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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M
管理番号 1051096
審判番号 不服2000-11174  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-07-21 
確定日 2001-12-27 
事件の表示 平成 7年特許願第327052号「注射器及びその製造方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 9年 6月24日出願公開、特開平 9-164203]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年12月15日の出願であって、その請求項1乃至8に係る発明は、平成12年8月21日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至8に記載されたとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「(1)薬剤を収納・保存する複数の円筒体からなり、各円筒体の先端側は注射薬投与時までは封止手段により封止され且つ各円筒体の後端側は該薬剤を充填した後筒内を摺動可能なピストンにより密封されてなる注射筒、(2)該複数の円筒体先端部の取り付け部を有する注射針部、及び(3)該複数の円筒体に対応した複数の押子が互いに平行に配置され後端部で一つに結束されてなる押子部、を有してなる注射器において、上記複数の円筒体は内部容積が同じものかまたは異なるものが筒軸方向に平行に並列して配置され、且つ上記複数の円筒体は一つの棒状素材の軸方向を貫通する複数の孔を設けた形状に形成されたものであり、投与の際には上記複数の円筒体の先端部開口部に上記注射針部の取り付け部を被せて取り付け部内の空間と各円筒体の内部を連通させた後に、上記複数の円筒体内に対応する複数の押子を圧入することにより各円筒体内の薬剤を先端側開口部により該取り付け部内空間に流出させ、続いて該取り付け部内空間に連通する注射針の針管内を経て注射器外に流出できるようにしてあり、かつ上記注射筒は合成樹脂を原料として1回の射出成形により成形されたものであることを特徴とする注射器。」

2.引用刊行物記載の発明
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平7-155375号公報(以下、「刊行物」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。
「図1は、ヒト又は動物蛋白質を基礎とした組織接着剤の貯蔵及び適用に使用するようにしたシリンジ装置における一部分のシリンジ具に概括的に数字符号1を付してその構成を示す。このシリンジ具1は2つのシリンジ体2及び3を有し・・・図2及び図3から明らかなように、これらシリンジ体2及び3は、それぞれ代表的な実施例に示されるように断面形状が円形とされ、前方端部に公知の円錐部4及び5を有するとともに後方端部に、図1には示されないが、図10(A)、(B)及び図11に示されるように、使用時まで公知の閉鎖キャップ45を取り付けて閉鎖される。使用時、公知のように、円錐部4及び5に、シリンジ装置における他の部材としての計量分配部材、例えば、図16に示されるような混合カニューレを含むアタッチメントヘッド又は集合ヘッドとか、カニューレ又はスプレイヘッドを含む結合部材等が取り付けられる。」(【0039】欄)
「上記シリンジ体2及び3は、図2及び図3に示すように、分解不可能とした堅固な小型かつ平板状部材に前結合ウェブ10及び後結合ウェブ11を介して連結されている。これら結合ウェブ10及び11は円筒状シリンジ体の外周面と接する状態で結合されるとともに該シリンジ体のほぼ全長にわたって延び、それぞれ面取り部12及び13が形成された前方端部(円錐部端部)及び後方端部から間隔をおいた位置が終端とされる。」(【0042】欄)
「上記結合ウェブ10及び11はシリンジ体2及び3に一体的に形成され、特に、元来、一体成形用材料として好ましいポリプロピレンを用いて射出成形により形成される。」(【0043】欄)
「シリンジ具1と協働するように連結されたアクチュエータ部材20は2つのピストンロッド22、23を含むセパレート一体成形型ピストンロッド部材を構成し、これらピストンロッド22、23の後方端部、即ち図1における上端部に、共通グリップ素子24を介して一体的に連結され、該共通グリップ素子24の下部側に一体的に共通成形された強化ウェブ25が結合され、該強化ウェブ25も又上記ピストンロッド22、23と接続されている。・・・上記構成のシリンジ具1を使用するにあたり、アクチュエータ部材20のピストンロッド22、23の両前方端部がそれぞれピストンプラグ素子28、29と噛み合わされ、これらピストンプラグ素子28、29は、図9〜図12を参照しながら詳細に後述するように、充填後、シリンジ体2、3内に挿入されたものである。・・・ピストンプラグ28、29は、例えば、図7を参照して詳細に後述するように、ピストンロッド22、23の前方端部とスナップ-イン又はキャッチ方式で結合されるか、又は、図13〜図15を参照して詳細に後述されるように、使用時、ピストンロッド22、23と当たるようにした中実体として製作することが好ましい。」(【0045】乃至【0048】欄)

したがって、刊行物には、「(1)組織接着剤を収納・保存する複数のシリンジ体からなり、各シリンジ体の先端側は組織接着剤投与時までは閉鎖キャップにより封止され且つ各シリンジ体の後端側は該組織接着剤を充填した後筒内を摺動可能なピストンプラグにより密封されてなるシリンジ具、(2)該複数のシリンジ体先端部に取り付ける結合部材、及び(3)該複数のシリンジ体に対応した複数のピストンロッドが互いに平行に配置され後端部で一つに結束されてなるアクチュエータ部材、を有してなるシリンジ装置において、投与の際には上記複数のシリンジ体の先端部開口部に上記結合部材を取り付けた後に、上記複数のシリンジ体内に対応する複数のピストンロッドを圧入することにより各シリンジ体内の組織接着剤を結合部材のカニューレ又はスプレイヘッド内を経て結合部材外に流出できるようにしてあり、かつ上記シリンジ体は合成樹脂を原料として1回の射出成形により一体的に成形されたものであることを特徴とするシリンジ装置」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「組織接着剤」は本願発明の「薬剤」に相当する。以下、「シリンジ装置」は「注射器」、「シリンジ具」は「注射筒」、「シリンジ体」は「円筒体」、「ピストンロッド」は「押子」、「閉鎖キャップ」は「封止手段」、「ピストンプラグ素子」は「ピストン」、「アクチュエータ部材」は「押子部」、「カニューレ又はスプレイヘッドを含む結合部材」は「注射針部」、「カニューレ又はスプレイヘッド」は「針管」、にそれぞれ相当する。
本願発明における、「複数の円筒体は内部容積が同じものかまたは異なるものが筒軸方向に平行に並列して配置されたもの」との構成要件のうち、「同じものかまたは異なるもの」なる条件は複数の円筒体の内部容積の関係を何ら条件づけるものとは認めることができず、意味をなさない限定条件である。さらに、第1図乃至第3図からみて、円筒体(引用発明の「シリンジ体」に相当)は「筒軸方向に平行して配置され」ているものと認められる。
また、注射針部と注射筒との関係において、本願発明の「先端部開口部に上記注射針部の取り付け部を被せて取り付け部内の空間と各シリンジ体の内部を連通させ」る構成、「先端側開口部により該取り付け部内空間に流出させ、続いて該取り付け部内空間に連通する」構成は、注射筒に充填された薬剤を投入するための自明の構成である。さらに、第16図からみて、注射針部に「複数の円筒体先端部の取り付け部」を設けることは、自明である。

したがって、両者は、「(1)薬剤を収納・保存する複数の円筒体からなり、各円筒体の先端側は注射薬投与時までは封止手段により封止され且つ各円筒体の後端側は該薬剤を充填した後筒内を摺動可能なピストンにより密封されてなる注射筒、(2)該複数の円筒体先端部の取り付け部を有する注射針部、及び(3)該複数の円筒体に対応した複数の押子が互いに平行に配置され後端部で一つに結束されてなる押子部、を有してなる注射器において、上記複数の円筒体は内部容積が同じものかまたは異なるものが筒軸方向に平行に並列して配置されたものであり、投与の際には上記複数の円筒体の先端部開口部に上記注射針部の取り付け部を被せて取り付け部内の空間と各円筒体の内部を連通させた後に、上記複数の円筒体内に対応する複数の押子を圧入することにより各円筒体内の薬剤を先端側開口部により該取り付け部内空間に流出させ、続いて該取り付け部内空間に連通する注射針の針管内を経て注射器外に流出できるようにしてあり、かつ上記注射筒は合成樹脂を原料として1回の射出成形により成形されたものであることを特徴とする注射器。」の点で一致し、以下の点で相違する。

本願発明では、「複数の円筒体は一つの棒状素材の軸方向を貫通する複数の孔を設けた形状に形成され」ているのに対し、引用発明では、複数の円筒体を1回の射出成形により成形されたとする以外、いかなる形状とするか明らかではない点。

(相違点について)
本願発明では、射出成型を用いていることから、その成型の原理を考慮すれば、「複数の円筒体は一つの棒状素材の軸方向を貫通する複数の孔を設けた形状に形成され」とは、成型する際に「棒状素材」を用いる意味ではなく、成型された結果において、上述の形状となると解するのが適当である。
一方、引用発明では、複数の円筒体と、複数の円筒体を結合している「結合ウェブ10及び11」を一体的に射出成型によって形成されている。射出成型においては、その型を適宜選択すればいかなる形状にも成型がなし得るものであるから、引用発明における射出成型において、本願発明のように、成型結果として「一つの棒状素材の軸方向を貫通する複数の孔を設けた形状に(円筒体が)形成され」るようにすることは、当業者が容易になし得たことである。
また、本願発明によって奏される作用及び効果は、射出成型による効果であり、当該技術を熟知した当業者であれば当然想到し得る程度にすぎない。

4.むすび
したがって、本願発明は、上記刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-10-30 
結審通知日 2001-10-30 
審決日 2001-11-12 
出願番号 特願平7-327052
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 誠二郎  
特許庁審判長 佐藤 洋
特許庁審判官 岩崎 晋
和泉 等
発明の名称 注射器及びその製造方法  
代理人 安西 篤夫  
代理人 内田 明  
代理人 萩原 亮一  
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