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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G21K
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  G21K
審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降)  G21K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  G21K
管理番号 1050143
異議申立番号 異議2000-73180  
総通号数 25 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-04-23 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-08-15 
確定日 2001-11-19 
異議申立件数
事件の表示 特許第3010844号「X線反射鏡」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3010844号の請求項1ないし2に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続きの経緯
特許第3010844号の請求項1,2に係る発明の手続きの経緯は、以下のとおりである。
出願 平成3年10月3日
設定登録 平成11年12月10日
特許異議の申立て(キヤノン株式会社)
平成12年8月15日
取消理由通知 平成12年12月25日
意見書、訂正請求 平成13年3月13日
訂正拒絶理由通知 平成13年5月17日
2.訂正請求について
2‐1.訂正の内容
訂正請求における訂正の内容は、以下の(1),(2),(3),(4),(5),(6)のとおりである。
(1)特許請求の範囲の
「【請求項1】X線反射面が形成された変形可能な基板と、前記基板のX線反射面が形成された面とは反対側の面に規則性をもって配設された複数のピエゾ素子と、該ピエゾ素子に印加する電圧を変化させる電圧制御手段とを有することを特徴とするX線反射鏡。
【請求項2】前記X線反射面は、前記基板上に形成された所定の波長のX線に対してブラッグの反射条件を満たす膜厚を有する多層膜からなることを特徴とする請求項1に記載のX線反射鏡。」を、
「【請求項1】変形可能な基板と、該基板上に形成された所定の波長のX線に対してブラッグの反射条件を満たす膜厚の多層膜からなるX線反射面を有するX線反射鏡であって、
前記所定の波長が44Å以上であり、
前記膜厚が60度以上の入射角に対してブラッグの反射条件を満たす厚さであり、
前記X線反射面の裏面に配設されたピエゾ素子と、
該ピエゾ素子に印加する電圧を変化させる電圧制御手段と
を有することを特徴とするX線反射鏡。」に訂正する。
(2)発明の詳細な説明において、【0009】の
「 【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係るX線反射鏡では、X線反射面が形成された変形可能な基板と、その基板のX線反射面が形成された面とは反対側の面に規則性をもって配設された複数のピエゾ素子と、ピエゾ素子に印加する電圧を変化させる電圧制御手段とを備えた。
また、請求項2に記載の発明に係るX線反射鏡では、請求項1に記載のX線反射鏡において、X線反射面が、基板上に形成された所定の波長のX線に対してブラッグの反射条件を満たす膜厚を有する多層膜からなるものである。」を、
「 【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係るX線反射鏡では、変形可能な基板と、該基板上に形成された所定の波長のX線に対してブラッグの反射条件を満たす膜厚の多層膜からなるX線反射面を有するX線反射鏡であって、
前記所定の波長が44Å以上であり、
前記膜厚が60度以上の入射角に対してブラッグの反射条件を満たす厚さであり、
前記X線反射面の裏面に配設されたピエゾ素子と、
該ピエゾ素子に印加する電圧を変化させる電圧制御手段と
を有するようにした。
これによって、直入射での反射鏡に使用する多層膜反射鏡が受ける熱的変形を補正することが可能になる。」に訂正する。
(3)発明の詳細な説明において、【0010】を削除する。
(4)発明の詳細な説明において、【0012】の
「ピエゾ素子は、変位量の精度、再現性に優れており、さらに電気的に制御するものであるため大変扱いやすい。また、ピエゾ素子を直列に複数個並べることによって変化量を増加させることもできる。」を
「ピエゾ素子は、変位量の精度、再現性に優れており、さらに電気的に制御するものであるため大変扱いやすい。また、ピエゾ素子を直列に複数個並べることによって変化量を増加させることもできる。
なお、本発明では多層膜反射鏡が、波長44Å以上のX線が入射角60度以上で入射するX線に対してブラッグの反射条件を満足するようにされているので、直入射反射光学系が熱の影響を低減して実現できる。」に訂正する。
(5)発明の詳細な説明において、【0027】の
「 【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明のX線反射鏡では、熱膨張によって所定の多層膜の形状や周期構造が変化しても、X線の波長を変えることなく多層膜によるX線反射を行なうことができる。
また、本発明のX線反射鏡は、多様な形状の反射鏡を容易に短期間で製作することができるため、種々の光学系の設計が可能となる。」を
「 【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明のX線反射鏡では、熱膨張によって所定の多層膜の形状や周期構造が変化しても、X線の波長を変えることなく多層膜によるX線反射を行なうことができる。特に本発明では直入射で反射鏡を利用する、熱的な影響を低減した反射光学系を実現できる。
また、本発明のX線反射鏡は、多様な形状の反射鏡を容易に短期間で製作することができるため、種々の光学系の設計が可能となる。」に訂正する。
(6)発明の詳細な説明において、【0003】の
「この多層膜は、ブラッグの反射条件、2dsinθ=nλ(但し、θはX線の入射面が格子面となす角、dは格子面間隔、λはX線の波長、nは整数)を満足した時にX線を反射する。従って、X線反射鏡を構成している多層膜は、予め定めた波長のX線に対して前記ブラッグの反射条件を満足するよう設定された膜厚を有する複数の層から形成されている。」を
「この多層膜は、ブラッグの反射条件、2dsinθ=nλ(但し、θはX線の入射光が格子面となす角、dは格子面間隔、λはX線の波長、nは整数)を満足した時にX線を反射する。従って、X線反射鏡を構成している多層膜は、予め定めた波長のX線に対して前記ブラッグの反射条件を満足するよう設定された膜厚を有する複数の層から形成されている。」に訂正する。
2‐2.訂正の適否
上記訂正請求に対して当審で通知した訂正拒絶理由は以下のとおりである。
『・・・・・・(省略)
ここで、請求項2が削除され、請求項1が訂正されているが、請求項1において、(1)「規則性をもって配設された複数のピエゾ素子」から「配設されたピエゾ素子」に変更し、(2)「前記所定の波長が44Å以上であり、
前記膜厚が60度以上の入射角に対してブラッグの反射条件を満たす厚さであり、」を加えている。
しかし、(1)については、「規則性をもって」及び「複数の」という限定が削除されたのであるから、特許請求の範囲の拡張であり減縮ではないし、また、誤記の訂正や明瞭でない記載の釈明にも当たらない。(2)については、願書に添付した明細書又は図面の【0002】〜【0004】及び【0020】〜【0023】を見ると、直入射に関すること、及び波長が44ÅのX線が入射角60度で入射する場合の例が記載されているにすぎない。X線の波長が44Å以上であり、入射角が60度以上であることは記載されていないし、また、当業者が直接的かつ一義的に導き出せる事項でもない。よって、この(2)の点は、願書に添付した明細書又は図面の範囲内においてした訂正ではない。
したがって、本件訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項で準用する平成6年法律第116号による改正前の同法第126条第1項ただし書きの規定に適合しないので、当該訂正は認められない。』
上記訂正拒絶理由に対して、特許権者に期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、何らの応答もない。そして、上記訂正拒絶理由は妥当なものであり、上記訂正は認められない。
3.特許異議の申立てについて
特許明細書の請求項1,2に係る発明は、上記2‐1.の(1)で示したように、特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定されるとおりのものである。
これに対して当審で通知した取消理由は以下のとおりである。
『1.本件特許の請求項1及び2に係る発明は、特許異議申立書第3頁第8行〜第13頁第13行の「(4)具体的理由…ものである。」に記載の理由により、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物(1)〜(3)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
2.本件特許の請求項1及び2に係る発明は、特許異議申立書第3頁第8行〜第13頁第13行の「(4)具体的理由…ものである。」に記載の理由により、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物(1)〜(3)に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(1)「OPTICAL ENGINEERING」AUG.1990/Vol.29 No.8 p.928-941
(2)米国特許第4,655,563号明細書
(3)特開昭60-156000号公報』
上記取消理由に対して、特許権者は、意見書及び訂正請求書を提出したが、訂正については上記2‐2.に述べたとおり認められない。また、意見書では、訂正が認められることを前提としており、訂正前の特許明細書を根拠とした反論は何もしていない。そして、上記取消理由は妥当なものである。
したがって、請求項1,2に係る発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-09-21 
出願番号 特願平3-281862
審決分類 P 1 651・ 851- ZB (G21K)
P 1 651・ 113- ZB (G21K)
P 1 651・ 121- ZB (G21K)
P 1 651・ 841- ZB (G21K)
最終処分 取消  
前審関与審査官 村田 尚英  
特許庁審判長 伊坪 公一
特許庁審判官 橋場 健治
志村 博
登録日 1999-12-10 
登録番号 特許第3010844号(P3010844)
権利者 株式会社ニコン
発明の名称 X線反射鏡  
代理人 関口 鶴彦  
代理人 渡辺 隆男  
代理人 伊東 哲也  

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