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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E02D |
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管理番号 | 1050801 |
審判番号 | 審判1999-18314 |
総通号数 | 26 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-11-15 |
確定日 | 2001-12-05 |
事件の表示 | 平成10年特許願第89302号「法面構造」拒絶査定に対する審判事件[平成11年9月28日出願公開、特開平11-264141]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成10年3月17日の出願であって、原審において拒絶の査定がなされたところ、平成11年11月15日付けで審判請求がなされたものである。 2.本願発明 本願発明は、平成11年3月10日付け手続補正書で補正された全文補正明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜請求項3に記載された事項により特定される「法面構造」にあると認められるところ、その請求項1に記載の発明(以下、本願発明1という。)は次のとおりである。 【請求項1】周壁に多数の透孔を形成した金属製の筒状体を法面に敷設し、隣接する筒状体同士を連結するとともに、筒状体の内部に砕石等の充填材を充填し、植生を施すようにした法面構造において、筒状体の上部周壁内に不織布を配設するとともに、該不織布の上面に隣接する筒状体と共通する網体を敷設してなることを特徴とする法面構造。 3.引用例記載の発明 (1)原査定の拒絶の理由において引用された特開昭53-135106号公報(以下、「引用例1」という。)には、緑化用籠とこの籠による緑化方法に関する発明に関して、 (ア)特許請求の範囲には、 「(1)ふとん籠あるいは特殊籠などの籠本体内側に、シート類、ラス類等の内張りを張設し、上記籠本体の下部には玉石、栗石、破砕石などの下方材料を敷設し、上記籠本体の上方には種子、肥料を混入した上方材料を敷設したことを特徴とする緑化用籠。 (2)特許請求の範囲(1)に記載した籠を法面にアンカーなどで固定しながら積層あるいは敷設することを特徴とする緑化方法。」と記載され、 (イ)公報2頁左上欄6〜13行には、 「・・・籠本体上部には土砂に種子、肥料を混入したものを上方材料1Dが敷設されている。1A’は蓋である。(種子、肥料混入土砂のかわりに袋詰土砂、種子、肥料混入でも可、又籠内上部に土砂等を敷設し、その上に張芝、種子吹付、ラス張り、ネット張り等による緑化も可)籠本体内部のシート類等の張り付けは土砂等の流失を防止すると同時に・・・」と記載されている。 そして、ふとん籠は筒状をしており、その周壁には多数の透孔が形成されていることは明らかであるから、前記記載を含む明細書及び第1〜6図の記載からみて、引用例1には次の発明が記載されていると認められる。 「周壁に多数の透孔を形成したふとん籠を法面に敷設し、ふとん籠の内部に砕石等の充填材を充填し、植生を施すようにした法面構造において、ふとん籠の上面を蓋で被覆した法面構造。」 (2)同特開昭60-123622号公報(以下、「引用例2」という。)には、のり面の保護方法およびのり面の保護用枠の発明に関して、公報3頁左上欄3行〜右上欄5行には、 「上記のり面保護用枠4は第2図ないし第4図に示すように構成されている。すなわち、こののり面保護用枠4は持運びできる大きさに合成樹脂材で四角枠状に成形された保護用枠本体14と、この保護用枠本体14と一体成形された多数の孔15および補強支柱16を有する底板17と、前記保護用枠本体14内に備えられた植生用材18とからなり、前記植生用材18は前記底板17上に備えられる砕石層19と、この砕石層19上に備えられるウレタン、毛布等の保水シート7と、この保水シート7上に備えられた土層9と、この土層9上に備えられた植生用材本体11と、この植生用材本体11の外表面を覆うネット20とから構成されている。 前記植生用材本体11は紙あるいは布に種子、根等の植物や肥料等をのり付けしたり、あるいはサンドイッチ状にしたものである。 上記構成ののり面保護用枠4は植物の栽培地で、保護用枠3内に順次砕石層19、保水シート7、土層9、植生用材本体11、ネット20を挿入して形成した後、水等をやって植生用材本体11の植物を繁茂させ、・・・のり面に運んで、取付けて使用することができる。」と記載されている。 この記載と第2図〜第4図の記載からみて、引用例2には、次の発明が記載されていると認められる。 「保護用枠本体14の内部に下から順に、砕石層19、保水シート7、土層9を充填し、その土層9の上面であって保護用枠本体14の上部周壁内に種子、根等の植物や肥料等をのり付けした布を配設するとともに、該布の上面にネットを敷設したのり面保護用枠4。」 4.対比、判断 (1)本願発明1と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明の「ふとん籠」は、本願発明1の「筒状体」に対応するから、両発明は、 「周壁に多数の透孔を形成した筒状体を法面に敷設し、筒状体の内部に砕石等の充填材を充填し、植生を施すようにした法面構造。」 の点で一致しており、次の点で相違していると認められる。 相違点1:本願発明1の筒状体は金属製であるのに対し、引用例1記載の発明のふとん籠(筒状体)は金属製かどうか不明である点。 相違点2:本願発明1は、隣接する筒状体同士を連結するのに対して、引用例1記載の発明は、ふとん籠同士を連結する旨の記載はない点。 相違点3:本願発明1は、筒状体の上部周壁内に不織布を配設するとともに、該不織布の上面に隣接する筒状体と共通する網体を敷設したのに対して、引用例1記載の発明はそのようになっていない点。 (2)以下、これら相違点を検討する。 (ア)相違点1について 本願発明1のような法面保護に使用される部材を金属製とすることは例を挙げるまでもなく周知であり、この点に技術的意義はない。 (イ)相違点2について 本願発明1の相違点2に係る構成のように、隣接する法面保護用の筒状体(蛇籠ユニット)同士を連結することは本願出願前に周知の技術(必要ならば、特開平9-310322号公報、特公平7-33650号公報参照。)であるから、引用例1記載の発明の筒状体同士を本願発明1の上記相違点2のようにすることは、当業者が容易に想到できた事項にすぎない。 (ウ)相違点3について 前記引用例2に係る発明は、法面保護に使用する保護用枠本体14(本願発明の筒状体)の内部に砕石等の充填材を充填し、保護用枠本体14の上部周壁内には、植物が繁茂するように種子、根等の植物や肥料等をのり付けした布を配設するとともに、該布の上面にネットを敷設したものである。 ここで、引用例2記載の発明において、保護用枠本体14の上部周壁内に配設したものは布であって、不織布とは記載されていないが、植生用基材の布として不織布を使用することは、例を挙げるまでもなく本願出願前に周知の技術であって、当該布を不織布に代えることは当業者が適宜なしうる設計的事項にすぎないこと、また、隣接する筒状体(蛇籠ユニット)の上面に共通する網体を敷設することも本願出願前に周知の技術(必要ならば、特開平9-310322号公報、特公平7-33650号公報参照。)であることを考慮すると、本願発明1の上記相違点3に係る構成は、引用例1記載の発明に引用例2記載の発明及び周知技術を適用することにより当業者が容易に想到できたことにすぎない。 (エ)さらに、本願発明1のように構成したことによって奏する明細書記載の作用効果は、引用例1記載の発明に引用例2記載の発明や周知の技術を適用することによって当然に生じる作用効果にすぎない。 (3)したがって、本願発明1は、引用例1、2記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められる。 5.むすび 以上のとおりであるから、少なくとも本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-09-28 |
結審通知日 | 2001-10-12 |
審決日 | 2001-10-24 |
出願番号 | 特願平10-89302 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(E02D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 憲子、伊藤 陽 |
特許庁審判長 |
田中 弘満 |
特許庁審判官 |
鈴木 公子 中田 誠 |
発明の名称 | 法面構造 |
代理人 | 林 清明 |
代理人 | 森 治 |