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審決分類 |
審判 査定不服 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 C07C |
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管理番号 | 1051305 |
審判番号 | 審判1998-401 |
総通号数 | 26 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-09-20 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1998-01-05 |
確定日 | 2002-01-21 |
事件の表示 | 平成 4年特許願第174745号「アジン合成反応装置内の二酸化炭素量を減らす方法」拒絶査定に対する審判事件〔平成6年9月20日出願公開、特開平6-263709、平成7年8月30日出願公告、特公平7-80829、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は、平成4年6月9日の出願(優先権主張 1991年6月12日 フランス)であって、公告決定がされ、特許異議の申立てがされ、平成8年11月20日付けで手続補正書が提出され、その手続補正が却下されると同時に特許の異議決定及び拒絶査定がされ、審判請求がされ、その指定期間内である平成10年2月4日に手続補正書が提出されたものである。 II.補正の適否 1.補正の内容 本願の明細書は、上記I.で示したとおり平成10年2月4日付け手続補正書により次のとおり補正された。 ア.公告時の特許請求の範囲の請求項1の記載において、「互いに接触させることによってアジンを二酸化炭素の不存在下で合成する方法において、」とあるのを、「反応器内で互いに接触させてアジンを合成し、得られたアジンを回収後に作動溶液を反応器へ再循環させるアジンの連続合成方法において、」と補正する。 イ.同じく「合成反応系」を「反応器中」と補正する。 ウ.同じく「且つ」を「、」と補正する。 エ.段落番号【0006】の記載において、「互いに接触させることによってアジンを合成する方法において、合成反応を二酸化炭素の不存在下で行うことを特徴とする方法を提供する。」とあるのを「反応器内で互いに接触させてアジンを合成し、得られたアジンを回収後に作動溶液を反応器へ再循環させるアジンの連続合成方法において、反応器中に二酸化炭素を持ち込まず、反応で生じた二酸化炭素は除去することを特徴とする方法を提供する。」と補正する。 2.補正の目的の適否及び拡張・変更の存否 ア.「反応器内で互いに接触させてアジンを合成し、」の補正は、公告時の特許請求の範囲の請求項1に記載された「互いに接触させることによってアジンを・・・合成する・・・」と実質同義であり、また、「得られたアジンを回収後に作動溶液を反応器へ再循環させるアジンの連続合成方法・・・」とする補正は、公告時の特許請求の範囲の請求項2に記載された「(b)作動溶液からアジンを分離し、・・・(d)再生した作動溶液を(a)段階へ再循環させる・・・アジンの合成方法・・・」に減縮するもので、これが「連続合成方法」であることは、明らかに認められるから、ア.の補正は、特許請求の範囲の減縮と認められる。 イ.〜ウ.の補正は、明りょうでない記載の釈明である。 エ.の補正は、補正された特許請求の範囲の請求項1の記載に整合させるための詳細な説明の補正であるから、明りょうでない記載の釈明である。 また、補正後の請求項1に係る発明で、「反応器中に二酸化炭素を持ち込まず、反応で生じた二酸化炭素は除去する」との構成は、実質的に「二酸化炭素の不存在下」を意味しているから、公告時の特許請求の範囲の請求項1に記載の「二酸化炭素の不存在下」の構成を削除することにより、実質的に特許請求の範囲を拡張・変更するものなったとはいえない。 そして、前記補正事項ア.〜エ.は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 それ故、上記平成10年2月4日付けの補正は、平成5年改正前の特許法第17条の3の規定により適法にされたものと認める。 III.本願の発明 本願の請求項1ないし6に係る発明は、公告時の明細書および図面と公告後の補正である平成10年2月4日付けの手続補正書で補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された以下のとおりのものと認める。 「【請求項1】アンモニアと、過酸化水素水と、カルボニル基を有する反応物とを、これらの物質をアジンへ変換させる触媒を含む作動溶液を用いて、反応器内で互いに接触させてアジンを合成し、得られたアジンを回収後に作動溶液を反応器へ再循環させるアジンの連続合成方法において、反応器中に二酸化炭素を持ち込まず、反応で生じた二酸化炭素は除去することを特徴とする方法。 【請求項2】(a)アンモニアと、過酸化水素水と、カルボニル基を有する反応物とをこれらの物質をアジンへ変換させる触媒を含む作動溶液を用いて互いに接触させ、(b)作動溶液からアジンを分離し、(c)作動溶液を少なくとも130℃にして反応中に生じた水と過酸化水素水の希釈水に由来する水とを除去し、水と、アンモニアと、カルボニル基を有する反応物と、反応で生じた二酸化炭素とを含む流れの形で作動液を再生し、(d)再生した作動溶液を(a)段階へ再循環させる各段階で構成されるアジンの合成方法において、(c)段階の流れから反応で生じた二酸化炭素と水の大部分とを除去した後に作動溶液を(a)段階へ再循環することを特徴とする方法。 【請求項3】(c)段階からの流れから反応で生じた二酸化炭素と水の大部分とを除去するために(c)段階からの流れをストリッピング塔へ送り、その底部で水を除去し、その上部からの流れを20〜45℃の温度且つ低圧力で凝縮して底部から炭酸アンモニウムを主とした流れを取り出し、上部からアンモニアと、カルボニル基を有する反応物と、水とを含む流れを取り出す請求項2に記載の方法。 【請求項4】凝縮時の圧力が30〜120mmHgである請求項3に記載の方法。 【請求項5】カルボニル基を有する反応物を、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンおよびシクロヘキサノンよりなる群の中から選択する請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。 【請求項6】作動溶液が、アセトアミドと酢酸アンモニウムとの水溶液またはアセトアミドと酢酸との水溶液である請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。」 IV.原査定の拒絶の理由 公告決定後の平成8年11月20日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、特許請求の範囲を拡張するものであるから、その補正は、平成5年法改正前の特許法第64条第2項によって準用する同法第126条第2項の規定に違反するものであり、同法第54条第1項の規定により却下すべきものである、とした上で、公告時の特許請求の範囲の請求項1に係る発明において、「アジンを二酸化炭素の不存在下で合成する」及び「合成反応系に二酸化炭素を持ち込まず」との記載は、否定的表現・機能的表現であるため、特許を受けようとする発明の構成に欠くことのできない事項が具体的に示されておらず、平成5年法改正前の特許法第36条第5項第2号に規定する要件を満たしていない、というにある。 V.当審の判断 平成5年法改正前の特許法第36条第5項第2号違反について検討する。 補正後の特許請求の範囲の請求項1には、「反応器中に二酸化炭素を持ち込まず、反応で生じた二酸化炭素は除去する」ことを構成としているが、「反応器中に二酸化炭素を持ち込まず、」は、段落番号【0008】の記載された「反応器内に二酸化炭素を導入せず、アンモニア、過酸化水素、カルボニル基を有する反応物、作動液、場合によって再循環されるアンモニア、さらに一般的には反応器導入されるものが全てのものが二酸化炭素を含んでいないことを意味する。」ことであり、「反応で生じた二酸化炭素は除去する」との構成は、段落番号【0011】〜【0014】に記載があるように「二酸化炭素と大部分の水を除去する方法は種々ある。例えば、・・・塔604の底部からの流れ(107)には炭酸アンモニウムの形の二酸化炭素の全量と、水と、極少量のアンモニアおよびカルボニル基を有する化合物とが含まれている。(表1、表2、第1図、第2図参照)」として除去すること、あるいは、段落番号【0015】に記載された「上記以外の方法、例えばソーダで洗浄して二酸化炭素を炭酸塩の形で除去し、・・・」等を具体的手段として明示のうえ、包括的に表現した構成であるから、原査定の拒絶の理由である「否定的表現・機能的表現であるため、特許を受けようとする発明の構成に欠くことのできない事項が具体的に示されていない。」ということができない。 したがって、補正後の本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、平成5年法改正前の特許法第36条第5項第2号に規定する要件を満たすものと認められる VI.むすび 以上のとおりであるから、原査定の拒絶の理由によっては、本願の発明を拒絶することができない。 また、他に本願の発明を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2001-12-28 |
出願番号 | 特願平4-174745 |
審決分類 |
P
1
8・
534-
WY
(C07C)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 平山 美千恵、福井 悟、坂崎 恵美子 |
特許庁審判長 |
板橋 一隆 |
特許庁審判官 |
佐藤 修 鈴木 紀子 |
発明の名称 | アジン合成反応装置内の二酸化炭素量を減らす方法 |
代理人 | 越場 隆 |