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審決分類 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 B41M
管理番号 1050725
審判番号 不服2000-2785  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-11-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-03-02 
確定日 2001-12-06 
事件の表示 平成10年特許願第138640号「レーザ誘導放電によるマーキング方法及びマーキング装置」拒絶査定に対する審判事件[平成11年11月24日出願公開、特開平11-321092]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 本願発明・手続の経緯の概要
本願の請求項1及び2に係る発明は、「レーザ誘導放電によるマーキング方法及びマーキング装置」に関するものと認められる。
本願の手続の経緯の概要は、次のとおりである。
平成10年5月20日 特許出願
平成11年2月10日 拒絶理由通知
平成11年4月16日 意見書(以下「意見書1」という。)
平成11年4月16日 手続補正書(以下「手続補正書1」という。)
平成11年12月22日 拒絶査定
平成12年3月2日 審判請求
平成12年4月4日 手続補正書
平成12年4月4日 上申書
平成12年12月19日 当審における拒絶理由通知
平成13年3月6日 意見書(以下「意見書2」という。)

2 当審が通知した拒絶の理由の概要
当審が平成12年12月19日付けで通知した拒絶の理由の概要は、次のとおりである。
上記手続補正書1による明細書の補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてしたものではなく、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであると認められるから、本件出願の発明は、特許を受けることができない。
上記手続補正書1の特許請求の範囲の請求項1の記載中「放電痕を形成する」は、同日付けの意見書1及び審判請求書の請求の理由の記載からみて、除肉作用を伴わない加工を意味するものと認められる。
しかし、当初の明細書等に記載された発明は、レーザ誘導放電によりワーク上に除肉作用を伴う切削加工を行うものであったと認められる。
したがって、上記手続補正書1において、特許請求の範囲の請求項1の記載の「切削加工をする」を「放電痕を形成する」と補正することは、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてする補正とは認められない。

3 当審拒絶理由通知に対する意見書2の概要
上記当審拒絶理由通知に対し、請求人は平成13年3月6日付けで意見書2を提出した。その概要は次のとおりである。
上記の当審が通知した拒絶の理由は、承服できない。
本願発明は、小さな放電エネルギーのマーキング技術であって、大きな放電エネルギーのマーキング技術とは別異の技術である。通常の放電加工では、電極を押しあてて放電を起こし、絶縁オイルに発生したディトネーションなどによって切り屑を除去する切削除去加工であるのに対し、本願発明は、放電によって被加工物の表面に凹凸の切削加工が行われるが、除去はほとんどなく、切削加工ではあるが、切削除去加工ではない。その結果、これらをマーキングに用いた時に、放電加工では除去することによって生じた穴が文字を形成するのに対し、本願発明では表面に切削によってデコボコが生じて乱反射を起こし、これが文字となって浮き出る。
本願発明においては、レーザと放電が被加工物に照射されるから、実際にはまったく被加工物が除去されないということはないが、その量は極めてわずかであり、計測が困難なほど微量にすぎない。
「切削加工」は、一般的な概念としては切削除去加工の意味に使われるが、厳密には、本来、切削は、切る、削るという意味しかないから、たとえばハサミで紙の一部に切れ目を入れる場合のように、除去しない場合も含まれる。本願においては、表面を傷つけザラザラにして乱反射を起こす状態とする加工を「切削加工」と表現した。

4 上記手続補正書1に対する検討
(1)「切削加工」の意味
「切削加工法」の一般的な技術用語の意味についてみると、精機学会編「新訂 精密工作便覧」(昭和45年6月10日新訂8版発行)コロナ社P.23には、「切削加工法には、狭義に解釈した場合と広義に解釈した場合とで、2とおりの意味がある。狭義に解釈した場合には、バイト・フライス・ドリル・ブローチなどの切削工具を用い、切りくずを出しながら加工する方法をいう。広義に解釈した場合には塑性加工法などと異なり、加工材に 対し機械的な力を作用させてこれを局部的に破砕し、切りくず(一般的には破砕片)を出しながら加工物を希望の形状・寸法・仕上げ面あらさに加工する加工方法の総称である。この広義の切削加工方法の中には、切削工具を用いる加工法(狭義の切削加工法)のほか、研削砥石・ダイヤモンド砥石・スティック砥石・研磨布紙などの研削工具を用いる研削加工、ホーニング、超仕上、砥粒をはじめとして種々の粒子を用いるラッピング・バフ加工・バレル加工・噴射加工・超音波加工などの加工法がすべて含まれる。」と記載され、狭義、広義いずれにしても、切りくずを出しながら加工することを意味すると認める。
(2)請求人が意見書2において主張する「切削加工」の意味
請求人は、上記意見書2において、本願発明における「切削加工」は、表面を傷つけザラザラにして乱反射を起こすものであるとしているが、極めて微量な材料の除去を伴う加工という意味で、一般的に技術用語としての「切削加工」の概念に含まれるものとすることもできる。
(3)当初明細書等の記載
当初明細書等には、「レーザ誘導放電によってワーク上に放電による切削加工をするマーキング方法」(特許請求の範囲の請求項1)、及び「放電によって照射点が切削加工される」(段落番号【0010】)と記載されている。これらの記載は、本願発明の切削加工により、どの程度の量の材料が除去されるかを直接的に示すものではない。また、当初明細書等のこの他の部分にも、除去される材料の量を直接的に示す記載はない。
なお、当初明細書等の記載中「マーキング」は、一般には、罫書き針による罫書きのように、極めて微量な材料の除去を伴う加工を意味することが多い。しかし、上記意見書2に請求人が記載したように、通常の放電加工により、比較的多量の切り屑を除去することによりマーキングを行うことも考えられる。したがって、「マーキング」という記載が、極めて微量な材料の除去を伴う加工のみを意味するということはできない。
(4)上記補正書1による補正が当初明細書等の記載の範囲内においてしたものであるかについての判断
当初明細書等の記載中の「切削加工」は、それによってどの程度の量の材料が除去されるかを示していない。したがって、当初明細書等の記載中の「切削加工」が、極めて微量な材料の除去を伴う加工を直接的かつ一義的に示したものであるとはいえない。
そして、上記手続補正書1の特許請求の範囲の請求項1の記載中「放電痕を形成する」の語は、当初明細書等に記載されておらず、かつ、請求人は、意見書2において定義するとおりの「切削加工」によるものであると主張しているわけであるから、同補正は、当初明細書等記載した事項の範囲内においてしたものであるとはいえない。

5 むすび
したがって、本願は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、その余について検討するまでもなく拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-10-02 
結審通知日 2001-10-09 
審決日 2001-10-23 
出願番号 特願平10-138640
審決分類 P 1 8・ 55- Z (B41M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐々木 正章  
特許庁審判長 小林 武
特許庁審判官 桐本 勲
中村 達之
発明の名称 レーザ誘導放電によるマーキング方法及びマーキング装置  

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