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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B23K |
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管理番号 | 1050824 |
審判番号 | 審判1997-16048 |
総通号数 | 26 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1988-08-12 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1997-10-01 |
確定日 | 2001-12-25 |
事件の表示 | 昭和62年特許願第 26022号「異材溶接用Ni基合金溶接材」拒絶査定に対する審判事件〔昭和63年 8月12日出願公開、特開昭63-194892、平成 7年 9月13日出願公告、特公平 7- 83951、特許請求の範囲に記載された発明の数(1)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
I.手続の経緯・本願発明 本願は、昭和62年2月6日の出願であって、その発明の要旨は、出願公告後の平成9年10月30日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲に記載された次のとおりのものと認める。 「重量で、0.015%以下のCと、0.30%以下のSiと、2.5乃至3.5%のMnと、0.005%以下のPと、0.005%以下のSと、19.5乃至22%のCrと、2.5乃至3.0%のNb及びTaと、3.0%以下のFeと、0.75%以下のTiと、0.5%以下のCuと、0.1%以下のCoと、0.05乃至0.20%の希土類元素と、残部がNi及び不可避不純物とからなる異材溶接用Ni基合金溶接材。」(以下、「本願発明」という。) II.原査定の理由 原査定の拒絶の理由となった特許異議の決定に記載した理由の概要は、「本願発明は、本願出願前に頒布された刊行物である特開昭59-169697号公報(以下、「引用例1」という。)及び「Welding Handbook」(Seventh Edition、Volume4 Metals and Their Weldability、232〜239頁、1982年AWS発行。以下、「引用例2」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるからであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものである。 III.各引用例の記載事項 1.引用例1 引用例1には、「原子炉圧力容器におけるスタブチューブの溶接方法」について、「(1)原子炉圧力容器の下鏡と制御棒駆動機構ハウジングのスタブチューブとを溶接して該溶接部を残留応力除去焼鈍した後、該溶接部を覆うように重量%でC 0.10以下、Mn 2.5〜3.5、Fe 3.0以下、P 0.03以下、S 0.015以下、Si 0.50以下、Cu 0.50以下、Ni 67.0以上(付随的Coを含む)、Co 0.12以下、Ti 0.75以下、Cr 18.0〜22.0、Cb+Ta 2.0〜3.8(Ta 0.30以下)、およびその他の元素総量0.50以下なる元素組成を有する合金で肉盛溶接し、その後は焼鈍処理しないことを特徴とする原子炉圧力容器における制御棒駆動機構ハウジングチューブの溶接方法。」(特許請求の範囲(1))及び「本発明の目的は、原子炉圧力容器下鏡とスタブチューブとの溶接部の応力腐食割れ感受性をなくし、この部分の信頼性を向上させることである。」(第2頁左上欄6〜8行)と記載されている。 2.引用例2 引用例2には、「第6章ニッケル及びコバルト金属」と題して記載され、特に、その第238頁左欄29〜42行には、「溶接性に及ぼす微量元素の影響 数種の元素の中には、それが微量存在することによって、ニッケル合金の溶接性に決定的な影響を与えるものがある。硫黄はニッケルと低融点共晶を形成し、それが溶接金属の結晶粒界に偏析するので、硫黄の存在はしばしば高温割れの原因となる。マンガン及びマグネシウムは硫黄と結合させてニッケルサルファイドの生成を阻止するためにしばしば添加される。カルシウム及びセリウムは脱酸剤として、また硫黄と反応して可鍛性を付与する元素として使用されている。」と記載されている。 IV.対比・判断 本願発明と引用例1に記載された発明とを対比するに、両者は、合金成分C、Si、Mn、P、S、Cr、Nb及びTa、Fe、Ti、Cu、Coの各含有量が重複する溶接用Ni基合金溶接材である点で一致しているが、本願発明では、溶接材の合金成分として、0.05乃至0.20%の希土類元素をさらに含有するのに対して、引用例1記載の発明では希土類元素を含有しない点(以下、「相違点」という。)で、両者は相違する。 そこで、上記相違点について検討する。 引用例2には、Ni合金中に含有される希土類元素であるセリウムは、脱酸剤及び可鍛性を付与する元素である旨記載されているが、引用例1には、そこに記載の発明において、さらに、脱酸性、可鍛性を改善すべきであるとする記載も示唆もないから、引用例2の記載からでは、上記相違点を当業者が容易に想到し得るとすることはできない。 また、本願発明は、「希土類元素成分は、含有量が0.05%よりも多くなると、溶接材中のSの量を低く抑える機能を発揮するとともに、母材からの希釈によって混入してくるSの影響を抑制するので、溶接割れ防止に大きく寄与する。」(本件公告公報第6欄1〜4行)、「本発明に係る異材溶接用Ni基合金溶接材は、MIG溶接及びTIG溶接による異材溶接部の割れ感受性を有意に低減せしめることができ、火力プラント、原子力プラント及び石油化学プラントなどにおける異材溶接用の溶接材料として好適である。」(本件公告公報第12欄22〜26行)という明細書に記載される作用効果を奏するものであるところ、かかる作用効果は、以下に述べるように、引用例2の記載からでは予想し得ない顕著なものである。 即ち、引用例2の記載によれば、Ni合金中に希土類元素を含有させれば、脱酸性、可鍛性が改善されることが予測されるにすぎず、一方、脱酸性、可鍛性を改善する成分を含有する溶接材で異材溶接を行なうことによって、溶接割れ感受性が低減されることが当業者の技術常識であると認めることはできないばかりか、脱酸の結果形成される脱酸生成物、或いは、Sとの反応により形成される反応生成物が、溶接割れ感受性に対して如何なる影響を及ぼすかも当業者にとって明らかであるとはいえない以上、本願発明により奏される前記作用効果を、当業者が当然に予想し得る範囲のものであるとすることはできない。 よって、本願発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 V.むすび 以上のとおり、本願は、原査定の理由により拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2001-12-05 |
出願番号 | 特願昭62-26022 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(B23K)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 永田 雅博、日比野 隆治 |
特許庁審判長 |
影山 秀一 |
特許庁審判官 |
中西 一友 雨宮 弘治 |
発明の名称 | 異材溶接用Ni基合金溶接材 |
代理人 | 西浦 嗣晴 |
代理人 | 西浦 嗣晴 |