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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C09C 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 C09C |
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管理番号 | 1051195 |
審判番号 | 審判1998-10346 |
総通号数 | 26 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-09-17 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1998-07-06 |
確定日 | 2002-01-21 |
事件の表示 | 平成 4年特許願第 54151号「耐侯堅ろう性に優れたビスマスオキシクロライド光沢顔料とその製造方法」拒絶査定に対する審判事件〔平成 5年 9月17日出願公開、特開平 5-239375、平成 7年 5月24日出願公告、特公平 7- 47699、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.本願は、平成4年2月6日(パリ条約による優先権主張、1991年2月8日、アメリカ合衆国)に出願されたものであって、出願公告後の平成13年12月5日付け手続補正書によって補正された明細書の記載からみて、請求項1〜8に係る発明は、特許請求の範囲に記載されたとおりのものと認められ、その請求項1及び3に係る発明(以下、それぞれ第1発明、第3発明という。)は次のとおりである。 「【請求項1】 水酸化セリウムにより被覆されたビスマスオキシクロライド結晶からなる真珠様光沢顔料で、上記水酸化セリウムは、上記顔料の耐候堅ろう性を向上させるためのもので、上記顔料の総重量に対して1〜7.5重量%である事を特徴とする真珠様光沢顔料。 【請求項3】ビスマスオキシクロライド顔料結晶と水酸化セリウムからなる優れた耐候堅牢性を有する真珠様光沢顔料の製造方法で、上記ビスマスオキシクロライド顔料結晶が上記水酸化セリウム化合物によって上記顔料の総重量に対して1〜7.5重量%で被覆される様な条件で、セリウム塩溶液とビスマスオキシクロライド顔料懸濁液とを混合する工程を含んでなる事を特徴とする真珠様光沢顔料の製造方法。」 2.これに対する原査定の拒絶の理由である特許異議の決定の理由で引用した西ドイツ国特許第1,003,377号明細書(以下、引用例という。)には、次の事項が記載されている。 (i)塩基性ビスマス塩、特にビスマスオキシクロライドは、中でも、それらの公知の光不安定性が非常に問題である用途、例えばプラスチック類の虹色付与剤として、また真珠層効果を得るためのコーティングとして使用されている。光および温度に対して安定な塩基性ビスマス塩は、完全に新規でさえあり、特殊な用途、例えば塗料分野への使用可能性を開くものであり……塩基性ビスマス塩、特にビスマスオキシクロライドの光および温度に対する安定性を、異種金属塩、即ちそのカチオンが2つの酸化状態の間で互変性であり、高い酸化状態で少なくとも3価である異種金属塩を、塩基性ビスマス塩結晶上に付着させるか、またはこの結晶中に配合することによって格別増強できることが見出された。これらの異種金属塩には、アンチモン、セリウム、バナジウム、錫、鉛、鉄、タリウムまたはジルコニウムの塩が包含される。 (ii)鉱化処理したビスマスオキシクロライド(あるいはまた例1または2に従い製造されたビスマスオキシクロライド)を、中性-含水状態で、下記の溶液に懸濁する(パーセンテージはビスマスオキシクロライドの量に基づく): a)水中のTlCl3の1%溶液、 b)水中のCeCl3・7H2O 0.04%およびH2O2 0.05%の溶液。 ………… a)、b)またはc)を用いて生成したスラリーは、長期間にわたり吸引濾過し、次いで洗浄することなく乾燥させる。 3.対比・判断 本願第1発明と引用例に記載のものを対比する。 引用例の記載事項をみると、ビスマスオキシクロライドは、プラスチック類の虹色付与剤として又は真珠層効果を得るためのコーティングとして用いられ、かつ塗料として使用できるように、光不安定性なビスマスオキシクロライド結晶上に、セリウムなどの異種金属塩を付着させるか、又はこの結晶中に配合することによって光と温度に対する安定性を増強させ(摘示事項i)、具体的な処理として、鉱化処理したビスマスオキシクロライドをビスマスオキシクロライドの量に対して中性-含水状態のCeCl3・7H2O 0.04%、H2O2 0.05%溶液中へ懸濁し、長期間にわたり吸引濾過し洗浄乾燥して製造する(摘示事項ii)真珠様光沢顔料である。ここで、ビスマスオキシクロライド結晶上に付着させることは、該結晶上に全体又は部分的に被覆させることに他ならないから、摘示事項iiの具体例を考慮すれば、引用例には鉱化したビスマスオキシクロライド結晶上にセリウムの金属塩(反応から見て、水酸化セリウムであるとは断定できない)を被覆させて光と温度に対する安定性を増強させた真珠様光沢顔料が示されているものと認められる。 そうすると、両者はセリウム化合物により被覆されたビスマスオキシクロライド結晶からなる真珠様光沢顔料である点で一致し、前者はセリウム化合物が水酸化セリウムであって、被覆される量が顔料の総重量に対して1〜7.5重量%であり、耐候堅牢性を向上させるものであるのに対して、後者はセリウム化合物が必ずしも水酸化セリウムではなく、その被覆量が0.04%であって光と温度に対する安定性を増強させるとしている点が相違する。 そこで、この相違点について検討すると、引用例の被覆ビスマスオキシクロライド顔料におけるセリウム化合物は、水酸化セリウムであるとは断定できないが、水酸化セリウムであるとしても、その被覆量が0.04ときわめて少ないものであるから、これを100倍程度も増加させることは当業者が容易に想到できるものではない。そして、引用例の顔料は、光と温度に対する安定性が増強されるものであるが、耐候堅牢性は光と温度以外に風、雨、日射等に耐えることも要件とされるものであるから、光と温度に対する効果から、耐候堅牢性についても同様の効果を奏することはいえない。 そして、平成13年1月26日付けの請求人からのファクシミリによる本件発明の効果についての回答では、本件の実施例1による顔料(水酸化セリウムとしてCeを3.5%含有)を用いた塗料と、引用例のCeを0.04%含有する顔料を用いた塗料との耐候性を比較した結果、ダークニング(デルタE)の変化は本件顔料11.1に対して、引用例の顔料20.44であって、本件顔料が引用例の顔料より暗色になることが少ないという格別優れた効果を奏することがが示されている。 したがって、第1発明は、引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。 また、第3発明は、第1発明の顔料を製造する方法であるから、また、請求項2に係る発明は第1発明をさらに限定したものであり、請求項4〜8に係る発明は第3発明をさらに限定したものであるから、引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 また、他に拒絶の理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する |
審決日 | 2001-12-26 |
出願番号 | 特願平4-54151 |
審決分類 |
P
1
8・
113-
WY
(C09C)
P 1 8・ 121- WY (C09C) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 石井 あき子、中田 とし子 |
特許庁審判長 |
宮本 和子 |
特許庁審判官 |
守安 智 深津 弘 |
発明の名称 | 耐侯堅ろう性に優れたビスマスオキシクロライド光沢顔料とその製造方法 |
代理人 | 秋元 輝雄 |