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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A47J
管理番号 1050004
異議申立番号 異議2000-70047  
総通号数 25 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-12-10 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-01-12 
確定日 2001-09-25 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2917921号「電気貯湯容器」の発明に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2917921号の発明に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第2917921号の発明についての出願は、昭和60年2月5日に出願した特願昭60-22539号の一部を適法に新たな特許出願とした特願平5-200755号の一部を更に平成8年7月9日に適法に新たな特許出願としたものであって、平成11年4月23日にその発明について設定登録がなされ、その後、その特許について、異議申立人四宮唯泰により特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年6月14日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
2-1 訂正の内容
特許権者の求めている訂正の内容は、以下のとおりである。
a.訂正事項1
願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1の記載
【請求項1】器体の上方後部に枢支して開閉できるようにした蓋体と、器体に収容された内容器内の内溶液をその加圧を伴い器体と内容器との間を経て器体の前部から外部に注出する注出通路と、蓋体の下面に設けられて内容器の口部を開閉する金属製の内蓋と、この内蓋と蓋体との間にある管路を通じて内溶液から発生する蒸気を蓋体の後部に設けた排出口から外部に排出する蒸気抜き通路とを備え、前記注出通路には器体の前部に位置し前記内蓋の閉じ位置高さ近傍に位置して器体の転倒時に注出通路を閉じる転倒時止水弁を設け、前記蒸気抜き通路の管路は、蓋体のほぼ中央部に位置する内蓋の内容器に通じる通気孔から前記蓋体後部の排出口にまで延びていることを特徴とする電気貯湯容器。」を、
「【請求項1】器体の上方後部に枢支して開閉できるようにした蓋体と、器体に収容された内容器内の内溶液をその加圧を伴い器体と内容器との間を経て器体の前部から外部に注出する注出通路と、蓋体の下面に一体に取り付けられて内容器の口部を開閉する金属製の内蓋と、この内蓋と蓋体との間にそれらと別個に設けられた蒸気抜きパイプと、蓋体内にある蒸気ガイド筒部および蒸気排出筒部とを通じて内溶液から発生する蒸気を内蓋のほぼ中央部にある通気孔から蓋体の後部上面に設けた排出口に導き外部に排出する蒸気抜き通路とを備え、前記注出通路には器体の前部に位置し前記内蓋の閉じ位置高さ近傍に位置して器体の転倒時に注出通路を閉じる転倒時止水弁を設けたことを特徴とする電気貯湯容器。」と訂正する。

b.訂正事項2
特許明細書の段落【0010】に記載された
「本発明の電気貯湯容器は上記のような目的を達成するため、器体の上方後部に枢支して開閉できるようにした蓋体と、器体に収容された内容器内の内溶液をその加圧を伴い器体と内容器との間を経て器体の前部から外部に注出する注出通路と、蓋体の下面に設けられて内容器の口部を開閉する金属製の内蓋と、この内蓋と蓋体との間にある管路を通じて内溶液から発生する蒸気を蓋体の後部に設けた排出口から外部に排出する蒸気抜き通路とを備え、前記注出通路には器体の前部に位置し前記内蓋の閉じ位置高さ近傍に位置して器体の転倒時に注出通路を閉じる転倒時止水弁を設け、前記蒸気抜き通路の管路は、蓋体のほぼ中央部に位置する内蓋の内容器に通じる通気孔から前記蓋体後部の排出口にまで延びていることを主たる特徴とするものである。」を、
「本発明の電気貯湯容器は上記のような目的を達成するため、器体の上方後部に枢支して開閉できるようにした蓋体と、器体に収容された内容器内の内溶液をその加圧を伴い器体と内容器との間を経て器体の前部から外部に注出する注出通路と、蓋体の下面に一体に取り付けられて内容器の口部を開閉する金属製の内蓋と、この内蓋と蓋体との間にそれらと別個に設けられた蒸気抜きパイプと、蓋体内にある蒸気ガイド筒部および蒸気排出筒部とを通じて内溶液から発生する蒸気を内蓋のほぼ中央部にある通気孔から蓋体の後部上面に設けた排出口に導き外部に排出する蒸気抜き通路とを備え、前記注出通路には器体の前部に位置し前記内蓋の閉じ位置高さ近傍に位置して器体の転倒時に注出通路を閉じる転倒時止水弁を設けたことを主たる特徴とするものである。」と訂正する。

c.訂正事項3
特許明細書の段落【0012】に記載された
「蓋体の下面に設けられて内容器の口部を開閉する金属製の内蓋」を
「蓋体の下面に一体に取付けられて内容器の口部を開閉する金属製の内蓋」と訂正し、
同段落【0013】に記載された
「蒸気抜き通路が、蓋体のほぼ中央部にある内蓋の通気孔から蓋体の後部枢支側に設けられた排出口にまで延びて」を、
「蒸気抜き通路が、内蓋側部分である蒸気抜きパイプと蓋体側部分である蒸気ガイド筒部および蒸気排出筒部より構成されて蓋体のほぼ中央部にある内蓋の通気孔から蓋体の後部枢支側に設けられた排出口にまで延びて」と訂正し、
同段落【0014】に記載された
「金属製の内蓋は共に開閉される蓋体に位置して、蓋体やこれと内蓋との間に設けた蒸気抜き通路のそれぞれを」を、
「金属製の内蓋は共に開閉される蓋体と一体に位置して、蓋体や これと内蓋との間に設けた蒸気抜きパイプのそれぞれを」と訂正する。

d.訂正事項4
特許明細書の段落【0075】に記載された
「蓋体の下面に設けられて内容器の口部を開閉する金属製の内蓋」を、
「蓋体の下面に一体に取付けられて内容器の口部を開閉する金属製の内蓋」
と訂正し、
同段落【0076】に記載された
「蒸気抜き通路が、蓋体のほぼ中央部にある内蓋の通気孔から蓋体の後部枢支側に設けられた排出口にまで延びて」を、
「蒸気抜き通路が、内蓋側部分である蒸気抜きパイプと蓋体側部分である蒸気ガイド筒部および蒸気排出筒部より構成されて蓋体のほぼ中央部にある内蓋の通気孔から蓋体の後部枢支側に設けられた排出口にまで延びて」と訂正し、
同段落【0076】に記載された
「金属製の内蓋は共に開閉される蓋体に位置して、蓋体やこれと内蓋との間に設けた蒸気抜き通路のそれぞれを」を、
「金属製の内蓋は共に開閉される蓋体と一体に位置して、蓋体や これと内蓋との間に設けた蒸気抜きパイプのそれぞれを」と訂正する。

e.訂正事項5
特許明細書の特許請求の範囲の請求項2の記載
「【請求項2】蓋体内に内容液を加圧するベローズポンプンが設けられ、ベーローズポンプからの加圧空気を前記通気孔を共用して内容器内に供給する給気通路を形成し、ベローズポンプの押圧操作に連動して蒸気抜き通路および給気通路のうち給気通路のみが通気孔に通じ、ベローズポンプの押圧解除時の復動に連動して蒸気抜き通路のみが通気孔に通じるようにそれら通路を切り換えるようにした請求項1に記載の電気貯湯容器。」を
「【請求項2】蓋体内に内容液を加圧するベローズポンプが設けられ、ベローズポンプからの加圧空気を前記通気孔を共用して内容器内に供給する給気通路を形成し、ベローズポンプの押圧操作に連動して蒸気抜き通路および給気通路のうち給気通路のみが通気孔に通じ、ベローズポンプの押圧解除時の復動に連動して蒸気抜き通路のみが通気孔に通じるようにそれら通路を切り換えるようにした請求項1に記載の電気貯湯容器。」と訂正する。

f.訂正事項6
特許明細書の段落【0011】に記載された
「ベローズポンプンが設けられ、ベーローズポンプからの」を、
「ベローズポンプが設けられ、ベローズポンプからの」と訂正する。

g.訂正事項7
特許明細書の段落【0015】に記載された
「本発明のさらなる特徴の蒸気構成によれば」を、
「本発明のさらなる特徴の上記構成によれば」と訂正する。

h.訂正事項8
特許明細書の【符号の説明】に記載された
「8 ベローズ下板 17 枢軸 26操作杆 30 通気孔 33 流通孔 34 パッキング弁 35 弁孔 39 排出口」を
「8 べローズ下板 9 蒸気抜きパイプ 17 枢軸 25 ビス 26 操作杵 30 通気孔 33 流通孔 34 パッキング弁 35 弁孔 36、36a 蒸気ガイド筒部 38、38a 蒸気排出筒部 39 排出□」と訂正する。

2-2 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
上記訂正事項1は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された内蓋の蓋体との関係において「設けられて」を「一体に取り付けられて」と限定し、また、蒸気抜き通路の構成と、蒸気抜き通路の内蓋および蓋体との関係において、「内蓋と蓋体との間にある管路を通じて内溶液から発生する蒸気を蓋体の後部に設けた排出口から外部に排出する蒸気抜き通路」及び「蒸気抜き通路の管路は、蓋体のほぼ中央部に位置する内蓋の内容器に通じる通気孔から前記蓋体後部の排出口にまで延びている」点につき、「内蓋と蓋体との間にそれらと別個に設けられた蒸気抜きパイプと、蓋体内にある蒸気ガイド筒部および蒸気排出筒部とを通じて内溶液から発生する蒸気を内蓋のほぼ中央部にある通気孔から蓋体の後部上面に設けた排出口に導き外部に排出する蒸気抜き通路」と限定するものである。
そして、当該「一体に取り付けられて」となる記載に関する事項として、特許明細書の段落【0022】に「前記ベローズ下板8の下面には、ビス25を用いてステンレス鋼またはアルミニウム製の内蓋5が一体に取付けてあり、かつ両者の間に空間が形成されるように構成している。」と記載されている。
また、「内蓋と蓋体との間にそれらと別個に設けられた蒸気抜きパイプと、蓋体内にある蒸気ガイド筒部および蒸気排出筒部とを通じて内溶液から発生する蒸気を内蓋のほぼ中央部にある通気孔から蓋体の後部上面に設けた排出口に導き外部に排出する蒸気抜き通路」なる記載に関する事項として、特許明細書の段落【0024】に「前記空間には内容器1内で内溶液から発生する蒸気を蓋体4外に排出する蒸気通路101の一部を形成する合成樹脂製の蒸気抜きパイプ9が、前記空間を形成しているベローズ下板8と内蓋5との間にこれらベローズ下板8および内蓋5とは別個に設けられて蒸気抜き通路101の内蓋5側部分をなし、一端が内蓋5の一部に形成した開口より内容器1内に連通するようにしている。」と記載され、同段落【0036】に「ベローズ下板8の蓋体枢着側である後端部には蒸気抜き通路101の蓋体4側部分をなす蒸気ガイド筒部36が上面側に突出するように一体成形して立設されている。」と記載され、同段落【0037】に「蓋体4の上板である蓋本体37の蓋体枢着側の後端部には蓋体4側部分の上部をなす蒸気排出筒部38が下面側に突出するように一体形成され、前記蒸気ガイド筒部36と連通され、蒸気排出筒部38の上端部が蒸気の排出口39として蓋体4の上板をなす蓋本体37の蓋体枢着側の上面一部に開口するようにしてある。」と記載されている。
そうすると、上記訂正事項1は、特許明細書に記載された範囲内において内蓋の蓋体との関係において「設けられて」を限定し、また、蒸気抜き通路の構成と、蒸気抜き通路の内蓋および蓋体との関係において、蒸気抜き通路を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮に該当するものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

(2)訂正事項2、訂正事項3、訂正事項4、訂正事項8について
上記各訂正事項は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項1の訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と明細書の詳細な説明の記載との整合を図るためになされたものであり、しかも、これら各訂正事項は、いずれも、特許明細書に記載された範囲内においてなされたものといえる。
したがって、上記各訂正事項は、明瞭でない記載の釈明に該当するものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

(3)訂正事項5、訂正事項6、訂正事項7について
上記各訂正事項は、特許明細書の記載からみて、明らかな誤記を訂正するものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。

2-3 むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立についての判断
3-1 申立ての理由の概要
異議申立人四宮唯泰は、本件発明は、下記甲各号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであり、特許を取り消すべき旨主張している。
甲第1号証:特開昭59-115015号公報(当審が通知した取消理由において刊行物1として引用したもの。)
甲第2号証:実願昭58-91050号(実開昭60-2418号公報)のマイクロフィルム(当審が通知した取消理由において刊行物2として引用したもの。)

3-2 本件発明
本件発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項2を実施態様とする同請求項1に記載された次のとおりのものであると認める。
「【請求項1】器体の上方後部に枢支して開閉できるようにした蓋体と、器体に収容された内容器内の内溶液をその加圧を伴い器体と内容器との間を経て器体の前部から外部に注出する注出通路と、蓋体の下面に一体に取り付けられて内容器の口部を開閉する金属製の内蓋と、この内蓋と蓋体との間にそれらと別個に設けられた蒸気抜きパイプと、蓋体内にある蒸気ガイド筒部および蒸気排出筒部とを通じて内溶液から発生する蒸気を内蓋のほぼ中央部にある通気孔から蓋体の後部上面に設けた排出口に導き外部に排出する蒸気抜き通路とを備え、前記注出通路には器体の前部に位置し前記内蓋の閉じ位置高さ近傍に位置して器体の転倒時に注出通路を閉じる転倒時止水弁を設けたことを特徴とする電気貯湯容器。
【請求項2】蓋体内に内容液を加圧するベローズポンプが設けられ、ベローズポンプからの加圧空気を前記通気孔を共用して内容器内に供給する給気通路を形成し、ベローズポンプの押圧操作に連動して蒸気抜き通路および給気通路のうち給気通路のみが通気孔に通じ、ベローズポンプの押圧解除時の復動に連動して蒸気抜き通路のみが通気孔に通じるようにそれら通路を切り換えるようにした請求項1に記載の電気貯湯容器。」

3-3 甲各号証に記載の事項
(1)甲第1号証
甲第1号証には、エアーポットに関し、図面とともに、「蓋体内に装着されたべローズからの吐出空気をべローズと中蓋との間を連絡する蓋パッキングおよび前記中蓋連通孔を経て、容器内へ空気を吹き込み容器内液体を外部へ注出するようにし、前記中蓋上面の蓋パッキングにより密閉された面に前記中蓋連通孔とともに外部に通ずる空気孔を設け、べローズ膨張状態の通常時は押し板と連動する切換弁がべローズ下部のべローズと連通孔を連結する空気噴出孔を閉塞し、ベローズ収縮、状態の操作時は前記空気孔を閉塞するようにしたエアーポット。」(特許請求の範囲)であること、「第2、3図において、1は有底筒状のステンレス鋼板等で形成された容器であり、その底部外周には・・・主ヒーター2、補助ヒーター3が・・・装着されている。」(第2頁右上欄10〜14行)こと、「容器1の上端には外周方向に伸設したフランジ部1aを一体に有し、・・・ボデー8に載置されている。」(第2頁左下欄1〜4行)こと、「9は容器1の開口部に着脱自在に載置された中蓋であり、その略中央には空気孔9aと蒸気孔9bを結ぶ蒸気室9cを有している。また空気孔9aの前方周辺には容器1内と連通する連通孔9dと、さらにその前方には転倒流出防止弁10を内蔵した弁室11を有している。」(第2頁左下欄5〜10行)こと、「15は弁室11から容器1底部に伸設し、その下端は前記容器1の底面凹部に位置して開口する昇水パイプであり、上端は容器1の外方に伸設し、その先端には下方向に開口した注出口16aを備えた注出パイプ16と弁室11で連結される。17は注口7の後部で枢着された蓋体であり、その上部中央部には上面を開□した円筒部17aを設け、この円筒部17a内には上下摺動可能な押し板18を備え、この押し板18の下部に収納されたべローズ19に内蔵されたうず巻バネ20に抗してべローズ10を圧縮操作をする。・・・下部には空気噴出孔21aを備えている。 逆止弁22には圧縮バネ23により下方に付勢され空気噴出孔21aから突出する操作杵24を備えている。」(第2頁左下欄15行〜同頁右下欄13行)こと、「25は操作汗24の下端に設けた切襖弁で通常状態においては空気噴出孔21aを閉塞し、押し板18の圧縮操作時には空気孔9aを閉塞し、連通孔9dによりベローズ19内と容器1を連結するようになっている。」(第2頁右下欄16〜20行)こと、「33は中蓋9の蒸気孔9bと蓋体17の排気孔17b連結する排気通路で通路パッキング34によりシールドされている。」(第3頁左上欄10〜12行)こと、「そして湯が沸くにしたがって蒸気が発生すると、この蒸気は中蓋9に設けた連通孔9d、空気孔9a、蒸気室9cを通り、蒸気孔9b、排気通路33を経て排気孔17bより器体外へ放出される。」(第3頁左上欄末行〜同頁右上欄4行)ことが記載されている。
また、上記記載からみて、蒸気室9c及び排気通路33は、蒸気放出用の通路を形成しているといえる。

(2)甲第2号証
甲第2号証には、電気エアポットに関し、図面とともに、「その目的は、蓋体を開いたとき一体に中蓋も開くことができ、かつ中蓋を蓋体から容易に取り外すことができるとともに、中蓋を容器上面に正確に結着させることができる電気エアーポットの中蓋取付構造を提供することにある。」(第3頁第1〜5行)こと、「第1図〜第3図は本考案にかかる電熱エアーポットの第1実施例を示し、金属製外装体1の内部には断熱材2を巻装した金属製容器3が収納されている。この容器3の底部外周には電熱ヒータの一例であるバンドヒータ4が巻装されており、容器3の底面には1個の開口孔5が穿設されている。この開口孔5には接続管6が溶接されており、接続管6の他端には分岐管7を介して給水管8と水位管11とが設続されている。給水管8の上端は安全弁9を介して注口10に接続され、一方水位管11の上端は容器3の上部に連通している。」(第3頁14行〜第4頁5行)こと、「蓋体14の内部には押体15の押圧動作により伸縮自在なエアーポンプ16が収納されている。」(第4頁10〜12行)こと、「中蓋18は蓋体14の下面に一体に取付けられる。」(第5頁12〜13行)ことが記載されている。
また、第1図からみて、給水管8は、外装体1と容器3との間に設られていることが窺える。

3-4 対比
甲第1号証には、上記摘示した事項からみて、「ボデー8の上方後部に枢着されて開閉できるようにした蓋体17と、ボデー8に収容された容器1内の内容液をその加圧を伴い容器1内を経てボデー8の前部から外部に注出する昇水パイプ15、弁室11及び注出パイプ16と、蓋体17の下面にあって容器1の開口部に着脱自在な中蓋9と、この中蓋9と蓋体17との間に設けられた蒸気室9cと、蓋体17内にある排気通路33とを通じて内容液から発生する蒸気を中蓋9のほぼ中央部にある連通孔9dから蓋体17の後部上面に設けた排出口17bに導き器体外へ放出する蒸気放出用の通路とを備え、弁室11には中蓋9の閉じ位置高さ近傍に位置してボデー8の転倒時に弁室11を閉じる転倒流出防止弁10を設けたエーアポット」が記載されている。
そこで、本件発明と甲第1号証に記載された発明を対比すると、甲第1号証に記載された「ボデー8」、「容器1」、「昇水パイプ15、弁室11及び注出パイプ16」、「容器1の開口部」、「中蓋9」、「連通孔9d」、「排気口17b」、「蒸気放出用の通路」、「転倒流出防止弁10」、「エアーポット」は、それぞれ、本件の請求項1に係る発明の「器体」、「内容器」、「注出通路」、「内容器の口部」、「内蓋」、「通気口」、「排出口」、「蒸気抜き通路」、「転倒時止水弁」、「電気貯湯容器」に相当するから、両者は、
「器体の上方後部に枢支して開閉できるようにした蓋体と、器体に収容された内容器内の内溶液をその加圧を伴い器体の前部から外部に注出する注出通路と、内容器の口部を開閉する内蓋と、この内蓋と蓋体との間に内溶液から発生する蒸気を内蓋のほぼ中央部にある通気孔から蓋体の後部上面に設けた排出口に導き外部に排出する蒸気抜き通路とを備え、注出通路には内蓋の閉じ位置高さ近傍に位置して器体の転倒時に注出通路を閉じる転倒時止水弁を設けた電気貯湯容器」
の点で一致し、次の点で相違する。
イ.本件発明における注出通路は、内溶液を器体と内容器との間を経て器体の前部から外部に注出するものであるのに対し、甲第1号証に記載された発明における注出通路は、内容液を容器1内を経て器体の前部から外部に注出するものである点。
ロ.本件発明における内蓋は、金属製とされ、蓋体の下面に一体に取り付けられているのに対し、甲第1号証に記載された発明の中蓋は、そのようになっていない点。
ハ.本件発明における蒸気抜き通路は、内蓋と蓋体との間にそれらと別個に設けられた蒸気抜きパイプと、蓋体内にある蒸気ガイド筒部および蒸気排出筒部とから構成されているのに対し、甲第1号証に記載された発明における蒸気抜き通路は、内蓋と蓋体との間に設けられた蒸気室と、蓋体内にある排気通路とから構成されている点。

3-5 判断
(1)相違点イについて
甲第2号証には、上記摘示した事項からみて、電気貯湯容器(甲第2号証における電気エアーポット、以下同様)において、器体(外装体1)に収容された内容器(容器3)内の内容液(液体)をその加圧を伴い器体と内容器との間を経て器体の前部から外部に注出する注出通路(給水管8)を設けた点が記載されており、甲第1号証に記載された注出通路を甲第2号証に記載されたように器体と内容器の間に設けるようにして、上記相違点イであげた本件発明の構成のようにすることは、当業者であれば容易になし得る程度のことといえる。

(2)相違点ロについて
甲第2号証には、上記摘示した事項からみて、電気貯湯容器(甲第2号証における電気エアーポット、以下同様)において、器体(外装体1)の上方後部に枢支して開閉できるようにした蓋体(蓋体14)の下面に一体に取り付けられて内容器(容器3)の口部(上端開口部)を閉鎖(開閉)する金属製の内蓋(中蓋18)を設けた点が記載されており、甲第1号証に記載された中蓋を甲第2号証に記載されたように金属製とし、蓋体の下面に一体に取り付けるようにして、上記相違点イであげた本件発明の構成のようにすることは、当業者であれば容易になし得る程度のことといえる。

(3)相違点ハについて
甲第1号証に記載された蒸気抜き通路の一部を構成する蓋体内にある排気通路33を本件請求項1に係る発明のように蒸気ガイド筒部と蒸気排出筒部に分けて構成することは、当業者であれば適宜なし得る設計上の事項にすぎないといえる。
しかしながら、甲第1号証に記載された蒸気抜き通路の一部を構成する蒸気室9cは、中蓋と蓋体との間に形成される空間から構成されており、本件発明の構成のように内蓋と蓋体との間にそれらと別個に設けられた蒸気抜きパイプとは、その構成が相違している。
また、甲第2号証には、蒸気抜き通路を設けることについては、何ら記載されていない。
そして、本件発明は、内蓋と蓋体との間にそれらと別個に蒸気抜きパイプを設けたことにより、訂正明細書の段落【0076】に記載された「内容器内で発生する蒸気や、器体転倒時の蒸気排出経路を伝って注出しようとする内容液が、蓋体内に侵入して熱劣化させるようなことを防止することができる。特に、蒸気抜き通路が、内蓋側部分である蒸気抜きパイプと蓋体側部分である蒸気ガイド筒部および蒸気排出筒部より構成されて蓋体のほぼ中央部にある内蓋の通気孔から蓋体の後部枢支側に設けられた排出口にまで延びて、内容液が内容器内から蒸気抜き通路を通じて器体外に流出させるようにしてあるため、たとえ器体の転倒時に蒸気抜き通路内に内容液が侵入したとしても、内容液が器体外に流出する時間を迂回長さ分遅らせて、その遅れた分内容液が外部に流出する前に処置できるようになるので、より安全性の高いものとなる。」、同段落【0077】に記載された「しかも、金属製の内蓋は共に開閉される蓋体と一体に位置して、蓋体やこれと内蓋との間に設けた蒸気抜きパイプのそれぞれを、内容器内で発生する蒸気から絶えず隔絶して保護するので、これらが蒸気により熱劣化して寿命が短くなるようなことを防止することができる」という格別の効果を生じるものであり、甲第1号証に記載された蒸気室9cの構成から本件発明の蒸気抜きパイプを当業者が容易に想到し得たとすることができない。

(4)したがって、本件発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとすることができない。

(5)また、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項2で限定した構成が甲第1号証に記載されているとしても、該請求項2に記載されたものは、本件発明の実施態様であるから、本件発明と同様の理由により、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとすることができない。

3-6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由によっては本件発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
電気貯湯容器
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 器体の上方後部に枢支して開閉できるようにした蓋体と、器体に収容された内容器内の内溶液をその加圧を伴い器体と内容器との間を経て器体の前部から外部に注出する注出通路と、蓋体の下面に一体に取り付けられて内容器の口部を開閉する金属製の内蓋と、この内蓋と蓋体との間にそれらと別個に設けられた蒸気抜きパイプと、蓋体内にある蒸気ガイド筒部および蒸気排出筒部とを通じて内溶液から発生する蒸気を内蓋のほぼ中央部にある通気孔から蓋体の後部上面に設けた排出口に導き外部に排出する蒸気抜き通路とを備え、前記注出通路には器体の前部に位置し前記内蓋の閉じ位置高さ近傍に位置して器体の転倒時に注出通路を閉じる転倒時止水弁を設けたことを特徴とする電気貯湯容器。
【請求項2】 蓋体内に内容液を加圧するベローズポンプが設けられ、ベローズポンプからの加圧空気を前記通気孔を共用して内容器内に供給する給気通路を形成し、ベローズポンプの押圧操作に連動して蒸気抜き通路および給気通路のうち給気通路のみが通気孔に通じ、ベローズポンプの押圧解除時の復動に連動して蒸気抜き通路のみが通気孔に通じるようにそれら通路を切り換えるようにした請求項1に記載の電気貯湯容器。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は加圧される内容液を器体外に注出する注出通路と加熱される内容液から発散する蒸気を外部に排出する蒸気抜き通路とを備えた電気貯湯容器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電気ポット等では内容液を外部に注出してこれを使用するための注出通路の外に、内容液を加熱することにより生じる蒸気を蓋体を通じて外部に排出し、器体内の異常な昇圧を防止する蒸気抜き通路が設けられている。
【0003】
また電気ポットは、使用中あるいは定置中に不用意な引っ掛かり合い等によって転倒することがときとしてあり、器体が転倒すると、前記注出通路や蒸気抜き通路を通じて内容液が外部に流出し、まわりを濡らすし熱湯であるため危険でもある。
【0004】
そこで従来、このような器体の転倒による内容液の不用意な流出を防止するために、注出通路や蒸気抜き通路に、器体の転倒時にこれら通路を閉じて内容液の流出を防止する転倒時止水弁を設けることも行われている。
【0005】
特開昭59-115015号公報▲1▼、特開昭58-67219号公報▲2▼および特開昭58-67200号公報▲3▼はこのような転倒時止水構造を持った電気貯湯容器を開示している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、これらのものは、器体の上端を開閉する蓋体と、この蓋体とは個別に設けられて内容器の口部に着脱される中蓋とを備えており、内容液の注出通路と蒸気抜き通路との双方が、前記中蓋部分を通っている。このため、中蓋の装着が忘れていると、内溶液を注出することができないし、器体が転倒したような場合、内容器の口部は開放されたままであるため転倒時止水弁が設けられている位置や構造に関わりなく内溶液が流出してしまう。また、▲1▼の公報に記載のもののように、中蓋の下面が金属製部材により形成されていても、中蓋の装着忘れがあると蓋体の下面を内溶液から発生する高温蒸気に曝してしまうので保護し切れず、熱劣化により製品寿命が短くなる。
【0007】
また、▲2▼、▲3▼の公報に記載のものは、注出通路に設けた転倒時止水弁が、中蓋よりも下の内容器内に位置するので、内溶液の上限液位をこれよりも上に設定して収容効率を高めると、転倒時止水弁が常時内溶液に浸漬されて熱劣化してしまうし、これを避けるために上限液位を転倒時止水弁よりも下に設定すると収容効率が低下してしまう。
【0008】
実開昭60-91124号公報▲4▼および特開昭58-67220号公報▲5▼は、注出通路および蒸気抜き通路の双方に転倒時止水弁を設けたものが開示されている。しかし、いずれも注出通路の転倒時止水弁は器体を閉じる蓋体の下面よりも低く、内容液の転倒時止水弁よりも上になる分についての止水はできないし、▲4▼に開示の蒸気抜き通路の転倒時止水弁は構造が複雑で高価につく。
【0009】
本発明は、上記のような問題を解消することを課題とし、蓋構造および注出路構造の改良によって、転倒時の安全を確保できるとともに、耐久性にも優れた電気貯湯容器を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の電気貯湯容器は上記のような目的を達成するため、器体の上方後部に枢支して開閉できるようにした蓋体と、器体に収容された内容器内の内溶液をその加圧を伴い器体と内容器との間を経て器体の前部から外部に注出する注出通路と、蓋体の下面に一体に取りつけられて内容器の口部を開閉する金属製の内蓋と、この内蓋と蓋体との間にそれらと別個に設けられた蒸気抜きパイプと、蓋体内にある蒸気ガイ上筒部および蒸気排出筒部とを通じて内溶液から発生する蒸気を内蓋のほぼ中央部にある通気孔から蓋体の後部上面に設けた排出口に導き外部に排出する蒸気抜き通路とを備え、前記注出通路には器体の前部に位置し前記内蓋の閉じ位置高さ近傍に位置して器体の転倒時に注出通路を閉じる転倒時止水弁を設けたことを主たる特徴とするものである。
【0011】
これに加え、蓋体内に内容液を加圧するベローズポンプが設けられ、ベローズポンプからの加圧空気を前記通気孔を共用して内容器内に供給する給気通路を形成し、ベローズポンプの押圧操作に連動して蒸気抜き通路および給気通路のうち給気通路のみが通気孔に通じ、ベローズポンプの押圧解除時の復動に連動して蒸気抜き通路のみが通気孔に通じるようにそれら通路を切り換えるようにしたこともさらなる特徴とするものである。
【0012】
【作用】
本発明の電気貯湯容器の上記主たる特徴の構成によれば、蓋体の下面に一体に取付けられて内容器の口部を開閉する金属製の内蓋を備えたから、蓋体は開き状態では、内蓋と兵に内容器の口部から開放させるので、内容液の給排や内容器内の洗浄を容易に行えるようにすることができ、閉じ状態では内蓋により内容器の口部を忘れなく確実に閉じることができる。内容液が加熱され蒸気が発生してもこれを蓋体の蒸気抜き通路を通じて蓋体の後部枢支側の排出口から蓋体外に排出しているため、注出操作時に一瞬にも蒸気が不用意に排出されることがあっても、注出側から離れた位置に排出口が位置されるため、蒸気による影響をより防止することができる。
【0013】
また、器体が前部に転倒したとしても、注出通路の器体前部の位置に設けた転倒時止水弁が器体の転倒に応動して注出通路を閉じるので、注出通路を通じた内容液の流出を防止することができる。さらに、内容器内で発生する蒸気や、器体転倒時の蒸気排出経路を伝って注出しようとする内容液が、蓋体内に侵入して熱劣化させるようなことを防止することができる。特に、蒸気抜き通路が、内蓋側部分である蒸気抜きパイプと蓋体側部分である蒸気ガイド筒部および蒸気排出筒部より構成されて蓋体のほぼ中央部にある内蓋の通気孔から蓋体の後部枢支側に設けられた排出口にまで延びて、内容液が内容器内から蒸気抜き通路を通じて器体外に流出させるようにしてあるため、たとえ器体の転倒時に蒸気抜き通路内に内容液が侵入したとしても、内容液が器体外に流出する時間を迂回長さ分遅らせて、その遅れた分内容液が外部に流出する前に処置できるようになるので、より安全性の高いものとなる。
【0014】
しかも、金属製の内蓋は共に開閉される蓋体と一体に位置して、蓋体やこれと内蓋との間に設けた蒸気抜きパイプのそれぞれを、内容器内で発生する蒸気から絶えず隔絶して保護するので、これらが蒸気により熱劣化して寿命が短くなるようなことを防止することができるし、注出通路の転倒時止水弁は内蓋の閉じ高さ位置近傍にあるので、たとえ内容器の内蓋近傍にまで内容液を給水したとしても、注出通路の転倒時止水弁が内容液に常時浸漬されて熱劣化し寿命が短くなるようなことも回避できると共に、器体が転倒した場合でも、蓋体の閉じ高さ位置近傍下方の注出通路内の内容液の注出が防止されるため、注出通路からの内容液の流出も極力防止することができる。
【0015】
本発明のさらなる特徴の上記構成によれば、蓋体に設けられたベローズポンプからの給気路が、蒸気抜き通路が内容器内に通じる通気孔を共用して、内容器内に通じてベローズポンプからの加圧空気を内容器内に供給し内容液の加圧が行える通気構造と、この通気孔に対し蒸気抜き通路および給気通路をベローズポンプの圧操作と押圧解除時の復動に連動して択一的に通じるようにする通気孔近傍に集約できる通路の切り換え構造とによって、迂回路をなす蒸気抜き通路の全体を含め、構造が簡単でコンパクトなものとなる利点がある上、蒸気抜き通路は給気通路との通気孔の共用にかかわらず、ベローズポンプが押圧操作されず復動状態にある通常時に通気孔に通じて、外部に排出する内容器内からの蒸気や、器体の転倒時に蒸気抜き通路を通じて流出しようとする内容液が、ベローズポンプ内に侵入して熱劣化させるようなことを防止することができるとともに、ベローズポンプを押圧操作したときのベローズポンプからの圧縮空気が蒸気抜き通路へ逃げて不用意に排出してしまうことを防止し、かつ、給気通路および通気孔を通じて内容液を圧縮空気の漏れなく加圧して注出通路を通じて確実に注出できるようにする。
【0016】
【実施例】
以下、本発明の幾つかの実施例につき図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1に示す第1の実施例において、1は開口部が胴内径とほぼ同一径に形成されて器体2に収容された広口の内容器である。器体2は外装ケース10、底環11および底板12から構成され、ヒータ13を底部に収容している。器体2の前部上方にはパイプカバー14が設けられ、肩環15によって器体2の口部と内容器1の口部とが連結され、内容器1の底部と底環11とを支持部材16で連結することにより内容器1と器体2とを一体化している。
【0018】
また内容器1内の内溶液を外部に注出するための注出通路7は器体2側の前部に設けられ、その始端7aは内容器1の底部に接続されている。
【0019】
前記器体2には内溶液を加圧注出するためのベローズポンプ3を収容した蓋体4が開閉可能なように器体2の後部の上方に枢支されている。17は器体2の肩環15の後部と蓋体4の後端部18とを枢着する枢軸であり、蓋体4側に取付けてある。
【0020】
肩環15の後部にはL字形の取付け孔50が形成してあり、このL字形孔50に拘束されて前記枢軸17、延いては蓋体4は着脱可能に器体2に取付けられる。
【0021】
前記ベローズポンプ3は、押板19、空気取入弁20、操作杆26、ベローズ上板21、ベローズ22、ベローズ下板8、リターンスプリング23等で構成されて、押板19の押圧操作により給気通路100を通じ圧縮空気を供給して内容液を押圧するようにしてある。なお、24はベローズポンプ3の作動をロックさせるための安全機構である。
【0022】
前記ベローズ下板8の下面には、ビス25を用いてステンレス鋼またはアルミニウム製の内蓋5が一体に取付けてあり、かつ両者の間に空間が形成されるように構成している。
【0023】
この金属製の内蓋5は蓋体4とともに開閉動作され、蓋体4の閉蓋時に、内容器1の口部6にリング状パッキング27を介し密着し、内容器1の口部6を閉じる。
【0024】
前記空間には内容器1内で内溶液から発生する蒸気を蓋体4外に排出する蒸気通路101の一部を形成する合成樹脂製の蒸気抜きパイプ9が、前記空間を形成しているベローズ下板8と内蓋5との間にこれらベローズ下板8および内蓋5とは別個に設けられて蒸気抜き通路101の内蓋5側部分をなし、一端が内蓋5の一部に形成した開口より内容器1内に連通するようにしている。図示する例では2本のパイプ9a、9bを接続して蒸気抜きパイプ9を構成し、前記内蓋5をベローズ下板8に取付けるとき同時にベローズ下板8に蒸気抜きパイプ9が固定されるようにしている。
【0025】
この蒸気抜きパイプ9の図1左端部には、圧縮空気の給気通路100の一部をなす通過孔28が形成され、その通過孔28の下方に転倒時止水弁29が配されている。転倒時止水弁29は蓋体37のほぼ中央部に位置し、常開で給気通路100の一部をなす通気孔30上に配されて、給気通路100および蒸気抜き通路101の転倒時止水弁として機能するようにしている。この通気孔30は前記内蓋5に開設されており、ここを通じて前記給気通路100からの圧縮空気が内容器1内に供給されるとともに、内容器1内で発生する蒸気が蓋体4内部に導かれる。
【0026】
また31は蒸気抜きパイプ9の外壁を利用しこれに一体に形成されたガイドリブであり、転倒時止水弁29を上下方向に案内する。
【0027】
前記転倒時止水弁29は内容器1の転倒時に、前記通過孔28に着座して、これを閉じることによって、内容器1内の内溶液が給気通路100および蒸気抜き通路101を通じて蓋体4の外部に流出することを防止する作用を営む。
【0028】
本実施例では前記転倒時止水弁29を前記ベローズポンプ3に押板19の押圧操作に連動するように設けた操作杆26より前方に偏位するように配して、ベローズ下板8と内蓋5との間の上下方向の厚みを減少させて蓋体4のコンパクト化を図っている。
【0029】
器体2が転倒したとき、注出通路7または/および蒸気抜き通路からの流出しようとする内容液は、これら注出通路7および蒸気抜き通路101に設けられた転倒時止水弁51、29によって、内容液が外部に流出しようとするもを確実に防止することができる。特に、注出通路7は器体2の前部から内容液を外部に注出し、蒸気抜き通路101は蓋体37の後部から外部に蒸気を排出するようにしてある。これによって器体2が前部に転倒したときは注出通路7のもを通じてのみ、後部に転倒したときは蒸気抜き通路101を通じてのみ、内容液は外部に流出しようとするが、注出通路7および蒸気抜き通路101の双方に設けた転倒時止水弁29、51が器体2の転倒によって閉じるので、内容液が外部に流出するようなことを防止することができる。
【0030】
前記転倒時止水弁29は図1に示すように、蒸気抜き通路101の蓋体37の前部側よりも後部側を通る部分の位置であるが、蓋体37のほぼ中央を通る位置に設けてあるため、器体2がどの方向に転倒したとしても、内容液が半分程度しかない場合は転倒時止水弁29を越えないので外部に流出することはないし、転倒時止水弁29を越えるようなことがあっても器体2の転倒によって転倒時止水弁29が閉じているので、内容液が蒸気抜き通路101を通じて外部に流出するようなことを確実に防止することができる。
【0031】
内容器1内の蒸気は蒸気抜き通路101の一部を兼ねた給気通路100の一部である前記通気孔30および前記通過孔28を通過した後、ベローズ下板8の中央部と前記蒸気抜きパイプ9の上部との間に形成されたチャンバー32に入り、次いで内蓋側蒸気抜き通路101の一部を形成する蒸気抜きパイプ9の上部に設けた流通孔33より蒸気抜きパイプ9の内部に入る。
【0032】
この流通孔33は操作杆26の直下に位置し、押板19を押し下げてベローズポンプ3を作動させたとき、前記操作杆26の下端に取付けたパッキング弁34によって閉塞される。
【0033】
またこのときベローズ下板8の中央に設けられたベローズポンプ3内に通じるベローズポンプ3の給気口を形成する弁孔35は開くので、ベローズ下板8から圧送される圧縮空気は、内容器1の給気のための給気通路100に通じる給気口となる前記弁孔35を通じて、この弁孔35から内容器1への給気通路100の一部をなすチャンバー32に流入し、次いで前記通過孔28、通気孔30を経て内容器1内に入る。
【0034】
そしてこの圧縮空気の圧力によって内容器1に収容された内溶液を加圧し器体2外に注出するのに、器体2の前部で器体2の外装ケース10と内容器1との間の空間の立上がり部をなす下パイプ46を経て器体2外に注出する注出通路7を設けてあり、この注出通路7を通じて注出する。
【0035】
なお、上述のように押板19を押し下げたときこの押板19の押圧操作に連動した操作杆26の下動位置で蒸気抜き通路に通じる前記流通孔33は閉塞されているので、圧縮空気は外気に通じる蒸気抜き通路101の蒸気抜きパイプ9の内部には流入しない。
【0036】
蒸気抜きパイプ9は前記ベローズ下板8と前記内蓋5との間に形成される空間内を後方に向け延び、蓋体4の周辺後部に達している。ベローズ下板8の蓋体枢着側である後端部には蒸気抜き通路101の蓋体4側部分をなす蒸気ガイド筒部36が上面側に突出するように一体成形して立設されている。
【0037】
また、蓋体4の上板である蓋本体37の蓋体枢着側の後端部には蓋体4側部分の上部をなす蒸気排出筒部38が下面側に突出するように一体形成され、前記蒸気ガイド筒部36と連通され、蒸気排出筒部38の上端部が蒸気の排出口39として蓋体4の上板をなす蓋本体37の蓋体枢着側の上面一部に開口するようにしてある。
【0038】
前記蒸気抜きパイプ9の先端部には前記蒸気ガイド筒部36のベローズ下板8への開口に連通する出口40が設けられているとともに、肩環15に保持された蒸気温度検出センサ41に蒸気を当てるための孔42が設けられている。
【0039】
したがって、内容器1から蒸気抜きパイプ9に入った蒸気は前記出口40、蒸気ガイド筒部36および蒸気排出筒部38を経て、前記排出口39より蓋体4の押板19から離れた蓋体4の周辺後部から外気に排出され、内容器1内の圧力が過上昇するのを防止している。
【0040】
本実施例での上記のような蓋構造および蒸気抜き通路構造では、蓋体4の下面に設けられて内容器の口部を開閉する金属製の内蓋5を備えたから、蓋体4は枢軸17による枢支部を中心として蒸気抜き通路101および内蓋5のそれぞれとともに開閉動作され、開き状態では内蓋4と共に、内容器1の口部6から開放させるので、内容液の給排や内容器1内の洗浄を容易に行えるようにすることができ、閉じ状態では内蓋5により内容器1の口部6を忘れなく確実に閉じることができる。内容液が加熱され蒸気が発生してもこれを蓋体4の蒸気抜き通路101を通じて蓋体4の後部枢支側の排出口30から蓋体4外に排出しているため、注出操作時に一瞬にも不用意に蒸気が排出されても、注出側から離れた位置に排出口30があるため、蒸気による影響をより防止することができる。
【0041】
また、器体2が前部に転倒したとしても、注出通路7の器体2前部の位置に設けた転倒時止水弁51が器体2の転倒に応動して注出通路7を閉じるので、注出通路7を通じた内容液の流出を防止することができる。さらに、内容器1内で発生する蒸気や器体2転倒時の蒸気排出経路を伝って注出しようとする内容液が、蓋体4内に侵入して熱劣化させようなことを防止することができる。特に、蒸気抜き通路101が、蓋体4のほぼ中央部にある内蓋5の通気孔から蓋体4の後部枢支側に設けられた排出口39にまで延びて、内容液が内容器1内から蒸気抜き通路101を通じて器体4外に流出させるようにしてあるため、たとえ器体の転倒時に蒸気抜き通路101内に内容液が侵入したとしても、内容液が器体4外に流出する時間を迂回長さ分遅らせて、その遅れた分内容液が外部に流出する前に処置できるようになるので、より安全性の高いものとなる。
【0042】
しかも、金属製の内蓋5は共に開閉される蓋体4に位置して、蓋体4やこれと内蓋5との間に設けた蒸気抜き通路101のそれぞれを、内容器1内で発生する蒸気から絶えず隔絶して保護するので、これらが蒸気により熱劣化して寿命が短くなるようなことを防止することができるし、注出通路7の転倒時止水弁51は内蓋5の閉じ高さ位置近傍にあるので、たとえ内容器1の内蓋5近傍にまで内容液を給水したとしても、注出通路7の転倒時止水弁51が内容液に常時浸漬されて熱劣化し寿命が短くなるようなことも回避できると共に、器体2が転倒した場合でも、蓋体4の閉じ高さ位置近傍下方の注出通路7内の内容液の流出が防止されるため、注出通路7からの内容液の流出も極力防止することができる。
【0043】
さらに、蓋体4に設けられたベローズポンプ3からの給気路100が、蒸気抜き通路101が内容器1内に通じる通気孔30を共用して、内容器1内に通じてベローズポンプ3からの加圧空気を内容器1内に供給し内容液の加圧が行える通気構造と、この通気孔30に対し蒸気抜き通路101および給気通路100をベローズポンプ3の圧操作と押圧解除時の復動に連動して択一的に通じるようにする通気孔30近傍に集約できる、操作杆26、流通孔33、パッキング弁34、弁孔36等がなす通路の切り換え構造とによって、迂回路をなす蒸気抜き通路101の全体を含め、構造が簡単でコンパクトなものとなる利点がある上、蒸気抜き通路101は給気通路100との通気孔30などの共用にかかわらず、ベローズポンプ3が押圧操作されず復動状態にある通常時に通気孔に通じて、外部に排出する内容器1内からの蒸気や、器体2の転倒時に蒸気抜き通路101を通じて流出しようとする内容液が、ベローズポンプ3内に侵入して熱劣化させたり、ベローズポンプ3内に侵入した蒸気の結露水や内容液が外部に容易で出ず長期に溜まって衛生性が低下するようなことを防止することができるとともに、ベローズポンプ3を押圧操作したときのベローズポンプ3からの圧縮空気が蒸気抜き通路101へ逃げるのを防止し、給気通路100および通気孔30を通じて内容液を圧縮空気の漏れなく加圧して注出通路7を通じて確実に注出できるようにする。
【0044】
また、蒸気温度を前記孔42を通じセンサ41によって検出し、内容器1内の内溶液が沸騰しているか否かを検出することによって、前記ヒータ13の発熱を制御することができる。
【0045】
本実施例では、安全機構24の安全ストッパー24aが押板19の前方に位置し、押板19から離れた蓋体4の周辺後部にある前記排出口39から吹き出す高温蒸気から離れた位置において前記安全ストッパー24aを操作でき、安全性に優れると言う長所を有している。
【0046】
前記蓋本体37の前端突出部43には左右一対の摘み式の開閉ロック44が設けられている。この開閉ロック44は肩環15の前方延出部15aに設けた係止部45に係止されて蓋体4を閉蓋状態に維持する作用を営む。
【0047】
前記注出通路7の吐出端側部分をなすパイプユニット47は、前記下パイプ46に接続される屈曲パイプ49、転倒時止水弁51を設けたほぼ逆U字状の逆U字状パイプ52、前記吐出パイプ48に接続される接続パイプ53を組み合わせて構成され、肩環15の延出部15aと前記下パイプ46および吐出パイプ48との間に挟圧状態に固定されている。また前記逆U字状パイプ52は本体部54、カバー板部55、弁座形成部56を組み合わせて構成されている。なお、前記転倒時止水弁51は器体2の転倒時に内容器1内の内溶液が前記注出通路7を通じて外部に流出するのを防止するためのものである。
【0048】
この転倒時止水弁51は器体2の最も前部に位置しているので、器体2が前部側に転倒した時にもっともよく働く。また注出通路7のこのような転倒時止水弁51は、蓋本体37とは独立していることにより、蓋本体37が閉じられるときの慣性や反動の影響はない。
【0049】
しかも、注出通路7の転倒時止水弁51は内蓋5の閉じ位置高さ近傍に設けられているので、内容器1に設定される上限液位を内蓋近傍に設定して収容率を可及的に高めても、注出通路の転倒時止水弁が内溶液に常時浸漬されて熱劣化し寿命が短くなるようなことも回避できる。
【0050】
なお、前記パイプユニット47は図2に示すように、その本体部54aを肩環15の前方延出部15aに一体的に形成することができる。そして、この本体部54aにカバー板部55aおよび弁座形成部56aを組付ければ、図1に示すパイプユニット47と同様のものが構成できる。
【0051】
図2に示す第2の実施例は、注出路7の一部が第1の実施例とは異なった構造としたもので、パイプユニット47の本体部54aが肩環15に一体形成されているため、その固定状態が堅牢強固となり、かつ部品数を減らすことができると言う長所がある。
【0052】
図3に示す第3の実施例は、内容器1の蒸気が、蒸気抜き通路101を兼ねた給気通路100をなす内蓋5と蒸気抜きパイプ9との間に形成されるチャンバー32b、およびベローズ下板8と内蓋5との間にこれらベローズ下板8および内蓋5とは別個に設けられた蒸気抜きパイプ9の下面に形成した入口57bを経て蒸気抜きパイプ9内に流入するように構成されている。
【0053】
前記通気孔30b上でかつ前記入口57bの下方には転倒時止水弁29が配され、電気ポット転倒時に前記入口57bを閉塞するようになっている。
【0054】
また転倒時止水弁29に対する案内リブ61は蒸気抜きパイプ9に一体形成している。
【0055】
本実施例は、ベローズポンプ3に設けた操作杆26により押板19の非押圧操作時に給気通路100に連通するベローズポンプ3の給気口をなす弁孔35を閉塞し、この押板19を押し下げてベローズポンプ3を作動させたとき、操作杆26の下動位置で操作杆26の下端がゴム弁体60bを押し下げ、前記給気通路100に通じるベローズポンプ3の給気口である弁孔35を開口させ、それとともに前記操作杆26の下動位置で外気に連通する蒸気抜き通路101を閉塞するように構成している。
【0056】
前記操作杆26に設けたゴム弁体60bは、ベローズ下板8と内蓋5との間にこれらベローズ下板8および内蓋5とは別個に設けられた蒸気抜き通路101の内蓋側である蒸気抜きパイプ9の上面開口部を覆うようにして取付けられ、押板19の押圧操作に連動した操作杆26の下動時に、上述のようにして取付けられ、操作杆26の下動時に、上述のようにベローズポンプ3の給気口である弁孔35を開口させるのであるが、これと同時に前記入口57bを閉蓋する作用を営む。
【0057】
この蒸気抜き通路101の内蓋側蒸気抜き通路部分に連通した蓋体側蒸気抜き通路部分は、蓋体4内に設けられて押板19から離れた蓋体4の周辺後部から蒸気を外気に放出するようにしてある。
【0058】
また前記ゴム弁体60bには連通路62が形成されていて、弁孔35が開口したとき、ベローズ22から圧送される圧縮空気は前記弁孔30bを経て、内容器1内に入るように給気通路100が構成されている。
【0059】
本実施例の他の構造は前記第1の実施例のそれと特に変わるところはない。
【0060】
図4は本発明の実施例を示している。本実施例も第1の実施例における器体2の後部に枢支して開閉できるようにした蓋体4とこれの内側に一体に設けられた内蓋5、および器体2の前部で内容液を外部に注出する注出通路7と、前記蓋体4と内蓋5との間に設けられて器体2の内容器1内で発生する蒸気を蓋体4外に排出する蒸気抜き通路101と、これら注出通路7および蒸気抜き通路101に設けられた転倒時止水弁51、29を有し、これらによる第1の実施例での作用効果と同様な作用効果を発揮する。
【0061】
これに加え本実施例では、内蓋5に形成した複数の連通孔30a、蓋体4の下板をなすベローズ下板8と内蓋5との間にこれらベローズ下板8および内蓋5とは別個に設けられて蒸気抜き通路101の内蓋側蒸気抜き通路部分をなす蒸気抜きパイプ9と、蒸気抜きパイプ9の下面に形成した入口57を経て蒸気抜きパイプ9内に流入する蒸気を受入れるように蓋板4内に設けられて蒸気抜き通路101の蓋体側蒸気抜き通路部分をなし、押板19から離れた蓋体4の周辺後部から蒸気を外気に放出する蒸気ガイド筒36a、38aとを有している。
【0062】
蒸気ガイド筒部36aはベローズ下板8に一体に形成されるとともに、これに転倒時止水弁29が配され、この蒸気ガイド筒部36aと蒸気抜きパイプ9の出口40とが嵌まり合っている蒸気抜き通路一部の接続部を利用して収容保持し、蒸気抜き通路101の蓋体側蒸気抜き通路部分の蓋体後部に位置するようにしてある。58は蒸気ガイド筒部36aに一体形成したガイドリブである。さらに蓋本体37に一体に形成した蒸気排出筒部38aの排出口39には、ダスト侵入防止用の網状筒体59が嵌着されている。
【0063】
操作杆26の下端に取り付けたパッキング弁34aは、押板19の非押圧操作時は給気通路100に連通するベローズポンプ3の給気口をなす弁孔35を閉塞し、他方、押板19を押し下げてベローズポンプ3を作動させたときの、操作杆26の押板19に連動した下動で、前記パッキング弁34aは開弁位置に移動し、弁孔35を開口させるので、ベローズ22から圧送される圧縮空気は前記弁孔35を通じて、給気通路100の一部をなすチャンバー32に流入し、次いで給気通路100の一部を形成する、蒸気抜きパイプ9を貫通する通過孔28aを経て、前記連通孔30aを通り内容器1内に入る。
【0064】
また押板19の押圧操作に連動した操作杆26の下動位置で、ゴム弁板60が下に押されて、前記入口57を閉じ、圧縮空気の蒸気抜きパイプ9への流入を防いで外気に通じる蒸気抜き通路101を閉塞するようにしてある。
【0065】
本実施例のパイプユニット47は、図2に示す第2の実施例の場合と同様、その本体部54aは肩環15の前方延出部15aに一体的に形成されている。また転倒時止水弁51は注出通路7のパイプユニット47一部を構成しているほぼ逆U字状の逆U字状パイプ52に収容しているが、このU字状パイプ52の屈曲パイプ49と接続される弁座生成部56aと、本体部54bとを嵌め合わせた注出通路7一部の接続部を利用して収容し保持し、注出通路7の器体2の前部上方に位置するようにしている。弁座形成部56a内には転倒時止水弁51を安定に受止めておく逆コーン形の弁座52cを有し、注出される内容液には弁座52cの尖端部が対向してこれの流れを邪魔しないようになっているし、逆コーン形の弁座52c内に入った内容液は下部の抜け孔52dから自然に流下するようにしてある。また転倒時止水弁51はほぼ逆円錐形に形成されており、必要に応じて内部に重りを入れ、器体2が転倒したとき、自重で、あるいは転倒時の反動も加わって、閉じ位置に円滑に移動でき、また器体2が正立状態に復帰させられたときは、弁座52c内に円滑に戻って開き状態になるようにしてある。
【0066】
なお、本実施例の構成で図1の第1の実施例と基本的には同一であり、重複する部分は図示を省略し、また説明も一部省略している。
【0067】
本実施例のこのような構造によれば、注出通路7の転倒時止水弁51と、蒸気抜きパイプ9、蒸気ガイド筒部36a、蒸気排出筒部38aがなす蒸気抜き通路101の転倒時止水弁29とが、注出通路7の器体2の前部に位置する通路内と、蓋体4の後部に位置する通路内とに設けられて、それぞれ器体2の前部と後部とに位置し、器体2が転倒しても内溶液は注出通路7および蒸気抜き通路101を通じてしか流出しようしないのに加え、器体2が前部に転倒したときは転倒した器体2の下部となる注出通路7を通じてのみ、器体2が後部に転倒したときは転倒した器体2の下部となる蒸気抜き通路101を通じてのみ、内溶液が流出しようとするが、注出通路7および蒸気抜き通路101のそれぞれに設けた転倒時止水弁51、29によって確実に阻止することができる。
【0068】
特に、器体2が後部に転倒して内容液が下部となる蒸気抜き通路101を通じて流出しようとするとき、転倒時止水弁29は器体2の転倒によって閉じ動作をするが、蒸気抜き通路101の流出最終位置に近いことによって、流出しようとする内容液が到達する前に自重により確実に閉止状態となり、それ以降到達する内容液によって閉止状態に押圧されるので、従来あり勝ちであった、自重による閉止前に内容液が到達して内容液の一部が漏れ出たり、内容液の押圧が却って転倒時止水弁29を踊らせて、内容液を直ちに止め切れないと云ったことをなくすことができ、転倒時止水性能が向上する。
【0069】
また、各転倒時止水弁51、29はそれぞれが設けられている注出通路7および蒸気抜き通路101において、これら注出通路7の器体2前部の上方位置および蒸気抜き通路101の蓋体4外への開口近くの、肩環15の上方および蓋体4の後部に位置して、前記止水機能を発揮するので、注出通路7や蒸気抜き通路101内に結露水や残留液があっても、これの大半を注出通路7内や蒸気抜き通路101内に留めて外部への流出を殆ど無くすことができる。
【0070】
また、蒸気抜き通路101の転倒時止水弁29は蓋体4の後部枢支位置の側に大きく寄った位置にあるので、蓋体4が勢いよく閉じられてもこれによる慣性や反動の影響を受けにくく、蒸気抜き通路101を不用意に閉じるようなことを回避することができる。
【0071】
さらに、注出通路7および蒸気抜き通路101の各転倒時止水弁51、102を、それぞれの通路の接続部間に収容し保持されているので、通路の必須の接続構造および作業を利用することにより特別な部材や作業を要しないで組み込むことができる。
【0072】
特に本実施例の場合、蒸気抜き通路101の転倒時止水弁29が、蓋体4後部の器体2上端部への枢支位置の近傍でこの枢支位置とほぼ同一の高さ位置に設けてあるので、この転倒時止水弁29は蓋体4の枢支位置の極く近くに位置し、この部分の蓋体4が開閉されるときのスイングストロークが極く小さくなり、蓋体4が勢いよく閉じられても生じる慣性や反動をさらに小さく抑えるので、転倒時止水弁29が閉じ状態に密着してしまうようなことを確実に防止することができる。
【0073】
本発明は上記各実施例に示す外、種々の態様に構成することができる。例えば、前記内蓋5を蓋体4のベローズ下板8に取付ける手段はビス25に限定されず、無理嵌め手段等を採用することができる。
【0074】
また蒸気抜き通路101の排出口39の開口位置は上記各実施例に示すものに限定されず、蓋体4の側周壁に設定することもできる。
【0075】
【発明の効果】
本発明の電気貯湯容器の主たる特徴によれば、蓋体の下面に一体に取付けられて内容器の口部を開閉する金属製の内蓋を備えたから、蓋体は開き状態では、内蓋と共に内容器の口部から開放させるので、内容液の給排や内容器内の洗浄を容易に行えるようにすることができ、閉じ状態では内蓋により内容器の口部を忘れなく確実に閉じることができる。内容液が加熱され蒸気が発生してもこれを蓋体の蒸気抜き通路を通じて蓋体の後部枢支側の排出口から蓋体外に排出しているため、注出操作時に一瞬にも蒸気が不用意に排出されることがあっても、注出側から離れた位置に排出口が位置されるため、蒸気による影響をより防止することができる。
【0076】
また、器体が前部に転倒したとしても、注出通路の器体前部の位置に設けた転倒時止水弁が器体の転倒に応動して注出通路を閉じるので、注出通路を通じた内容液の流出を防止することができる。さらに、内容器内で発生する蒸気や、器体転倒時の蒸気排出経路を伝って注出しようとする内容液が、蓋体内に侵入して熱劣化させるようなことを防止することができる。特に、蒸気抜き通路が、内蓋側部分である蒸気抜きパイプと蓋体側部分である蒸気ガイト筒部および蒸気排出筒部より構成されて蓋体のほぼ中央部にある内蓋の通気孔から蓋体の後部枢支側に設けられた排出口にまで延びて、内容液が内容器内から蒸気抜き通路を通じて器体外に流出させるようにしてあるため、たとえ器体の転倒時に蒸気抜き通路内に内容液が侵入したとしても、内容液が器体外に流出する時間を迂回長さ分遅らせて、その遅れた分内容液が外部に流出する前に処置できるようになるので、より安全性の高いものとなる。
【0077】
しかも、金属製の内蓋は共に開閉される蓋体と一体に位置して、蓋体やこれと内蓋との間に設けた蒸気抜きパイプのそれぞれを、内容器内で発生する蒸気から絶えず隔絶して保護するので、これらが蒸気により熱劣化して寿命が短くなるようなことを防止することができるし、注出通路の転倒時止水弁は内蓋の閉じ高さ位置近傍にあるので、たとえ内容器の内蓋近傍にまで内容液を給水したとしても、注出通路の転倒時止水弁が内容液に常時浸漬されて熱劣化し寿命が短くなるようなことも回避できると共に、器体が転倒した場合でも、蓋体の閉じ高さ位置近傍下方の注出通路内の内容液の注出が防止されるため、注出通路からの内容液の流出も極力防止することができる。
【0078】
本発明のさらなる特徴によれば、蓋体に設けられたベローズポンプからの給気路が、蒸気抜き通路が内容器内に通じる通気孔を共用して、内容器内に通じてベローズポンプからの加圧空気を内容器内に供給し内容液の加圧が行える通気構造と、この通気孔に対し蒸気抜き通路および給気通路をベローズポンプの圧操作と押圧解除時の復動に連動して択一的に通じるようにする通気孔近傍に集約できる通路の切り換え構造とによって、迂回路をなす蒸気抜き通路の全体を含め、構造が簡単でコンパクトなものとなる利点がある上、蒸気抜き通路は給気通路との通気孔の共用にかかわらず、ベローズポンプが押圧操作されず復動状態にある通常時に通気孔に通じて、外部に排出する内容器内からの蒸気や、器体の転倒時に蒸気抜き通路を通じて流出しようとする内容液が、ベローズポンプ内に侵入して熱劣化させるようなことを防止することができるとともに、ベローズポンプを押圧操作したときのベローズポンプからの圧縮空気が蒸気抜き通路へ逃げて不用意に排出してしまうことを防止し、かつ、給気通路および通気孔を通じて内容液を圧縮空気の漏れなく加圧して注出通路を通じて確実に注出できるようにする。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の第1の実施例としての電気ポットの断面図である。
【図2】
本発明の第2の実施例としての電気ポットの注出通路の転倒時止水部の断面図である。
【図3】
本発明の第3の実施例としての電気ポットの注出通路および蒸気抜き通路の各転倒時止水部を示す断面図である。
【図4】
本発明の一実施例を示す電気ポットの断面図である。
【符号の説明】
1 内容器
2 器体
3 ベローズポンプ
4 蓋体
5 内蓋
7 注出通路
8 ベローズ下板
9 蒸気抜きパイプ
17 枢軸
25 ビス
26 操作杆
30 通気孔
33 流通孔
34 パッキング弁
35 弁孔
36、36a 蒸気ガイド筒部
38、38a 蒸気排出筒部
39 排出口
51 転倒時止水弁
60b ゴム弁体
100 給気通路
101 蒸気抜き通路
 
訂正の要旨 (1)願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1の記載
【請求項1】器体の上方後部に枢支して開閉できるようにした蓋体と、器体に収容された内容器内の内溶液をその加圧を伴い器体と内容器との間を経て器体の前部から外部に注出する注出通路と、蓋体の下面に設けられて内容器の口部を開閉する金属製の内蓋と、この内蓋と蓋体との間にある管路を通じて内溶液から発生する蒸気を蓋体の後部に設けた排出口から外部に排出する蒸気抜き通路とを備え、前記注出通路には器体の前部に位置し前記内蓋の閉じ位置高さ近傍に位置して器体の転倒時に注出通路を閉じる転倒時止水弁を設け、前記蒸気抜き通路の管路は、蓋体のほぼ中央部に位置する内蓋の内容器に通じる通気孔から前記蓋体後部の排出口にまで延びていることを特徴とする電気貯湯容器。」を、
「【請求項1】器体の上方後部に枢支して開閉できるようにした蓋体と、器体に収容された内容器内の内溶液をその加圧を伴い器体と内容器との間を経て器体の前部から外部に注出する注出通路と、蓋体の下面に一体に取り付けられて内容器の口部を開閉する金属製の内蓋と、この内蓋と蓋体との間にそれらと別個に設けられた蒸気抜きパイプと、蓋体内にある蒸気ガイド筒部および蒸気排出筒部とを通じて内溶液から発生する蒸気を内蓋のほぼ中央部にある通気孔から蓋体の後部上面に設けた排出口に導き外部に排出する蒸気抜き通路とを備え、前記注出通路には器体の前部に位置し前記内蓋の閉じ位置高さ近傍に位置して器体の転倒時に注出通路を閉じる転倒時止水弁を設けたことを特徴とする電気貯湯容器。」と訂正する。
(2)特許明細書の段落【0010】に記載された
「本発明の電気貯湯容器は上記のような目的を達成するため、器体の上方後部に枢支して開閉できるようにした蓋体と、器体に収容された内容器内の内溶液をその加圧を伴い器体と内容器との間を経て器体の前部から外部に注出する注出通路と、蓋体の下面に設けられて内容器の口部を開閉する金属製の内蓋と、この内蓋と蓋体との間にある管路を通じて内溶液から発生する蒸気を蓋体の後部に設けた排出口から外部に排出する蒸気抜き通路とを備え、前記注出通路には器体の前部に位置し前記内蓋の閉じ位置高さ近傍に位置して器体の転倒時に注出通路を閉じる転倒時止水弁を設け、前記蒸気抜き通路の管路は、蓋体のほぼ中央部に位置する内蓋の内容器に通じる通気孔から前記蓋体後部の排出口にまで延びていることを主たる特徴とするものである。」を、
「本発明の電気貯湯容器は上記のような目的を達成するため、器体の上方後部に枢支して開閉できるようにした蓋体と、器体に収容された内容器内の内溶液をその加圧を伴い器体と内容器との間を経て器体の前部から外部に注出する注出通路と、蓋体の下面に一体に取り付けられて内容器の口部を開閉する金属製の内蓋と、この内蓋と蓋体との間にそれらと別個に設けられた蒸気抜きパイプと、蓋体内にある蒸気ガイド筒部および蒸気排出筒部とを通じて内溶液から発生する蒸気を内蓋のほぼ中央部にある通気孔から蓋体の後部上面に設けた排出口に導き外部に排出する蒸気抜き通路とを備え、前記注出通路には器体の前部に位置し前記内蓋の閉じ位置高さ近傍に位置して器体の転倒時に注出通路を閉じる転倒時止水弁を設けたことを主たる特徴とするものである。」と訂正する。
(3)特許明細書の段落【0012】に記載された
「蓋体の下面に設けられて内容器の口部を開閉する金属製の内蓋」を
「蓋体の下面に一体に取付けられて内容器の口部を開閉する金属製の内蓋」と訂正する。
(4)特許明細書の段落【0013】に記載された
「蒸気抜き通路が、蓋体のほぼ中央部にある内蓋の通気孔から蓋体の後部枢支側に設けられた排出口にまで延びて」を、
「蒸気抜き通路が、内蓋側部分である蒸気抜きパイプと蓋体側部分である蒸気ガイド筒部および蒸気排出筒部より構成されて蓋体のほぼ中央部にある内蓋の通気孔から蓋体の後部枢支側に設けられた排出口にまで延びて」と訂正する。
(5)特許明細書の段落【0014】に記載された
「金属製の内蓋は共に開閉される蓋体に位置して、蓋体やこれと内蓋との間に設けた蒸気抜き通路のそれぞれを」を、
「金属製の内蓋は共に開閉される蓋体と一体に位置して、蓋体や これと内蓋との間に設けた蒸気抜きパイプのそれぞれを」と訂正する。
(6)特許明細書の段落【0075】に記載された
「蓋体の下面に設けられて内容器の口部を開閉する金属製の内蓋」を、
「蓋体の下面に一体に取付けられて内容器の口部を開閉する金属製の内蓋」
と訂正する。
(7)特許明細書の段落【0076】に記載された
「蒸気抜き通路が、蓋体のほぼ中央部にある内蓋の通気孔から蓋体の後部枢支側に設けられた排出口にまで延びて」を、
「蒸気抜き通路が、内蓋側部分である蒸気抜きパイプと蓋体側部分である蒸気ガイド筒部および蒸気排出筒部より構成されて蓋体のほぼ中央部にある内蓋の通気孔から蓋体の後部枢支側に設けられた排出口にまで延びて」と訂正する。
(8)特許明細書の段落【0076】に記載された
「金属製の内蓋は共に開閉される蓋体に位置して、蓋体やこれと内蓋との間に設けた蒸気抜き通路のそれぞれを」を、
「金属製の内蓋は共に開閉される蓋体と一体に位置して、蓋体や これと内蓋との間に設けた蒸気抜きパイプのそれぞれを」と訂正する。
(9)特許明細書の特許請求の範囲の請求項2の記載
「【請求項2】蓋体内に内容液を加圧するベローズポンプンが設けられ、べーローズポンプからの加圧空気を前記通気孔を共用して内容器内に供給する給気通路を形成し、ベローズポンプの押圧操作に連動して蒸気抜き通路および給気通路のうち給気通路のみが通気孔に通じ、ベローズポンプの押圧解除時の復動に連動して蒸気抜き通路のみが通気孔に通じるようにそれら通路を切り換えるようにした請求項1に記載の電気貯湯容器。」を
「【請求項2】蓋体内に内容液を加圧するベローズポンプが設けられ、ベローズポンプからの加圧空気を前記通気孔を共用して内容器内に供給する給気通路を形成し、ベローズポンプの押圧操作に連動して蒸気抜き通路および給気通路のうち給気通路のみが通気孔に通じ、ベローズポンプの押圧解除時の復動に連動して蒸気抜き通路のみが通気孔に通じるようにそれら通路を切り換えるようにした請求項1に記載の電気貯湯容器。」と訂正する。
(10) 特許明細書の段落【0011】に記載された
「ベローズポンプンが設けられ、ベーローズポンプからの」を、
「ベローズポンプが設けられ、ベローズポンプからの」と訂正する。
(11)特許明細書の段落【0015】に記載された
「本発明のさらなる特徴の蒸気構成によれば」を、
「本発明のさらなる特徴の上記構成によれば」と訂正する。
(12)特許明細書の【符号の説明】に記載された
「8 ベローズ下板 17 枢軸 26操作杆 30 通気孔 33 流通孔 34 パッキング弁 35 弁孔 39 排出口」を
「8 ベローズ下板 9 蒸気抜きパイプ 17 枢軸 25 ビス 26 操作杵 30 通気孔 33 流通孔 34 パッキング弁 35 弁孔 36、36a 蒸気ガイド筒部 38、38a 蒸気排出筒部 39 排出□」と訂正する。
異議決定日 2001-08-27 
出願番号 特願平8-179224
審決分類 P 1 651・ 121- YA (A47J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 田中 久直種村 慈樹  
特許庁審判長 大槻 清寿
特許庁審判官 長浜 義憲
櫻井 康平
登録日 1999-04-23 
登録番号 特許第2917921号(P2917921)
権利者 タイガー魔法瓶株式会社
発明の名称 電気貯湯容器  
代理人 石原 勝  
代理人 石原 勝  

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