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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C30B
審判 全部申し立て 産業上利用性  C30B
管理番号 1049936
異議申立番号 異議2000-71672  
総通号数 25 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-11-12 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-04-25 
確定日 2001-08-27 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2966322号「シリコン単結晶インゴット及びその製造方法」の請求項1〜7に係る発明の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2966322号の請求項1及び2に係る発明の特許を維持する。 
理由 1.本件の経緯
本件特許第2966322号は、平成7年2月27日に出願した特願平7-64699号に基づいて国内優先権を主張して、平成7年9月11日に出願し、平成11年8月13日に設定登録され、同年10月25日に特許公報に掲載されたところ、平成12年4月25日に渡部賢一から特許異議の申立を受けたものであって、その後、平成12年9月13日付で取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年11月24日に訂正請求がなされ、更にその後、平成13年5月16日付で、再度、取消理由通知がなされ、これに対して、平成13年5月24日に、再度、訂正請求がなされ、前回の訂正請求は取り下げられたものである。

2.設定登録時の本件発明
設定登録時の本件発明は、本件明細書の特許請求の範囲に記載された次のものである。
[請求項1]実質的に一定の直径(D1)を有する直胴部(1)と前記直胴部(1)の直径(D1)を減少させることにより前記直胴部(1)に連続して形成されたボトム部(2)とを備え、
前記直胴部(1)の外面に対するこの直胴部(1)に連続する直胴部側ボトム部(2a)の外面の傾斜角(θ)が10〜25度であり、
前記直胴部側ボトム部(2a)に連続する段差部(2c)の直径の減少率が前記直胴部側ボトム部(2a)の直径の減少率より高くなるように形成されたシリコン単結晶インゴット。
[請求項2]ボトム部(2)の長さ(L)が直胴部(1)の直径(D1)の少なくとも1.5倍である請求項1記載のシリコン単結晶インゴット。
[請求項3]チョクラルスキー法によるシリコン単結晶の製造方法において、
前記シリコン単結晶(22)のボトム部(2)の形成時に前記ボトム部(2)の直径(D2)の実測値に基づいて前記シリコン単結晶(22)の引上げ速度を制御することにより前記ボトム部(2)の直径(D2)が目標値となるように制御し、
前記ボトム部(2)の直径(D2)を制御する引上げ速度を、その実測値に基づいてシリコン融液の温度を制御することにより引上げ速度の目標値となるように制御することにより、
前記ボトム部(2)のうち直胴部(1)に連続する直胴部側ボトム部(2a)の直径の減少率より、前記直胴部側ボトム部(2a)に連続する段差部(2c)の直径の減少率を高くしたことを特徴とするシリコン単結晶の製造方法。
[請求項4]直胴部(1)の外面に対して直胴部側ボトム部(2a)の外面が10〜25度の傾斜角(θ)を有しかつ連続するようにボトム部(2)の直径(D2)を制御する請求項3記載のシリコン単結晶の製造方法。
[請求項5]ボトム部(2)の長さ(L)が直胴部(1)の直径(D1)の少なくとも1.5倍となるようにボトム部(2)の直径(D2)を制御する請求項3又は4記載のシリコン単結晶の製造方法。
[請求項6]直胴部側ボトム部(2a)の引上げ速度(V2)をボトム部側直胴部(1a)の指定長(y)における平均引上げ速度(V1)の95〜105%の範囲に制御する請求項3ないし5いずれか記載のシリコン単結晶の製造方法。
[請求項7]ボトム部側直胴部(1a)の指定長(y)が30〜100mmである請求項6記載のシリコン単結晶の製造方法。

3.訂正事項(第2回目の訂正請求)
特許第2966322号の明細書につき、平成13年5月24日付け訂正請求書に添付された訂正明細書に記載されるとおりの、下記(a)〜(k)の訂正を求めるものである。
(a)特許請求の範囲の減縮を目的として、本件明細書の特許請求の範囲の請求項1を以下のように訂正する。
[請求項1]実質的に一定の直径(D1)を有する直胴部(1)と前記直胴部(1)の直径(D1)を減少させることにより前記直胴部(1)に連続して形成されたボトム部(2)とを備えたシリコン単結晶インゴットにおいて、
前記シリコン単結晶(22)のボトム部(2)の形成時に前記ボトム部(2)の直径(D2)の実測値に基づいて前記シリコン単結晶(22)の引上げ速度をADC制御することにより前記ボトム部(2)の直径(D2)が目標値となるように制御し、
前記ボトム部(2)の直径(D2)を制御する引上げ速度を、その実測値に基づいてシリコン融液の温度をAGC制御することにより引上げ速度の目標値となるように制御し、
かつ前記シリコン単結晶(22)の直胴部(1)に連続する直胴部側ボトム部(2a)の引上げ速度をボトム部側直胴部(1a)の指定長30〜100mmの範囲における平均引上げ速度の95〜105%の範囲に制御することにより、
前記直胴部(1)の外面に対するこの直胴部(1)に連続する直胴部側ボトム部(2a)の外面の傾斜角(θ)が10〜25度であり、
前記直胴部側ボトム部(2a)に連続する段差部(2c)の直径の減少率が前記直胴部側ボトム部(2a)の直径の減少率より高くなるように形成され、
前記ボトム部(2)の長さ(L)を直胴部(1)の直径(D1)の少なくとも1.5倍になるようにボトム部(2)が形成されたことを特徴とするシリコン単結晶インゴット。
(b)特許請求の範囲の減縮を目的として、本件明細書の特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(c)特許請求の範囲の減縮を目的として、本件明細書の特許請求の範囲の請求項3を以下のように訂正し、かつ、項番号を請求項2に繰り上る。
[請求項2]チョクラルスキー法によるシリコン単結晶の製造方法において、
前記シリコン単結晶(22)のボトム部(2)の形成時に前記ボトム部(2)の直径(D2)の実測値に基づいて前記シリコン単結晶(22)の引上げ速度をADC制御することにより前記ボトム部(2)の直径(D2)が目標値となるように制御し、
前記ボトム部(2)の直径(D2)を制御する引上げ速度を、その実測値に基づいてシリコン融液の温度をAGC制御することにより引上げ速度の目標値となるように制御し、
かつ前記シリコン単結晶(22)の直胴部(1)に連続する直胴部側ボトム部(2a)の引上げ速度をボトム部側直胴部(1a)の指定長30〜100mmの範囲における平均引上げ速度の95〜105%の範囲に制御することにより、
前記直胴部(1)の外面に対する前記直胴部側ボトム部(2a)の外面の傾斜角(θ)が10〜25度の範囲にあり、
前記ボトム部(2)のうち直胴部(1)に連続する直胴部側ボトム部(2a)の直径の減少率より、前記直胴部側ボトム部(2a)に連続する段差部(2c)の直径の減少率を高くし、
前記ボトム部(2)の長さ(L)を直胴部(1)の直径(D1)の少なくとも1.5倍になるようにボトム部(2)を形成することを特徴とするシリコン単結晶インゴットの製造方法。
(d)特許請求の範囲の減縮を目的として、本件明細書の特許請求の範囲の請求項4〜7を削除する。
(e)明瞭でない記載の釈明を目的として、本件明細書の段落[0005]の「[課題を解決するための手段]・・・シリコン単結晶インゴットである。」を、
「[課題を解決するための手段]
請求項1に係る発明は、図1に示すように、実質的に一定の直径D1を有する直胴部1とこの直胴部1の直径D1を減少させることにより前記直胴部1に連続して形成されたボトム部2とを備えたシリコン単結晶インゴットにおいて、シリコン単結晶22のボトム部2の形成時にボトム部2の直径D2の実測値に基づいてシリコン単結晶22の引上げ速度をADC制御することによりボトム部2の直径D2が目標値となるように制御し、ボトム部2の直径D2を制御する引上げ速度を、その実測値に基づいてシリコン融液の温度をAGC制御することにより引上げ速度の目標値となるように制御し、かつシリコン単結晶22の直胴部1に連続する直胴部側ボトム部2aの引上げ速度をボトム部側直胴部1aの指定長30〜100mmの範囲における平均引上げ速度の95〜105%の範囲に制御することにより、直胴部1の外面に対するこの直胴部1に連続する直胴部側ボトム部2aの外面の傾斜角θが10〜25度であり、直胴部側ボトム部2aに連続する段差部2cの直径の減少率が直胴部側ボトム部2aの直径の減少率より高くなるように形成され、ボトム部2の長さLを直胴部1の直径D1の少なくとも1.5倍になるようにボトム部2が形成されたことを特徴とするシリコン単結晶インゴットである。」と訂正する。
(f)明瞭でない記載の釈明を目的として、本件明細書の段落[0006]の「請求項2に係る・・・大きく相違するようになる。」を、
「ボトム部2の長さLを直胴部1の直径D1の少なくとも1.5倍とし、ボトム部2の長さL≧1.5×D1とする。好ましくはL≧1.8×D1である。ボトム部2の長さLを1.5倍未満にすると直胴部側ボトム部の直径の減少率が高くなり、直胴部側ボトム部の熱履歴はボトム部側直胴部のそれと大きく相違するようになる。」と訂正する。
(g)明瞭でない記載の釈明を目的として、本件明細書の段落[0007]の「請求項3に係る・・・シリコン単結晶の製造方法である。」を、
「請求項2に係る発明は、チョクラルスキー法によるシリコン単結晶の製造方法において、シリコン単結晶22のボトム部2の形成時にボトム部2の直径D2の実測値に基づいてシリコン単結晶22の引上げ速度をADC制御することによりボトム部2の直径D2が目標値となるように制御し、ボトム部2の直径D2を制御する引上げ速度を、その実測値に基づいてシリコン融液の温度をAGC制御することにより引上げ速度の目標値となるように制御し、かつシリコン単結晶22の直胴部1に連続する直胴部側ボトム部2aの引上げ速度をボトム部側直胴部1aの指定長30〜100mmの範囲における平均引上げ速度の95〜105%の範囲に制御することにより、直胴部1の外面に対する直胴部側ボトム部2aの外面の傾斜角θが10〜25度の範囲にあり、ボトム部2のうち直胴部1に連続する直胴部側ボトム部2aの直径の減少率より、直胴部側ボトム部2aに連続する段差部2cの直径の減少率を高くし、ボトム部2の長さLを直胴部1の直径D1の少なくとも1.5倍になるようにボトム部2を形成することを特徴とするシリコン単結晶インゴットの製造方法である。」と訂正する。
(h)明瞭でない記載の釈明を目的として、本件明細書の段落[0008]の「請求項4に係る・・・特性に近似するようになる。」を、
「直胴部1の外面に対して直胴部側ボトム部2aの外面が10〜25度の傾斜角θを有しかつ連続するようにボトム部2の直径D2を制御する、即ちADCとAGCを用いて傾斜角θを10〜25度にすることにより、直胴部側ボトム部の直径の減少率は僅かとなり、直胴部側ボトム部の熱履歴はボトム部側直胴部のそれとほぼ同じになる。この結果、ボトム部側直胴部の特性は端部側ボトム部の影響を受けにくく、トップ部側直胴部及びミドル部側直胴部の特性に近似するようになる。」と訂正する。
(i)明瞭でない記載の釈明を目的として、本件明細書の段落[0009]の「請求項5に係る・・・大きく相違するようになる。」を、
「ボトム部2の長さLを1.5倍未満にすると直胴部側ボトム部の直径の減少率が高くなり、直胴部側ボトム部の熱履歴はボトム部側直胴部のそれと大きく相違するようになる。」と訂正する。
(j)明瞭でない記載の釈明を目的として、本件明細書の段落[0010]の「請求項6に係る・・・不具合を生じやすい。」を、
「ボトム部側直胴部1aの指定長yにおける引上げ速度の平均値V1を求め、この平均値V1の95〜105%の範囲の引上げ速度V2でシリコン単結晶を引上げ、シリコン融液の温度を徐々に上げて直径を減少させることにより、直胴部側ボトム部2aを形成する。上記範囲外の引上げ速度で引上げると、ボトム部側直胴部1a以外の部分とボトム部側直胴部1aの部分の熱履歴が大きく異なってしまう不具合を生じやすい。」と訂正する。
(k)明瞭でない記載の釈明を目的として、本件明細書の段落[0011]の「請求項7に係る・・・上昇することがある。」を、
「ボトム部側直胴部1aの指定長yが30mm未満では求めた引上げ速度の平均値V1の信頼性が低く、また100mmを越えるとトップ部近傍における比較的速い引上げ速度を含んで平均値V1を求めることになり、直胴部からボトム部に変わったときに引上げ速度が急激に上昇することがある。」と訂正する。

4.訂正の適否についての検討
4-1.訂正の目的
上記(a)の訂正は、請求項1に記載されたシリコン単結晶インゴットにつき、「シリコン単結晶(22)のボトム部(2)の形成時に前記ボトム部(2)の直径(D2)の実測値に基づいてシリコン単結晶(22)の引上げ速度をADC制御することによりボトム部(2)の直径(D2)が目標値となるように制御し、ボトム部(2)の直径(D2)を制御する引上げ速度を、その実測値に基づいてシリコン融液の温度をAGC制御することにより引上げ速度の目標値となるように制御し、かつシリコン単結晶(22)の直胴部(1)に連続する直胴部側ボトム部(2a)の引上げ速度をボトム部側直胴部(1a)の指定長30〜100mmの範囲における平均引上げ速度の95〜105%の範囲に制御する」と限定するものであり、また、同じく、「ボトム部(2)の長さ(L)を直胴部(1)の直径(D1)の少なくとも1.5倍になるようにボトム部(2)が形成された」と限定するものであって、いずれも、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに当たる。
上記(c)の訂正は、訂正前の請求項3を請求項2に繰り上げて、シリコン単結晶(22)の引上げ速度を制御するとき、「ADC制御」すると限定し、シリコン融液の温度を制御するとき、「AGC制御」すると限定し、また、シリコン単結晶の製造方法につき、「シリコン単結晶(22)の直胴部(1)に連続する直胴部側ボトム部(2a)の引上げ速度をボトム部側直胴部(1a)の指定長30〜100mmの範囲における平均引上げ速度の95〜105%の範囲に制御する」と限定し、同じく、「直胴部(1)の外面に対する直胴部側ボトム部(2a)の外面の傾斜角(θ)が10〜25度の範囲にあり、ボトム部(2)の長さ(L)を直胴部(1)の直径(D1)の少なくとも1.5倍になるようにボトム部(2)を形成する」と限定するものであり、更に、シリコン単結晶の製造方法におけるシリコン単結晶が、「インゴット」であると限定するものであって、これらの訂正は、いずれも、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに当たる。
次に、上記(b)および(d)の訂正は、訂正前の請求項2及び請求項4〜7を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに当たる。
ついで、上記(e)〜(k)の訂正は、上記(a)〜(d)の訂正に伴い、発明の詳細な説明の項の記載をこれに整合させるものであって、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに当たる。

4-2.新規事項、拡張及び変更
上記(a)、(c)および(e)〜(k)の訂正は、訂正前の本件明細書の特許請求の範囲の請求項1〜7、段落[0002]、同[0005]〜[0011]、同[0016]等の記載に基づくものであり、また、上記(b)および(d)の訂正は請求項を削除するだけのものであり、上記(a)〜(k)の訂正は、願書に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内のものである。
そして、上記(a)〜(k)の訂正は、その内容からみて特許請求の範囲を実質的に拡張したり、変更したりするものではないことは明らかである。

4-3.訂正の結論
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。

5.特許異議申立人の主張についての検討
5-1.本件発明
本件特許第2966322号の明細書については、平成13年5月24日付けで訂正請求がなされ、その請求どおり訂正されたもので、本件請求項1及び2に係る発明は、その明細書の特許請求の範囲に記載されるとおりのものである。
そして、訂正後の明細書の特許請求の範囲の記載は、前記3.で示される。

5-2.特許異議申立の概要
特許異議申立人渡部賢一は、甲第1〜4号証を提出して次のような主旨の主張をしている。
(1)本件請求項1及び2に係る発明は、本件明細書に比較例1として記載されたものと同一であり、その目的とする技術的効果を挙げることができないものであって、発明として未完成のものであり、特許法第29条第1項柱書にいう発明に当たらないものである。
(2)本件請求項1〜7に係る発明は、本件出願前に頒布された刊行物である甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

5-3.上記(1)の主張について
上記するとおり、本件明細書の特許請求の範囲の記載は訂正されたものであり、すなわち、設定登録時の請求項1については、「シリコン単結晶(22)の直胴部(1)に連続する直胴部側ボトム部(2a)の引上げ速度をボトム部側直胴部(1a)の指定長30〜100mmの範囲における平均引上げ速度の95〜105%の範囲に制御する」等の規定が付加され、また、登録時の請求項2は削除されたものである。
その結果、本件明細書の実施例1〜5は、訂正後の本件請求項1に係る発明の実施例に該当し、また、比較例1〜3は、訂正後の本件請求項1に係る発明の実施例に当たらないものとなったものであり、このように、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とが整合していないとはいえないものであって、発明が未完成のものであるとはいえない。
したがって、結果的には、上記(1)の主張は当たらない。

5-4.上記(2)の主張について
以下、訂正後の、本件請求項に係る1及び2に係る発明につき、その取消の有無を検討する。
《請求項1に係る発明について》
本件明細書の記載(特に、段落[0004]、同[0005]、及び、実施例と比較例のものを対比する表1の記載)によると、本件発明は、シリコン単結晶インゴットにおいて、
(A)「シリコン単結晶(22)の直胴部(1)に連続する直胴部側ボトム部(2a)の引上げ速度をボトム部側直胴部(1a)の指定長30〜100mmの範囲における平均引上げ速度の95〜105%の範囲に制御すること」、
(B)「直胴部(1)の外面に対するこの直胴部(1)に連続する直胴部側ボトム部(2a)の外面の傾斜角(θ)が10〜25度であり、
前記直胴部側ボトム部(2a)に連続する段差部(2c)の直径の減少率が前記直胴部側ボトム部(2a)の直径の減少率より高くなるように形成」すること、及び、
(C)「ボトム部(2)の長さ(L)を直胴部(1)の直径(D1)の少なくとも1.5倍になるようにボトム部(2)が形成された」ことという発明特定事項を、一体に、備えることにより、その余の発明特定事項と相俟って、ボトム部側直胴部のトップ部側直胴部及びミドル部側直胴部に対する特性の変化の程度が少なく、高品質単結晶シリコンの製品収率の高いシリコン単結晶インゴットを提供することができる等の顕著な効果を奏したものである。
これに対して、甲第1号証(特開昭63-21280号公報)には、「CZ法により円柱状に引上げる単結晶の成長部に生じるフュージョンリングを光学的手段にて斜め上方より測光し、その測光データに基づいて単結晶の直径を管理制御する方法において、・・・、テール部に対してもフュージョンリングの測光データに基づいて直径制御を行うことを特徴とする単結晶の直径制御方法。」(特許請求の範囲第1項)に関し、
「第7図は、前述の目視操作でテール部を直径制御したときのテール部形状を示したものである。結晶径を変えるには、融液温度か引上げ速度を変化させればよいが、・・・。したがって、更に結晶径を小さくしようとするなら、再度、融液温度を上昇させることが必要になる。このようなことから、テール部(19)は図示のように階段状に仕上がる。」(第2頁右上欄第10行〜左下欄第2行)、
「すなわち、詳しい理由は定かではないが、テール部(19)の長さが長いほど、製品部(18)に生じる品質欠陥がテール部(19)に吸収され、製品部(18)の品質が向上するのである。」(第2頁右下欄第4〜7行)ことが記載され、このように、テール部を階段状に仕上げること、及び、テール部の長さが長いほど製品部の品質が向上することが示され、また、そこでのテールの絞り時にカメラの位置を変える理由が図面で説明され、その第3図(イ)の(d)には、単結晶の直胴部に連続するボトム部側直胴部の外面の傾斜角が19〜26度となした例が、実質上、示されている。
しかし、甲第1号証に記載の単結晶では、ボトム部側直胴部の外面の傾斜角が19〜26度となしたものは、本件請求項1に係る発明のように、段差部を有するテール部につき、そのような角度を設定するものではなく、また、テール部の長さを長くするとしても、本件請求項1に係る発明のように、ボトム部(2)の長さ(L)を直胴部(1)の直径(D1)の少なくとも1.5倍になるまでに大きくなるように設定するすることが具体的に示されるものではなく、更に、甲第1号証に記載の制御方法においては、本件請求項1に係る発明のように、直胴部側ボトム部の引き上げ速度をボトム部側直胴部の指定長の平均引上げ速度の95〜105%の範囲に制御することまでが示されるものでもない。
次に、甲第2号証(「半導体の結晶欠陥制御の科学と技術-シリコン編」、(株)サイエンスフォーラム、1993年6月30日第1版第1刷発行、第125〜145頁)には、「CZ法育成プロセス」に関し、
「図-4は育成結晶の写真である。CZ法結晶育成の基本プロセスは、99.999%(純度:5N)以上の高純度の石英(SiO2)るつぼに、・・・種子結晶を用いて結晶成長を開始(種子づけ)し、図-5に示すように、ネック部、肩部、定径部を形成しながら、るつぼ中の融液の所定量を単結晶化させて、最後に尾部を形成し、結晶育成を終了する。このような結晶育成における主な制御要素は、図-6に模式的に示すように、発熱体の大きさ・形状、るつぼの大きさ・形状とこれら発熱体と、るつぼの相対的位置などの半固定の条件に加えて、育成時の温度およびその分布、Arガス流量と炉内圧力、るつぼ(融液)の回転、移動速度、成長結晶の回転、引上げ速度などのように時々刻々変化可能な制御条件とがある。そしてこれら制御条件の決定により、炉内雰囲気、融液、成長界面などの結晶成長系の状態が決定され、結晶の大きさ、品質(欠陥状態)の制御された結晶が育成される。最も基本的な特性である結晶形状は、るつぼ内融液表面近傍の温度と結晶引上げ速度によって制御を行い、図-5に示す各部からなる。」(第125頁右欄第4行〜127頁左欄本文第5行)ことが記載されており、その図-4及び図-5には、段差部が形成された尾部を有するシリコン単結晶インゴットが掲載されている。
このように、甲第2号証には、シリコン単結晶インゴットのボトム部(尾部)に段差部を設けることが示されているものの、そこでの段差部を有するボトム部は、本件請求項1に係る発明のように、直胴部に連続する直胴部側ボトム部の外面の傾斜角(θ)が10〜25度の範囲にあるものではなく、また、そのボトム部の長さを、本件請求項1に係る発明のように、直胴部(1)の直径(D1)の少なくとも1.5倍になるように設定するすることが示されるものではなく、更に、甲第2号証に記載のものでは、本件請求項1に係る発明のように、直胴部側ボトム部の引き上げ速度をボトム部側直胴部の指定長の平均引上げ速度の95〜105%の範囲に制御することが具体的に示されるものでもない。
甲第3号証(「応用物理」、第55巻、第4号(1986)、第342〜348頁)には、「シリコン単結晶」につき記載されており、そのFig.4の写真には、段差部が形成された大形CZSi単結晶および大直径Siウエーハの例が示されているが、このものも、段差部を有するボトム部は、本件請求項1に係る発明のように、直胴部に連続する直胴部側ボトム部の外面の傾斜角(θ)が10〜25度の範囲にあるものではなく、また、本件請求項1に係る発明のように、ボトム部(2)の長さ(L)を直胴部(1)の直径(D1)の少なくとも1.5倍になるように設定するすることが示されるものではなく、更に、甲第3号証に記載のものから、本件請求項1に係る発明のように、直胴部側ボトム部の引き上げ速度をボトム部側直胴部の指定長の平均引上げ速度の95〜105%の範囲に制御することが具体的に示されるものでもない。
甲第4号証(特開昭63-112493号公報)には、「チョクラルスキー法による単結晶製造装置に用いられて、結晶の融液との界面部分の径を測定する結晶径測定装置」(第1頁右下欄第12〜14行)に関する発明が記載されているものの、そこでは、本件請求項1に係る発明の上記発明特定事項(A)〜(C)につき記載も示唆もない。
以上のとおり、甲第1〜4号証の記載からは、本件請求項1に係る発明の上記発明特定事項(A)〜(C)につき、示唆されるところはない。
そして、本件請求項1に係る発明は、上記発明特定事項(A)〜(C)を、一体に、備えることにより、顕著な効果を奏したものであり、このことは、前記したとおりである。したがって、当該発明特定事項を容易に導き出すことができない。
してみれば、本件請求項1に係る発明が、甲第1〜4号証に記載の発明に基づいて当業者の容易に発明できたものであるということができない。
《本件請求項2に係る発明について》
本件請求項2に係る発明においても、実質上、上記特定事項(A)〜(C)の全てを具備するものであって、上記の《本件請求項1に係る発明について》の項で示した理由と同じ理由により、本件請求項2に係る発明は、甲第1〜4号証に記載の発明に基づいて当業者の容易に発明できたものであるということができない。
したがって、上記(2)の理由は当たらない。

6.結び
本件請求項1および2に係る発明の特許は、特許異議の申立の理由およびに証拠によっては、取り消すことができない。
また、他に本件請求項1および2に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
シリコン単結晶インゴット及びその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 実質的に一定の直径(D1)を有する直胴部(1)と前記直胴部(1)の直径(D1)を減少させることにより前記直胴部(1)に連続して形成されたボトム部(2)とを備えたシリコン単結晶インゴットにおいて、
前記シリコン単結晶(22)のボトム部(2)の形成時に前記ボトム部(2)の直径(D2)の実測値に基づいて前記シリコン単結晶(22)の引上げ速度をADC制御することにより前記ボトム部(2)の直径(D2)が目標値となるように制御し、
前記ボトム部(2)の直径(D2)を制御する引上げ速度を、その実測値に基づいてシリコン融液の温度をAGC制御することにより引上げ速度の目標値となるように制御し、
かつ前記シリコン単結晶(22)の直胴部(1)に連続する直胴部側ボトム部(2a)の引上げ速度をボトム部側直胴部(1a)の指定長30〜100mmの範囲における平均引上げ速度の95〜105%の範囲に制御することにより、
前記直胴部(1)の外面に対するこの直胴部(1)に連続する直胴部側ボトム部(2a)の外面の傾斜角(θ)が10〜25度であり、
前記直胴部側ボトム部(2a)に連続する段差部(2c)の直径の減少率が前記直胴部側ボトム部(2a)の直径の減少率より高くなるように形成され、
前記ボトム部(2)の長さ(L)を直胴部(1)の直径(D1)の少なくとも1.5倍になるようにボトム部(2)が形成されたことを特徴とするシリコン単結晶インゴット。
【請求項2】 チョクラルスキー法によるシリコン単結晶の製造方法において、
前記シリコン単結晶(22)のボトム部(2)の形成時に前記ボトム部(2)の直径(D2)の実測値に基づいて前記シリコン単結晶(22)の引上げ速度をADC制御することにより前記ボトム部(2)の直径(D2)が目標値となるように制御し、
前記ボトム部(2)の直径(D2)を制御する引上げ速度を、その実測値に基づいてシリコン融液の温度をAGC制御することにより引上げ速度の目標値となるように制御し、
かつ前記シリコン単結晶(22)の直胴部(1)に連続する直胴部側ボトム部(2a)の引上げ速度をボトム部側直胴部(1a)の指定長30〜100mmの範囲における平均引上げ速度の95〜105%の範囲に制御することにより、
前記直胴部(1)の外面に対する前記直胴部側ボトム部(2a)の外面の傾斜角(θ)が10〜25度の範囲にあり、
前記ボトム部(2)のうち直胴部(1)に連続する直胴部側ボトム部(2a)の直径の減少率より、前記直胴部側ボトム部(2a)に連続する段差部(2c)の直径の減少率を高くし、
前記ボトム部(2)の長さ(L)を直胴部(1)の直径(D1)の少なくとも1.5倍になるようにボトム部(2)を形成することを特徴とするシリコン単結晶インゴットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シリコン単結晶インゴット及びチョクラルスキー法(以下、CZ法という)によるその製造方法に関する。更に詳しくはシリコン単結晶インゴットのボトム部の形状及びそのボトム部の直径の減少率を制御する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般的なCZ法によるシリコン単結晶の引上げ方法では、シリコン単結晶の肩部を形成した後、ADC(Automatic Diameter Control)とAGC(Automatic Growth Comtrol)を用いて、引上げ速度とシリコン融液温度とを調節しながら目標直径を維持するように直胴部を形成する。ここでADCは直胴部の直径の実測値に基づいて引上げ速度を制御することにより直胴部の直径を目標値にするフィードバック制御装置であり、AGCは直胴部の引上げ速度の実測値に基づいてシリコン融液の温度を制御して引上げ速度を目標値にするフィードバック制御装置である。直胴部が所定の長さに達した後、ボトム部を形成する。ここでは予め設定したプログラムに基づいて引上げ速度を調節し、かつヒータへの供給電力を調整することによりシリコン融液の温度を調節して、シリコン単結晶の直径を徐々に小さくする。最後に円錐形の先端がシリコン融液の液面から静かに離れてシリコン単結晶の引上げが終了する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来のCZ法では直胴部の直径をADCとAGCによりフィードバック制御して目標通りの直径にしているのに対して、ボトム部の直径をADCで最初にフィードバック制御し、続いて予め設定したプログラムに基づいて制御していたため、ボトム部側直胴部は、トップ部側直胴部及びミドル部側直胴部とは異なった熱履歴を受けていた。この結果、ボトム部側直胴部の特性はトップ部側直胴部及びミドル部側直胴部の特性と異なっていた。
【0004】
具体的には、従来のCZ法では、図5に示すように、直胴部1の外面に対するボトム部2の外面の傾斜角θを約30〜40度の範囲に、ボトム部2の長さLを直胴部1の直径D1の約0.9〜1.1倍になるようにボトム部2を形成していた。このようにボトム部を形成したシリコン単結晶を単結晶引上げ装置から取出して次の方法によりボトム部側直胴部1aの特性を観察すると異常が観察される。即ち、この方法では先ずシリコン単結晶インゴット中心でその引上げ方向に平行にスライスし、そのスライスしたサンプルを乾燥酸素雰囲気中、1000℃で40時間熱処理した。次いで熱処理したサンプルを酸素析出物に選択性のあるエッチング液でスライス面を処理した後、目視により観察した。図5はその断面図である。図5に示すように、インゴットの直胴部1とボトム部2との境界Aから所定長xだけ入ったボトム部側直胴部1aにおけるB部分と直胴部周囲Cとに酸素析出物3が異常に形成され易かった。この酸素析出物の形成は転位や積層欠陥(OSF:oxidation induced stacking fault)などの欠陥発生の原因となった。これらの欠陥は半導体デバイスの絶縁耐圧不良や、キャリアのライフタイム減少などの重大な電気的特性が劣化していた。このため、酸素析出物が異常に形成された部分は高品質なシリコン単結晶製品にはならず、その製品としての収率を低下させていた。
またプログラム制御で形成されたボトム部の形状は、同一のプログラム制御であっても、繰返し製造すると、同一形状にならずに、製品ロット間のばらつきが大きかった。
本発明の目的は、ボトム部側直胴部のトップ部側直胴部及びミドル部側直胴部に対する特性の変化の程度が少なく、高品質単結晶シリコンの製品収率の高いシリコン単結晶インゴットを提供することにある。
本発明の別の目的は、直胴部のほぼ全長にわたって品質が均一なシリコン単結晶を製造し得る方法を提供することにある。
本発明の更に別の目的は、ボトム部の形状が製品ロット間でばらつきなく、同一形状に繰り返し製造し得るシリコン単結晶の製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、図1に示すように、実質的に一定の直径D1を有する直胴部1とこの直胴部1の直径D1を減少させることにより前記直胴部1に連続して形成されたボトム部2とを備えたシリコン単結晶インゴットにおいて、シリコン単結晶22のボトム部2の形成時にボトム部2の直径D2の実測値に基づいてシリコン単結晶22の引上げ速度をADC制御することによりボトム部2の直径D2が目標値となるように制御し、ボトム部2の直径D2を制御する引上げ速度を、その実測値に基づいてシリコン融液の温度をAGC制御することにより引上げ速度の目標値となるように制御し、かつシリコン単結晶22の直胴部1に連続する直胴部側ボトム部2aの引上げ速度をボトム部側直胴部1aの指定長30〜100mmの範囲における平均引上げ速度の95〜105%の範囲に制御することにより、直胴部1の外面に対するこの直胴部1に連続する直胴部側ボトム部2aの外面の傾斜角θが10〜25度であり、直胴部側ボトム部2aに連続する段差部2cの直径の減少率が直胴部側ボトム部2aの直径の減少率より高くなるように形成され、ボトム部2の長さLを直胴部1の直径D1の少なくとも1.5倍になるようにボトム部2が形成されたことを特徴とするシリコン単結晶インゴットである。
傾斜角θを10〜25度にすることにより、直胴部側ボトム部の直径の減少率は僅かとなり、直胴部側ボトム部の熱履歴はボトム部側直胴部1aのそれとほぼ同じになる。この結果、ボトム部側直胴部の特性は端部側ボトム部の影響を受けにくく、トップ部側直胴部及びミドル部側直胴部の特性に近似するようになる。これにより異常な酸素析出物3は主として直胴部側ボトム部2aに形成され、ボトム部側直胴部1aには僅かに形成されるか、或いは全く形成されない。
傾斜角θを10度未満にすると、ボトム部の長さが必要以上に長くなり、ボトム部形成時間が長引くうえ、ボトム部形成のために消費されるシリコン融液量がいたずらに増大する。25度を越えると、直胴部側ボトム部の直径の減少率が高くなり、直胴部側ボトム部の熱履歴はボトム部側直胴部のそれと大きく相違するようになる。傾斜角θを10〜15度にすると、請求項1に係る発明の作用及び効果がより顕著になり好ましい。
また段差部2cを形成することにより、上記傾斜角θを10〜25度にしても、ボトム部形成時間が従来のボトム部形成時間に比較してそれ程長くならず、かつボトム部2の全体の長さを短くすることができ、ボトム部形成のために消費されるシリコン融液量を増大させない。
【0006】
ボトム部2の長さLを直胴部1の直径D1の少なくとも1.5倍とし、ボトム部2の長さL≧1.5×D1とする。好ましくはL≧1.8×D1である。ボトム部2の長さLを1.5倍未満にすると直胴部側ボトム部の直径の減少率が高くなり、直胴部側ボトム部の熱履歴はボトム部側直胴部のそれと大きく相違するようになる。
【0007】
請求項2に係る発明は、チョクラルスキー法によるシリコン単結晶の製造方法において、シリコン単結晶22のボトム部2の形成時にボトム部2の直径D2の実測値に基づいてシリコン単結晶22の引上げ速度をADC制御することによりボトム部2の直径D2が目標値となるように制御し、ボトム部2の直径D2を制御する引上げ速度を、その実測値に基づいてシリコン融液の温度をAGC制御することにより引上げ速度の目標値となるように制御し、かつシリコン単結晶22の直胴部1に連続する直胴部側ボトム部2aの引上げ速度をボトム部側直胴部1aの指定長30〜100mmの範囲における平均引上げ速度の95〜105%の範囲に制御することにより、直胴部1の外面に対する直胴部側ボトム部2aの外面の傾斜角θが10〜25度の範囲にあり、ボトム部2のうち直胴部1に連続する直胴部側ボトム部2aの直径の減少率より、直胴部側ボトム部2aに連続する段差部2cの直径の減少率を高くし、ボトム部2の長さLを直胴部1の直径D1の少なくとも1.5倍になるようにボトム部2を形成することを特徴とするシリコン単結晶インゴットの製造方法である。
図4に示すように、ボトム部2の直径を引上げ速度に基づきADCを用いてフィードバック制御し、ボトム部2の直径を制御する引上げ速度を更にシリコン融液の温度に基づきAGCを用いてフィードバック制御することにより、シリコン単結晶を繰返し製造しても、ボトム部は常に同一形状になる。なお、図1の符号D2はボトム部2の特定の位置における直径を示しているが、この符号D2はボトム部の長さが大きくなるに従って変化する長さである。
また段差部2cを形成することにより、上記傾斜角θを10〜25度にしても、ボトム部形成時間が従来と比べて長くならず、かつボトム部2の全体の長さを短くすることができ、ボトム部形成のために消費されるシリコン融液量を増大させない。
【0008】
直胴部1の外面に対して直胴部側ボトム部2aの外面が10〜25度の傾斜角θを有しかつ連続するようにボトム部2の直径D2を制御する、即ちADCとAGCを用いて傾斜角θを10〜25度にすることにより、直胴部側ボトム部の直径の減少率は僅かとなり、直胴部側ボトム部の熱履歴はボトム部側直胴部のそれとほぼ同じになる。この結果、ボトム部側直胴部の特性は端部側ボトム部の影響を受けにくく、トップ部側直胴部及びミドル部側直胴部の特性に近似するようになる。
傾斜角θを10度未満にすると、ボトム部の長さが必要以上に長くなり、ボトム部形成時間が従来と比べて長引くうえ、ボトム部形成のために消費されるシリコン融液量がいたずらに増大する。25度を越えると、直胴部側ボトム部の直径の減少率が高くなり、直胴部側ボトム部の熱履歴はボトム部側直胴部のそれと大きく相違するようになる。傾斜角θを10〜15度にすると、請求項4に係る発明の作用及び効果がより顕著になり好ましい。
【0009】
ボトム部2の長さLを1.5倍未満にすると直胴部側ボトム部の直径の減少率が高くなり、直胴部側ボトム部の熱履歴はボトム部側直胴部のそれと大きく相違するようになる。
【0010】
ボトム部側直胴部1aの指定長yにおける引上げ速度の平均値V1を求め、この平均値V1の95〜105%の範囲の引上げ速度V2でシリコン単結晶を引上げ、シリコン融液の温度を徐々に上げて直径を減少させることにより、直胴部側ボトム部2aを形成する。上記範囲外の引上げ速度で引上げると、ボトム部側直胴部1a以外の部分とボトム部側直胴部1aの部分の熱履歴が大きく異なってしまう不具合を生じやすい。
【0011】
ボトム部側直胴部1aの指定長yが30mm未満では求めた引上げ速度の平均値V1の信頼性が低く、また100mmを越えるとトップ部近傍における比較的速い引上げ速度を含んで平均値V1を求めることになり、直胴部からボトム部に変わったときに引上げ速度が急激に上昇することがある。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
図2に示すように、単結晶引上げ装置のチャンバ16内には、シリコン融液を保持する石英るつぼ11が設けられ、石英るつぼ11は黒鉛サセプタ12を介して回転軸13の上端に固定されている。図示しないが、チャンバ16の上方からアルゴンガスがチャンバ16内に供給されるようになっている。
回転軸13の下端部には、るつぼ回転用モータ32及びるつぼ昇降用モータ31の各駆動力が伝達機構33を介して伝達されるようになっている。これによりるつぼ11は所定の方向に回転し得るとともに、上下方向に移動可能となっている。ヒータ14はるつぼ11の外方に所定の間隔をあけて設けられる。このヒータ14とチャンバ16との間には保温筒15が設けられる。チャンバ16の下部には窓孔17が形成され、この窓孔17に対向してチャンバ16の外部には放射温度計18が設けられる。
【0013】
チャンバ16の肩部には窓孔51が形成され、この窓孔51の上方のチャンバ16の外部にはテレビカメラ25がるつぼ11の直径方向に移動可能に設けられる。テレビカメラ25は図の破線で示すように、窓孔51を通してシリコン融液とシリコン単結晶22との間の結晶育成界面付近を撮影する。またチャンバ16の上端には円筒状のケーシング10が接続される。このケーシング10の上端部分には引上げヘッド41が水平状態で旋回可能に設けられる。引上げヘッド41はヘッド回転用モータ44により旋回されるようになっている。引上げヘッド41内にはワイヤ引上げ機構42が設けられており、ワイヤ引上げ機構42からワイヤケーブル43がるつぼ11の回転中心に向かって垂下されている。このワイヤ引上げ機構42には、引上げ用モータ45の駆動力が伝達される。引上げ用モータ45の出力軸の回転方向によって、ワイヤケーブル43が上昇又は下降するようになっている。ワイヤケーブル43の下端にはシリコン単結晶のシードを保持するシードホルダ20が取付けられる。
【0014】
引上げ用モータ45の近傍には引上げ用モータの回転速度を検出する速度検出器29が取付けられる。放射温度計18、テレビカメラ25及び速度検出器29の各出力は制御部30の入力に接続される。制御部30はコンピュータで構成され、制御部30における制御は例えばROMに格納したプログラムに従って行われる。制御部30の出力はヒータ14、ヘッド回転用モータ44、引上げ用モータ45、るつぼ回転用モータ32及びるつぼ昇降用モータ31に接続される。
【0015】
このように構成された単結晶引上げ装置では、最初に石英るつぼ11に高純度のシリコン多結晶を充填する。チャンバ16内を真空にした後、その雰囲気をアルゴンガス雰囲気に置換し、圧力を数十Torrに調節する。制御部30のプログラムに従って、ヒータ14がるつぼ11内のシリコン多結晶を溶融し、そのシリコン融液の温度を制御する。シードホルダ20にシードを保持してシリコン融液に浸漬させた後、ヘッド回転用モータ44を駆動し、かつ引上げ用モータ45をワイヤケーブル43を引上げる方向に駆動する。これによりシードは回転しながら引上げられ、シードの下端部に直径が増大して目標直径になったシリコン単結晶22が図示するように成長していく。この単結晶成長工程では回転軸13がワイヤケーブル43と逆方向に回転され、これによりシリコン単結晶22とるつぼ11とが互いに逆方向に回転する。シリコン融液からチャンバ16内に発生するSiOを除去するために、チャンバ16内にはアルゴンガスを数十リットル/分の速度で流し続ける。
このシリコン単結晶22が成長していく形状として、上端部であるシード部・肩部、実質的に一定の直径を有する直胴部1及び下端部であるボトム部2がある。これらの形状は引上げ速度、シリコン融液温度、シリコン単結晶の相対的回転速度、テレビカメラ25の画像データ、シリコン融液の液面レベルなどにより決定される。制御部30では、図3に示すようにシード部・肩部及び直胴部の各制御に続いてボトム部の制御が行われる。直胴部1における直径制御は、先ずテレビカメラ25の画像データを解析してシリコン単結晶22とシリコン融液の液面との境界位置を検出することにより行われる。次いでこの検出結果に基づいて、前述したADCとAGCにより、引上げ速度とシリコン融液温度とを調節しながら目標直径を維持するように直胴部1が形成される。シリコン単結晶の引上げとともにシリコン融液量が徐々に減少するために、シリコン融液の液面の位置がヒータに対して相対的に常に一定になるように回転軸13を上昇させて調節する。
【0016】
次に本発明に特徴のあるボトム部2の直径制御について説明する。
図4に示すように、ボトム部2のうち直胴部側ボトム部2aの直径の制御は、直胴部1と同様にテレビカメラ25の出力に基づいて直径の実測値を読込み、この値が目標値通りであるか否かチェックする。目標値はプログラムに予め設定されている。この目標値は例えば時間の関数として設定してもよい。実測値が目標値から外れている場合には、引上げ速度及びシリコン融液の温度をADCとAGCとによりフィードバック制御する。具体的には実測値の直径が目標値の直径より大きい場合には、引上げ速度を大きくするか又は融液温度を高くし、その反対の場合には引上げ速度を小さくするか又は融液温度を低くする。ここで直胴部側ボトム部2aの引上げ速度V2をボトム部側直胴部1aの指定長y、例えば100mmにおける平均引上げ速度V1の95〜105%の範囲に制御することが好ましい。この指定長yを時間の関数により設定してもよい。
【0017】
図1に示すように、直胴部側ボトム部2aの直径D2は、直胴部1の外面に対して直胴部側ボトム部2aの外面が10〜25度の傾斜角θを有しかつ連続するように制御される。また直胴部側ボトム部2aを形成した後、直径の減少率を直胴部側ボトム部2aの直径の減少率より高くして段差部2cを形成するように制御される。その結果、ボトム部2の長さLは直胴部1の直径D1の少なくとも1.5倍となるようにボトム部2の直径D2は制御される。
【0018】
【実施例】
次に本発明の実施例を比較例とともに説明する。
<実施例1>
図2に示す装置を用いて、図3及び図4に示すフローチャートに従って、シリコン単結晶インゴットを製造した。このインゴットは直胴部の直径D1が8インチ(約205mm)であって、p型で面方位が(100)であった。
インゴットのボトム部を形成するに際して、その直胴部側ボトム部の直径制御をADC及びAGCにより行った。この例では直胴部側ボトム部の引上げ速度V2をボトム部側直胴部の指定長100mmにおける平均引上げ速度V1と同じ速度、即ちV2/V1=1(100%)にした。また直胴部側ボトム部の外面の直胴部の外面に対する傾斜角θが15度になるように、直胴部側ボトム部と端部側ボトム部の間に段差部を作ることによりボトム部の長さLが360mmになるようにそれぞれボトム部を形成した。ここでボトム部の長さLは直胴部の直径D1の約1.8倍であった。
【0019】
<実施例2>
直胴部側ボトム部の引上げ速度V2をボトム部側直胴部の指定長100mmにおける平均引上げ速度V1の95%(V2/V1=0.95)にした以外、実施例1と同様にシリコン単結晶インゴットを製造した。
【0020】
<実施例3>
傾斜角θを25度にした以外、実施例1と同様にシリコン単結晶インゴットを製造した。
【0021】
<実施例4>
ボトム部の長さLを300mmにし、直胴部の直径D1の約1.5倍にした以外、実施例1と同様にシリコン単結晶インゴットを製造した。
【0022】
<実施例5>
V2/V1=0.95(95%)にし、傾斜角θを25度にし、L/D1を約1.5にした以外、実施例1と同様にシリコン単結晶インゴットを製造した。
【0023】
<比較例1>
V2/V1=0.8(80%)にした以外、実施例5と同様にシリコン単結晶インゴットを製造した。
【0024】
<比較例2>
V2/V1=1(100%)にし、傾斜角θを25度にし、L/D1を約1.25にした以外、実施例1と同様にシリコン単結晶インゴットを製造した。
【0025】
<比較例3>
V2/V1=1(100%)にし、傾斜角θを40度にし、L/D1を約1.0にした以外、実施例1と同様にシリコン単結晶インゴットを製造した。
【0026】
<比較試験>
実施例1〜5及び比較例1〜3の各インゴットについて、インゴット中心でその引上げ方向に平行しスライスしてサンプルを作製した。これらのサンプルを乾燥酸素雰囲気中、1000℃で40時間熱処理した。熱処理したサンプルを酸素析出物に選択性のあるエッチング液でスライス面を処理した後、目視により観察した。また実施例1〜5及び比較例1〜3の結果を表1に示す。表1の符号xは図1及び図5の符号xにそれぞれ対応する。言い換えれば、符号xはインゴットの直胴部1とボトム部2との境界Aから異常に形成された酸素析出物のピーク位置までの距離である。符号xがマイナスの場合、図1に示すように酸素析出物はボトム部にのみ存在することを示し、符号xがプラスの場合、図5に示すように酸素析出物のピーク位置がボトム部側直胴部に存在していることを示す。
【0027】
【表1】

【0028】
表1から明らかなように、直胴部側ボトム部の引上げ速度V2がボトム部側直胴部の指定長100mmにおける平均引上げ速度V1と同じであって、傾斜角θが15度と比較的小さく、L/D1が比較的長い実施例1及びこの実施例1と比べてV2/V1の比率を僅かに低くした実施例2では、酸素析出物はボトム部にのみ異常に形成された。実施例1と比べて、θを僅かに大きくした実施例3や、或いはL/D1を僅かに小さくした実施例4や、或いはV2/V1の比率を僅かに低くしθを僅かに大きくしかつL/D1を僅かに小さくした実施例5は、それぞれ酸素析出物の一部分がボトム部側直胴部に異常に形成されたが、その大部分は直胴部側ボトム部に異常に形成された。
更に実施例1と比べて、V2/V1の比率をかなり低くした比較例1や、L/D1をかなり小さくした比較例2や、或いはθをかなり大きくしかつL/D1をかなり小さくした比較例3は、それぞれ酸素析出物の大部分がボトム部側直胴部に異常に形成された。
【0029】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明のシリコン単結晶インゴットは直胴部の外面に対して直胴部側ボトム部の外面が10〜25度の傾斜角θを有しかつ連続し、直胴部側ボトム部に連続する段差部の直径の減少率が直胴部側ボトム部の直径の減少率より高くなるように形成したため、ボトム部側直胴部の特性は端部側ボトム部の影響を受けにくく、トップ部側直胴部及びミドル部側直胴部の特性に近似するようになる。これにより異常な酸素析出物は主として直胴部側ボトム部に形成され、ボトム部側直胴部には僅かに形成されるか、或いは全く形成されなくなるため、高品質単結晶シリコンとしての製品収率が高く、直胴部の全長にわたって品質がほぼ均一な優れた効果を奏する。また上記傾斜角θを10〜25度にしても、ボトム部形成時間が従来のボトム部形成時間に比較してそれ程長くならず、かつボトム部2の全体の長さを短くすることができ、ボトム部形成のために消費されるシリコン融液量を増大させないという効果も奏する。
更に直胴部側ボトム部及び段差部を直胴部に続いて、ADCとAGCを用いて形成することにより、ボトム部の形状が製品ロット間でばらつきなく、同一形状に繰り返し製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明のシリコン単結晶インゴットの部分断面図。
【図2】
本発明の実施の形態に係るシリコン単結晶の引上げ装置の構成図。
【図3】
そのシリコン単結晶の引上げ時の制御を示すフローチャート。
【図4】
そのボトム部の形成時の制御を示すフローチャート。
【図5】
従来のシリコン単結晶インゴットの部分断面図。
【符号の説明】
1 直胴部
1a ボトム部側直胴部
2 ボトム部
2a 直胴部側ボトム部
2b 端部側ボトム部
2c 段差部
3 異常な酸素析出物
D1 直胴部の直径
D2 ボトム部の直径
θ 直胴部側ボトム部の外面の直胴部外面に対する傾斜角
L ボトム部の長さ
y ボトム部側直胴部の指定長
V1 ボトム部側直胴部の指定長における平均引上げ速度
V2 直胴部側ボトム部の引上げ速度
 
訂正の要旨 訂正の要旨
本件特許第2966322号の明細書につき、次の(a)〜(k)のとおり訂正する。
(a)特許請求の範囲の減縮を目的として、本件明細書の特許請求の範囲の請求項1を以下のように訂正する。
[請求項1]実質的に一定の直径(D1)を有する直胴部(1)と前記直胴部(1)の直径(D1)を減少させることにより前記直胴部(1)に連続して形成されたボトム部(2)とを備えたシリコン単結晶インゴットにおいて、
前記シリコン単結晶(22)のボトム部(2)の形成時に前記ボトム部(2)の直径(D2)の実測値に基づいて前記シリコン単結晶(22)の引上げ速度をADC制御することにより前記ボトム部(2)の直径(D2)が目標値となるように制御し、
前記ボトム部(2)の直径(D2)を制御する引上げ速度を、その実測値に基づいてシリコン融液の温度をAGC制御することにより引上げ速度の目標値となるように制御し、
かつ前記シリコン単結晶(22)の直胴部(1)に連続する直胴部側ボトム部(2a)の引上げ速度をボトム部側直胴部(1a)の指定長30〜100mmの範囲における平均引上げ速度の95〜105%の範囲に制御することにより、
前記直胴部(1)の外面に対するこの直胴部(1)に連続する直胴部側ボトム部(2a)の外面の傾斜角(θ)が10〜25度であり、
前記直胴部側ボトム部(2a)に連続する段差部(2c)の直径の減少率が前記直胴部側ボトム部(2a)の直径の減少率より高くなるように形成され、
前記ボトム部(2)の長さ(L)を直胴部(1)の直径(D1)の少なくとも1.5倍になるようにボトム部(2)が形成されたことを特徴とするシリコン単結晶インゴット。
(b)特許請求の範囲の減縮を目的として、本件明細書の特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(c)特許請求の範囲の減縮を目的として、本件明細書の特許請求の範囲の請求項3を以下のように訂正し、かつ、項番号を請求項2に繰り上る。
[請求項2]チョクラルスキー法によるシリコン単結晶の製造方法において、
前記シリコン単結晶(22)のボトム部(2)の形成時に前記ボトム部(2)の直径(D2)の実測値に基づいて前記シリコン単結晶(22)の引上げ速度をADC制御することにより前記ボトム部(2)の直径(D2)が目標値となるように制御し、
前記ボトム部(2)の直径(D2)を制御する引上げ速度を、その実測値に基づいてシリコン融液の温度をAGC制御することにより引上げ速度の目標値となるように制御し、
かつ前記シリコン単結晶(22)の直胴部(1)に連続する直胴部側ボトム部(2a)の引上げ速度をボトム部側直胴部(1a)の指定長30〜100mmの範囲における平均引上げ速度の95〜105%の範囲に制御することにより、
前記直胴部(1)の外面に対する前記直胴部側ボトム部(2a)の外面の傾斜角(θ)が10〜25度の範囲にあり、
前記ボトム部(2)のうち直胴部(1)に連続する直胴部側ボトム部(2a)の直径の減少率より、前記直胴部側ボトム部(2a)に連続する段差部(2c)の直径の減少率を高くし、
前記ボトム部(2)の長さ(L)を直胴部(1)の直径(D1)の少なくとも1.5倍になるようにボトム部(2)を形成することを特徴とするシリコン単結晶インゴットの製造方法。
(d)特許請求の範囲の減縮を目的として、本件明細書の特許請求の範囲の請求項4〜7を削除する。
(e)明瞭でない記載の釈明を目的として、本件明細書の段落[0005]の「[課題を解決するための手段]・・・シリコン単結晶インゴットである。」を、
「[課題を解決するための手段]
請求項1に係る発明は、図1に示すように、実質的に一定の直径D1を有する直胴部1とこの直胴部1の直径D1を減少させることにより前記直胴部1に連続して形成されたボトム部2とを備えたシリコン単結晶インゴットにおいて、シリコン単結晶22のボトム部2の形成時にボトム部2の直径D2の実測値に基づいてシリコン単結晶22の引上げ速度をADC制御することによりボトム部2の直径D2が目標値となるように制御し、ボトム部2の直径D2を制御する引上げ速度を、その実測値に基づいてシリコン融液の温度をAGC制御することにより引上げ速度の目標値となるように制御し、かつシリコン単結晶22の直胴部1に連続する直胴部側ボトム部2aの引上げ速度をボトム部側直胴部1aの指定長30〜100mmの範囲における平均引上げ速度の95〜105%の範囲に制御することにより、直胴部1の外面に対するこの直胴部1に連続する直胴部側ボトム部2aの外面の傾斜角θが10〜25度であり、直胴部側ボトム部2aに連続する段差部2cの直径の減少率が直胴部側ボトム部2aの直径の減少率より高くなるように形成され、ボトム部2の長さLを直胴部1の直径D1の少なくとも1.5倍になるようにボトム部2が形成されたことを特徴とするシリコン単結晶インゴットである。」と訂正する。
(f)明瞭でない記載の釈明を目的として、本件明細書の段落[0006]の「請求項2に係る・・・大きく相違するようになる。」を、
「ボトム部2の長さLを直胴部1の直径D1の少なくとも1.5倍とし、ボトム部2の長さL≧1.5×D1とする。好ましくはL≧1.8×D1である。ボトム部2の長さLを1.5倍未満にすると直胴部側ボトム部の直径の減少率が高くなり、直胴部側ボトム部の熱履歴はボトム部側直胴部のそれと大きく相違するようになる。」と訂正する。
(g)明瞭でない記載の釈明を目的として、本件明細書の段落[0007]の「請求項3に係る・・・シリコン単結晶の製造方法である。」を、
「請求項2に係る発明は、チョクラルスキー法によるシリコン単結晶の製造方法において、シリコン単結晶22のボトム部2の形成時にボトム部2の直径D2の実測値に基づいてシリコン単結晶22の引上げ速度をADC制御することによりボトム部2の直径D2が目標値となるように制御し、ボトム部2の直径D2を制御する引上げ速度を、その実測値に基づいてシリコン融液の温度をAGC制御することにより引上げ速度の目標値となるように制御し、かつシリコン単結晶22の直胴部1に連続する直胴部側ボトム部2aの引上げ速度をボトム部側直胴部1aの指定長30〜100mmの範囲における平均引上げ速度の95〜105%の範囲に制御することにより、直胴部1の外面に対する直胴部側ボトム部2aの外面の傾斜角θが10〜25度の範囲にあり、ボトム部2のうち直胴部1に連続する直胴部側ボトム部2aの直径の減少率より、直胴部側ボトム部2aに連続する段差部2cの直径の減少率を高くし、ボトム部2の長さLを直胴部1の直径D1の少なくとも1.5倍になるようにボトム部2を形成することを特徴とするシリコン単結晶インゴットの製造方法である。」と訂正する。
(h)明瞭でない記載の釈明を目的として、本件明細書の段落[0008]の「請求項4に係る・・・特性に近似するようになる。」を、
「直胴部1の外面に対して直胴部側ボトム部2aの外面が10〜25度の傾斜角θを有しかつ連続するようにボトム部2の直径D2を制御する、即ちADCとAGCを用いて傾斜角θを10〜25度にすることにより、直胴部側ボトム部の直径の減少率は僅かとなり、直胴部側ボトム部の熱履歴はボトム部側直胴部のそれとほぼ同じになる。この結果、ボトム部側直胴部の特性は端部側ボトム部の影響を受けにくく、トップ部側直胴部及びミドル部側直胴部の特性に近似するようになる。」と訂正する。
(i)明瞭でない記載の釈明を目的として、本件明細書の段落[0009]の「請求項5に係る・・・大きく相違するようになる。」を、
「ボトム部2の長さLを1.5倍未満にすると直胴部側ボトム部の直径の減少率が高くなり、直胴部側ボトム部の熱履歴はボトム部側直胴部のそれと大きく相違するようになる。」と訂正する。
(j)明瞭でない記載の釈明を目的として、本件明細書の段落[0010]の「請求項6に係る・・・不具合を生じやすい。」を、
「ボトム部側直胴部1aの指定長yにおける引上げ速度の平均値V1を求め、この平均値V1の95〜105%の範囲の引上げ速度V2でシリコン単結晶を引上げ、シリコン融液の温度を徐々に上げて直径を減少させることにより、直胴部側ボトム部2aを形成する。上記範囲外の引上げ速度で引上げると、ボトム部側直胴部1a以外の部分とボトム部側直胴部1aの部分の熱履歴が大きく異なってしまう不具合を生じやすい。」と訂正する。
(k)明瞭でない記載の釈明を目的として、本件明細書の段落[0011]の「請求項7に係る・・・上昇することがある。」を、
「ボトム部側直胴部1aの指定長yが30mm未満では求めた引上げ速度の平均値V1の信頼性が低く、また100mmを越えるとトップ部近傍における比較的速い引上げ速度を含んで平均値V1を求めることになり、直胴部からボトム部に変わったときに引上げ速度が急激に上昇することがある。」と訂正する。
異議決定日 2001-08-02 
出願番号 特願平7-232734
審決分類 P 1 651・ 14- YA (C30B)
P 1 651・ 121- YA (C30B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 五十棲 毅  
特許庁審判長 多喜 鉄雄
特許庁審判官 野田 直人
唐戸 光雄
登録日 1999-08-13 
登録番号 特許第2966322号(P2966322)
権利者 三菱マテリアル株式会社 三菱マテリアルシリコン株式会社
発明の名称 シリコン単結晶インゴット及びその製造方法  
代理人 須田 正義  
代理人 須田 正義  
代理人 須田 正義  

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