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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  E06B
管理番号 1050150
異議申立番号 異議2001-70787  
総通号数 25 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-09-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-03-09 
確定日 2001-11-21 
異議申立件数
事件の表示 特許第3090443号「サッシ段窓」の特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3090443号の特許請求の範囲第1項に記載された発明についての特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯・本件発明
本件特許第3090443号に係る出願は、昭和59年7月23日に出願した実願昭59-110262号の一部を特許法第44条第1項の規定により昭和61年11月17日に分割した実願昭61-162984号の一部を、更に平成5年8月4日に分割した実願平5-46421号を、平成11年2月4日に特許法第46条第1項の規定により特許出願に変更したものであって、平成12年7月21日に特許の設定登録がなされ、その後、トステム株式会社から特許異議の申立がなされ、取消理由通知が通知され、その指定期間内である平成13年8月27日付けで特許異議意見書が提出されたものであり、その本件特許請求の範囲第1項に記載された発明(以下、「本件発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の第1項に記載された次のとおりのものである。
1.サッシ窓を上下に連結させた段窓であって、上方のサッシ窓の下枠と下方のサッシ窓の上枠とが中骨で連結された構造を有し、下枠は、室内側端にねじ止め部、室外側端に突出片及びねじ止め部と突出片の間に垂下片を備え、上枠は、室内側端にねじ止め部、室外側に突出片及びねじ止め部と突出片の間に立上り片を備え、中骨は、室内面板と該室内面板の略中央部から下枠及び上枠の見込み方向寸法相当分だけ室外側に延出する一枚板状の主体部により断面略T字型に一体的に形成されて、前記室内面板の部分にねじ受け部を備え、主体部に係合部を有し、下枠と上枠の突出片が中骨の主体部における係合部に係合され、下枠の垂下片が上方から、上枠の立上り片が下方から中骨の主体部に当接され、更に、室外側においては下枠の先端部と上枠の先端部が中骨の先端部を挟持し、室内側においては下枠と上枠のねじ止め部が中骨のそれぞれのねじ受け部に螺着されて一体に結合されていることを特徴とするサッシ段窓。

2.引用刊行物記載の発明
先の取消理由において引用した刊行物1の実願昭57-131848号(実開昭59-35582号)のマイクロフィルム(異議申立人提出の甲第3号証)には、欄間付きサッシに関し、明細書第2頁第8行から第4頁第12行及び特に第1図の記載並びに当業者の技術常識からみて、「下方の主窓のサッシ下枠4と同じ形材が使用された無目上部材14と上部の欄間のサッシ上枠3と同じ形材が使用された無目下部材15とが連結部材16で連結された無目5を有し、無目上部材14は、室内側へ向つて突設した横片28、外側端部下面に垂設した縦片32及び横片28と縦片32の間に下端にアンカー8係合突片29を設けた垂下片を備え、無目下部材15は、室内側へ向つて突設した横片21、外側壁18の上端に設けた突片25、突片25上の条溝36及び横片21と突片25の間に上端に突片24を設けた側壁17を備え、連結部材16は、両端に端部片40,41を設けたコ字形断面の室内面側板33と、該室内面側板33の略中央部から無目上部材14及び無目下部材15の見込み方向寸法相当分だけ室外側に延出する腕a,bより先は一枚板状で途中に段部を、先端に屈折片cを形成した部分により、断面略T字型に一体的に形成し、無目上部材14の縦片32を連結部材16の途中の段部に係合し、無目下部材15の条溝36に連結部材16の屈折片cを嵌合し、無目上部材14の垂下片下端のアンカー8係合突片29が連結部材16の腕aに載置され、無目下部材15の側壁17上端の突片24に連結部材16の腕bが載置され、室外側においては無目上部材14の先端部の縦片32と無目下部材15の先端部の突片25が連結部材16の先端部を挟持し、室内側においては無目上部材14と無目下部材15の横片28,21が連結部材16の端部片40,41にビス38,39を螺入締め付けて連結している欄間付きサッシ」という発明が記載されていると認められる。
同、刊行物2の実願昭56-45144号(実開昭57-157678号)のマイクロフィルム(異議申立人提出の甲第1号証)には、段窓に於ける割無目部の連結構造に関し、明細書第2頁第4行から第16行及び第1図の記載を参照すると、特に第1図に「無目本体に下枠と上枠が固定ネジ等で固着された構成を有するサッシ段窓において、無目本体の室外側先端に係合部を設け、該係合部に上枠の室外側端に形成された突出片が係合されている(コーキング材5の下方部分参照)」という発明が記載されていると認められる。

3.対比・判断
本件発明と、刊行物1に記載された発明とを比較すると、刊行物1に記載された発明の「(下方の主窓のサッシ下枠4と同じ形材が使用された)無目上部材14」、「(上部の欄間のサッシ上枠3と同じ形材が使用された)無目下部材15」、「連結部材16」、「横片28」、「縦片32」、「下端にアンカー8係合突片29を設けた垂下片」、「横片21」、「突片25」、「上端に突片24を設けた側壁17」、「端部片40,41」、「室内面側板33」、「腕a,bより先は一枚板状で途中に段部を、先端に屈折片cを形成した部分」、「無目上部材14の垂下片のアンカー8係合突片29が連結部材16の腕aに載置され、無目下部材15の側壁17の突片24に連結部材16の腕bが載置され」、「室外側においては無目上部材14の先端部の縦片32と無目下部材15の先端部の突片25が連結部材16の先端部を挟持し」、「室内側においては無目上部材14と無目下部材15の横片28,21が連結部材16の端部片40,41にビス38,39を螺入締め付けて連結している」及び「欄間付きサッシ」は、それぞれの機能に照らし、各々、本件発明の「(上方のサッシ窓の)下枠」、「(下方のサッシ窓の)上枠」、「中骨」、「(下枠の)ねじ止め部」、「(下枠の)突出片」、「垂下片」、「(上枠の)ねじ止め部」、「(上枠の)突出片」、「立上り片」、「ねじ受け部」、「室内面板」、「主体部」、「下枠の垂下片が上方から、上枠の立上り片が下方から中骨の主体部に当接され」、「室外側においては下枠の先端部と上枠の先端部が中骨の先端部を挟持し」、「室内側においては下枠と上枠のねじ止め部が中骨のそれぞれのねじ受け部に螺合されて一体に結合されている」及び「サッシ段窓」に相当し、刊行物1に記載された発明の「無目上部材14の縦片32を連結部材16の途中の段部に係合し、無目下部材15の突片25上の条溝36に連結部材16の屈折片cを嵌合し」は、本件発明の「下枠と上枠の突出片が中骨の主体部における係合部に係合され」と、「下枠と上枠の突出片が中骨の主体部に係合され」ている点で共通しているから、両者は、サッシ窓を上下に連結させた段窓であって、上方のサッシ窓の下枠と下方のサッシ窓の上枠とが中骨で連結された構造を有し、下枠は、室内側端にねじ止め部、室外側端に突出片及びねじ止め部と突出片の間に垂下片を備え、上枠は、室内側端にねじ止め部、室外側に突出片及びねじ止め部と突出片の間に立上り片を備え、中骨は、室内面板と該室内面板の略中央部から下枠及び上枠の見込み方向寸法相当分だけ室外側に延出する一枚板状の主体部により断面略T字型に一体的に形成されて、前記室内面板の部分にねじ受け部を備え、下枠と上枠の突出片が中骨の主体部に係合され、下枠の垂下片が上方から、上枠の立上り片が下方から中骨の主体部に当接され、更に、室外側においては下枠の先端部と上枠の先端部が中骨の先端部を挟持し、室内側においては下枠と上枠のねじ止め部が中骨のそれぞれのねじ受け部に螺着されて一体に結合されていることを特徴とするサッシ段窓の点で一致し、次の点で相違している。
a.下枠と上枠の突出片を中骨の主体部に係合するのに、本件発明では、中骨の主体部に係合部を有し、該係合部に下枠と上枠の突出片が係合されているのに対し、刊行物1に記載された発明では、そのような構成を有していない点。
しかしながら刊行物2には、本件発明及び刊行物1に記載された発明と同様のサッシ段窓において、無目本体(本件発明の「中骨」に相当。)の室外側先端に係合部を設け、該係合部に上枠の室外側端に形成された突出片が係合されている構成が記載されており、これを、刊行物1に記載された発明の下枠と上枠の突出片を中骨の主体部に係合する際の構成として採用することは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。
したがって、本件発明は、その出願前に頒布された刊行物1および2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものであるから、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。
なお、権利者は意見書で、刊行物1に記載された発明の認定に誤りがあり、従って、本件発明と刊行物1との対比における一致点相違点についての認定に誤りがあると主張しているので検討すると、以下のとおりである。
A.刊行物1の第2頁第8乃至17行の段落、及び第2頁第18行乃至第3頁第9行の段落の記載から無目5の室外側の螺着部の外側にも「モルタル」が装着されていることは明らかであり、目板に比すべきコーキング材(モルタル11)を無目5に用いていると主張している。しかしながら、下方の主窓のサッシ下枠4と無目上部材14、上部の欄間のサッシ上枠3と無目下部材15は同じ形材が使用されてはいるが、第1図のモルタル11の符号は、上枠3及び下枠4の箇所にしかない点及び第3頁第8,9行の「そして上枠3では横片21を額縁12にビス止めし、両突片24,25にアンカー8を掛止してある。」の記載からもわかるように、設置の際の用い方には相違があり、且つ第1図から明らかなように、無目5の屋外側の螺着部の外側に目板はなく、該箇所は、当業者の技術常識からみると、バックアップ材を介してシーリング材等を充填してあるものと解される。
B.刊行物1には、「無目上部材14の縦片32を連結部材16の段部に係合し、」の点は記載されていないと主張している。しかしながら、第1図をみると、連結部材16の室外側の途中で先端の屈折片cの手前に段部が形成されており、この途中の段部は無目上部材14の縦片32と接して記載されており、無目下部材15の条溝36への連結部材16の屈折片cの嵌合と合わせて、「無目上部材14の縦片32を連結部材16の段部に係合し、」としたことに誤りはない。
C.刊行物1には、「室外側においては下枠の先端部と上枠の先端部が中骨の先端部を挟持し、」の点は記載されていないし、先端部挟持の形態は、必然性が無いと主張している。しかしながら、刊行物1に記載された発明において必然性があるか否かは別として、第1図には先端部挟持の形態が記載されていて、且つ目板は取り付けられておらず、本件発明の当該構成による「目板を取り付けて隙間を塞ぐ必要がなくなり、従来段窓の組み立てに必要とされていた目板等の別部材が必要なくなる。」と同様の作用効果を奏しているといえる。なお、本件発明は、「室外側においては、下枠の先端部と上枠の先端部が中骨の一枚板状の主体部を上下に挟むようにして直に重合するので・・・・目板等の別部材が必要なくなる。」と主張しているが、請求の範囲には「直に重合する」という構成はなく、且つ、図1,図3において、中骨7の主体部70の室外側端部下面と、上枠6の室外側に形成された中空部60の室外側上面との間には隙間があり、説明はないが別部材が介在されている。
D.刊行物1では、室内外でそれぞれ螺着する点で、本件発明と相違すると主張している。確かに、本件発明の目的の一つは、上下サッシ枠と中骨との螺着をそれぞれ一箇所とすることである。これに対し、刊行物1に記載された発明においては、上下サッシ枠と中骨との螺着はそれぞれ室内側の一箇所であるが、上下サッシ枠相互を室外側で螺着している。しかしながら、刊行物1に記載された発明においても、室外側において下枠と上枠の突出片が中骨の主体部に係合されていること及び、同じく室外側において下枠の先端部と上枠の先端部が中骨の先端部を挟持していることは、上記B、Cで検討したとおりである。してみると、上下サッシ枠相互を室外側で螺着するか否かは、上下枠と中骨との係合構成により適宜なしうる設計的事項といえる。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-09-19 
出願番号 特願平11-27778
審決分類 P 1 651・ 121- Z (E06B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 米田 昭吉田 秀推西村 綾子藤井 俊二新井 夕起子  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 鈴木 憲子
蔵野 いづみ
登録日 2000-07-21 
登録番号 特許第3090443号(P3090443)
権利者 立山アルミニウム工業株式会社
発明の名称 サッシ段窓  
代理人 後藤田 章  
代理人 森 正澄  

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