• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16K
管理番号 1049433
審判番号 不服2000-13938  
総通号数 25 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-07-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-09-01 
確定日 2001-11-12 
事件の表示 平成 2年特許願第340852号「電磁弁」拒絶査定に対する審判事件[平成 4年 7月31日出願公開、特開平 4-210173]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成2年11月30日の出願であり、前置審査において、平成12年11月30日付けで拒絶の理由を通知し、引用例を示して意見を述べる機会を与えたところ、それに対して何らの応答もなされなかったものであって、本願の請求項1,2に係る発明は、平成10年11月30日、平成12年5月25日と平成12年9月20日によって補正された明細書、及び願書に添付した図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1,2に記載された次のとおりのものと認める(以下、請求項1の発明を「本願発明」という。)。
「【請求項1】電磁弁の流体通路として働く部分を、コイルを巻設したボビンの外部に設け、コイルを巻設したボビンの内部に位置する固定部材と可動部材との隙間及び空間にオイルを満たし、更に、前記オイルを温度による粘度変化が比較的小さく、化学的に安定でかつガソリンとなじみにくいオイルとしたことを特徴とする電磁弁。
【請求項2】オイルがシリコンオイルであることを特徴とする請求項1記載の電磁弁。」

2.引用刊行物とその記載事項
これに対して、前置審査の拒絶の理由に引用された、特開平2-173486号公報(以下、「引用例」という。)には、排水電磁弁装置に関して以下のような記載がある。
a)「・・・第3図に示すように、プランジャー2全体をオイルケース3の中に収納して、プランジャー2をオイルの中で動作させる・・・」(第1頁左下欄20行〜右下欄2行)
b)「5はヨーク1を電磁石として動作させるコイルで、主コイルと補助コイルから構成されており、プランジャー2がヨーク1に近接することを検知する接点4により主コイル、補助コイルへの通電切換えを行う。動作を簡単に説明すると、初期状態においてはプランジャー2とヨーク1の近接状態を検知する接点4は、第5図に示すように、閉の状態であり、端子6より直流100Vが印加されることにより吸引を開始する。吸引電流は主コイル5-1に通電され、第4図Aの主コイル吸引特性Aの曲線に従ってプランジャー2は動作する。この時点よりシリコンオイルを用いたオイルケース3のシリコンオイルは、3a側より、隙間3bを通過し、3c側に移動しつつ吸引速度の低減と雑音防止効果を発生してプランジャー2とヨーク1は近接する。」(第1頁右下欄5行〜第2頁左上欄1行)
c)第3図には、コイル5が、該コイル5とヨーク1、及びプランジャー2との間に形成された断面コ字状の部材内に配置され、該断面コ字状の部材の内部にヨーク1とプランジャー2が位置し、ヨーク1とプランジャー2の位置する空間3a〜3cはオイルケースとされていることが記載されている。

上記各記載から、上記引用例の電磁弁は、コイル5を配置した断面コ字状の部材の内部に位置するヨーク1とプランジャー2との隙間及び空間にシリコンオイルを満たしているものと認める。そして、シリコンオイルが、温度による粘度変化が比較的小さく、化学的に安定でかつガソリンとなじみにくいオイルであって、ガソリン雰囲気中でも使用できることは自明である。
したがって、上記引用例には、
「コイル5を配置した断面コ字状の部材の内部に位置するヨーク1とプランジャー2との隙間及び空間にオイルを満たし、更に、前記オイルを温度による粘度変化が比較的小さく、化学的に安定でかつガソリンとなじみにくいオイルとした電磁弁。」
の発明と、
「コイル5を配置した断面コ字状の部材の内部に位置するヨーク1とプランジャー2との隙間及び空間にオイルを満たし、更に、前記オイルを温度による粘度変化が比較的小さく、化学的に安定でかつガソリンとなじみにくいオイルとした電磁弁において、オイルがシリコンオイルである電磁弁。」の発明が記載されているものと認める。

3.本願発明と引用例に記載された発明との対比
本願発明と引用例に記載された発明とを対比すれば、上記引用例に記載された発明の「ヨーク1」、「プランジャー2」は、それぞれ本願発明の「固定部材」、「可動部材」に相当している。そして、本願発明の「固定部材」、「可動部材」はコイルを巻設したボビンの内部に位置し、上記引用例に記載された発明の「ヨーク1」、「プランジャー2」はコイル5を配置した断面コ字状の部材の内部に位置するから、両者は、コイルを配置した部材の内部に位置している点で共通している。したがって、本願発明は引用例に記載された発明と、
「コイルを配置した部材の内部に位置する固定部材と可動部材との隙間及び空間にオイルを満たし、更に、前記オイルを温度による粘度変化が比較的小さく、化学的に安定でかつガソリンとなじみにくいオイルとした電磁弁。」
である点で一致し、以下の<相違点>で相違している。
<相違点>
本願発明の電磁弁は、コイルがボビンに巻設され、流体通路として働く部分を、コイルを巻設したボビンの外部に設けているのに対し、引用例の電磁弁は、コイル5が断面コ字状の部材内に配置されているものの、それがボビンであって、コイルが巻設されているものかどうかが明かでなく、流体通路として働く部分を、コイルを巻設したボビンの外部に設けているかどうかも明かでない点。。

4.相違点の検討
電磁弁において、コイルをボビンに巻設すること、及び流体通路として働く部分を、コイルを巻設したボビンの外部に設けることは、それぞれ慣用技術(例えば、特開昭57-110299号公報参照)である。そして、これらの技術を本願発明の電磁弁に適用することには何の困難性もない。してみれば、本願発明に上記引用例に上記慣用技術を適用して、断面コ字状の部材をボビンとしてコイルを巻設するとともに、流体通路として働く部分をコイルを巻設したボビンの外部に設けることは、当業者が容易に行うことができたものである。
したがって、本願発明は、上記引用例に記載された発明に上記慣用技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.請求項2の発明に関して
請求項2の発明は、請求項1の発明において、オイルをシリコンオイルとしたものであるが、電磁弁の流体通路として働く部分を、コイルを巻設したボビンの外部に設け、コイルを巻設したボビンの内部に位置する固定部材と可動部材との隙間及び空間にオイルを満たし、更に、前記オイルを温度による粘度変化が比較的小さく、化学的に安定でかつガソリンとなじみにくいオイルとすることは、[4.相違点の検討]で説示したとおり、当業者が容易に発明をすることができたものであり、しかも、オイルをシリコンオイルとすることは引用例に記載されて発明でも行われていることであるから、結局、請求項2の発明は、上記引用例に記載された発明に上記慣用技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。

そして、本願の請求項1,2に記載された発明による作用効果は、上記引用例に記載された発明に上記慣用技術を適用することにより得られる作用効果を越えるものでもない。
したがって、本願の請求項1,2に記載された発明は、上記引用例に記載された発明に上記慣用技術を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上詳述したとおり、本願の請求項1,2に記載された発明は、上記引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-08-23 
結審通知日 2001-08-28 
審決日 2001-09-17 
出願番号 特願平2-340852
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 渡邉 洋  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 ぬで島 慎二
藤井 昇
発明の名称 電磁弁  
代理人 長谷川 好道  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ