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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B41M 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 B41M |
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管理番号 | 1049637 |
審判番号 | 不服2000-19182 |
総通号数 | 25 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-12-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-12-04 |
確定日 | 2001-12-13 |
事件の表示 | 平成 4年特許願第141485号「光情報記録媒体及びその製造方法」拒絶査定に対する審判事件〔平成 5年12月27日出願公開、特開平 5-345478、請求項の数(21)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続きの経緯・本願発明 本願は、平成4年6月2日の出願(優先権主張、平成3年6月4日、平成3年10月3日、平成4年4月17日、日本国)であって、平成12年8月7日付けで拒絶の理由が通知され、平成12年9月26日付けで手続きの補正がなされ、平成12年10月27日付けで拒絶の査定がなされたものであり、その請求項1ないし21に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1ないし21に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 レーザー光の照射により情報の記録、消去、再生を行う書き換え可能な光情報記録媒体において、記録層がAg,In,Sb,Teを含む4元系の相変化型記録材料を主成分として含有し、未記録および消去時に化学量論組成あるいはそれに近いAgSbTe2微結晶相が存在することを特徴とする光情報記録媒体。 【請求項2】 記録層の安定状態と準安定状態との間の転移を利用して記録消去を行う情報記録媒体において、基板上に設けられた記録層の安定状態における組成および化学構造が主として、化学量論組成あるいはそれに近いAgSbTe2相とInとSbからなる相との混相状態をとることを特徴とする光情報記録媒体。 【請求項3】 情報未記録時には記録層の安定状態が、情報記録時には記録層の安定状態と準安定状態が存在することを特徴とする請求項2記載の光記録媒体。 【請求項4】 記録層の安定状態において、化学量論組成あるいはそれに近いAgSbTe2が結晶状態であることを特徴とする請求項2記載の光記録媒体。 【請求項5】 記録層の安定状態において、結晶状態のInSbZ(0.5≦Z≦2.5)が観測されないことを特徴とする請求項2記載の光記録媒体。 【請求項6】 請求項4に記載の化学量論組成あるいはそれに近いAgSbTe2の結晶子径が1000Å以下であることを特徴とする請求項4記載の光記録媒体。 【請求項7】 記録層の安定状態と準安定状態との間の転移を利用して記録消去を行う情報記録媒体において、基板上に設けられた記録層の安定状態における組成および化学構造が主として (AgSbTe2+δ/△)X(InSbZ)1-X ただし、 Δ={(1-δ)X}/{1+3X+Z(1-Z)} 0.4≦x≦0.55 0.5≦Z≦2.5 -0.15<δ<0.1 で表わされることを特徴とする光記録媒体。 【請求項8】 情報未記録時には記録層の安定状態が、情報記録時には記録層の安定状態と準安定状態が存在することを特徴とする請求項7記載の光記録媒体。 【請求項9】 記録層の安定状態において、化学量論組成あるいはそれに近いAgSbTe2が結晶状態であることを特徴とする請求項7記載の光記録媒体。 【請求項10】 記録層の安定状態において、結晶状態のInSbZ(0.5≦Z≦2.5)が観測されないことを特徴とする請求項7記載の光記録媒体。 【請求項11】 化学量論組成あるいはそれに近いAgSbTe2の結晶子径が1000Å以下であることを特徴とする請求項9記載の光記録媒体。 【請求項12】 基板上に記録層と保護層と反射放熱層を有する光情報記録媒体において、記録層がAg,In,Sb,Teからなり、溶融後急冷することにより均一なアモルファス相となり、そのアモルファス相を融点以下に加熱徐冷することにより、少なくともIn,Sbからなるアモルファス母相中に化学量論組成あるいはそれに近いAgSbTe2結晶が50Åから500Åの結晶子径で分散した組織となっていることを特徴とする光情報記録媒体。 【請求項13】 基板上に記録層と保護層と反射放熱層を有する光情報記録媒体において、記録層がAg,In,Sb,Teからなり、溶融後急冷することにより均一なアモルファス相となり、そのアモルファス相を融点以下に加熱徐冷することにより、少なくともIn,Sbからなるアモルファス母相中に化学量論組成あるいはそれに近いAgSbTe2結晶が50Åから500Åの結晶子径で分散し、各結晶粒の結晶方位が2000Åから10000Åの領域で等しくなっを特徴とする光情報記録媒体。 【請求項14】 基板上に記録層と保護層と反射放熱層を有する光情報記録媒体において、記録層がAg,In,Sb,Teからなり、溶融後急冷することにより均一なアモルファス相となり、そのアモルファス相を融点以下に加熱徐冷することにより、少なくともIn,Sbからなるアモルファス母相中に化学量論組成あるいはそれに近いAgSbTe2結晶が50Åから500Åの結晶子径で分散した組織となっており、前記保護層がAlNであることを特徴とする光情報記録媒体。 【請求項15】 基板上に記録層と保護層と反射放熱層を有する光情報記録媒体において、記録層がAg,In,Sb,Teからなり、溶融後急冷することにより均一なアモルファス相となり、そのアモルファス相を融点以下に加熱徐冷することにより、少なくともIn,Sbからなるアモルファス母相中に化学量論組成あるいはそれに近いAgSbTe2結晶が50Åから500Åの結晶子径で分散し、各結晶粒の結晶方位が2000Åから10000Åの領域で等しくなっており、前記保護層がAlNであることを特徴とする光情報記録媒体。 【請求項16】 記録層の準安定状態において、結晶状態の化学量論組成あるいはそれに近いAgSbTe2が観測されないことを特徴とする請求項7記載の光記録媒体。 【請求項17】 記録層の準安定状態において、結晶状態のInSbZが観測されないことを特徴とする請求項7記載の光記録媒体。 【請求項18】 記録層の安定状態及び準安定状態において、Ag,Sb,Te,Inの各元素の単体からなる結晶が観測されないことを特徴とする請求項7記載の光記録媒体。 【請求項19】 記録層の安定状態及び準安定状態において、結晶状態のAgInTe2が観測されないことを特徴とする請求項7記載の光記録媒体。 【請求項20】 AgInTe2とSbを原材料として用いて記録層を製膜し、レーザー光、熱等により初期化を施すことにより化学量論組成あるいはそれに近いAgSbTe2が結晶状態である安定状態の記録層を得ることを特徴とする請求項2記載の光記録媒体の製造方法。 【請求項21】 記録層を、主にAgInTe2とSbとからなるターゲットを用い、スパッタ法により製膜することを特徴とする請求項20記載の光記録媒体の製造方法。 2.原査定の理由 原査定の拒絶の理由は、本願請求項1ないし21に係る発明は、その出願前日本国内で頒布された、 特開平3-9880号公報(以下、「引用文献」という。) に記載された発明であるか、又は、同引用文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 3.当審の判断 3.1 引用文献の記載 引用文献には、 (a)「【請求項1】電磁波によって、結晶状態とアモルファス状態との間を可逆的に相変化する記録層を基板上に有する相変化型情報記録媒体において、該記録層が下記一般式で示される四元化合物を含有する記録層を設けたことを特徴とする相変化型情報記録媒体。 一般式 X・(YI,YII)Z2 (但しXは、周期律表第Ib族元素から選ばれた元素、 YIは周期律表第IIIb族元素から選ばれた元素、 YIIは周期律表第Vb族元素から選ばれた元素、 Zは周期律表第VIb族元素から選ばれた元素を表わす。) (特許請求の範囲) (b)「〔発明が解決しようとする課題〕 本発明の目的は、・・・・・・高速消去、記録感度、消去感度の向上、記録部の安定性等の特性を全て満足する新規な相転移性四元化合物を用いたオーバーライト可能な相変化型情報記録媒体を提供しようとするものである。」(第2頁左上欄第8〜14行) (c)「具体的には、XとしてはCu、Ag、Au、Cuが、YIとしてはAl、Ga、Inが、YIIとしてはSb、Biが、ZとしてはSe、Teなどを挙げることができる。」(第2頁右上欄第7〜9行) (d)「以上のような本発明の新規な相転移性四元化合物の具体的な例としては、 Ag(Inx・Sb1-x)Te2、 Ag(Inx・Sb1-x)Se2、 Ag(Gax・Sb1-x)Te2、、・・・・・・・・・等が挙げられる。」(第2頁左下欄第9〜右下欄第5行) (e)「実施例1 Ag25(In12.5Sb12.5)Te50の組成を有するスパッタ用ターゲットを作製し、直径130mm、厚み1.2mmのガラス基板上にスパッタ法により1000Å厚の記録層を形成した後、保護膜として窒化ケイ素を1000Å厚同じくスパッタ法で形成した。 得られた記録層は非晶質であるため記録層の初期化(結晶化)をほどこした。記録層を形成する際、テストピースとしてスライドガラス上に同じ膜を形成しておき、この膜から本記録層の光学特性、熱的特性をそれぞれ分光光度計及びDSCにより測定した。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・以下、本発明の記録層を用いることにより記録感度及び消去感度はGeTe,Sb2Te3系記録層に比較し大きく向上し、消去率、くり返し特性も改良されていることが確認された。」(第3頁右上欄第19行〜第4頁左上欄第1行)と記載され、 (f)実施例2及び3には、Ag25(In15Sb10)Te50 又はAg25(In10Sb15)Te50 の組成を有するスパッタ用ターゲットを作製しガラス基板上にスパッタ法により記録層を設けた旨記載されている。 3.2 対比判断 (請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)について) 本願発明1は、「記録層がAg,In,Sb,Teを含む4元系の相変化型記録材料を主成分として含有し、未記録および消去時に化学量論組成あるいはそれに近いAgSbTe2微結晶相が存在する」との構成要件を採用することにより、「消去比が高く、低パワーで記録-消去の繰り返しが可能な情報記録媒体を提供する」目的を達成することができるものである。 一方、引用文献には、四元化合物よりなる記録層を設けた高速消去、記録感度、消去感度の向上、記録部の安定性を満足する相変化型情報気録媒体が記載され、該四元化合物を構成する元素として、Ag、In、Sb、Teを採用することができ、その具体的な化合物の例として、「Ag(Inx・Sb1-x)Te2が挙げられ、実施例には、Ag25(In12.5Sb12.5)Te50 、Ag25(In15Sb10)Te50 又はAg25(In10Sb15)Te50の組成が具体的に示されている。 そこで、本願発明1と引用文献に記載の記録媒体とを対比すると、両者の目的とするところは一致するが、本願発明1が、「未記録および消去時に化学量論組成あるいはそれに近いAgSbTe2微結晶相が存在する記録層を設けた記録媒体」であるのに対し、引用文献には、「Ag(Inx・Sb1-x)Te2からなる四元化合物よりなる記録層を設けた記録媒体」である点で両者は相違する。 引用文献には、本願発明1の構成要件である「未記録および消去時に化学量論組成あるいはそれに近いAgSbTe2微結晶相が存在する記録層」についてはどこにも記載されてはいないし、それを示唆する記載も見あたらない。 そして、本願発明1は、「未記録および消去時に化学量論組成あるいはそれに近いAgSbTe2微結晶相が存在する記録層」を採用することによって、上記目的を達成することができるものであるから、本願発明1が、引用文献に記載された発明であるとも、引用文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともすることはできない。 (請求項2ないし21に係る発明について) 請求項2ないし21に係る発明は、「未記録および消去時に化学量論組成あるいはそれに近いAgSbTe2微結晶相が存在する記録層」を実質上その構成要件とするものであるから、本願発明1と同様の理由により、引用文献に記載された発明であるとも、引用文献に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともすることはできない。 4.まとめ 以上のとおりであるから、原査定の理由及び証拠によっては本願請求項1ないし21に係る発明を拒絶することはできない。 又、他に本願請求項1ないし21に係る発明を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2001-12-04 |
出願番号 | 特願平4-141485 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B41M)
P 1 8・ 113- WY (B41M) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 木村 史郎、野田 定文 |
特許庁審判長 |
城所 宏 |
特許庁審判官 |
植野 浩志 阿久津 弘 |
発明の名称 | 光情報記録媒体及びその製造方法 |
代理人 | 加々美 紀雄 |
代理人 | 旭 宏 |
代理人 | 小松 秀岳 |