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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 E02D |
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管理番号 | 1050992 |
審判番号 | 不服2000-19278 |
総通号数 | 26 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-02-21 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-12-06 |
確定日 | 2002-01-08 |
事件の表示 | 平成 4年特許願第349729号「ドレイン材およびその製造方法」拒絶査定に対する審判事件〔平成 7年 2月21日出願公開、特開平 7- 48826、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成4年12月2日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明(以下、「本願発明1及び2」という。)は、平成13年11月8日付けの手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 繊度1〜1000d/fの熱接着性繊維を少なくとも60重量%含む繊維ウェッブまたは不織布を熱処理し所定の外径になるまで巻き上げ、その熱接着性繊維を熱融着により自己結合させた中空ドレイン材であって、空隙率が60〜90%で、かつその肉厚(T)が内径(Id)との関係T/Idにおいて次の関係を有することを特徴とするドレイン材。 0.15≦T/Id≦0.60 【請求項2】 繊度1〜1000d/fの熱接着性繊維を少なくとも60重量%含む繊維を目付10〜70g/m2巾2m以上の繊維ウェッブまたは不織布とし、この繊維ウエッブまたは不織布を熱処理し中芯に線圧30〜500g/cmに調節して所定の外径になるまで巻き上げ、その後冷却固化し、その後中芯を取り除く請求項1のドレイン材の製造方法。」 2.刊行物 (1)これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、特公昭55-42210号公報(以下、「刊行物1」という。)には、 (ア)「繊維断面円周率が15〜40%の結晶性ポリプロピレン成分と、融点が該結晶性ポリプロピレン成分よりも20℃以上低く、かつ繊維断面円周率が85〜60%のポリオレフィン系重合体成分とをそれぞれ複合成分とする1〜1000デニールの並列型複合繊維集束体からなり、この集束体の少なくとも表面部分が前記ポリオレフィン系重合体成分の熱融着によって自己結合されていることを特徴とするドレイン材。」(特許請求の範囲第1項)、 (イ)「紡糸の際の両成分の複合割合は特に限定されないが、低融点成分の割合が40〜70重量%の範囲が通常用いられる。」(2頁4欄3ないし5行)、 (ウ)「上記複合繊維の最終デニールは、1〜1000D/F、好ましくは1〜100D/Fである。」(同23ないし24行)、 (エ)「複合繊維の集束体は、次に型に充填され、前記ポリオレフィン系重合体の融点以上、結晶性ポリプロピレンの融点より以下の温度で熱処理され、少なくともその表面が熱融着される。型はドレイン材の用途によって異なるが、一般には棒状または中空管状に形成される。」(同30ないし35行)、 (オ)「上記のように製造されたドレイン材は、60〜95%の空隙率を有する多孔性構造物であり」(3頁5欄13ないし14行) と記載されている。 (カ)また、「第1成分側に市販のポリプロピレン、第2成分側に融点132℃の低圧法ポリエチレンを用い、……トウ(目付280g/m)を得た。このトウを内径20mm、外径60mmの中空管の型に充填し、空隙率87.9%の中空管からなるドレイン材を得た。」(3頁6欄7ないし15行)と記載されており、当該記載に基づいてドレイン材の肉厚(T)と内径(Id)の関係(T/Id)を計算するとT/Id=1.0になる。 これらの記載からみて、刊行物1には、「1〜1000D/Fのポリオレフィン系重合体成分を40〜70重量%含む並列型複合繊維集束体を型に充填し、熱処理して、少なくともその表面を熱融着により自己結合させた中空管状のドレイン材であって、空隙率が60〜95%で、かつその肉厚(T)が内径(Id)との関係T/Idにおいて、T/Id=1.0の関係を有するドレイン材。」の発明が記載されている。 (2)同じく、実公昭45-28031号公報(以下、「刊行物2」という。)には、 (ア)「半透性物質の皮膜の両側に天然または合成繊維の布帛、不織布または高強力紙を重ね合わせて一体化した材料を筒状に形成してなる軟弱地盤改良用半透膜体。」(実用新案登録請求の範囲)、 (イ)「本考案は、この材料を筒状になし、その端部を縫着または接着してなるものである。」(1頁2欄15ないし16行) と記載されている。 (3)同じく、実公昭46-22745号公報(以下、「刊行物3」という。)には、 (ア)「硬質の繊維編織生地面に天然繊維又は合成繊維綿をニードルパンチングにより絡着せしめた後、前記生地をパイプ状に形成したことを特徴とする土中フィルターパイプ。」(実用新案登録請求の範囲)、 (イ)「この生地を第1図のようにパイプ状に湾曲させて、端縁部を融着等により接続してフィルターパイプを形成するものである。この際片面を加熱ローラー又はバーナー等により部分的に溶着してフィルム状固形部を設けることも可能である。」(1頁2欄13ないし17行) と記載されている。 (4)同じく、慣用技術を示すものとして引用された、実公昭46-22746号公報(以下、「刊行物4」という。)には、 (ア)「ニードルパンチングにより形成されたフェルトの片面に通水性を有するフィルム状固形部を加熱溶融により一体に形成し、前記フェルトをパイプ状に形成したことを特徴とする土中フィルターパイプ。」(実用新案登録請求の範囲)、 (イ)「このフェルト1のフィルム状固形部14を形成した面を内側にして第1図のようにパイプ状に彎曲させ、端縁部を融着等により接続してフィルターパイプを形成する。」(2頁3欄13ないし16行) と記載されている。 3.対比・判断 (1)本願発明1について 本願発明1と刊行物1に記載の発明とを比較すると、刊行物1に記載の発明の「ポリオレフィン系重合体成分」及び「中空管状のドレイン材」が、それぞれ本願発明1の「熱接着性繊維」及び「中空ドレイン材」に相当し、刊行物1に記載の発明の「並列型複合繊維集束体」と本願発明の「繊維ウェッブまたは不織布」はともに繊維材であるから、両者は、「繊度1〜1000d/fの熱接着性繊維を少なくとも60重量%含む繊維材を熱処理し、その熱接着性繊維を熱融着により自己結合させた中空ドレイン材であって、空隙率が60〜90%であるドレイン材」の点で一致し、次の点で相違する。 相違点1 本願発明1では、繊維材が繊維ウェッブまたは不織布であって、繊維ウェッブまたは不織布を熱処理し所定の外径になるまで巻き上げるのに対し、刊行物1に記載の発明では、繊維材が並列型複合繊維集束体であって、並列型複合繊維集束体を型に充填し、熱処理する点 相違点2 本願発明1では、肉厚(T)が内径(Id)との関係が、0.15≦T/Id≦0.60であるのに対し、刊行物1に記載の発明では、T/Id=1.0である点 そこで、相違点1について検討すると、繊維ウェッブまたは不織布を熱処理し所定の外径になるまで巻き上げることは、刊行物2ないし4のいずれにも記載も示唆もされておらず、また、周知慣用技術であるともいえない。 そして、本願発明1は、相違点1に係る構成を備えることにより、明細書に記載の「従来の中芯のある金型に繊維束を押し込み充填するため成形したドレイン材は、不均一充填となり断面折れしやすく、軸方向に繊維を並べた従来の製法では、縦方向に裂け易く、土圧によって破損し易い。この従来法と異なり本発明のドレイン材は、中芯に特定されたウエッブを特定肉厚になるよう特定圧力で巻き上げ、冷却固化し、中芯を取り除いて製造したので、均一な強度、均一な肉厚、任意の空隙率のドレイン材の製造は、容易であった。」(段落【0025】)という刊行物1ないし4に記載の発明からは期待できない顕著な効果を奏するものである。 したがって、本願発明1は、相違点2については検討するまでもなく、刊行物1ないし4に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 (2)本願発明2について 本願発明2は、本願発明1を引用してさらに構成を限定した「ドレイン材の製造方法」であるから、上記「(1)本願発明1について」における検討と同様の理由により、刊行物1ないし4に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願については、原査定の理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2001-12-20 |
出願番号 | 特願平4-349729 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(E02D)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 池谷 香次郎 |
特許庁審判長 |
木原 裕 |
特許庁審判官 |
鈴木 公子 中田 誠 |
発明の名称 | ドレイン材およびその製造方法 |