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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B23K |
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管理番号 | 1050894 |
審判番号 | 不服2000-8299 |
総通号数 | 26 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-03-09 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-06-07 |
確定日 | 2001-12-20 |
事件の表示 | 平成 3年特許願第252817号「異板厚素材のレーザ溶接方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年 3月 9日出願公開、特開平 5- 57467]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成3年9月5日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成11年7月16日付手続補正書及び平成12年6月22日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。 「板厚の異なるプレス用薄板を突合せ、該薄板の突合せ部にレーザ光を照射して突合せ溶接を行う異板厚素材のレーザ溶接方法において、前記レーザ光の照射位置を、前記薄板の板厚の差に応じて前記突合せ部から厚板側にずらし、前記突合せ部から前記レーザ光の集光中心までの距離を0.1mmより大で0.4mmより小の範囲に設定したことを特徴とする異板厚素材のレーザ溶接方法。」 第2.引用例記載の発明 1.引用例1記載の発明 これに対して、当審において、平成13年7月26日付けで通知した拒絶の理由に引用した特開昭62-144888号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のとおり記載されている。 ・特許請求の範囲: 「二枚の板材を突合わせ、この突合せ線に沿ってレーザー光を照射しつつ移動させて溶接するレーザー溶接方法において、板厚差検知手段により突合せ部分の両板材の板厚差を検知し、この検知信号を駆動手段に送り、この駆動手段によってレーザー光の集光レンズを光軸に対して傾かせ、板厚の大きい板材に照射されるレーザー光のエネルギー密度を板厚の小さい板材のエネルギー密度より大きくすることを特徴とするレーザー溶接方法。」 ・第1頁右下欄第14行〜第17行: 「ところが、鋭角的段差5のある溶接部形状では、後加工のプレス成形時にその鋭角的段差5の部分がプレス成形型(図示せず)をかじり、損傷するという型かじりの問題があった。」 ・第2頁左上欄第1〜第4行: 「本発明の目的は、鋭角的段差のないなめらかな溶接部形状となるレーザー溶接方法を提供し、型かじりの問題や応力集中による強度低下の問題を解決せんとするものである。」 上記記載事項からすると、引用例1には以下のとおりの発明が記載されていると認める。 「板厚の異なるプレス用板材を突合せ、該板の突合せ部にレーザー光を照射して突合せ溶接を行う異板厚素材のレーザー溶接方法において、鋭角的段差のないなめらかな溶接部形状とするために、該板の板厚差に応じて、板厚の大きい板材に照射されるレーザー光のエネルギー密度を板厚の小さい板材のエネルギー密度より大きくしたことを特徴とする板厚の異なるプレス用板材のレーザー溶接方法。」 2.引用例2記載の発明 同じく特開平3-110089号公報(以下「引用例2」という。)には、以下のとおり記載されている。 ・特許請求の範囲: 「先行ストリップと後行ストリップの各端部を突合せて、この突合せ部にレーザ光を照射して溶接する突合せレーザ溶接方法において、先行ストリップと後行ストリップの厚み差に応じて、レーザ光の焦点位置を突合せ部芯から板厚の厚いストリップの反端部内側に移動させることを特徴とするレーザ溶接方法。」 ・第2頁右上欄第10〜20行: 「レーザ光焦点位置を板厚が厚い側の角端部からストリップAの反端部内側に移動させることによってストリップAの角端部を中心に溶融させる。これによって溶接後の溶接部の先行ストリップと後行ストリップとを滑らかな曲線で結ぶ形状とすることができる。このようにして溶接部の段差を極力抑えることによって、溶接ビード形状がよくなり、切り欠き部の発生を防止でき、溶接部の強度は低下せず、その研削も省略でき、前述の諸問題を解決することができる。」 ・第2頁左下欄第16行〜右下欄第1行: 「第3図に示されるようにレーザ光焦点が突合せ部芯より0.2mm移動したことで、その溶接強度は著しく低下することが溶接後の強度テスト(エリクセン破壊試験)によって確認されたが、レーザ光のズレ量許容範囲をみて、本発明では焦点位置の移動量を最大0.1mmと設定したものである。」 上記記載事項からすると、引用例2には以下のとおりの発明が記載されていると認める。 「先行ストリップと後行ストリップの各端部を突合せて、この突合せ部にレーザ光を照射して溶接する突合せレーザ溶接方法において、溶接後の溶接部の先行ストリップと後行ストリップとを滑らかな曲線で結ぶ形状とするために、先行ストリップと後行ストリップの厚み差に応じて、レーザ光の焦点位置を突合せ部芯から板厚の厚いストリップの反端部内側に、レーザ光のズレ量許容範囲をみて、最大0.1mm移動させることを特徴とするレーザ溶接方法。」 第3.対比 本願発明と引用例1記載の発明を対比すると、引用例1記載の発明における「プレス用板材」、「レーザー光」が本願発明における「プレス用薄板」(及び「素材」)、「レーザ光」に相当することから、両者は、 「板厚の異なるプレス用薄板を突合せ、該薄板の突合せ部にレーザ光を照射して突合せ溶接を行う異板厚素材のレーザ溶接方法。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 ・本願発明は、レーザ光の照射位置を、薄板の板厚の差に応じて突合せ部から厚板側にずらし、突合せ部からレーザ光の集光中心までの距離を0.1mmより大で0.4mmより小の範囲に設定しているのに対し、引用例1記載の発明は、薄板の板厚の差に応じて板厚の大きい薄板に照射されるレーザー光のエネルギー密度を板厚の小さい薄板のエネルギー密度より大きくしている点。 第4.当審の判断 上記相違点について検討する。 本願発明における「0.1mmより大」という限定は、本願明細書の項目【0018】及び本願の図3の記載を参酌すると「0.1mm」を含むものと解される。 そして、引用例2には、溶接後の溶接部の先行ストリップと後行ストリップとを滑らかな曲線で結ぶ形状とするために、レーザ光の焦点位置を突合せ部芯から板厚の厚いストリップの反端部内側に、レーザ光のズレ量許容範囲をみて、焦点位置即ち集光中心を最大0.1mm移動させることが記載されているから、引用例2記載の発明の「最大0.1mm」は、本願発明の「0.1mmより大で0.4mmより小の範囲」と0.1mmで一致する。 引用例1、2何れに記載の発明も、板厚の異なる板を突合せ溶接する際に、2枚の板の溶接部を滑らかな形状とするためのレーザー溶接方法に関する発明であるから、引用例1記載の発明に、引用例2記載の発明を適用し、薄板の板厚の差に応じて板厚の大きい薄板に照射されるレーザー光のエネルギー密度を板厚の小さい薄板のエネルギー密度より大きくすることに代えて、レーザ光の照射位置を、薄板の板厚の差に応じて突合せ部から厚板側にずらし、突合せ部からレーザ光の集光中心までの距離を0.1mmに設定することは、当業者であれば容易に想到したことである。 仮に、本願発明における「0.1mmより大」という限定が、「0.1mm」を含まないとしても、引用例2記載の発明において、「最大0.1mm」とした理由が、レーザ光のズレ量許容範囲をみてのことであり、引用例2記載の発明が「0.1mm」よりわずかに大きい範囲で全く効果を奏しないというものではないから、本願発明における「0.1mmより大」という限定が、「0.1mm」を含まないとしても、引用例1記載の発明に、引用例2記載の発明を適用し、薄板の板厚の差に応じて板厚の大きい薄板に照射されるレーザー光のエネルギー密度を板厚の小さい薄板のエネルギー密度より大きくすることに代えて、レーザ光の照射位置を、薄板の板厚の差に応じて突合せ部から厚板側にずらし、突合せ部からレーザ光の集光中心までの距離を0.1mmよりわずかに大きい範囲に設定することは、当業者であれば容易に想到したことである。 そして、本願発明の効果は、引用例1、2記載の発明から、当業者であれば予測することができる程度のものであって格別なものではない。 第5.むすび したがって、本願発明は、引用例1、2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-10-22 |
結審通知日 | 2001-10-23 |
審決日 | 2001-11-06 |
出願番号 | 特願平3-252817 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B23K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 加藤 昌人 |
特許庁審判長 |
小林 武 |
特許庁審判官 |
鈴木 孝幸 加藤 友也 |
発明の名称 | 異板厚素材のレーザ溶接方法 |
代理人 | 田渕 経雄 |