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審決分類 |
審判 査定不服 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1051250 |
審判番号 | 審判1999-20570 |
総通号数 | 26 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-02-14 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-12-28 |
確定日 | 2002-01-04 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第205693号「マルチプロセッサ」拒絶査定に対する審判事件[平成 7年 2月14日出願公開、特開平 7- 44510]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯等 本願は、平成5年7月28日の出願であって、平成13年8月20日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、「マルチプロセッサ」に関するものと認める。 2.当審の拒絶理由 これに対する当審の拒絶の理由の2)は、「本件出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第5項及び第6項に規定する要件を満たしていない。」というものであって、不備な点として、「「データの識別情報」とは何かその技術的内容が明らかでなく、したがって、「入力側プロセッサから出力されるデータの識別情報とを含む入力相手情報に基づいて前記入力側プロセッサに受信可能通知を出力する」及び「出力側プロセッサへ出力するデータの識別情報とを含む出力相手情報・・・に基づいて、前記入力側プロセッサから出力されるデータを処理したデータを前記出力側プロセッサへ出力する」の技術的内容も明らかでないから、請求項1に係る発明を明確に把握することができない。」ことを指摘した。 3.請求人の主張 請求人は、上記手続補正により、請求項1の記載を「前段プロセッサと、前記前段プロセッサに接続された後段プロセッサとを備えたマルチプロセッサにおいて、前記後段プロセッサは、前記前段プロセッサの識別情報および前記前段プロセッサからのデータ入力の可否を示す前記データ識別情報と一対のデータ識別情報を管理し、前記データ識別情報が前記前段プロセッサからのデータ入力を可能と示した場合に、対応する前段プロセッサに受信可能通知を出力し、前記前段プロセッサは、前記後段プロセッサへのデータ出力の問合わせを行わなわず該データ出力を待機し、前記後段プロセッサから前記受信可能通知が入力された場合に該データ出力を開始することを特徴とするマルチプロセッサ。」と補正し、それにともない、発明の詳細な説明の、課題を解決するため手段、作用、及び発明の効果の欄を同趣旨のものに補正するとともに、上記手続補正と同日付の意見書において、 「「データの識別情報」は、本願明細書の段落0011および図4或いは図5に示される通り、プロセッサの識別情報と共に入力相手情報或いは出力相手情報に含まれる情報であり、入力情報管理部13,14に格納されます。入力相手情報は、段落0012に示される通り、プロセッサPM6において、入力情報管理部13がプロセッサPM1〜PM3に対して順にデータの送信を許可するために参照されます。即ち、プロセッサ6は入力相手情報を参照し、プロセッサPM1からデータを入力することが可能であるならば、プロセッサPM1に対してデータの「受信許可通知」を行います。この動作において、「プロセッサの識別情報」は、入力相手(すなわちプロセッサPM1)を識別するために使用されます。「データの識別情報」は、「プロセッサの識別情報」によって識別された入力相手(すなわちプロセッサPM1)からデータを入力することが可能か否かを識別するために使用されます。 上述のプロセッサPM6の動作は、明細書の段落0017に記載されている内容から明らかです。即ち、段落0017において、プロセッサPM6は、プロセッサPM1に対する入力バッファに空きがあれば、プロセッサPM1に対して「受信可能通知」を行ないます。この記載内容から、「データの識別情報」の技術的内容は、入力相手(すなわち、プロセッサPM1)からデータを入力することが可能か否かを示す識別情報であり、更に具体的には、入力相手(すなわち、プロセッサPM1)に対する入力バッファに空きがあるか否かを示す識別情報であることが明らかであります。 以上の通り、審判官殿がご指摘した「データの識別情報」の技術的内容は、明細書および図面に記載された内容から明瞭です。」と主張している。 4.明細書の記載事項と当審の判断 そこで、本件出願の明細書の記載と照らし合わせて、上記請求人の主張の当否を検討する。 まず、特許請求の範囲の請求項1の記載を検討すると、データの識別情報について、請求項1には、「後段プロセッサは、前記前段プロセッサの識別情報および前記前段プロセッサからのデータ入力の可否を示す前記データ識別情報と一対のデータ識別情報を管理し、前記データ識別情報が前記前段プロセッサからのデータ入力を可能と示した場合に、対応する前段プロセッサに受信可能通知を出力し」と記載されており、前段プロセッサからのデータ入力の可否を示す前記データ識別情報と一対のデータ識別情報という意味不明な文言が存在し、データの識別情報がどのようなものか請求項1の記載からは明らかにすることはできない。 次に、請求人が、「データの識別情報の技術的内容は、入力相手からデータを入力することが可能か否かを示す識別情報である」旨主張する根拠としている、発明の詳細な説明の記載を検討する。 段落0011には、 「図4に示すように、入力相手情報には、プロセッサPM6にデータを入力する送信側のプロセッサPM1、PM2、PM3の識別情報及びこれらのプロセッサから入力されるデータの識別情報が含まれている。 また、図5に示すように、出力相手情報には、プロセッサPM6がデータを出力する送信先のプロセッサPM8、PM9、PM10の識別情報及びこれらのプロセッサに出力されるデータの識別情報が含まれている。 これらの識別情報により、同じプロセッサから異なったデータを入力したり、同じプロセッサに異なったデータを出力したりすることもできる。 このような入力相手情報及び出力相手情報は、マルチプロセッサによるデータ処理の開始に先立ち、事前に格納されている。」と記載され、 段落0012には、 「図1に示すプロセッサ6では、入力情報管理部13が図4に示す入力相手情報を参照し、プロセッサPM1、PM2、PM3に対して順にデータの送信を許可する。即ち、入力相手情報を参照し、プロセッサPM1からデータを入力することが可能であるならば、プロセッサPM1に対してデータの「受信可能通知」を行なう。この「受信可能通知」は、例えば1本の割込み線を介して割込みを発生する等の手法により行なうほか、他のいかなる手法で行なっても差し支えない。プロセッサPM1では、プロセッサPM6からの「受信可能通知」を受けてプロセッサPM6に対するデータの送信を開始する。」と記載され、 段落0017には、 「この後、プロセッサPM6において、データD1、D2、D3を使用して所定のデータ処理を行なう。このとき、プロセッサPM1に対する入力バッファに空きがあれば、プロセッサPM1に対して「受信可能通知」を行ない、プロセッサPM1から次のデータを入力する。以後、プロセッサPM2、PM3についても同様に順に次のデータを入力する。 このように、入力相手情報を巡回的に参照しながら、同様の手順を繰り返し、データ入力時の処理手順を簡単にすることができる。 尚、プロセッサPM6におけるデータ処理に必要なデータがデータD1及びデータD2であり、データD3が不要であれば、データD2をプロセッサPM2から入力した時点でデータ処理を開始してもよい。また、データD1だけでデータ処理が可能であれば、プロセッサPM1からデータD1を入力した時点でデータ処理を開始してもよい。」と記載されている。 段落0012には、確かに、「入力相手情報を参照し、プロセッサPM1、PM2、PM3に対して順にデータの送信を許可する。即ち、入力相手情報を参照し、プロセッサPM1からデータを入力することが可能であるならば、プロセッサPM1に対してデータの「受信可能通知」を行なう。」とは記載されているものの、これをもって、請求人の主張するように、入力相手情報を参照するのは、入力相手からデータを入力することが可能か否かを識別するためである、とは直ちに認めることはできない。 すなわち、入力相手情報を参照するのは、順次、データの「受信可能通知」を送信する送信相手を識別するためであって、データの送信を許可できるか否かの情報は別途保持していると考えることも可能だからである。 また、段落0017には、入力バッファに空きのあるプロセッサに、「受信可能通知」を行うことが記載されているのみで、「データの識別情報」を参照して「受信可能通知」を行うことは一切記載されていない。 一方、段落0011には、「これらの識別情報により、同じプロセッサから異なったデータを入力したり、同じプロセッサに異なったデータを出力したりすることもできる。このような入力相手情報及び出力相手情報は、マルチプロセッサによるデータ処理の開始に先立ち、事前に格納されている。」と記載されており、この記載によれば、「データの識別情報」が「入力相手からデータを入力することが可能か否かを示す識別情報」ではあり得ないことは明らかである。 以上のとおりであるので、発明の詳細な説明には、請求人の主張するような、「データの識別情報」が「入力相手からデータを入力することが可能か否かを示す識別情報」であることを示す記載を認めることはできず、むしろ請求人の主張を否定する記載が明らかであるから、請求人の「データの識別情報の技術的内容は、明細書および図面に記載された内容から明瞭である。」旨の主張を認めることができなず、依然として、請求項1に係る発明を明確に把握することができない。 5.むすび したがって、本願は、特許法第36条第5項及び第6項に規定する要件を満たしていないので、拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-10-19 |
結審通知日 | 2001-10-30 |
審決日 | 2001-11-12 |
出願番号 | 特願平5-205693 |
審決分類 |
P
1
8・
534-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石井 茂和 |
特許庁審判長 |
斎藤 操 |
特許庁審判官 |
鳥居 稔 徳永 民雄 |
発明の名称 | マルチプロセッサ |
代理人 | 大西 健治 |