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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E21C
管理番号 1050803
審判番号 審判1999-12836  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-06-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-08-09 
確定日 2001-12-05 
事件の表示 平成 6年特許願第 16897号「破壊装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 6月 6日出願公開、特開平 7-145698]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴う平成6年2月14日(優先日、平成5年9月28日)の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成11年9月8日付けの手続補正書により補正された明細書、及び出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。

「【請求項1】 コンデンサーに一対の電極が接続され、該両電極が金属細線を介して互いに接続され、前記コンデンサーに予め充電蓄積した電気エネルギーを前記電極を介して短時間で金属細線に放電供給することにより、金属細線を急激に溶融蒸発させその衝撃力で被破壊物を破壊する破壊装置において、前記電極および金属細線が破壊容器内に充填された破壊用液に浸漬されて破壊容器に封入されたことを特徴とする破壊装置。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用例
(1)これに対して、原査定の拒絶理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である、特開昭55-78765号公報(以下、「引用例1」という。)には、
(ア)「この発明はコンクリートなどの破砕方法の改良に関する。」(1頁左欄15ないし16行)、
(イ)「以下実施例を図面を参照しつつ詳述する。1はコンクリートなどのブロックを示す。2はコンクリートブロック1にあらかじめ穿設した貫通穴である。……3a,3bは穴2の両端を閉鎖する栓である。……5a,5bは栓3a,3bを貫通する電極であり、……6は電極5a,5bの対面する端面間に接続された細導線であり、……7は常開開閉器である。8は常閉開閉器である。そして開閉器7と8とは連動されている。9は充電用コンデンサである。10は直流高圧電源である。そして、開閉器7とコンデンサ9は電極5a,5bに直列接続され、開閉器8と電源10は直列接続されたうえコンデンサ9に並列接続されている。以上の構成につき、一実験例を述べる。……穴2内の空洞を水で充満する。この状態で開閉器を図示状態から切換える。伴ないコンデンサ9に充電されていた電荷は、前記開閉器の切換によつて閉成された放電回路に流れる。従つて細導線6には単時間に大電流が流れ、ジュール熱によつて溶融する。そして溶融した導線6はさらに流れ続ける電流によつて加熱され、沸点にまで至るが、導線6の形状は慣性と磁気圧のためそのまま保たれる。かくして導線6は周囲の水の存在により、過熱状態の液体としてさらに温度が上昇し、ついには平衡がやぶれて、導線6は急激に気化し、水中放電をおこすに至り、周囲の水に衝撃波をおこす。そしてこの衝撃波によつてコンクリート1は破壊される。」(1頁右欄12行ないし2頁左下欄2行)
と記載されており、これらの記載及び図面の記載からみて、引用例1には、「コンデンサ9に一対の電極5a,5bが接続され、両電極5a,5bが細導線6を介して互いに接続され、コンデンサ9に予め充電蓄積した電荷を電極5a,5bを介して短時間で細導線6に放電供給することにより、細導線6を急激に溶融、気化させその衝撃波でコンクリートなどを破壊する破壊装置において、電極5a,5bが水に浸漬された破壊装置。」の発明が記載されていると認められる。

(2)同じく、特開昭63-221857号公報(以下、「引用例2」という。)には、
(ア)「この発明は、鉱山、トンネル工事、ビルヂングの解体等に使用する物体爆砕用の破砕装置に関するものである。」(1頁右欄3ないし5行)、
(イ)「第1図ないし第3図はこの発明の一実施例を示す図である。図においてAは、第1の電極1、第2の電極2および爆発室A1を有する爆砕本体部である。Bは、コンデンサー4および操作スイッチ5からなる放電回路で、前記第1の電極1および第2の電極2に接続されている。Cは、充電抵抗6、定電圧電源としての発電機7およびスイッチ8とからなる充電回路であり、前記放電回路Bに接続されている。前記爆砕本体部Aは、第2図、第3図に示すように、金属製の筒体部A2とこの筒体部A2の上端に形成される絶縁体3に密着嵌合する蓋体部とで構成されている。筒体部A2の内部は爆発室A1を構成しており、その上部に第1の電極1を具えている。なお、8は樹脂製の袋に収納された蒸発剤としての水で前記爆発室A1に装填されている。また、前記蓋体部A3の上面には第2の電極としての…電極2が取付けられている。この蓋体部A3は…筒体部A2に密着嵌合するようになっている。次に上記の構成の下に第4図に示す使用例とともに該実施例の作用を説明する。…コンデンサー4が充電される。そして、スイッチ5をONにすると…大電流アーク放電が発生する。すると、爆発室A1に装填されている蒸発剤としての水8が急激に蒸発して超高圧状態となる。このため、爆砕本体部Aは爆砕される。したがって、第4図に示すように破砕しようとする岩石Dの所定箇所に挿入孔D1を形成して、ここに爆砕本体部Aを装填し、上述の動作をなすことにより、爆砕本体部Aの破砕とともに岩石A(当審注、「D」の誤りと認める。)も破砕されることとなる。」
(2頁右上欄13行ないし同右下欄10行)
と記載されている。

3.対比・判断
本願発明と引用例1に記載の発明とを比較すると、引用例1に記載の発明の「コンデンサ9」、「細導線6」、「電荷」、「気化」、「衝撃波」、「コンクリートなど」、「水」は、それぞれ本願発明の「コンデンサー」、「金属細線」、「電気エネルギー」、「蒸発」、「衝撃力」、「被破壊物」、「破壊用液」に相当するから、両者は、「コンデンサーに一対の電極が接続され、該両電極が金属細線を介して互いに接続され、前記コンデンサーに予め充電蓄積した電気エネルギーを前記電極を介して短時間で金属細線に放電供給することにより、金属細線を急激に溶融蒸発させその衝撃力で被破壊物を破壊する破壊装置において、前記電極および金属細線が破壊用液に浸漬された破壊装置。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点
本願発明では、破壊用液が破壊容器に充填され、電極および金属細線が破壊容器に封入されているのに対し、引用例1に記載の発明では、破壊容器を有さない点

そこで、相違点について検討すると、引用例2には、破砕装置(本願発明の「破壊装置」に対応)を構成する「水」(本願発明の「破壊用液」に対応)を「筒体部A2、蓋体部A3」(本願発明の「破壊容器」に対応)に装填し、電極を「筒体部A2、蓋体部A3」に封入することが記載されている。そして、引用例1に記載の発明と引用例2に記載のものとは、破壊装置という共通の技術分野に属するものであるから、引用例1に記載の発明に引用例2に記載の上記技術事項を適用して、相違点に係る本願発明の構成とすることは当業者が容易になし得ることである。
そして、全体として本願発明によってもたらされる効果も、引用例1に記載の発明及び引用例2に記載のものから当業者が当然に予測できる程度のものであって顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明は、引用例1及び2に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお、審判請求人は審判理由補充書において、「引用例2は、蒸発剤を収納した袋に電極を封入した構成ではなく、また、電極を封入した容器に直接蒸発剤を収納している構成でもない。容器とその蓋を密着嵌合すること、丈夫な金属製の容器を用いることは、十分な威力が「溜まる」まで、順次蒸発する蒸発剤を外部に漏らさないようにするためなのであって、あたかも水たまりに電極を入れてギャップ放電で水を蒸発させてもその周辺が破壊されることは想像しがたいことと同様である。……本願発明と引用例2とは、基本的な思想が明かに異なる。」(6頁下から5行ないし7頁2行)と主張しているが、例え、引用例2に記載の筒体部及び蓋体部が、十分な威力が「溜まる」まで、順次蒸発する蒸発剤を外部に漏らさないようにすることを目的とするとしても、同時に、蒸発剤(水)、電極を筒体部及び蓋体部からなる容器に収容することにより、破砕装置を物体に容易に装着できるという、出願人が主張する本願発明の効果と同様の効果を奏するものであることは当業者からみれば明らかであり、この観点から、引用例1に記載の発明に引用例2に記載の当該技術事項を適用して、本願発明の破壊装置の構成とすることは上述したように当業者が容易になし得ることである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-10-02 
結審通知日 2001-10-12 
審決日 2001-10-23 
出願番号 特願平6-16897
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E21C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 峰 祐治伊藤 陽  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 鈴木 公子
中田 誠
発明の名称 破壊装置  
代理人 森本 義弘  

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