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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B62J |
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管理番号 | 1050967 |
審判番号 | 不服2000-7547 |
総通号数 | 26 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1992-02-21 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-05-19 |
確定日 | 2001-11-15 |
事件の表示 | 平成 2年特許願第165051号「スクータ車両の物品収納装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 4年 2月21日出願公開、特開平 4- 55181]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成2年6月22日の出願であって、本願の請求項1に係る発明は、平成12年5月19日付けの手続補正書により全文補正され、さらに平成13年2月20日付けと平成13年5月22日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのもの(以下、請求項1の発明を「本願発明」という。)と認める。 「エンジン気筒部7と伝動ケース6及び後輪8とを一体に備えるパワーユニット5をフロア28後方においてフレーム11のリヤフレーム14を介して揺動自在に支持するともに、パワーユニット5の上方でシート34下方に物品収納容器41を備えるスクータ車両において、 前記フロア28にトンネル35を設け、 前記パワーユニット5のエンジン気筒部7を前方に突出させるとともに、前記トンネル35内でその前方に燃料タンク37を配設し、物品収納容器41をパワーユニット5上方から該パワーユニット5の前方にかけて連続して前記トンネル35内に延出し、 前記燃料タンク37の前側37bを大きくし、前寄り部分に給油口37dを設け、該燃料タンク37の後側37cを前記収納容器41の前端部41bを前上がり形状として、該燃料タンク37の後側37cを前記収納容器41の前端部41bに沿って前上傾させ、 前記物品収納容器41の前底部41aをエンジン気筒部7と燃料タンク37の間で、かつ、燃料タンク上面37aより低くした、 ことを特徴とするスクータ車両の物品収納装置。」 2.引用刊行物及びその記載事項 これに対して、当審における平成13年3月22日付けで通知した拒絶の理由に引用した実願昭62-63688号(実開昭63-170391号)のマイクロフィルム(以下、「第1引用例」という。)には、自動二輪車の物入れ装置に関して、次の事項が記載されている。 a)「フレーム4の後上傾する後半部4bの下部にはブラケット14を後方に突設し、ブラケット14にリンク15を介してエンジン16及び伝動ケース17からなるパワーユニット18を揺動自在に枢着せしめ、パワーユニット18とフレームメンバとの間にはリヤクッションユニット19を介設し、パワーユニット19の後部に駆動輪をなす後輪20を支持せしめる。」(第5頁3〜10行) b)「第4図は第2実施例を示し、本実施例は後部フレーム104の前半部から後半部にかけて一体の物入れボックス122を設け物入れボックス122の底板122eは後部の下方にパワーユニット118の後輪120が臨み、かかる後部に上方へ膨出する凹部125を設け、且つその前方には緩衝器119の上部を収納する凹部215が形成されている。又前後に長く一体のボックス122はシート121でその上方の開口を開閉自在に塞ぐ。本実施例ではパワーユニット118のエンジン116を略水平タイプとし、燃料タンク111は前部フレーム103の後半部と二本の後部フレーム104前部間に配設され、外側はカバー126で覆われる。」(第7頁9行〜第8頁2行) c)第4図には、自動二輪車がスクータタイプであって、パワーユニット118の上方でシート121下方に物入れボックス122を備えていることと、エンジンの前方のフロアにカバー126で覆われたトンネルが設けられ、該トンネル内に燃料タンク111が配設されていることが記載されている。 a)の記載から、パワーユニットはエンジンと伝動ケース及び後輪120とを一体に備え、フレームの後上傾する後半部に揺動自在に支持されているものと認められ、b)の記載から、後輪120の上方でシート121下方に物入れボックス122が設けられ、さらに、エンジン116が略水平タイプであることからエンジン気筒部は前方に突出しているものと認められる。また、c)の記載から、物入れボックス122はパワーユニット118の上方でシート121下方に設けられ、前方に突出したエンジン気筒部の前方の、カバー126で覆われたトンネル内に燃料タンク111が配設されているものと認められる。 したがって第1引用例には、 「エンジン気筒部と伝動ケース及び後輪120とを一体に備えるパワーユニット118をフロア後方において後部フレーム104を介して揺動自在に支持するともに、パワーユニット118の上方でシート121下方に物入れボックス122を備えるスクータ車両において、フロアにトンネルを設け、パワーユニット118のエンジン気筒部を前方に突出させるとともに、トンネル内でその前方に燃料タンク111を配設したスクータ車両の物品収納装置。」 の発明が、記載されているものと認める。 同じく、当審における平成13年3月22日付けで通知した拒絶の理由に引用した特開昭63-263183号公報(以下、「第2引用例」という。)には、スクーター型車輌の物品収納室に関して、次の事項が記載されている。 d)「低床式足載せ空間Aの車幅方向中央部に位置して開閉蓋40で覆われる物品収納室Dは、ポリカーボネート等の樹脂で形成された大型容器によって画成される。この容器は前壁60,左右両側壁62,副フレーム20の立上り部22に沿って・・・螺着固定されている。」(第2頁左下欄15行〜右下欄3行) e)「開閉蓋40でその上面を覆われる物品収納室Dは、低床式足載せ空間Aの前部から後部に亘る広い範囲で画成された大容量の室であり・・・フルフェイス型ヘルメットHを収納できる程度の十分な深さになされている。」(第2頁右下欄14〜19行) f)「物品収納室Dが大容量であるため、従来の物品収納室に比して大型または多量の物品を収納することができる。」(第3頁左上欄最下行〜右上欄2行) g)「物品収納室Dの底壁66を低床式足載せ板92とほぼ同等の高さ水準に設けたため、該物品収納室Dの深さをヘルメットHを収納しうる程度に十分大きくしても、座席Sの高さを低位に設定することができ・・・」(第3頁右上欄19行〜左下欄3行) h)第1図には、フロア後方において副フレーム20を介して揺動自在に支持されるパワーユニットPUが、エンジン気筒部と伝動ケース及び後輪RWとを一体に備え、物品収納室Dが座席Sの下方から前方にかけて連続して前記トンネル35内に延出し形成されていることが記載されている。 d)〜h)の記載から、第2引用例には、 「エンジン気筒部と伝動ケース及び後輪RWとを一体に備えるパワーユニットPUをフロア後方において副フレーム20を介して揺動自在に支持するともに、座席S下方に物品収納室Dを備えるスクータ型車両において、フロアにトンネルを設け、物品収納室Dを座席Sの下方から前方にかけて連続してトンネル内に延出したスクータ型車両の物品収納装置。」 の発明が、記載されているものと認める。 3.本願発明と第1引用例に記載された発明との対比 本願発明と第1引用例に記載された発明とを対比すれば、第1引用例に記載された発明の「後部フレーム104」、「物入れボックス122」は、それぞれ本願発明の「フレーム11のリヤフレーム14」、「物品収納容器41」に相当するから、本願発明は、第1引用例に記載された発明と、 「エンジン気筒部と伝動ケース及び後輪とを一体に備えるパワーユニットをフロア後方においてフレームのリヤフレームを介して揺動自在に支持するともに、パワーユニットの上方でシート下方に物品収納容器を備えるスクータ車両において、フロアにトンネルを設け、パワーユニットのエンジン気筒部を前方に突出させるとともに、トンネル内でその前方に燃料タンクを配設したスクータ車両の物品収納装置。」 である点で一致し、以下の<相違点>で相違している。 <相違点> 1)本願発明の物品収納容器41は、パワーユニット5上方から該パワーユニット5の前方にかけて連続してトンネル35内に延出され、物品収納容器41の前底部41aをエンジン気筒部7と燃料タンク37の間で、かつ、燃料タンク上面37aより低くしているのに対し、第1引用例に記載された発明の物入れボックス122は、パワーユニット118上方から該パワーユニット118の前方にかけて連続してトンネル内に延出されたものでなく、その前底部はエンジン気筒部と燃料タンク111の間で、かつ燃料タンク上面より低くしたものでない点。 2)本願発明では、燃料タンク37の前側37bを大きくし、前寄り部分に給油口37dを設け、該燃料タンク37の後側37cを収納容器41の前端部41bを前上がり形状として、該燃料タンク37の後側37cを前記収納容器41の前端部41bに沿って前上傾させているのに対し、第1引用例に記載された発明の燃料タンクは、前側を大きくして給油口を前寄り部分に形成したものでなく、収納容器の前端部は前上がり形状ではなく、燃料タンクの後側を収納容器の前端部に沿って前上傾させているものでもない点。 4.相違点の検討 (1)相違点1)に関して 第2引用例には、スクータ型車両の物品収納装置において、フロアにトンネルを設け、物品収納室を座席Sの下方から前方にかけて連続してトンネル内に延出して、物品収納室の容量を増加させる発明が記載されており、この発明の技術を、第1引用例に記載された発明の物品収納装置に適用して、物入れボックス122を、シート121の下方であるパワーユニット118上方から前方にかけて連続してトンネル内に延出することに格別な困難性は認められない。そして、物品収納容器を、エンジン気筒部と燃料タンクの間に、その底部が燃料タンク上面より低くなるように設けることは周知技術(例えば第1引用例の第2図の実施例、実願昭62-60869号(実開昭63-168178号)のマイクロフィルムの第2図、特開昭63-263182号公報)であるから、延出する部分をエンジン気筒部と燃料タンクの間になるように配置し、その底部を燃料タンク上面より低くなるようにすることは当業者が適宜行い得たものである。してみれば、第1引用例に記載された発明において、物入れボックス122をパワーユニット118上方からパワーユニット118の前方にかけて連続してトンネル内に延出し、その前底部をエンジン気筒部と燃料タンクの間で、かつ、燃料タンク上面37aより低くなるように設けることは、第2引用例に記載された発明と上記周知技術に基づいて当業者が容易に行うことができたものである。 (2)相違点2)に関して 収納容器の前端部を前上がり形状として収納容器の容量確保を行うことは慣用技術(必要ならば特開昭62-83269号公報、実願昭63-33820号(実開平1-145595号)のマイクロフィルム参照)である。また、物品収納容器の前方に燃料タンクを設けるとき、燃料タンクの前寄り部分に給油口を設け、燃料タンクの後側を収納容器の形状に沿った形状とすることは周知技術(例えば特開昭61-285177号公報、実願昭62-75708号(実開昭63-184190号)のマイクロフィルム参照)であり、給油口を設ける部分を大きくするか否かは単なる設計事項である(給油口を設ける部分を大きくした例として、上記特開昭61-285177号公報、特開昭62-83269号公報の燃料タンクをそれぞれ参照されたい。)。してみれば、第1引用例に記載された発明に第2引用例に記載された発明と前述の周知技術を適用したものにおいて、収納容器の前端部を前上がり形状とするとともに、燃料タンクの前側を大きくして前寄り部分に給油口を設け、燃料タンクの後側を収納容器の形状に沿うように前上傾させることは、上記周知技術、慣用技術に基づいて当業者が容易に行うことができたものである。 そして、本願発明による作用効果は、上記第1引用例に記載された発明に、第2引用例に記載された発明と上記各周知技術、慣用技術を適用することにより得られる作用効果を越えるものでもない。 したがって、本願発明は、上記第1引用例に記載された発明に、第2引用例に記載された発明と上記各周知技術、慣用技術を適用することにより当業者が容易に発明をすることができたものである。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に記載された発明は、上記引用例1,2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-09-17 |
結審通知日 | 2001-09-18 |
審決日 | 2001-10-03 |
出願番号 | 特願平2-165051 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B62J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 増岡 亘 |
特許庁審判長 |
蓑輪 安夫 |
特許庁審判官 |
ぬで島 慎二 苅間 宏信 |
発明の名称 | スクータ車両の物品収納装置 |
代理人 | 下田 容一郎 |