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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E04B
管理番号 1050137
異議申立番号 異議2001-71367  
総通号数 25 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-10-12 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-04-26 
確定日 2001-12-03 
異議申立件数
事件の表示 特許第3129691号「間仕切りパネルのランナー及び間仕切りパネル」の請求項1〜4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3129691号の請求項1〜4に係る特許を維持する。 
理由 〔1〕本件発明
本件特許第3129691号の請求項1〜4項に係る発明(平成10年3月31日出願、平成12年11月17日設定登録)は、明細書の特許請求の範囲の請求項1〜4項に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】吊下ボルトに転動輪を回転可能に支持し、ハンガーレールの
見切り部に対向する前記吊下ボルトの被覆部を、合成樹脂で筒状に成形したガイドカラーで被覆した間仕切りパネルのランナーにおいて、前記ガイドカラー及び吊下ボルトには、該ガイドカラーを吊下ボルトに弾性的に係合させて、該ガイドカラーを吊下ボルトに対し回転可能に、かつ軸方向に移動不能に支持する係止手段を一体に設けたことを特徴とする間仕切りパネルのランナー。
【請求項2】前記係止手段は、前記吊下ボルトに設けた係止溝と、前記係止溝に弾性的に係合するように前記ガイドカラーの内周面に設けた突条とから構成したことを特徴とする請求項1記載の間仕切りパネルのランナー。
【請求項3】前記突条は、断面三角形状として前記ガイドカラーの下端部に形成し、前記係止溝は前記被覆部の下端部に設けたことを特徴とする請求項2記載の間仕切りパネルのランナー。
【請求項4】天井面内に配設されるハンガーレール内にランナーを移動可能に支持し、前記ランナーの吊下ボルトからパネルを吊下支持して、該パネルをハンガーレールに沿って移動可能に支持した間仕切りパネルにおいて、前記ランナーの吊下ボルトをハンガーレールから下方へ垂下し、前記吊下ボルトの下端部にパネルを吊下支持し、前記吊下ボルトの前記ハンガーレールの見切り部に対向する被覆部を、合成樹脂で筒状に成形したガイドカラーで被覆し、前記ガイドカラー及び吊下ボルトには、該ガイドカラーを吊下ボルトに弾性的に係合させて、該ガイドカラーを吊下ボルトに対し回転可能に、かつ軸方向に移動不能に支持する係止手段を一体に設けたことを特徴とする間仕切りパネル。」

〔2〕特許異議の申立ての理由
特許異議申立人コマニー株式会社は、甲第1号証及び甲第2号証を提出して、本件請求項1〜4に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1〜4に係る発明についての特許は、特許法29条2項の規定に違反してなされたものであり取り消されるべきである旨主張している。

甲第1号証:特開平8-13894号公報
甲第2号証:特開平8-303102号公報

〔3〕特許異議の申立てについての判断
1.甲各号証の記載事項
甲第1号証には、
a「【請求項1】移動壁を吊設して天井レールを走行する二層水平車輪型式の吊車の吊りボルトにおいて、天井レールのガイド溝の位置に相当する吊りボルトの外周部分にカラーやローラ等の回転体を取着したことを特徴とする移動壁用吊車の吊りボルト構造。」(特許請求の範囲)、
b「【産業上の利用分野】本発明は移動壁を吊設する吊りボルトが緩まないようにした構造に関するものである。」(段落【0001】)、
c「図1は本発明に係る吊車用吊りボルト構造を示す実施例であり、吊車は二層水平車輪型式のものを表している。該二層水平車輪型式の吊車は、周知の通り2個の水平車輪1、1が吊りボルトに回転自在に軸支され、……本発明の吊りボルトは該吊車が横ズレしてガイド溝の内面に接しても、該吊りボルトが回転しないよにしたものであり、同図に示す吊車の吊りボルト2にはカラー3が取着されている。該カラー3は吊りボルト2と同径を成して自由に回転することが出来る。従って、前記図7に示したようにガイド溝の内面に接触しても、カラー3のみが回転するだけで吊りボルト2は回転せず、吊りボルト2が緩むことはない。図2は吊りボルト2にローラ4を取着した場合である。該ローラ径は吊りボルト2よりも大きくなっていて、ガイド溝内面が吊りボルト2に接することはなく、特に該ローラ4をベアリングを介して軸支するならば、吊りボルト2に与える影響は全くない。」(段落【0009】、【0010】)
との記載がある。
以上の記載並びに図1及び図2によれば、甲第1号証には、次の発明が記載されているものと認められる。
「吊りボルトに車輪を回転可能に支持し、天井レールのガイド溝の位置に相当する吊りボルトの外周部分を、カラーで被覆した壁体の吊車」(以下、「甲第1号証記載の発明1」という。)
「天井面内に配設される天井レール内に吊車を移動可能に支持し、前記吊車の吊りボルトから移動壁を吊下支持して、該移動壁を天井レールに沿って移動可能に支持した壁体において、前記吊車の吊りボルトを天井レールから下方へ垂下し、前記吊りボルトの下端部に移動壁を吊下支持し、天井レールのガイド溝の位置に相当する吊りボルトの外周部分を、カラーで被覆した壁体」(以下、「甲第1号証記載の発明2」という。)

甲第2号証には、移動壁用吊車の吊りボルト構造の発明が記載され、図1に関連して、「同図において10はカバーを示し、吊りボルト2のネジ部がガイド溝5の内面に接してキズ付けることがないように保護している。」(段落【0015】)との記載があり、図1に、カバー10が吊りボルト2を被覆した状態が示されている。

2.対比・判断
(1)本件請求項1に係る発明について
(1-1)本件特許発明は、「吊下ボルトは、ハンガーレール内から同ハンガーレールの見切り部を経てハンガーレール下方に露出される。従って、パネルの引き出し動作あるいは畳み込み動作時にパネルが揺動すると、吊下ボルトとハンガーレールの見切り部とが接触して、金属の擦れ合いにより不快な騒音を発生させる。また、見切り部あるいは吊下ボルトを損傷することもある。そこで、吊下ボルトの見切り部に対向する部分を合成樹脂で形成したガイドカラーで覆うことにより、騒音発生の防止と、見切り部あるいは吊下ボルトの損傷の防止を図る構成が提案されている。ところが、上記のようなガイドカラーを吊下ボルトに対し固定すると、パネル移動操作時にガイドカラーとハンガーレールの見切り部が接触したとき、その摩擦によりパネル移動操作が妨げられ、その移動操作に大きな操作力を必要とする。また、ガイドカラーを吊下ボルトに対し回転可能に支持すれば、上記のような問題は解消される。しかし、ガイドカラーを吊下ボルトに対し回転可能とするためには、同ガイドカラーを吊下ボルトに対しEリング等により軸方向にのみ移動不能に支持する必要がある。従って、部品点数及び組立工数が増大するという問題点がある。」(段落【003】〜【0006】)との認識のもとに、「ランナーの吊下ボルトとハンガーレールの見切り部との間に介在されるガイドカラーを吊下ボルトに対し回転可能としながら、部品点数及び組立工数の増大を防止し得る間仕切りパネルのランナーを提供すること」を目的とするものである。
そして、本件請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものとすることにより、「(1)パネル6の移動操作時に、パネル6が揺動しても、吊下ボルト5と見切り部7との間にガイドカラー8が介在されるので、吊下ボルト5が見切り部7に直接に当接することはない。従って、金属同士の擦れ合いによる不快な騒音の発生を防止することができる。(2)ガイドカラー8は、吊下ボルト5に回転可能に支持されるので、ガイドカラー8が見切り部7に接触したとき、ガイドカラー8が回転される。従って、パネル6の移動操作時に、ガイドカラー8が見切り部7に接触しても移動操作に要する操作力が増大することはない。(3)ガイドカラー8を吊下ボルト5の下端から被覆部11まで嵌挿することにより、ガイドカラー8の突条9を被覆部11の係止溝13に弾性的に係合させて、ガイドカラー8を被覆部11の定位置に容易に取着することができる。また、ガイドカラー8を吊下ボルト5の軸方向に位置決めするために、ガイドカラー8以外の部品を必要とすることはなく、ガイドカラー8の取付作業に工具を必要とすることもない。」(段落【0015】)との作用効果を奏するものである。
(1-2)そこで、本件請求項1に係る発明と甲1号証記載の発明1とを対比すると、甲第1号証記載の発明1の「吊りボルト」、「車輪」、「天井レールのガイド溝の位置に相当する吊りボルトの外周部分」、「壁体」及び「吊車」は、それぞれ本件請求項1に係る発明の「吊下ボルト 」、「転動輪」、「ハンガーレールの見切り部に対向する前記吊下ボルトの被覆部」、「間仕切りパネル」及び「ランナー」に相当し、また、甲1号証記載の発明1のガイドカラーは、吊りボルト2と同径を成して自由に回転することが出来る(上記cの記載参照。)ことから、軸方向に移動不動に吊りボルト2に支持されているといえるので、両者は、
「吊下ボルトに転動輪を回転可能に支持し、ハンガーレールの見切り部に対向する前記吊下ボルトの被覆部を、筒状に成形したガイドカラーで被覆した間仕切りパネルのランナーにおいて、ガイドカラーを吊下ボルトに対し回転可能に、かつ軸方向に移動不能に支持している、間仕切りパネルのランナー」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点
本件請求項1に係る発明では、ガイドカラーを合成樹脂で成形し、前記ガイドカラー及び吊下ボルトには、該ガイドカラーを吊下ボルトに弾性的に係合させて、該ガイドカラーを吊下ボルトに対し回転可能に、かつ軸方向に移動不能に支持する係止手段を一体に設けたのに対し、甲第1号証記載の発明1では、ガイドカラーの材料が不明であるとともに、ガイドカラー及び吊下ボルトには、該ガイドカラーを吊下ボルトに弾性的に係合させて、該ガイドカラーを吊下ボルトに対し回転可能に、かつ軸方向に移動不能に支持する係止手段を一体に設けているのか不明である。
そこで上記相違点について検討する。
甲第2号証には、移動壁用吊車(本件請求項1に係る発明の「間仕切りパネルのランナー」に相当する。)の吊りボルト2(同「吊下ボルト」に相当する。)をカバー10で被覆することが記載されているにすぎず、カバー10の材料や、カバー10が吊りボルト2に対しどのような手段で支持されているのか、さらに、軸方向に移動不能に支持されているのかについては、何ら記載されておらず、相違点における本件請求項1に係る発明を特定する事項が記載されていないし、示唆もされていない。
また、上記相違点における本件請求項1に係る発明1を特定する事項が、本件特許の出願前に周知の技術事項であるとも認められない。
したがって、本件請求項1に係る発明1は、甲第1号証及び甲第2号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(2)本件請求項2に係る発明について
本件請求項2に係る発明は、本件請求項1に係る発明において、「前記係止手段は、前記吊下ボルトに設けた係止溝と、前記係止溝に弾性的に係合するように前記ガイドカラーの内周面に設けた突条とから構成した」との構成を付加したものであるところ、本件請求項1に係る発明が、先の「(1)本件請求項1に係る発明について」に記載したように、甲第1号証及び甲第2号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることができない以上、本件請求項2に係る発明も、甲第1号証及び甲第2号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(3)本件請求項3に係る発明について
本件請求項3に係る発明は、本件請求項2に係る発明において、「前記突条は、断面三角形状として前記ガイドカラーの下端部に形成し、前記係止溝は前記被覆部の下端部に設けた」との構成を付加したものであるところ、本件請求項2に係る発明が、先の「(2)本件請求項2に係る発明について」に記載したように、甲第1号証及び甲第2号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができない以上、本件請求項3に係る発明も、甲第1号証及び甲第2号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(4)本件請求項4に係る発明について
本件請求項4に係る発明と甲1号証記載の発明2とを対比すると、甲第1号証記載の発明2の「天井レール」、「吊車」、「吊りボルト」、「移動壁」、「壁体」、「天井レールのガイド溝の位置に相当する吊りボルトの外周部分」及び「カラー」は、それぞれ本件請求項4に係る発明の「ハンガーレール」、「ランナー」、「吊下ボルト 」、「パネル」、「間仕切りパネル」、「ハンガーレールの見切り部に対向する前記吊下ボルトの被覆部」及び「ガイドカラー」に相当し、また、甲1号証記載の発明2のガイドカラーは、吊りボルト2と同径を成して自由に回転することが出来る(上記cの記載参照。)ことから、軸方向に移動不動に吊りボルト2に支持されているといえるので、両者は、
「天井面内に配設されるハンガーレール内にランナーを移動可能に支持し、前記ランナーの吊下ボルトからパネルを吊下支持して、該パネルをハンガーレールに沿って移動可能に支持した間仕切りパネルにおいて、前記ランナーの吊下ボルトをハンガーレールから下方へ垂下し、前記吊下ボルトの下端部にパネルを吊下支持し、前記吊下ボルトの前記ハンガーレールの見切り部に対向する被覆部を、筒状に成形したガイドカラーで被覆し、ガイドカラーを吊下ボルトに対し回転可能に、かつ軸方向に移動不能に支持している間仕切りパネル」
である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点
本件請求項4に係る発明では、ガイドカラーを合成樹脂で成形し、前記ガイドカラー及び吊下ボルトには、該ガイドカラーを吊下ボルトに弾性的に係合させて、該ガイドカラーを吊下ボルトに対し回転可能に、かつ軸方向に移動不能に支持する係止手段を一体に設けたのに対し、甲第1号証記載の発明2では、ガイドカラーの材料が不明であるとともに、ガイドカラー及び吊下ボルトには、該ガイドカラーを吊下ボルトに弾性的に係合させて、該ガイドカラーを吊下ボルトに対し回転可能に、かつ軸方向に移動不能に支持する係止手段を一体に設けているのか不明である。
上記相違点は、先の「(1)本件請求項1に係る発明について」で挙げた相違点と同じであり、該相違点についての検討は、既述したとおりである。
したがって、本件請求項4に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

〔4〕むすび
以上のとおりであるから、異議申立人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件請求項1〜4に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜4に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-11-13 
出願番号 特願平10-86056
審決分類 P 1 651・ 121- Y (E04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 蔵野 いづみ  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 中田 誠
鈴木 公子
登録日 2000-11-17 
登録番号 特許第3129691号(P3129691)
権利者 立川ブラインド工業株式会社
発明の名称 間仕切りパネルのランナー及び間仕切りパネル  
代理人 平崎 彦治  
代理人 恩田 博宣  

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