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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
管理番号 1050069
異議申立番号 異議2000-72767  
総通号数 25 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-03-06 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-07-17 
確定日 2001-10-29 
異議申立件数
事件の表示 特許第3002652号「面付実装型樹脂封止半導体装置およびその製造法」の請求項1〜6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3002652号の請求項1〜6に係る特許を取り消す。 
理由 [1]手続の経緯
本件特許第3002652号(昭和61年10月24日出願(特願昭61-251762の分割出願である特願平6-94720の分割出願)、平成11年11月12日設定登録)は、特許異議申立人伊藤廣美及び小野尚純により特許異議の申立てがなされ、その後取消理由が通知され、その指定期間内である平成13年2月5日に意見書が提出されたものである。

[2]本件発明
本件特許の請求項1〜6に係る発明(以下、「本件発明1〜6」という。)は、願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】樹脂及び80重量%以上の球形石英粉を含む組成物により封止され、前記樹脂はエポキシ樹脂を主とし、シリコーン重合体を前記エポキシ樹脂100重量部当り10重量部以下(但し、0重量部を含まず)含む樹脂からなることを特徴とする面付実装型樹脂封止半導体装置。
【請求項2】前記球形石英粉の90重量%以上が0.5〜100μmの粒径を有することを特徴とする請求項1に記載の面付実装型樹脂封止半導体装置。
【請求項3】前記球形石英粉が石英粉を溶融して球形化した溶融球形石英粉であることを特徴とする請求項1又は2に記載の面付実装型樹脂封止半導体装置。
【請求項4】樹脂及び80重量%以上の球形石英粉を含む組成物を用いてトランスファ成形法により半導体素子を封止硬化する面付実装型樹脂封止半導体装置の製造法において、前記樹脂はエポキシ樹脂を主とし、シリコーン重合体を前記エポキシ樹脂100重量部当り10重量部以下(但し、0重量部を含まず)含む樹脂からなることを特徴とする面付実装型樹脂封止半導体装置の製造法。
【請求項5】前記球形石英粉の90重量%以上が0.5〜100μmの粒径を有することを特徴とする請求項4に記載の面付実装型樹脂封止半導体装置の製造法。
【請求項6】前記球形石英粉が石英粉を溶融して球形化した溶融球形石英粉であることを特徴とする請求項4又は5に記載の面付実装型樹脂封止半導体装置の製造法。」

[3]引用刊行物の記載事項
(1)引用刊行物1
先の取消理由通知において引用した引用刊行物1の特開昭61-97322号公報には、内部応力が少なく、優れた耐サーマルショック性を有し、かつ低熱膨張率、良好な成形性及び良好な耐湿信頼性を有する半導体封止用エポキシ樹脂組成物に関する発明が開示され、さらに以下の事項が記載されている。

「(A)エポキシ樹脂
(B)フェノール型硬化剤
(C)無機質充てん剤
を含有した組成物で、前記無機充てん剤は
(I)実質的に破断面を有しない充てん剤と
(II)実質的に破断面を有する充てん剤
であって、しかも充てん剤(I)が充てん剤(I)+(II)の20〜100重量%であり、かつ無機充てん剤(C)が組成物全体の75重量%以上からなる半導体封止用エポキシ樹脂組成物。」(特許請求の範囲)、

従来の技術として
「成形体自体もミニフラットパッケージのように薄く小さくなっているため、パッケージに大小のクラックが発生し、耐湿信頼性の著しい低下が生じている。
このように内部応力に由来する障害、特に耐サーマルショック性の悪さが樹脂封止の重大な欠点となっている。
また上記の内部応力の低減、特に耐サーマルショック性の向上には2つの方法が考えられている。(a)樹脂の弾性率を低下させる。(b)被封止物と硬化樹脂との熱膨張率の差を小さくすることである。(a)についてはシリコン樹脂・・・を添加することで種々検討されている。(b)については熱膨張率の小さい無機質充填剤を高充填することで達成される。」(2頁左上欄4〜18行)

「本発明は・・・樹脂と混合する充填剤の切断面の角がないものを主体に用いることにより、成形性が良好で、内部応力も低く、特にサーマルショック性の優れた、・・・良好な半導体封止用エポキシ樹脂組成物を提供することにある。」(2頁右上欄7〜12行)

「本発明に用いられる充填剤(I)としては、・・・好ましくは球状・・・である。・・・無機質充填剤は、結晶シリカ、溶融シリカ・・・で粉砕して得た粉末を・・・表面のみもしくは全体を溶融し、冷却して製造する・・・。これらのうち全てが溶融シリカもしくは表面が溶融されている結晶シリカが好ましい。この充填剤(I)の平均粒径は0.1〜150μ、好ましくは1〜50μである。平均粒径が0.1μ未満であると、内部応力低下等の効果が少なく、150μを越えると成形時未充填やワイヤー流れ等を生ずることがある。
・・・
・・・そして充填剤(I)が全充填剤量の20〜100重量%である必要がある。・・・
本発明のエポキシ樹脂組成物全量に対して、充填剤(I)と(II)との総和は75重量%以上、好ましくは75〜90重量%でなければならない。75重量%未満では内部応力低下がわずかで、特に耐サーマルショック性が不充分となる。」(2頁右下欄19行〜3頁右上欄17行)

実施例1〜7として
「充填剤(I)として・・・ほとんどが球状のシリカA、・・・ほとんどが球状の溶融率90%のシリカB・・・を用い、表に示す。
組成(重量部)のように配合し、・・・エポキシ樹脂組成物を得た。
・・・耐サーマルショック性としては80ピンフラットパッケージをトランスファー成形し、・・・50%のパッケージにクラックが入る迄の回数を調べた。また・・・評価用シリコン素子を16ピンDIPにトランスファ成形し、・・・測定した。これらの評価の結果を表に示す。」(3頁右下欄4行〜4頁左上欄8行)

そして、表には、実施例6として、エポキシ樹脂A+Bが100重量部、充填剤(I)のシリカA(ほとんどが球状である。)が1000重量部のもの(シリカB(ほとんどが球状の溶融率90%のものである。)と充填剤(II)は含有していない。)の充填剤含有率が、85.4重量%であることが記載されている。

以上の記載をまとめると、引用刊行物1には、エポキシ樹脂組成物を主とする樹脂、及びエポキシ樹脂組成物全量に対して75〜90重量%の球状の溶融シリカであって全てが平均粒径が0.1〜150μの充填剤を含む半導体封止用エポキシ樹脂組成物が記載されており、また、従来技術として、ミニフラットパッケージにおけるエポキシ樹脂組成物の内部応力の低減、特に耐サーマルショック性の向上のために、シリコーン樹脂(引用刊行物1に記載された「シリコン樹脂」は「シリコーン樹脂」の誤記と認める。)を添加することにより、エポキシ樹脂組成物の弾性率を低下させることが記載され、さらに、実施例として80ピンフラットパッケージと16ピンDIPにそれぞれトランスファー成形を施すことも記載されている。

(2)引用刊行物2
同じく引用した引用刊行物2の特開昭61-12051には、耐湿性、耐食性及び耐クラック性を有する半導体封止用エポキシ樹脂成形材料に関する発明が開示され、さらに以下の事項が記載されている。

「エポキシ樹脂、フェノールノボラック樹脂、無機質充填剤を必須成分としてなる組成物にオルガノシロキサンを0.1〜5重量%混合するエポキシ樹脂成形材料において、エポキシ樹脂又は、フェノール樹脂とオルガノシロキサンを予備混練しさらに残りの材料と混合することを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂成形材料。」(特許請求の範囲)、

「本発明における無機質充填剤には、・・・各種の充填剤が使用される。その具体例としては、溶融シリカ・・・が例示される。これらは単独で又は混合系で使用される。
このような無機充填剤の配合量を・・・過度に配合すると樹脂組成物の成形時の流動性が低下して・・・好ましくない。無機質充填剤の配合量としては65〜82重量%の範囲で選択すると、樹脂封止体の線膨張係数はかなり小さく、熱伝導度は大きく維持しつつ、低圧トランスファー成形法に適する成形時の流動性も得ることができる。・・・無機充填剤としては、結晶性シリカ粉及び溶融シリカ粉が特に好ましい。本発明におけるオルガノシロキサンは、素子の信頼性に悪影響を及ぼさない化合物であれば、いかなるものも使用可能である。また一般にシリコーンオイルと称呼されているものが作業性の点で良く、・・・。その配合量は成形材料に対して0.1〜5重量パーセントの範囲で使用され、好ましくは0.2〜2重量パーセントで0.1重量パーセント以下では充分な耐クラック性及び素子信頼性が得られず5重量パーセント以上では成形性の低下が著しい。
本発明においてエポキシ樹脂・・・とシリコーンオイルを予備混合することにより、素子のボンデイングワイヤー流れが改良される。また素子の信頼性、耐腐食性及び耐クラック性が向上された成形材料が得られる。」(2頁右上欄6行〜右下欄9行)

実施例として
「クレゾールノボラック型エポキシ樹脂・・・16.5部にTSF-451(・・・ジメチルシリコーンオイル)を1.0部を混合機を用いて予備混合を行い次いでフェノールノボラックエポキシ樹脂8.2部トリフェニルホスフィン0.2部シランカップリング剤0.4部離型剤ヘキストE・・・0.4部、溶融シリカ粉70部をヘンシェルミキサーで混合後・・・混練し冷却後粉砕してエポキシ樹脂成形材料を得た。」(3頁右上欄5〜14行)

上記実施例の記載からみて、実施例には、エポキシ樹脂に対するジメチルシリコーンオイルの混合割合が、エポキシ樹脂100重量部に対してジメチルシリコーンオイル4重量部となる(1.0部÷(16.5部+8.2部)=0.04部)ことが示されている。

[4]対比・判断
<本件発明1について>
本件発明1と引用刊行物1に記載されたものとを対比すると、引用刊行物1に記載された「球状の溶融シリカ」、「シリコン樹脂」は、本件発明1の「球形石英粉」、「シリコーン重合体」に相当し、さらに、引用刊行物1に記載された、「ミニフラットパッケージ」は、具体的には、一例として80ピンフラットパッケージを示しており、本件発明1の面付実装型樹脂封止半導体装置に一部が含まれることは明らかである。
してみると、両者は、本件発明1の構成に沿って記載すると、「樹脂及び80重量%以上の球形石英粉を含む組成物により封止され、前記樹脂はエポキシ樹脂を主とし、シリコーン重合体を含む樹脂からなる面付実装型樹脂封止半導体装置」の点で一致するものの、次の点で相違する。
本件発明1においては、シリコーン重合体をエポキシ樹脂100重量部当り10重量部以下(但し、0重量部を含まず)含むのに対し、引用刊行物1に記載されたものにおいては、シリコーン樹脂をエポキシ樹脂に対してどの程度含んでいるのか明らかではない点。

そこで、上記相違点について検討すると、引用刊行物2に記載されたものは、無機質充填剤を配合した半導体封止用エポキシ樹脂成形材料において、エポキシ樹脂にシリコーン重合体であるシリコーンオイルを予備混合することによりボンデイングワイヤー流れが改良すること、すなわち流動性の低下を防止すること、また素子の信頼性、耐腐食性及び耐クラック性が向上することを目的とするものであって、この目的は、シリコーン樹脂を添加することによりエポキシ樹脂の弾性率を低下させて、耐サーマルショック性を向上させ、かつ低熱膨張率、良好な成形性及び良好な耐湿信頼性を得ることを目的とする、引用刊行物1に記載されたものと同様のものである。
してみると、引用刊行物1に記載されたミニフラットパッケージの封止用材料において、エポキシ樹脂組成物を主とする樹脂、及びエポキシ樹脂組成物全量に対して75〜90重量%の球状の溶融シリカであって平均粒径が0.1〜150μの充填剤を含むエポキシ樹脂組成物に含有するシリコーン樹脂の含有割合として、引用刊行物2に記載された、エポキシ樹脂100重量部に対するシリコーンオイルの混合割合である4重量部を採用することにより、エポキシ樹脂組成物の内部応力の低減、特に耐サーマルショック性の向上を図るようなことは容易に想到することができたものである。

<本件発明2について>
本件発明2は、本件発明1を引用するとともに、「球形石英粉の90重量%以上が0.5〜100μmの粒径を有すること」と限定したものであるが、引用刊行物1に記載された球状の溶融シリカからなる充填剤も0.1〜150μの平均粒径を有していることからみて、球状の溶融シリカの90重量%以上を0.5〜100μmの粒径に限定することに何らの困難性も認められないから、本件発明2は、本件発明1と同様の理由により、引用刊行物1、2に記載されたものから容易に想到することができたものである。

<本件発明3について>
本件発明3は、本件発明1、2を引用するとともに、「球形石英粉が石英粉を溶融して球形化した溶融球形石英粉であること」に限定したものであるが、引用刊行物1に記載された球状の溶融シリカもシリカの粉末を溶融して球状にしたものであるから、本件発明3は、本件発明1、2と同様の理由により、引用刊行物1、2に記載されたものから容易に想到することができたものである。

<本件発明4について>
本件発明4は、本件発明1の面付実装型樹脂封止半導体装置の発明にかえて、面付実装型樹脂封止半導体装置を製造する製造法の発明としたものであって、さらに、「トランスファ成形法により半導体素子を封止硬化する」こととしたものである。
しかしながら、半導体素子を封止硬化する成形法として、トランスファ成形法は、引用刊行物1、2に記載されているように周知の技術にすぎないから、本件発明4は、本件発明1と同様の理由により、引用刊行物1、2に記載されたものから容易に想到することができたものである。

<本件発明5について>
本件発明5は、本件発明4を引用するとともに、球形石英粉について、「球形石英粉の90重量%以上が0.5〜100μmの粒径を有すること」と限定したものであるから、本件発明5は、本件発明2、4と同様の理由により、引用刊行物1、2に記載されたものから容易に想到することができたものである。

<本件発明6について>
本件発明6は、本件発明4、5を引用するとともに、球形石英分について、「球形石英粉が石英粉を溶融して球形化した溶融球形石英粉であること」に限定したものであるから、本件発明6は、本件発明3〜5と同様の理由により、引用刊行物1、2に記載されたものから容易に想到することができたものである。

したがって、本件発明1〜6は、引用刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

ところで、権利者は意見書において、本件発明1〜6のように、80重量%以上の球形石英粉(球形フィラ)を含む樹脂にシリコーン重合体を含む組成物は、樹脂材の低弾性率化とともに、球形石英粉の大量添加に伴う流動性の低下を防止することができるものの、引用刊行物2に記載されているように、角形フィラを含む樹脂にシリコーン重合体を加えた場合は、溶融粘度は高くなり、流動性の低下を防止し得るものではない旨の主張をしている。
しかしながら、引用刊行物2に記載された成形材料は、エポキシ樹脂とシリコーンオイルを予備混合した後に、結晶性シリカ粉、溶融シリカ粉(角形フィラ)を充填して、素子のボンデイングワイヤー流れを改良したものであるにしても、エポキシ樹脂100重量部に対し4重量部のシリコーンオイルを配合することにより、耐クラック性と素子信頼性を得るとともに、成形性の低下を防止することができるものである以上、引用刊行物1に記載されたシリコーン樹脂の添加量として、引用刊行物2に記載されたシリコーンオイルの配合量を採用することにより、本件発明1〜6の、樹脂材の低弾性率化とともに、球形石英粉の大量添加に伴う流動性の低下を防止することができるという、上記の作用効果と同様の作用効果を生ずるものと認められる。
したがって、意見書の主張は採用できない。

[5]むすび
以上のとおりであるから、本件発明1〜6は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1〜6についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、平成6年法律第116号附則第14条の規定に基づく平成7年政令第205号第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-09-07 
出願番号 特願平9-165711
審決分類 P 1 651・ 121- Z (H01L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 小林 均中島 庸子  
特許庁審判長 関根 恒也
特許庁審判官 伊藤 明
中村 朝幸
登録日 1999-11-12 
登録番号 特許第3002652号(P3002652)
権利者 株式会社日立製作所
発明の名称 面付実装型樹脂封止半導体装置およびその製造法  
代理人 竹ノ内 勝  
代理人 高田 幸彦  

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