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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E01C
管理番号 1050138
異議申立番号 異議1999-72432  
総通号数 25 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-06-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-06-24 
確定日 2001-11-21 
異議申立件数
事件の表示 特許第2840015号「弾性舗装体および弾性舗装方法」の請求項1ないし10に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2840015号の請求項1ないし10に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2840015号の請求項1ないし10に係る発明は、平成5年12月6日に特許出願され、平成10年10月16日にその特許の設定登録がなされ、その後、堀尚弘、横浜ゴム株式会社により特許異議の申立てがなされ、平成11年10月28日付けで取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年1月18日に特許異議意見書が提出され、その後、平成12年2月22日付けで異議申立人堀尚弘、横浜ゴム株式会社に対して審尋がなされ、その指定期間内である平成12年4月24日に異議申立人横浜ゴム株式会社より回答書が提出され、同じく平成12年4月28日に異議申立人堀尚弘より回答書が提出され、その後、平成12年6月12日付けで特許権者に対して審尋がなされ、その指定期間内である平成12年7月24日に特許権者より回答書が提出され、その後、平成12年9月12日付けで取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年12月1日に訂正請求がなされ、平成13年4月20日付けで訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年7月9日に意見書が提出され、同日付けで平成12年12月1日提出の訂正請求が取り下げられたものである。

2.本件発明
本件の請求項1ないし10に係る発明(以下「本件発明1ないし10」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】 少なくとも、ゴム粉砕物、無機質粒状物及び液状バインダーからなり、0.5〜3.0t/cmのばね定数を有する弾性舗装材からなる表面の弾性層と、砕石層又は栗石層からなる基盤層とからなり、表面の弾性層を基盤層の上に直接敷き均して得られる弾性舗装体。
【請求項2】 ゴム粉砕物の粒径又は長さが1mm以上を有し、無機質粒状物の粒径が1mm以上を有し、ゴム粉砕物と無機質粒状物の混合割合が重量比1対1〜1対5で、液状バインダーがゴム粉砕物と無機質粒状物の合計値の5〜10%である請求項1記載の弾性舗装体。
【請求項3】 弾性層の舗装厚が1〜5cmである請求項1記載の弾性舗装体。
【請求項4】 弾性層上に、人工芝を敷設することを特徴とする請求項1記載の弾性舗装体。
【請求項5】 液状バインダーが、ウレタン、アクリル酸エステル共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂である請求項1記載の弾性舗装体。
【請求項6】 少なくとも、ゴム粉砕物、無機質粒状物及び液状バインダーを含む舗装材を、砕石層又は栗石層からなる基盤層の上に直接敷均して、0.5〜3.0t/cmのばね定数を有する弾性層を基盤層の表面に形成することを特徴とする弾性舗装方法。
【請求項7】 ゴム粉砕物の粒径又は長さが1mm以上を有し、無機質粒状物の粒径が1mm以上を有し、ゴム粉砕物と無機質粒状物の混合割合が重量比1対1〜1対5で、液状バインダーがゴム粉砕物と無機質粒状物の合計値の5〜10%である請求項6記載の弾性舗装方法。
【請求項8】 舗装厚が1〜5cmの弾性層である請求項6記載の弾性舗装方法。
【請求項9】 弾性層上に、人工芝を敷設することを特徴とする請求項6記載の弾性舗装方法。
【請求項10】 液状バインダーが、ウレタン、アクリル酸エステル共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂である請求項6記載の弾性舗装方法。」

3.刊行物
(1)当審が平成12年9月12日付けで通知した取消理由に引用された刊行物1(実願昭62-165584号(実開平1-69807号)のマイクロフィルム(特許異議申立人堀尚弘の提出した甲第1号証))には、
(イ)「(1)基礎地盤上に砕石、砂利もしくは鉱滓等の粒状材からなる下地層を形成し、該下地層上にゴムチップ等からなる高分子粒状材を樹脂でバインドした弾性層を積層し、該弾性層上に人工芝生を敷設したことを特徴とする人工芝生製舗装構造体。
(2)上記弾性層内には砂や単粒砕石等の無機鉱物質材料が所定量配合されている実用新案登録請求の範囲第1項記載の人工芝生製舗装構造体。」(明細書「実用新案登録請求の範囲」欄)、
(ロ)「この下地層10上にφ1〜25mm、好ましくはφ3〜10mmのゴムチップをウレタン樹脂でバインドした弾性層11が………厚さ10〜80mm、好ましくは15〜50mmの厚さをもって打設される。」(同4頁下から2行ないし5頁4行)、
(ハ)「またこの実施例において、チップ材とウレタン樹脂の配合例は次のとおりであり、この場合硅砂(無機質鉱物材料)は弾力性に幅をもたせるために用いられている。………
〈配合例2〉ゴムチップ(2〜5mm):硅砂(3〜5mm):一液ウレタン=4:3:1」(同5頁12ないし末行)
と記載されている。

(2)同じく、刊行物2(特開昭63-7404号公報(同甲第2号証))には、
(イ)「本発明の透水性弾性舗装法の要旨は、硬質粒状骨材1…、軟弾性骨材2…及びこれら骨材1…、2…同志が相互に結合するに足る量の合成樹脂結合剤を混練して樹脂モルタルとなし、この樹脂モルタルを被舗装基盤A表面に塗布して硬化させ、該基盤A上に前記骨材1…、2…同志が結合樹脂3にて相互に結合されて成る透水性多孔質の弾性レジンコンクリート層4を形成させるようにしたことにある。」(公報2頁右上欄10ないし18行)、
(ロ)「硬質骨材1…としては、粒径1〜15mmの各種砂礫、天然砂、2・3号硅砂或は粒状化したスラグ(高炉滓)等が採用される。………軟弾性骨材2…としては、上記硬質骨材1…と略同サイズ(粒径が略同じ)に整粒されたゴムチップ等が好ましく採用される。」(同2頁左下欄2ないし12行)、
(ハ)「合成樹脂結合剤としては、ウレタン、エポキシ、ポリエステル、アクリル(好ましくはメチルメタクリレート)等の疎水性合成樹脂結合剤が挙げられ、」(同2頁右下欄2ないし5行)、
(ニ)「(i)樹脂モルタルの調製;(i-1)(株)中山製鋼所製高炉滓フィットサンド2号:12kg、杉本ゴム工業所製ゴムチップ8M:4kg、三洋化成(株)製一液性湿気硬化型ウレタンFLR-565:1.33kg、………を加えて混練し樹脂モルタルを得た。」(同3頁右上欄18行ないし左下欄5行)、
(ホ)「樹脂モルタルを15mmの厚さで塗りつけ、これを自然放置して硬化させた。」(同3頁左下欄16ないし17行)
と記載されている。

4.対比・判断
(1)本件発明1について
刊行物1には、明細書の上記(イ)ないし(ハ)の記載、及び第1図の記載からみて、「基礎地盤上に砕石、砂利もしくは鉱滓等の粒状材からなる下地層を形成し、該下地層上にゴムチップ等からなる高分子粒状材と硅砂(無機質鉱物材料)をウレタン樹脂でバインドした弾性層を積層し、該弾性層上に人工芝生を敷設した人工芝生製舗装構造体」の発明が記載されているものと認められる。
そこで、本件発明1と、刊行物1に記載の発明とを対比すると、刊行物1に記載の発明の「ゴムチップ等からなる高分子粒状材」、「硅砂(無機質鉱物材料)」、「ウレタン樹脂」及び「下地層」は、本件発明1の「ゴム粉砕物」、「無機質粒状物」、「液状バインダー」及び「基盤層」にそれぞれ相当するから、両者は、ゴム粉砕物、無機質粒状物及び液状バインダーからなる、弾性層と、砕石からなる基盤層とからなり、弾性層を基盤層の上に直接敷き均して得られる弾性舗装体である点で一致し、以下の点で相違している。

〈相違点1〉
弾性層について、本件発明1が、0.5〜3.0t/cmのばね定数を有する弾性舗装材からなるのに対し、刊行物1に記載の発明は、ばね定数に関して不明な点。

〈相違点2〉
本件発明1が、表面が弾性層であるのに対し、刊行物1に記載の発明は、弾性層上に人工芝を敷設している点。

上記相違点について検討する。
相違点1について、本件発明1の「0.5〜3.0t/cmのばね定数」は、「発明の詳細な説明」欄に記載の「JIS K6385の静的ばね定数試験に準じて行った。供試体の大きさは100×100×30mm(厚さ)。」(特許明細書段落【0024】)により求められるものであるが、そのJISにはすべての条件が示されておらず、上記の記載のみではばね定数が特定できない。そこで、上記「0.5〜3.0t/cmのばね定数」を有する弾性層について、その作用効果についてみてみると、「ばね定数が0.5t/cm未満のものは、弾性には富んでいるが、柔らか過ぎ歩行感としては好ましくない。又、反対にばね定数が3.0t/cmを越えるものは、弾性が小さく、硬いごつごつとした感じの歩行感となり求められる舗装材としては好ましくない。」(同段落【0005】)との記載があるから、「0.5〜3.0t/cmのばね定数」は、好ましい歩行感を得るための弾性層の弾力性の範囲を示すものと考えられる。しかしながら、弾性舗装体において、舗装体の弾力性を用途等に応じて適宜なものとすることは、当業者にとって当然であり、また、その場合に歩行感に着目することは、当業者が容易に想到し得ることであるから、刊行物1に記載の発明の弾性層を、好ましい歩行感を得るための弾力性を有するものとすることは、当業者であれば容易になし得ることである。
相違点2について、表面が弾性層である舗装体は、従来から周知(例えば、刊行物2を参照。)であり、また、本件発明1の弾性層も、その上に人工芝を敷設することを考えており(本件発明4、9を参照。)、弾性層上に人工芝を敷設するかどうかは、その用途等により当業者が適宜に変更し得るものであるから、刊行物1に記載の発明において、人工芝を敷設しないものとし、本件発明1の上記相違点2に係る構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
そして、全体として、本件発明1によってもたらされる効果も、刊行物1に記載の発明から、当業者であれば当然に予測することができる程度のものであって、顕著なものとはいえない。
したがって、本件発明1は、刊行物1に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1を引用するものであり、本件発明2と刊行物1に記載の発明とを対比すると、上記本件発明1との対比での相違点1及び2に加え、以下の相違点3で相違し、その余の点で一致している。

〈相違点3〉
本件発明2が、ゴム粉砕物の粒径又は長さが1mm以上を有し、無機質粒状物の粒径が1mm以上を有し、ゴム粉砕物と無機質粒状物の混合割合が重量比1対1〜1対5で、液状バインダーがゴム粉砕物と無機質粒状物の合計値の5〜10%であるのに対し、刊行物1に記載の発明は、ゴムチップ(ゴム粉砕物)はφ1〜25mmであり、硅砂(無機質粒状物)は3〜5mmであり、ゴム粉砕物と無機質粒状物と液状バインダーの混合割合が上記割合と異なる点。

上記相違点1及び2については、上記「(1)本件発明1について」で検討したとおりである。
次に、上記相違点3について検討する。
上記刊行物2には、上記(イ)ないし(ホ)の記載、及び第1及び2図の記載からみて、「粒径1〜15mmの各種砂礫、天然砂、2・3号硅砂或は粒状化したスラグ(高炉滓)等からなる硬質骨材(本件発明2の「無機質粒状物」に相当する。)と、硬質骨材と略同サイズ(粒径が略同じ)に整粒されたゴムチップ等からなる弾性骨材(同「ゴム粉砕物」に相当する。)と、ウレタン、エポキシ、アクリル樹脂等の合成樹脂結合剤(同「液状バインダー」に相当する。)とからなる樹脂モルタルを、被舗装基盤上に塗布して硬化させ、該基盤上に弾性レジンコンクリート層(同「弾性層」に相当する。)を形成した弾性舗装体」の発明が記載されているものと認められ、また、特に上記(ニ)の記載から、「ゴムチップ(ゴム粉砕物)と高炉滓フィットサンド(無機質粒状物)の混合割合が重量比1対3で、ウレタン(液状バインダー)がゴムチップ(ゴム粉砕物)と高炉滓フィットサンド(無機質粒状物)の合計値の約8.3%であること」が記載されているものと認められるから、上記刊行物2に記載の発明は、ゴム粉砕物の粒径が1mm以上を有し、無機質粒状物の粒径が1mm以上を有し、ゴム粉砕物と無機質粒状物の混合割合が重量比1対1〜1対5で、液状バインダーがゴム粉砕物と無機質粒状物の合計値の5〜10%であるともいえる。そうすると、刊行物1及び刊行物2は、ともに弾性舗装体に関するもので、本件発明2も同一の技術分野に関するものであるから、刊行物2に記載の技術手段を刊行物1に記載の発明に適用して、本件発明2の上記相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、全体として、本件発明2によってもたらされる効果も、刊行物1及び2に記載の発明から、当業者であれば当然に予測することができる程度のものであって、顕著なものとはいえない。
したがって、本件発明2は、刊行物1及び2に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)本件発明3について
本件発明3は、本件発明1を引用するものであり、「弾性層の舗装厚が1〜5cmである」と限定するものであるが、刊行物1に記載の発明も、弾性層の厚さが10〜80mm(1〜8cm)、好ましくは15〜50mm(1.5〜5cm)であるから(上記(ロ)の記載を参照。)、本件発明3と刊行物1に記載の発明とを対比すると、上記本件発明1との対比での相違点1及び2で相違し、その余の点で一致している。
そして、上記相違点1及び2については、上記「(1)本件発明1について」で検討したとおりである。
したがって、本件発明3は、刊行物1に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)本件発明4について
本件発明4は、本件発明1を引用するものであり、「弾性層上に、人工芝を敷設する」と限定するものであるが、刊行物1に記載の発明も、弾性層上に、人工芝を敷設するものであり、この点は上記本件発明1との対比での相違点2に関するものであるから、本件発明4と刊行物1に記載の発明とを対比すると、上記本件発明1との対比での相違点1で相違し、その余の点で一致している。
そして、上記相違点1については、上記「(1)本件発明1について」で検討したとおりである。
したがって、本件発明4は、刊行物1に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)本件発明5について
本件発明5は、本件発明1を引用するものであり、「 液状バインダーが、ウレタン、アクリル酸エステル共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂である」と限定するものであるが、刊行物1に記載の発明も、液状バインダーはウレタン樹脂であるから、本件発明5と刊行物1に記載の発明とを対比すると、上記本件発明1との対比での相違点1及び2で相違し、その余の点で一致している。
そして、上記相違点1及び2については、上記「(1)本件発明1について」で検討したとおりである。
したがって、本件発明5は、刊行物1に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(6)本件発明6について
刊行物1には、明細書の上記(イ)ないし(ハ)の記載、及び第1図の記載からみて、「基礎地盤上に砕石、砂利もしくは鉱滓等の粒状材からなる下地層を形成し、該下地層上にゴムチップ等からなる高分子粒状材と硅砂(無機質鉱物材料)をウレタン樹脂でバインドした弾性層を積層し、該弾性層上に人工芝生を敷設したことを特徴とする人工芝生製舗装方法」の発明が記載されているものと認められる。
そこで、本件発明6と、刊行物1に記載の発明とを対比すると、刊行物1に記載の発明の「ゴムチップ等からなる高分子粒状材」、「硅砂(無機質鉱物材料)」、「ウレタン樹脂」及び「下地層」は、本件発明6の「ゴム粉砕物」、「無機質粒状物」、「液状バインダー」及び「基盤層」にそれぞれ相当するから、両者は、ゴム粉砕物、無機質粒状物及び液状バインダーからなる舗装材を、砕石からなる基盤層の上に直接敷均して、弾性層を基盤層の表面に形成する弾性舗装方法である点で一致し、以下の相違点で相違している。

〈相違点1〉
弾性層について、本件発明6が、0.5〜3.0t/cmのばね定数を有するのに対し、刊行物1に記載の発明は、ばね定数に関して不明な点。

〈相違点2〉
本件発明6が、表面が弾性層であるのに対し、刊行物1に記載の発明は、弾性層上に人工芝を敷設している点。

上記相違点について検討する。
相違点1について、本件発明6の「0.5〜3.0t/cmのばね定数」は、「発明の詳細な説明」欄に記載の「JIS K6385の静的ばね定数試験に準じて行った。供試体の大きさは100×100×30mm(厚さ)。」(特許明細書段落【0024】)により求められるものであるが、そのJISにはすべての条件が示されておらず、上記の記載のみではばね定数が特定できない。そこで、上記「0.5〜3.0t/cmのばね定数」を有する弾性層について、その作用効果についてみてみると、「ばね定数が0.5t/cm未満のものは、弾性には富んでいるが、柔らか過ぎ歩行感としては好ましくない。又、反対にばね定数が3.0t/cmを越えるものは、弾性が小さく、硬いごつごつとした感じの歩行感となり求められる舗装材としては好ましくない。」(同段落【0005】)との記載があるから、「0.5〜3.0t/cmのばね定数」は、好ましい歩行感を得るための弾性層の弾力性の範囲を示すものと考えられる。しかしながら、弾性舗装体において、舗装体の弾力性を用途等に応じて適宜なものとすることは、当業者にとって当然であり、又その場合に歩行感に着目することは、当業者が容易に想到し得ることであるから、刊行物1に記載の発明の弾性層を、好ましい歩行感を得るための弾力性を有するものとすることは、当業者であれば容易になし得ることである。
相違点2について、表面が弾性層である舗装体は、従来から周知(例えば、刊行物2を参照。)であり、また、本件発明6の弾性層も、その上に人工芝を敷設することを考えており(本件発明4、9を参照。)、弾性層上に人工芝を敷設するかどうかは、その用途等により当業者が適宜に変更し得るものであるから、刊行物1記載の発明において、人工芝を敷設しないものとし、本件発明6の上記相違点2に係る構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得ることである。
そして、全体として、本件発明6によってもたらされる効果も、刊行物1に記載の発明から、当業者であれば当然に予測することができる程度のものであって、顕著なものとはいえない。
したがって、本件発明6は、刊行物1に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(7)本件発明7について
本件発明7は、本件発明6を引用するものであり、本件発明7と刊行物1に記載の発明とを対比すると、上記本件発明6との対比での相違点1及び2に加え、以下の相違点3で相違し、その余の点で一致している。

〈相違点3〉
本件発明7が、ゴム粉砕物の粒径又は長さが1mm以上を有し、無機質粒状物の粒径が1mm以上を有し、ゴム粉砕物と無機質粒状物の混合割合が重量比1対1〜1対5で、液状バインダーがゴム粉砕物と無機質粒状物の合計値の5〜10%であるのに対し、刊行物1に記載の発明は、ゴムチップ(ゴム粉砕物)はφ1〜25mmであり、硅砂(無機質粒状物)は3〜5mmであり、ゴム粉砕物と無機質粒状物と液状バインダーの混合割合が上記割合と異なる点。

上記相違点1及び2については、上記「(6)本件発明6について」で検討したとおりである。
次に、上記相違点3について検討する。
上記刊行物2には、上記(イ)ないし(ホ)の記載、及び第1及び2図の記載からみて、「粒径1〜15mmの各種砂礫、天然砂、2・3号硅砂或は粒状化したスラグ(高炉滓)等からなる硬質骨材(本件発明2の「無機質粒状物」に相当する。)と、硬質骨材と略同サイズ(粒径が略同じ)に整粒されたゴムチップ等からなる弾性骨材(同「ゴム粉砕物」に相当する。)と、ウレタン、エポキシ、アクリル樹脂等の合成樹脂結合剤(同「液状バインダー」に相当する。)とからなる樹脂モルタルを、被舗装基盤上に塗布して硬化させ、該基盤上に弾性レジンコンクリート層(同「弾性層」に相当する。)を形成した弾性舗装体」の発明が記載されているものと認められ、また、特に上記(ニ)の記載から、「ゴムチップ(ゴム粉砕物)と高炉滓フィットサンド(無機質粒状物)の混合割合が重量比1対3で、ウレタン(液状バインダー)がゴムチップ(ゴム粉砕物)と高炉滓フィットサンド(無機質粒状物)の合計値の約8.3%であること」が記載されているものと認められるから、上記刊行物2に記載の発明は、ゴム粉砕物の粒径が1mm以上を有し、無機質粒状物の粒径が1mm以上を有し、ゴム粉砕物と無機質粒状物の混合割合が重量比1対1〜1対5で、液状バインダーがゴム粉砕物と無機質粒状物の合計値の5〜10%であるともいえる。そうすると、刊行物1及び刊行物2は、ともに弾性舗装体に関するもので、本件発明7も同一の技術分野に関するものであるから、刊行物2に記載の技術手段を刊行物1に記載の発明に適用して、本件発明7の上記相違点3に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、全体として、本件発明7によってもたらされる効果も、刊行物1及び2に記載の発明から、当業者であれば当然に予測することができる程度のものであって、顕著なものとはいえない。
したがって、本件発明7は、刊行物1及び2に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(8)本件発明8について
本件発明8は、本件発明6を引用するものであり、「弾性層の舗装厚が1〜5cmである」と限定するものであるが、刊行物1に記載の発明も、弾性層の厚さが10〜80mm(1〜8cm)、好ましくは15〜50mm(1.5〜5cm)であるから(上記(ロ)の記載を参照。)、本件発明8と刊行物1に記載の発明とを対比すると、上記本件発明6との対比での相違点1及び2で相違し、その余の点で一致している。
そして、上記相違点1及び2については、上記「(6)本件発明6について」で検討したとおりである。
したがって、本件発明8は、刊行物1に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(9)本件発明9について
本件発明9は、本件発明6を引用するものであり、「弾性層上に、人工芝を敷設する」と限定するものであるが、刊行物1に記載の発明も、弾性層上に、人工芝を敷設するものであり、この点は上記本件発明6との対比での相違点2に関するものであるから、本件発明9と刊行物1に記載の発明とを対比すると、上記本件発明6との対比での相違点1で相違し、その余の点で一致している。
そして、上記相違点1については、上記「(6)本件発明6について」で検討したとおりである。
したがって、本件発明9は、刊行物1に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(10)本件発明10について
本件発明10は、本件発明6を引用するものであり、「 液状バインダーが、ウレタン、アクリル酸エステル共重合体、エチレン酢酸ビニル共重合体、エポキシ樹脂である」と限定するものであるが、刊行物1に記載の発明も、液状バインダーはウレタン樹脂であるから、本件発明10と刊行物1に記載の発明とを対比すると、上記本件発明6との対比での相違点1及び2で相違し、その余の点で一致している。
そして、上記相違点1及び2については、上記「(6)本件発明6について」で検討したとおりである。
したがって、本件発明10は、刊行物1に記載の発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1ないし10は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1ないし10についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-09-26 
出願番号 特願平5-305005
審決分類 P 1 651・ 121- Z (E01C)
最終処分 取消  
前審関与審査官 深田 高義  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 中田 誠
鈴木 公子
登録日 1998-10-16 
登録番号 特許第2840015号(P2840015)
権利者 奥アンツーカ株式会社 三井化学株式会社
発明の名称 弾性舗装体および弾性舗装方法  
代理人 野口 賢照  
代理人 苗村 新一  
代理人 最上 正太郎  
代理人 小川 信一  
代理人 斎下 和彦  
代理人 苗村 新一  
代理人 最上 正太郎  

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