作用によるキャビネット壁材の板振動は発生しない。」(4頁14行ないし19行)
(ア-2)「スピーカユニット(3)は、フレームの前面外周縁で、機械的内部損失の大きいブチルゴムからなる振動吸収用弾性材A(2)を介在させて前記バッフル板(1a)に取付けられ、また後端部において合計で約10Kgの重量を有するステンレスL型材2本からなる支柱(5)の一端に固定されているキャビネット(1)内に保持される。支柱(5)の他端部は本実施例においては前記したキャビネット(1)の底板(1b)に穿設された挿通孔(7)を貫通して、キャビネット(1)外部にあって、ブチルゴムからなる振動吸収用弾性材B(4)を介して底板(1b)の外側に取付られている基板(8)に結合され、キャビネット(1)に対しては振動絶縁状態で取付けられている。」(5頁20行ないし6頁13行)

(イ)甲第2号証(実願昭58-79449号(実開昭59-187280号)のマイクロフィルム)には、「スピーカシステム」(考案の名称)に関し、次に掲げる事項が図面とともに記載されている。
(イ-1)「この第2図に示すように、バッフル板1にウーファー2がパッキン9を介して取り付けられている。パッキン9はゴムなどのコンプライアンスを持ったものが使用されている。ウーフアー2の磁気回路2aは置台兼固定台10の固定台部10aに固定されている。この置台兼固定台10は図からも明らかなように、断面形状が逆「T」字形に形成され、固定台部10aがキャビネット4の地板8を貫通して、このキャビネット4内に挿入されている。置台兼固定台10の置台部10bはパッキン11を介して地板8に固定されている。」(3頁15行ないし4頁6行)
(イ-2)「バッフル板1をはじめ、キャビネット4がウーファー2およびウーファー2が固定されている置台兼固定台10と振動遮断されるため、バッフル板1の振動が減り」(4頁19行ないし5頁2行)

(ウ)甲第3号証(実願昭61-114448号(実開昭63-20696号)のマイクロフィルム)には、「スピーカ装置」(考案の名称)に関し、次に掲げる事項が図面とともに記載されている。
(ウ-1)「第3図において、スピーカユニット1は、そのフレームにより弾性パッキン5を介してキャビネットのバッフル板2に取付けられている。また、スピーカユニット1の磁気回路は取付台4を介してネジ3によりキャビネットの底板に取付けられている。
このように構成されたスピーカ装置は、キャビネットの底板に固定された取付台に固定されていて、キャビネットのバッフル板にスピーカユニットの全重量がかからない構成になっているので、スピーカユニットの振動がバッフル板に伝わることがなく、バッフル板の振動を低減することができる。」(2頁4行ないし16行)

(エ)甲第4号証(実願昭61-202329号(実開昭63-106292号)のマイクロフィルム)には、「スピーカ装置」(考案の名称)に関し、次に掲げる事項が図面とともに記載されている。
(エ-1)「この第1図において、1はキャビネットであり、このキャビネット1の前面板(以下、バッフル板という)1aの所定位置にスピーカ2が弾性体3を介して取り付けられている。また、キャビネットの内側の底面1bの所定位置には、スピーカ取付支持板4が固定されており、このスピーカ取付支持板4の前面側、すなわち、バッフル板1a側にはスピーカ2の磁気回路部2aが弾性体7aを介して当接されている。」(4頁8行ないし16行)


4.本件発明と甲各号証記載の発明との対比・検討
本件発明と甲第1号証及び甲第2号証に記載されたものとを対比すると、上記(ア-2)及び(イ-1)の記載から明らかなように、甲第1号証及び甲第2号証に記載されたものは、本件発明における「スピーカユニット」「キャビネット」に相当する構成を有する。
そして、本件発明の「支持手段」に対応する構成、すなわち、甲第1号証に記載されたものにおける「支柱」及び甲第2号証に記載されたものにおける「置台兼固定台」が、本件発明における「キャビネット内から前記キャビネット外に導出される第2の部分」に相当する構成は有しているが、「キャビネット内に配され、前記キャビネットに固定される第1の部分」に相当する構成を有していない点でのみ本件発明と相違している。

一方、甲第3号証及び甲第4号証には、上記(ウ-1)及び(エ-1)の記載から明らかなように、本件発明における「キャビネット内に配され、前記キャビネットに固定される第1の部分」を有する「支持手段」に相当する構成、すなわち、甲第3号証に記載されたものにおける「取付台」、甲第4号証に記載されたものにおける「スピーカ取付支持板4」を設けることについて記載されている。

そこで、甲第1号証及び甲第2号証に記載されたものに、甲第3号証及び甲第4号証に記載された事項を適用することにより、本件発明を想到し得ないか検討する。
甲第1号証及び甲第2号証に記載されたものは、上記(ア-1)(ア-2)(イ-1)(イ-2)の記載から明らかなように、「支柱」もしくは「置台兼固定台」を設けることにより、スピーカユニットを固定する際に、キャビネットとスピーカユニット及び支持する手段とを振動遮断することを目的としている。
これに対して甲第3号証及び甲第4号証に記載された「取付台」もしくは「スピーカ取付支持板4」は、スピーカユニットをキャビネット内でキャビネットに固定するものである。この構成は、甲第1号証及び甲第2号証において振動遮断しようとしているキャビネット、スピーカユニット、及び支持する手段を接続するものであり、振動遮断する上で望ましくないことは当業者にとって明らかである。
してみると、キャビネットとスピーカユニット及び支持する手段間の振動遮断を目的とした甲第1号証及び甲第2号証に記載されたものに、振動遮断する上で望ましくない甲第3号証及び甲第4号証に記載された事項を適用することは、全く予測外のことで、容易に想到されることとはいえない。
したがって、本件発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載されたものに、甲第3号証及び甲第4号証に記載された事項を適用し、当業者が容易に発明をすることができたということはできない。

なお、申立人村戸良至は申立理由の中で、甲第3号証及び甲第4号証に記載されたものは周知の技術的手段であり、甲第1号証及び甲第2号証に記載されたものに、このような手段を加えることは単なる周知手段の付加にすぎない旨主張している。しかしながら、先に検討したように、甲第1号証及び甲第2号証に記載されたものに、甲第3号証及び甲第4号証に記載された事項を容易に適用することはできないから、申立人の上記主張は採用できない。


5.むすび
以上、本件特許異議申立ての理由及び証拠によっては本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-11-08 
出願番号 特願平3-336187
審決分類 P 1 652・ 121- Y (H04R)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大野 弘  
特許庁審判長 藤内 光武
特許庁審判官 山本 章裕
小松 正
登録日 2000-12-01 
登録番号 特許第3134955号(P3134955)
権利者 ソニー株式会社
発明の名称 スピーカ装置  
代理人 稲本 義雄  

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