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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1051055 |
審判番号 | 審判1999-17382 |
総通号数 | 26 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1991-11-21 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-11-01 |
確定日 | 2001-12-25 |
事件の表示 | 平成 2年特許願第411522号「呼び出し装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 3年11月21日出願公開、特開平 3-262069]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は平成2年12月18日(パリ条約による優先権主張1989年12月18日、米国)の出願であって、その請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という) 「以下の(a)ないし(g)を設けた、呼び出し機能付き携帯型コンピュータ: (a)情報を表示する表示手段; (b)データ及び命令を含む情報を記憶するメモリ; (c)情報を入力して、計算を行うかあるいは電話番号またはテキスト・メッセージを含む情報を含む呼び出し信号を生成するキーボード; (d)前記キーボードから入力された呼び出しを送信するモデム; (e)電話番号またはテキストメッセージを含む情報を含む呼び出し信号を受信する受信器; (f)携帯型コンピュータを計算モードと呼び出しモードとの間で切り替える手段; (g)前記表示手段、前記メモリ、前記キーボード及び前記受信器と通信し、 携帯型コンピュータが前記計算モードにある場合には、計算を行ってその結果を前記表示手段に表示し、 携帯型コンピュータが前記呼び出しモードにある場合には、受信した呼び出し信号をデコードしてその呼び出し情報を取出し、前記呼び出し情報をメモリ・ロケーション中に記憶し、前記呼び出し情報をメモリ中に記憶されている情報と比較し、 更に、前記モデムに与えることによって送信された呼び出しメッセージを前記受信器によって受信された呼び出しメッセージと比較して、前記モデムに与えられた呼び出しメッセージが正しく受信されたか否かを判定することができる制御手段。」 2.引用刊行物記載の発明 これに対し、当審における、平成12年9月14日付けで通知した拒絶の理由に引用した、本願の優先権主張の日前である昭和64年1月12日に頒布された特開昭64-8492号公報(以下、「引用刊行物1」という)には、次の事項が記載されている。 (1)「情報を入力するためのキーボードと、情報を表示するための表示部と、電子回路内蔵カードを挿抜できる装着部とを具備した携帯形電子装置において、回路構成の異なった前記電子回路内蔵カードが複数種類有り、前記電子回路内蔵カードを前記装着部に装着された前記携帯形電子装置は、前記装着された電子回路内蔵カードに対応した回路動作をすることを特徴とする携帯形電子装置」(特許請求の範囲第1項の記載) (1-1)携帯形電子装置1は、内部にキーボード4、表示装置5、マイクロプロセッサ9、ROM10,RAM11,インターフェース回路12を有している。(第2図(a)参照) (1-2)「携帯形電子装置1は、例えば印刷機構を持たないポケッタブル日本語ワープロ等に利用される。一例として・・・・キーボード4と表示部5を用いて作成した文書を・・・・という使い方が可能である。」(第3頁左下欄第9行から第15行) (2)「電子回路内蔵カードは、無線ページング受信機であり、前記携帯形電子装置の表示部に前記無線ページング受信機で受信された受信内容が表示されることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の携帯形電子装置」(特許請求の範囲第4項の記載) (2-1)「一方同図(c)の電子回路内蔵カード32は、携帯形電子装置と合体させて、表示付き無線ページング受信機を構成させるものでアンテナ15を介して呼び出し情報信号を受信する受信器16と、受信器16からの信号で呼び出されたことを音等で知らせるブザー18と、情報を記憶させておくメモリ17と、これらの情報が、インターフェース回路19と接点8とを介して携帯形電子装置に入力される。」(第3頁右上欄第16行から同頁左下欄第4行の記載 (3)「電子回路内蔵カードは、公衆電話回線情報入出力回路が内蔵されていることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の携帯形電子装置」(特許請求の範囲第5項の記載) (3-1)「つぎに第2の実施例について第3図を用いて説明する。これは複数種類の電子回路内蔵カード3のうちの一つが、同図で示すように、電話回線情報入力回路を内蔵した電子回路内蔵カード33の場合である。本実施例は上述の実施例に、電子回路内蔵カード33を追加したものとみなしてもよい。第一の実施例について説明したことはそのまま成り立つうえに、電子回路内蔵カード32に、新たな機能が付加されたものである。・・・・・いま、このカードを表示付き無線ページング・サービスの送信側端末装置として使用する場合について述べる。・・・・例えば、「無線ページング・サービス・メッセージ入力」を選択し、続いて相手の電話番号(またはページング受信機番号)、さらには伝えたいメッセージを入力する。これらの情報はいったんリード・ライト・メモリ21に収納される。つぎに、この電子回路内蔵カード33を形携帯型入力端末装置2から抜き出すとともに、・・・・・この音響信号は電話機の送話器を通じて電話回線に送り込まれる。・・・・本実施例を発呼者に、前述の第一の実施例を被呼者に適用させて組み合わせて利用もできる。」(第4頁左上欄第8行から同頁左下欄第13行) (3-2)「上述の実施例」、「第1の実施例」に係る第3頁左下欄第5行から第4頁左上欄第7行の記載「上記2種類の電子回路内蔵カードのうち、・・・・このとき、電子回路内蔵カード32の受信メッセージ用メモリ17には、すでに受信メッセージが格納されているから、携帯型入出力端末装置2のキーボードを所定の如く操作することによって、受信メッセージ用メモリ17の内容を表示装置5に表示させることができる。・・・・・通常の表示付き無線ページング受信器では、表示が数字だけか、あるいはアルファベット、かな、漢字のどれまで含むかで、携帯形電子装置1の大きさが随分違う。これに対して本願発明では、携帯形電子装置1がこれら全ての字種を表示する機能を備えさえすればよいので、表示方法の拡大が可能になる。」から、電子回路内蔵カードは無線ページング受信機能を有する電子回路内蔵カード32に関するものであるので、上述の「上述の実施例に、電子回路内蔵カードを33を追加したものと見なしてもよい。・・・電子回路内蔵カード32に新たな機能を付加されたものである。」とは電子回路内蔵カードとして無線ページング受信機と電話回線情報入力回路とを内蔵したものである。 そして、「本実施例を発呼者に、前述の第1の実施例を被呼者に適用させて組み合わせて利用もできる。」の記載から、無線ページング受信機を被呼者に、電話回線情報入力装置を発呼者に適用して組み合わせて利用することができることが示されている。 また、上記記載から「伝えたいメッセージ」はテキスト・メッセージである。 したがって、引用刊行物1には 「以下の(a)から(g)を設けた、呼び出し機能付き携帯形電子装置: (a)情報を表示する表示装置5; (b)データ及び命令を含む情報を記憶するROM10、RAM11、電子回路内蔵カード3内のメモリ; (c)情報を入力して、例えば文書作成を行うかあるいは電話番号またはテキスト・メッセージを含む情報を含む呼び出し信号を生成するキーボード4; (d)前記キーボードから入力された呼び出しを送信する電話回線入力回路; (e)電話番号またはテキスト・メッセージを含む情報を含む呼び出し信号を受信する無線ページング受信機; (f)携帯形電子装置を、例えば日本語ワープロ等、無線ページング・サービス・メッセージ入力、無線ページング受信との間で切り替える手段; (g)前記表示手段、前記メモリ、前記キーボード及び前記受信機と通信し、 携帯形電子装置が例えば日本語ワープロ操作中はその作成された文書を表示し、無線ページング受信では、受信メッセージ用メモリ17に格納されている受信メッセージを表示し、無線ページング・サービス・メッセージ入力モードでは電話番号、さらにテキスト・メッセージを入力し、さらに、無線ページング受信機を被呼者に、電話回線情報入力装置を発呼者に適用して組み合わせて利用することができる」(以下、「引用発明」という)が記載されているものと認められる。 また、同じく周知例として挙げた特開昭49-4414号公報(以下、「引用刊行物2」という)には「一般電話網と携帯無線受信機を利用して個人呼出を行ういわゆる”ベルボーイ”あるいは”ポケットベル”等と呼ばれるサービスがある。このサービスに使用される無線受信機は従来、受信機自体に故障があった場合または受信機電源電圧が低下した場合、呼出音が鳴らないため、呼出を受けられないばかりでなく、受信機自体の異常にも気づくことができなかった。このため、受信機携帯者は自分の受信機の番号をダイヤルして受信機が正常であるかどうかの確認を行わねばならず、」(第2頁左上欄第1行から同欄第12行)と記載されている。(以下、「引用刊行物2の記載」という) また、同じく特開昭61-287351号公報(以下、「引用刊行物3」という)には「送受信制御部23等は指定の試験データ34の送信を、通常のデータ送信と同様に実行する。こゝで、試験データ34の宛先は自端末アドレスにになっている。予備側の通信装置31では、マイクロプロセッサ14は、常時、試験制御プログラム33の受信側ルーチンを実行して、受信待ちの状態にあるものとする。送受信制御部23は、通常のように自端末宛の受信フレームを送受信データ領域22に格納し、マイクロプロセッサ14に通知する。マイクロプロセッサ14は、試験制御プログラム33の実行によって、受信フレームを処理し、それが試験データのフレームであれば、記憶してある試験データ34と比較する。」(第3頁左上欄下から2行目から同頁右上欄第12行)が記載されている。(以下、「引用刊行物3の記載」という) また同じく周知例として挙げた実願昭63-22121(実開平1-126737号)のマイクロフィルム(以下、「引用刊行物4」という)には「自由文の送信は、ワープロ又はワープロ機能を有するパソコンで文章を作成し、これをポケットベルサービス網のモデムを使用して相手先に送信しており」(第4頁第8行から同頁第11行)が記載されている。(以下、「引用刊行物4の記載」という) 3.対比 引用発明は「電子装置」である点で表現上相違するが、図2(a)で示されるように、その電子装置の構成はコンピュータであり、本願発明と同様である。 (a)〜(c)、(e)において、引用発明の表示装置5、キーボード4、無線ページング受信機、「ROM、RAM、電子回路内蔵カード内のメモリ」はそれぞれ本願発明の表示手段、キーボード、、受信器、メモリに相当する。 (d)において、引用発明では「電話回線入力回路」であるのに対して本願発明では「モデム」である点で相違する。 (f)において、引用発明の「携帯形電子装置を、例えば日本語ワープロ等、無線ページング・サービス・メッセージ入力、無線ページング受信との間で切り替える手段」は、本願発明の「携帯型コンピュータを計算モードと呼び出しモードとの間で切り替える手段」に相当する。 (g)において、 引用発明は 「(1)前記表示手段、前記メモリ、前記キーボード及び前記受信機と通信し、携帯形電子装置が例えばワープロ等の操作中はキーボード4と前記表示装置5を用いて文書を作成し表示し、無線ページング受信モードでは受信メッセージ用メモリ17に格納されている受信メッセージを前記表示装置5に表示し、 (2)無線ページング・サービス・メッセージ入力モードでは電話番号、さらに伝えたいメッセージをキーボード4から入力し、さらに、無線ページング受信機を被呼者に、電話回線情報入力装置を発呼者に適用して組み合わせて利用することができる」であるに対し、 本願発明では 「(1)前記表示手段、前記メモリ、前記キーボード及び前記受信器と通信し、携帯型コンピュータが前記計算モードにある場合には、計算を行ってその結果を前記表示手段に表示し、携帯型コンピュータが前記呼び出しモードにある場合には、受信した呼び出し信号をデコードしてその呼び出し情報を取出し、前記呼び出し情報をメモリ・ロケーション中に記憶し、前記呼び出し情報をメモリ中に記憶されている情報と比較し、 (2)更に、前記モデムに与えることによって送信された呼び出しメッセージを前記受信器によって受信された呼び出しメッセージと比較して、前記モデムに与えられた呼び出しメッセージが正しく受信されたか否かを判定することができる制御手段」 である点で相違する。 4.当審の判断 上記相違点である(d)、(g)について検討する。 (d)について 本願明細書の発明の詳細な説明の記載の段落【0013】「・・・このモデム・オプションを使って、市内電話回線にプラグ接続することによって」の記載から本願発明の「モデム」とは「電話回線」にメッセージを送り出すためのものである。 通常「モデム」は変調(モジュレータ)及び復調(デモジュレータ)を言うものであるので、本願発明において電話回線から情報を受信するデモジュレータ部分は存在するものと認められるが、請求項に記載の構成はその機能は使用していないものである。 一方、引用発明のの「電話回線入力回路」は電話回線に接続されるモデムの送出部(モジュレータ部)に相当するものである。 そして、引用刊行物1にはモデムの受信部(デモジュレータ部)である「電話回線情報出力回路を有する電子回路内蔵カード34(第4図)が示されている。そして、上記特許請求の範囲第5項の記載から、公衆電話回線情報入出力回路ともに内蔵することを妨げるものではない。 したがって、引用発明においても、さらにモデムの受信部をも有するようになすことは適宜なし得ることにすぎない。 (g)の(1)について 上記(f)の項で述べたように「例えば日本語ワープロ等」は「計算モード」に、「無線ページング・サービス・メッセージ入力、無線ページング受信」は「呼び出しモード」に相当する。 そして、ページャにおいて、「受信した呼び出し信号をデコードしてその呼び出し情報を取り出して記憶し、前記呼び出し情報とメモリ中に記憶されている情報と比較する」構成を有することは通常のことにすぎない。(必要ならば、例えば、特開昭64-48535号公報の第2頁右下欄第16行から第3頁右上欄末行「一方、呼出し番号を受信すると受信部7は・・・呼出しのあったことを報音するとともに、・・・更にバッファ8に、呼出し番号につづいて受信したメッセージデータ(例えば電話番号データ)が送られ、バッファ8は、このメッセージデータを一時記憶する。バッファ8に記憶された電話番号データはANDゲートA6を介し比較部9に送られるとともに、更にANDゲートA7を介し電話番号表示部6に出力される。・・・・比較部9はバッファ8からの電話番号とRAM1から読み出される電話番号をクロック信号φに同期したタイミングで比較し、一致しない場合にはカウンタ10に不一致信号を出力する。・・・・比較において電話番号の一致を検出した場合には・・・・一致した電話番号に対応する名前が名前表示部5に送られ表示される。」参照のこと。) したがって、呼び出しモードにおいて「受信した呼び出し信号をデコードしてその呼び出し情報を取り出して記憶し、前記呼び出し情報とメモリ中に記憶されている情報と比較する」ようなすことは当業者がその用途に応じて適宜なし得る設計的事項にすぎない。 (g)の(2)について 引用発明には、「無線ページング受信機を被呼者に、電話回線情報入力装置を発呼者に適用して組み合わせて利用することができる」というのみで、その利用の仕方として「前記モデムに与えられた呼び出しメッセージが正しく受信されたか否かを判定」とし、「前記モデムに与えることによって送信された呼び出しメッセージを前記受信器によって受信された呼び出しメッセージと比較する」制御手段が記載されていない。 本願請求項の記載からは明確でないが、「送信された呼び出しメッセージを受信された呼びだしメッセージと比較する」こと、及び明細書によるとモデムは電話回線に接続されることから、自己のモデムから電話回線を介して自己の受信機を呼び出した場合のことであると認める。(このことは請求人が意見書で明確であると主張しているものである) しかしながら、上記「引用刊行物2の記載」に記載されているように、電話回線を介して自分の携帯無線呼出受信機を呼び出して呼び出しが正しく受信されたか否かを判定する試験を行うことは通常行っていることにすぎない。 そして、電話回線を介して情報をポケットベルサービス網に送るのにモデムを利用することも上記「引用刊行物4の記載」に記載されているように慣用手段にすぎない。 そして、試験のための構成として、上記「引用刊行物3の記載」に記載されているように受信した情報と記憶してある試験データと比較することで判定する構成はすでに知られていることにすぎない。 したがって、引用発明の(g)の「無線ページング受信機を被呼者に、電話回線情報入力装置を発呼者に適用して組み合わせて利用する」の形態および構成として、前記モデムに与えることによって送信された呼び出しメッセージを前記受信器によって受信された呼び出しメッセージと比較して、前記モデムに与えられた呼び出しメッセージが正しく受信されたか否かを判定するようになすことは当業者が容易になしえたものと認められる。 5.むすび したがって、本願発明は、上記引用刊行物1-4に記載された発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 |
審理終結日 | 2001-07-12 |
結審通知日 | 2001-07-24 |
審決日 | 2001-08-07 |
出願番号 | 特願平2-411522 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中里 裕正、和田 財太 |
特許庁審判長 |
徳永 民雄 |
特許庁審判官 |
斎藤 操 村上 友幸 |
発明の名称 | 呼び出し装置 |
代理人 | 上野 英夫 |