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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C09K
管理番号 1051021
審判番号 審判1999-11930  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1991-11-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-07-29 
確定日 2002-01-09 
事件の表示 平成 2年特許願第336445号「液晶組成物」拒絶査定に対する審判事件〔平成 3年11月22日出願公開、特開平 3-263482、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯・本願発明

本願は、平成2年11月30日(優先権主張平成2年2月16日)の出願であって、その請求項1〜3に係る発明は、平成11年4月2日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された次のとおりのものと認める。

「【請求項1】炭素原子数3〜5のアルキル基を有する3種類の4-アルキルシクロヘキサンカルボン酸化合物の混合物、および下記一般式(I)で表される芳香族ニトリル化合物の少なくとも一種を含有する液晶組成物。
【請求項2】下記一般式(I)で表される芳香族ニトリル化合物の少なくとも一種、下記一般式(II)で表される3種類の4-アルキルシクロヘキサンカルボン酸化合物の混合物、および下記一般式(III)で表されるアルキルシクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル化合物の少なくとも一種を含有する液晶組成物。
【請求項3】下記一般式(I)で表される芳香族ニトリル化合物の少なくとも一種、下記一般式(II)で表される3種類の4-アルキルシクロヘキサンカルボン酸化合物の混合物、および下記一般式(IV)で表されるトラン化合物の少なくとも一種を含有する液晶組成物。」

(なお、化学構造式及び式の説明は省略する。)

2.引用例

これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された刊行物1〜3には、次のことが記載されている。
刊行物1(特開昭54-151951号公報)には、アルキルシクロヘキサンカルボン酸を有する液晶化合物及び、少なくとも1種の上記液晶化合物からなる液晶組成物が記載され、その特徴として、「ネマチック液晶相温度範囲が約50℃程度と広く、しかも表示装置とした場合の応答特性に重要な影響を与える粘性がきわめて低い新規なネマチック液晶化合物を提供するものである」旨(第2頁左上欄下から2行〜同頁右上欄3行)、記載されている。そして、「本発明の新規液晶化合物と混合しうる他のネマチック液晶は、基本的にはほとんどのネマチック液晶化合物が該当」し(第3頁左上欄7〜9行)、その混合例として、第3頁右上欄に表が記載され、4つの混合例が示されている。表の上欄から、「混合例1」「混合例2」「混合例3」「混合例4」とすると、混合例1として、芳香族ニトリル化合物20重量%とアルキルシクロヘキサンカルボン酸80重量%からなる混合組成物が、混合例2として2種の芳香族ニトリル化合物計70重量%とアルキルシクロヘキサンカルボン酸30重量%からなる混合組成物が、混合例3として、芳香族ニトリル化合物30重量%と2種のアルキルシクロヘキサンカルボン酸計70重量%からなる混合組成物が、混合例4として、2種の芳香族ニトリル化合物計80重量%とアルキルシクロヘキサンカルボン酸20重量%からなる混合組成物が開示され、それぞれの例について、固体-ネマチック液晶転移温度(「A」としている)及びネマチック液晶-等方性液体転移温度(「B」としている)が記載されている。
刊行物2(特開昭63-108094号公報)には、アルキルシクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル化合物と芳香族ニトリル化合物を含有するネマチック液晶体が記載されている。
刊行物3(特開昭63-215790号公報)には、第一の成分である4-アルキルシクロヘキシルベンゾニトリル化合物と、第二の成分である4,4’-置換-ジフェニルアセチレン化合物と、第三の成分である4-[4-(4-置換シクロヘキシル)シクロヘキシル]-1-置換ベンゼン化合物を含有する液晶組成物が記載されている。

3.当審の判断

請求項1に係る発明について
まず、上記2.の刊行物1中の「芳香族ニトリル化合物」はいずれも本願の「式(I)で表される化合物」に相当し、また、上記2.の刊行物1中の混合例1〜3の「アルキルシクロヘキサンカルボン酸」はいずれも本願の「式(II)で表される化合物」に相当する。以下、「本願の式(I)で表される化合物に相当する芳香族ニトリル化合物」を「化合物(I)」、「本願の式(II)で表される化合物に相当するアルキルシクロヘキサンカルボン酸」を「化合物(II)」という。
なお、本願の請求項1に記載された「炭素原子数3〜5のアルキル基を有する4-アルキルシクロヘキサンカルボン酸化合物」も「式(II)で表される化合物」と同義であるので、以下、同様に「化合物(II)」という。
そうすると、刊行物1〜3には、本願請求項1に係る発明の構成要件である「3種類の化合物(II)の混合物と化合物(I)の少なくとも一種を含有する液晶組成物」については、記載も示唆もされていない。
この点に関し、原審においては、刊行物1に記載の混合例1と混合例3とを比較し、混合例1は、化合物(I)1種と化合物(II)1種とからなる(原査定においては、「アルキルシクロヘキサンカルボン酸2種」とされているが、これは、「1種」の誤記と認められる。)ものであって、25〜90℃(原査定においては「95℃」とされているが、これは「90℃」の誤記と認められる。)のネマチック相温度範囲を有し、混合例3は、化合物(I)1種と化合物(II)2種とからなるものであって、5〜85℃のネマチック相温度範囲を有するものであるところ、化合物(II)の種類を1種から2種にすることでネマチック相温度範囲が25〜90℃から5〜85℃、即ち低温にシフトするのであるから、さらに化合物(II)を3種にすることで本願組成物のような温度範囲になることは予測される事項である旨、述べている。
しかしながら、混合例1と混合例3では、化合物(I)として互いに異なるニトリル化合物を用い、化合物(I)の混合割合も異なっているのであるから、そもそも互いに比較し得るものではなく、しかも、刊行物1に、化合物(II)を多種混合する方が低温にシフトする、という記載も示唆もされていないのであるから、混合例1と混合例3とのネマチック相温度範囲の違いを、直ちに化合物(II)を2種混合したことによるものとすることはできない。
さらに、原審においては、本願出願人の先願発明である特願平2-218330号の明細書の比較例1を引用し、該比較例1は、3種の化合物(II)と1種の化合物(I)からなっており、本願の発明の範囲内のものであるところ、ネマチック相の下限は25℃であることからすると、本願発明の効果が出願人主張の如くではない旨、述べている。しかしながら、先願発明と本願発明とは原則として別異のものであり、先願明細書の比較例1の組成物、即ち本願発明範囲内の組成物が、使用不可能であることを示しているのではないのであるから、この比較例の存在によっても、本願発明の効果は充分に認められる。
そして、本願請求項1に係る発明は、上記の構成を採用することによって、低温から室温を含む広い液晶温度範囲を有し、特に低温において安定したネマチック相を呈し、急峻性や応答性にも優れる、という明細書に記載の作用効果を奏するものである。
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、刊行物1〜3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

請求項2に係る発明について
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明にさらに式(III)で表されるアルキルシクロヘキサンカルボン酸フェニルエステルを含有させた液晶組成物であるから、上記と同様の理由により、刊行物1〜3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

請求項3に係る発明について
請求項3に係る発明は、請求項1に係る発明にさらに式(IV)で表されるトラン化合物を含有させた液晶組成物であるから、上記と同様の理由により、刊行物1〜3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

4.むすび

以上のとおりであるから、本願請求項1〜3に係る発明は、前記刊行物1〜3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2001-12-11 
出願番号 特願平2-336445
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C09K)
最終処分 成立  
前審関与審査官 渡辺 陽子  
特許庁審判長 板橋 一隆
特許庁審判官 鈴木 紀子
西川 和子
発明の名称 液晶組成物  
代理人 羽鳥 修  
代理人 羽鳥 修  

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