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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04B
管理番号 1049602
審判番号 不服2001-8604  
総通号数 25 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-12-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-05-23 
確定日 2001-11-22 
事件の表示 平成6年特許願第111202号「箱型取付金具を用いた緊結構造」拒絶査定に対する審判事件[平成7年12月5日出願公開、特開平7-317150]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年5月25日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成13年6月22日付けの手続補正書により補正された明細書、及び平成13年2月26日付けの手続補正書により補正された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。(以下、「本願発明」という。)

「【請求項1】 木質天端材付き鉄骨梁と、柱および筋違とからなる木質部との、木質天端材上面部での緊結に際し、箱型取付金具を用いた緊結構造であって、
箱型取付金具は、木質天端材付き鉄骨梁と柱とを緊結する直交面の各々に釘穴とともに一つのボルト穴が設けられ、また、この直交面の直交端に配置されている筋違緊結面には釘穴とともに二つのボルト穴が設けられており、直交面のボルト穴のいずれか一方が木質天端材付き鉄骨梁との緊結に供せられ、筋違緊結面のボルト穴のいずれか一つが筋違の左右配置に応じて筋違との緊結に供せられるようになっており、
この箱型取付金具の直交面のボルト穴のいずれか一方と木質天端材および鉄骨梁とを貫通させたボルトと、筋違緊結面の柱側のボルト穴と筋違とを貫通させたボルト、並びに釘穴からの木質部への釘打ちとによって、木質天端材付き鉄骨梁と柱と筋違とが三方面で緊結されることを特徴とする緊結構造。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、実願平3-6140号(実開平4-107303号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、
(ア)「横材と柱に取り付ける筋かいの、端部一側に当接できる筋かい固定板の下端縁に、横材固定板を所定角度に連設し、前記筋かい固定板の縦端縁に柱固定板を所定角度に連設して形成した金具において、前記横材固定板と、柱固定板の接合部分に、前記二つの固定板の何れか一方の延長片を屈曲して他方に重ねると共に、前記筋かい固定板にボルト取付孔を穿設し、前記延長片及び各固定板の所定位置に釘孔を穿設したことを特徴とする筋かい固定金具」(請求項1)、
(イ)「この考案は、土台、梁等の横材及び柱に筋かいを固定する為に使用する筋かい固定金具に関する。」(明細書段落番号【0001】)、
(ウ)「図5及び図6に基づいてこの考案の他の実施例を説明する。……筋かい固定板4の下端縁5に横材固定板7を直角に連設し、前記筋かい固定板4の縦端縁6に柱固定板8を直角に連設する。前記柱固定板8に欠き部8a(当審注、「8b」の誤りと認める。)を設け、前記横材固定板7の柱固定板8側の一側7aに延長片9を連設すると共に前記延長片9を前記柱固定板8の内側壁に沿って屈曲して重ねる。また、前記筋かい固定板4に筋かい固定用のボルト取付孔10、10aを穿設する。前記ボルト取付孔10は筋かい3の材芯の通る位置に合わせて穿設することが望ましい。……各固定板4、7、8の所定位置にも釘孔13、13を穿設し、筋かい固定金具26を形成する(図5)。……土台1と柱2との接合隅部一側21aに実施例1と同様に筋かい固定金具26と土台1、柱2及び筋かい3とを固定する。……また、接合隅部他側21に、柱固定板7が土台1に当接し、横材固定板8が柱2に当接するように、筋かい固定金具25(当審注、「26」の誤りと認める。)を配置し、釘孔11、12、13に釘15、15を打ち込み、筋かい固定金具25(当審注、「26」の誤りと認める。)を土台1及び柱2と固定する。……次に、ボルト取付孔10aに対応した位置に透孔を穿設した筋かい3aを所定位置に配置し、筋かい固定金具26の筋かい固定板4と当接させる。同様に角座金17、ボルト18、ばね座金19、ナット20を用いて筋かい3aと筋かい固定板4を固定する(図6、図7)。……前記のように、筋かい固定板4にボルト取付孔10、10aを2ヶ所に設ければ、図1(a) 、(b) のように、面対称な筋かい固定金具14、22を用いることなく、柱2の左右どちら側にも筋かい3を固定することができる。」(明細書段落番号【0018】ないし【0024】)
と記載されており、これらの記載及び図5ないし7の記載からみて、引用例には、「梁と、柱および筋かいとの、梁上面部での固定に際し、固定金具を用いた固定構造であって、固定金具は、梁と柱とを固定する横材固定板および柱固定板の各々に釘孔が設けられ、また、横材固定板および柱固定板の直交端に配置されている筋かい固定板には釘孔とともに二つのボルト取付孔が設けられており、筋かい固定板のボルト取付孔のいずれか一つが筋かいの左右配置に応じて筋かいとの固定に供せられるようになっており、この固定金具の筋かい固定板の柱側のボルト取付孔と筋かいとを貫通させたボルト、並びに釘孔からの釘打ちとによって、梁と柱と筋かいとが三方面で固定される固定構造。」の発明が記載されているものと認められる。

3.対比・判断
本願発明と引用例に記載の発明とを比較すると、引用例に記載の発明の「筋かい」、「固定」、「固定金具」、「横材固定板および柱固定板」、「釘孔」、「筋かい固定板」、「ボルト取付孔」が、それぞれ本願発明の「筋違」、「緊結」、「箱型取付金具」、「直交面」、「釘穴」、「筋違緊結面」、「ボルト穴」に相当し、また、引用例に記載の発明の固定金具は釘打ちにより梁、柱及び筋かいに固定されること、及び図3、図9に記載された柱、土台の断面からみて、引用例に記載の発明の梁、柱及び筋かいは木質材であると認められるから、両者は、「梁と、柱および筋違とからなる木質部との、梁上面部での緊結に際し、箱型取付金具を用いた緊結構造であって、箱型取付金具は、梁と柱とを緊結する直交面の各々に釘穴が設けられ、また、この直交面の直交端に配置されている筋違緊結面には釘穴とともに二つのボルト穴が設けられており、筋違緊結面のボルト穴のいずれか一つが筋違の左右配置に応じて筋違との緊結に供せられるようになっており、この箱型取付金具の筋違緊結面の柱側のボルト穴と筋違とを貫通させたボルト、並びに釘穴からの木質部への釘打ちとによって、梁と柱と筋違とが三方面で緊結される緊結構造。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点1
本願発明では、梁が木質天端材付き鉄骨梁であるのに対し、引用例に記載の発明では、梁が木質材である点

相違点2
本願発明では、箱型取付金具の直交面の各々に釘穴とともに一つのボルト穴が設けられるのに対し、引用例に記載の発明では、箱型取付金具の直交面の各々にボルト穴が設けられていない点

相違点3
本願発明では、箱型取付金具の直交面のボルト穴のいずれか一方と木質天端材および鉄骨梁とにボルトを貫通させるのに対し、引用例に記載の発明では、そのような構成を有しない点

そこで、相違点1について検討すると、木質天端材付き鉄骨梁は、例えば、実願昭47-78277号(実開昭49-38016号)のマイクロフィルム、実願昭50-130233号(実開昭52-44613号)のマイクロフィルム、及び実公昭37-31859号公報に記載のように周知技術にすぎず、引用例に記載の発明に当該周知技術を適用して相違点1に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得ることである。
次に、相違点2について検討すると、例えば、実願昭52-74761号(実開昭54-1904号)のマイクロフィルム、及び引用例に筋かい固定板と筋かいの固定構造として記載のように、取付金具の一面に釘穴とボルト穴を設けることは周知技術にすぎず、引用例に記載の発明に当該周知技術を適用して相違点2に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得ることである。
次に、相違点3について検討すると、木質天端材付き鉄骨梁は上記したように周知技術であり、また、例えば、実願昭52-74761号(実開昭54-1904号)のマイクロフィルム、及び引用例に記載のように、取付金具の一面に設けたボルト穴と建築部材とにボルトを貫通させることは周知技術にすぎない。そして、引用例に記載の発明にこれら周知技術を適用するにあたり、木質天端材の強度、木質天端材付き鉄骨梁と箱型取付金具との間の必要な取付強度、木質天端材の鉄骨梁への取付強度などを考慮して、木質天端材および鉄骨梁にボルトを貫通させることは当業者が適宜なし得る設計事項にすぎないから、引用例に記載の発明に周知技術を適用して相違点3に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得ることである。
そして、全体として本願発明によってもたらされる効果も、引用例に記載の発明及び周知技術から、当業者であれば当然に予測できる程度のものであって顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明は、引用例に記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-09-18 
結審通知日 2001-09-25 
審決日 2001-10-09 
出願番号 特願平6-111202
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 南澤 弘明  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 中田 誠
鈴木 公子
発明の名称 箱型取付金具を用いた緊結構造  
代理人 西澤 利夫  

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