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審決分類 |
審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:なし G02B |
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管理番号 | 1051320 |
異議申立番号 | 異議2001-70647 |
総通号数 | 26 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1993-09-10 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-02-28 |
確定日 | 2001-09-10 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3081699号「マクロレンズを備えた顕微鏡」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3081699号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
[1]手続の経緯 本件特許第3081699号の発明は、平成4年2月21日に特許出願され、平成12年6月23日にその特許の設定登録がなされたものであり、その後、株式会社ニコンより特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、特許異議意見書とともに訂正請求書が提出された。 [2]訂正の適否についての判断 [訂正の内容] 訂正請求書による訂正事項は次のとおりである。 a.特許請求の範囲の請求項1「前記巨視結像光学系と微視結像光学系との切換を行う切換手段と」とあるのを、「前記巨視結像光学系と前記微視結像光学系との切換を行う切換手段と」と訂正する。 b.特許請求の範囲の請求項1「前記切換手段によって切換えられた光学系の光軸に対して前記試料を移動可能で、前記試料が移動した光軸位置が前記切換手段によって切換えられた光学系の焦点位置近傍となるように構成されたステージと」とあるのを、「一方の光学系の光軸から、前記切換手段によって切換えられた他方の光学系の光軸に移動するとき、前記試料に対する光学系の焦点が相互に調整されるように、前記試料を斜め方向に所定の傾斜角度をもって移動するステージと」と訂正する。 c.特許請求の範囲の請求項2を削除する。 d.段落【0008】の「このような目的を達成するために、本発明のマクロレンズを備えた顕微鏡は、試料の巨視像が取得可能なマクロレンズを有する巨視結像光学系と、顕微鏡対物レンズを有する微視結像光学系と、前記巨視結像光学系と微視結像光学系との切換を行う切換手段と、前記切換手段によって切換えられた光学系の光軸に対して前記試料を移動可能で、前記試料が移動した光軸位置が前記切換手段によって切換えられた光学系の焦点位置近傍となるように構成されたステージとを備える。また、本発明の別のマクロレンズを備えた顕微鏡は、試料の巨視像が取得可能なマクロレンズを有する巨視結像光学系と、顕微鏡対物レンズを有する微視結像光学系と、前記巨視結像光学系と微視結像光学系との切換を行う切換手段と、前記切換手段によって切換えられた光学系の光軸に対して前記試料を移動可能なステージと、前記試料が前記ステージによって移動した光軸位置が前記切換手段によって切換えられた光学系の焦点位置近傍となるように固定されている移動量に応じて上下に前記ステージを制御する制御手段とを備える。」を「このような目的を達成するために、本発明のマクロレンズを備えた顕微鏡は、試料の巨視像が取得可能なマクロレンズを有する巨視結像光学系と、顕微鏡対物レンズを有する微視結像光学系と、前記巨視結像光学系と前記微視結像光学系との切換を行う切換手段と、一方の光学系の光軸から、前記切換手段によって切換えられた他方の光学系の光軸に移動するとき、前記試料に対する光学系の焦点が相互に調整されるように、前記試料を斜め方向に所定の傾斜角度をもって移動するステージとを備える。」と訂正する。 e.段落【0037】から【0040】の全文を削除する。 f.段落【0041】の全文を「本発明の第5の実施例に係るマクロレンズを備えた顕微鏡について、図6及び図7を参照して説明する。図6には、上述した各実施例に示された顕微鏡を電動制御するための制御機構のブロック図が示されている。」と訂正する。 g.段落【0043】の「図7」を「図6」と訂正する。 h.段落【0044】の「図7」及び「図8」をそれぞれ「図6」及び「図7」と訂正する。 i.段落【0045】の「図7」及び「図8」をそれぞれ「図6」及び「図7」と訂正する。 j.【図面の簡単な説明】及び図面において、図6を削除する。 k.図6の削除に伴い、図面番号の「図7」を「図6」、「図8」を「図7」にそれぞれ訂正する。 l.訂正後の【図6】において、「第6の実施例」を「第5の実施例」と訂正する。 m.訂正後の【図7】において、「図7」を「図6」と訂正する。 [訂正の範囲の適否、拡張・変更の存否] 上記訂正事項aは、微視結像手段が、先に規定されたものであることを明確にしたものである。 上記訂正事項bは、ステージが斜め方向に所定の傾斜角をもって移動することを明確に限定しようとするものであって、特許請求の範囲の減縮に相当するものである。この限定は、図4及び特許明細書第【0026】から【0029】に記載されているものである。 上記訂正事項cは、請求項2に記載された発明を削除するものであって、特許請求の範囲の減縮に相当するものである。 上記訂正事項dは、請求項1および請求項2に係る上記訂正事項a、上記訂正事項b及び上記訂正事項cに適合させて訂正しようとするものであって、明瞭でない記載の釈明に相当するものである。 上記訂正事項eは、本件発明の請求項1に係る実施例以外の実施例である第5の実施例を削除したものであって、明瞭でない記載の釈明に相当するものである。 上記訂正事項fは、上記訂正事項eの第5の実施例の削除に適合して、訂正したものであって、明瞭でない記載の釈明に相当するものである。 上記訂正事項gは、上記訂正事項eの第5の実施例の削除により、図6が削除されたことに伴い、図面番号をそろえたものであって、明瞭でない記載の釈明に相当するものである。 上記訂正事項hは、上記訂正事項eの第5の実施例の削除により、図6が削除されたことに伴い、図面番号をそろえたものであって、明瞭でない記載の釈明に相当するものである。 上記訂正事項iは、上記訂正事項eの第5の実施例の削除により、図6が削除されたことに伴い、図面番号をそろえたものであって、明瞭でない記載の釈明に相当するものである。 上記訂正事項iは、上記訂正事項eの第5の実施例の削除に適合して、図6を削除したものであって、明瞭でない記載の釈明に相当するものである。 上記訂正事項kは、上記訂正事項jにより、図6が削除されたことに伴い、図面番号をそろえたものであって、明瞭でない記載の釈明に相当するものである。 上記訂正事項lは、上記訂正事項eの第5の実施例の削除に適合して、訂正したものであって、明瞭でない記載の釈明に相当するものである。 上記訂正事項mは、上記訂正事項jにより、図6が削除されたことに伴い、図面番号をそろえたものであって、明瞭でない記載の釈明に相当するものである。 したがって、本件訂正事項a〜mは特許明細書に記載した事項の範囲内においてするものであり、新規事項の追加に該当しない。 また、本件訂正事項a〜mは、実質上特許請求の範囲を拡張・変更するものではない。 [結び] 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法126条第1項ただし書き、第2項の規定に適合するので、本件訂正を認める。 [3]特許異議の申立について [申立の理由の概要] 特許異議申立人株式会社ニコンは、甲第1号証(特開平3-15015号公報)、甲第2号証(特開昭58-24106号公報)、甲第3号証(特開平2-178608号公報)、甲第4号証(特開昭62-50719号公報)、甲第5号証(特開昭59-10231号公報)を提出し、請求項1、2に係る発明の特許は特許法第29条第1項または第2項の規定に違反してなされたものであり、特許を取り消すべき旨主張している。 [本件発明] 特許第3081699号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、平成13年8月6日付けの訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 請求項1「試料の巨視像が取得可能なマクロレンズを有する巨視結像光学系と、顕微鏡対物レンズを有する微視結像光学系と、前記巨視結像光学系と前記微視結像光学系との切換を行う切換手段と、一方の光学系の光軸から、前記切換手段によって切換えられた他方の光学系の光軸に移動するとき、前記試料に対する光学系の焦点が相互に調整されるように、前記試料を斜め方向に所定の傾斜角度をもって移動するステージとを具備するマクロレンズを備えた顕微鏡。」 [引用刊行物] 当審が通知した取消しの理由に引用された刊行物は次のとおりである。 刊行物1:特開昭62-50719号公報(甲第4号証) 刊行物2:特開昭59-10231号公報(甲第5号証) 刊行物3:特開平3-15015号公報(甲第1号証) 刊行物1には、 「位置割り出しステージS1は本発明の特徴として適当な低倍率、例えば倍率5倍、の顕微鏡10を備えており、この顕微鏡10にはその視野を映像としてとらえるためのTVカメラ11が組合されている。検査ステージS2には本来目的とする高倍率での画像測定を行うために、所定の倍率、例えば倍率20倍、の顕微鏡20を備えており、この顕微鏡20にはその視野を映像としてとらえるためのTVカメラ21および自動焦点機構22が組合されている。また、位置割り出しステージS1および検査ステージS2は検体載置台30を共有しており、この検体載置台30はここでは検体を位置割り出しステージS1から検査ステージS2へと搬送できるような移動可能な載置台(所謂オートステージ)とされている。」(第2頁右下欄第14行〜第3頁左上欄第8行) 「第1図に示すように、TVカメラ11および21の出力信号はビデオ切換ユニット40へ与えられ、何れかのTVカメラの出力信号を選択的に画像解析装置41へ与えるようになされている。」(第3頁左上欄第15行〜第18行) 刊行物2には、 「目視または低倍顕微鏡で高感度検出する低倍検査手段と、この低倍検査手段により検出された欠陥をポインタビーム光の照射により位置データを記憶する手段とこの記憶された位置データに基づいて高倍率顕微鏡にその位置を自動的に順次設定する高倍検査手段」(特許請求の範囲) 「検査すべきパターンが形成されたウエハ4はウエハ供給ラック2からウエハ移送装置3経由でチャックおよびステージ5に載る。ウエハ4とチャックおよびステージ5はこの位置で低倍検査(以下、マクロ検査と称す)し、その発見された欠陥をチャックおよびステージ5を移動させて5Aの位置とし(この位置におけるウエハを4Aとする)、顕微鏡8、9、10で検査(以下、ミクロ検査と称する)する。」(第2頁左上欄第19行〜右上欄第7行) 刊行物3には、 「本発明による顕微鏡は、複数の対物レンズを切換えて使用する顕微鏡において、前記各対物レンズ毎の同焦データを記憶する記憶手段と、切換え前後の二つの対物レンズの同焦データに基づいて結像状態を補正する補正手段を備えていることにより、切換え時に自動的に合焦位置が補正されるようにしたものである。」(第2頁左上欄第9行〜第15行) 「制御回路5は確認された新しいレボルバー位置に対応するステージ位置データ(以下データBという)を記憶回路2のデータテーブル201より読み込む。かくして制御回路5においてデータAとBからステージ移動量Cの演算が行われ、その演算結果をモータ制御回路7へ出力して、ステージ8を移動量Cだけ移動させ、同焦ずれの補正を行う。」(第3頁右上欄第17行〜左下欄第4行) が記載されている。 [対比・判断] 訂正後の本件発明と、上記刊行物1〜3記載の発明とを比較すると、刊行物1〜3記載の発明は、本件発明の具備する「一方の光学系の光軸から、前記切換手段によって切換えられた他方の光学系の光軸に移動するとき、前記試料に対する光学系の焦点が相互に調整されるように、前記試料を斜め方向に所定の傾斜角度をもって移動するステージ」という構成を具備していない。 また、かかる点は、異議申立人の提出した他の証拠のいずれにも記載されていない。 本件発明は、かかる点により、微視光学系と巨視光学系で焦点の高さ、即ち試料面に対する焦点位置がずれている場合においてもピント合わせの調節が不要となるという作用効果を生じるものと認められるから、本件発明は、刊行物1に記載された発明と同一であるとも、また刊行物2、3に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明することができたとも認めることはできない。 したがって、本件発明は、異議申立人が提出した刊行物に記載された発明でなく、また異議申立人が提出した刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものでもないので、本件発明は、特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項のいずれの規定にも違反してなされたものではない。 [結び] したがって、特許異議申立ての理由および証拠によっては、本件の特許を取り消すことはできない。 また、他に本件の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 マクロレンズを備えた顕微鏡 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 試料の巨視像が取得可能なマクロレンズを有する巨視結像光学系と、顕微鏡対物レンズを有する微視結像光学系と、前記巨視結像光学系と前記微視結像光学系との切換を行う切換手段と、一方の光学系の光軸から、前記切換手段によって切換えられた他方の光学系の光軸に移動するとき、前記試料に対する光学系の焦点が相互に調整されるように、前記試料を斜め方向に所定の傾斜角度をもって移動するステージとを具備するマクロレンズを備えた顕微鏡。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、巨視像及び微視像の観察が選択的に行えるマクロレンズを備えた顕微鏡に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来、この種の顕微鏡として、特開昭49-60748号公報(以下、従来例1と称する)に開示された巨視鏡-顕微鏡組合せ体が知られている。 【0003】 この巨視鏡-顕微鏡組合せ体は、ハウジングに固定された共通の観視管と、巨視系光学路を有する巨視結像光学系と、微視系光学路を有する微視結像光学系と、を備えており、可動の光偏向装置によって、観視管に対して巨視系光学路または微視系光学路が選択的に接続される。 【0004】 また、特開平2-141601号公報(以下、従来例2と称する)に開示された標準試料及び位置補正方法を適用することによって、例えば、STM装置と光学顕微鏡との組合せ、あるいは、STM装置とSEMとの組合せ等の複数の測定手段の相対位置が補正され、試料の多面的な観察、測定、分析が行われる。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、従来例1、2は、マクロレンズで観察する場合、ステージ上のプレパラートをマクロレンズの下のステージに乗せ変える手間がかかるため効率が悪いという問題がある。 【0006】 また、従来例1、2では、マクロレンズで観察した画像と、顕微鏡対物レンズで観察した画像との位置関係の対応については、一切、考慮されていないという問題がある。 【0007】 本発明は、このような問題点を解決するためになされ、その目的は、巨視像と微視像の観察を連続的且つ効率よく行うことができるマクロレンズを備えた顕微鏡を提供することにある。 【0008】 【課題を解決するための手段】 このような目的を達成するために、本発明のマクロレンズを備えた顕微鏡は、試料の巨視像が取得可能なマクロレンズを有する巨視結像光学系と、顕微鏡対物レンズを有する微視結像光学系と、前記巨視結像光学系と前記微視結像光学系との切換を行う切換手段と、一方の光学系の光軸から、前記切換手段によって切換えられた他方の光学系の光軸に移動するとき、前記試料に対する光学系の焦点が相互に調整されるように、前記試料を斜め方向に所定の傾斜角度をもって移動するステージとを備える。 【0009】 【作用】 本発明は、切換手段によって光学系を巨視結像光学系又は微視結像光学系に切換えると共に、ステージを切換手段によって切換えた光学系の光軸に移動させると、ステージ上の試料は、切換えられた光学系の焦点位置近傍にセットされる。 【0010】 【実施例】 以下、本発明の第1の実施例に係るマクロレンズを備えた顕微鏡について、図1及び図2を参照して説明する。 【0011】 図1に示すように、本実施例の顕微鏡は、基台1と、この基台1から垂直に延出された支柱3と、この支柱3上に設けられ、巨視系と微視系との切換えを行う巨視光学装置5と、この巨視光学装置5上に設けられた接眼レンズ装置7と、を備えている。 【0012】 また、基台1には、ピント合わせ用ハンドル9が設けられており、このハンドル9を操作することによって、ステージ11が光軸方向に上下動可能に構成されている。 【0013】 巨視光学装置5は、光路切換装置13と、巨視系対物レンズ15と、巨視系レンズ17と、を備えている。なお、巨視系レンズ17は、レンズ交換可能に構成することができると共に、ズーム機能を備えて構成させることもできる。 【0014】 光路切換装置13には、光路切換つまみ19が設けられており、この光路切換つまみ19を操作することによって、微視系光路と巨視系光路との切換えが行われる。 【0015】 図1及び図2に示すように、本実施例に適用されたステージ11は、ステージ基底部21と、このステージ基底部21に沿って図中矢印Y方向に摺動可能に構成され、スライドガラス等の試料(図示しない)が載置可能なステージ本体23と、を備えている。 【0016】 このステージ本体23は、Y方向のステージ調節ハンドル25を備えていると共に、レボルバ2に装着された微視系対物レンズ4を介して形成される微視光学系の光軸Aから巨視光学系の光軸Bにまで亘って延出されており、ステージ調節ハンドル25を操作することによって、試料を載置させたままで、巨視系と微視系との観察の切換えが行えるように構成されている。以下、本実施例のマクロレンズを備えた顕微鏡の動作について図1及び図2を参照して説明する。 【0017】 微視系の観察から巨視系へ切換える場合、光路切換つまみ19を操作して、巨視系光路に切換える。次に、ステージ調節ハンドル25を介してステージ本体23上に載置された試料を巨視系光路上に移動させる。このとき双方の光学系で焦点の高さが異なる場合には、ピント合わせ用ハンドル9を操作して、焦点合わせを行うことができる。 【0018】 また、巨視系の観察から微視系へ切換える場合、光路切換つまみ19を操作して、微視系光路に切換える。次に、ステージ調節ハンドル25を介してステージ本体23上に載置された試料を微視系光路上に移動させる。この場合も、双方の光学系で焦点の高さが異なる場合には、ピント合わせ用ハンドル9を操作して、焦点合わせを行うことができる。 【0019】 このように本実施例のマクロレンズを備えた顕微鏡は、試料をステージ本体23に載置させたままで、巨視系及び微視系の双方の光学系での観察を行うことができる。この結果、巨視光学系によるスライドガラス全体に亘る極低倍率の観察から、微視光学系による対物レンズ40倍といった高倍率の観察まで、連続的且つ効率よく行うことができる。次に、本発明の第2の実施例に係るマクロレンズを備えた顕微鏡について、図3を参照して説明する。本実施例の場合、ステージ11の構成であるステージ本体23には、ステージ調節ハンドル25とは別に、更に、ステージ移動レバー27が設けられている。 【0020】 また、ステージ本体23には、ステージ基底部21に対する相対的な移動距離を規定する移動部29が設けられている。なお、この移動距離は、微視光学系の光軸Aと巨視光学系の光軸Bとの間の距離に一致している。 【0021】 このため、ステージ移動レバー27を介してステージ本体23をステージ基底部21に対して図中矢印S方向にいっぱいに引けば、ステージ本体23上に載置された試料は、巨視光学系の光軸B上に位置付けられ、また、ステージ移動レバー27を介してステージ本体23をステージ基底部21に対して図中矢印S方向とは反対方向にいっぱいに押せば、ステージ本体23上に載置された試料は、微視光学系の光軸A上に位置付けられる。 【0022】 本実施例の場合、ステージ移動レバー27を操作して、微視光学系又は巨視光学系に試料をセットし、ピント合わせ用ハンドル9を介して焦点合わせを行った後、ステージ調節ハンドル25を操作することによって、双方の光学系で連続的且つ効率よく試料の観察を行うことができる。更に、ステージ調節ハンドル25を操作しなければ、双方の光学系で試料の同一箇所の観察が、試料の位置合わせを行うことなく連続的且つ効率よく行うことができる。 【0023】 次に、本発明の第3の実施例に係るマクロレンズを備えた顕微鏡について、図4を参照して説明する。なお、本実施例の説明に際し、第1の実施例と同一の構成には、同一符号を付してその説明を省略する。 【0024】 本実施例の顕微鏡の特徴は、微視光学系と巨視光学系で焦点の高さ、即ち試料面に対する焦点位置がずれている場合、簡単にピント合わせが行えるように構成されたステージ11を備えている点にある。他の構成は、上述した実施例と同様であるため、以下の説明では、このステージ11の構成・作用・効果についてのみ説明する。 【0025】 図4の(a)、(b)に示すように、本実施例の顕微鏡に設けられたステージ11は、支柱3から延出したステージ支持部31上を、図中矢印P方向に移動可能に構成されている。 【0026】 特に、図4の(b)に示すように、ステージ支持部31上には、ステージ11の移動方向を規制する一対のレール33が、図中矢印P方向に沿って設けられており、これら一対のレール33上にステージ11が移動可能に設けられている。 【0027】 これら一対のレール33は、ステージ11の水平移動距離が微視光学系の光軸Aと巨視光学系の光軸Bとの間の距離に一致するように、その長さが規定されて構成されている。また、一対のレール33の傾斜角度は、ステージ11を微視光学系側に移動させたとき、ステージ11上の試料に対して微視光学系の焦点が整合され、且つ、ステージ11を巨視光学系側に移動させたとき、ステージ11上の試料に対して巨視光学系の焦点が整合されるように規定されて構成されている。 【0028】 また、ステージ11には、ステージ移動つまみ35が設けられており、このステージ移動つまみ35を操作することによって、ステージ11は、図中矢印P方向に光軸A、Bの間を移動される。 【0029】 なお、ピント合わせは、ピント合わせ用ハンドル9を操作して、ステージ支持部31を図中矢印T方向に上下させることによって、ステージ11を移動させて行われる。以下、本実施例の顕微鏡の動作について図4を参照して説明する。 【0030】 微視系の観察から巨視系の観察へ切換える場合、光路切換つまみ19を操作して、巨視系光路に切換える。次に、ステージ移動つまみ35を操作して、ステージ11を巨視光学系側まで移動させる。この段階では、ピントはほぼ合っている。ピントの微調節は、ピント合わせ用ハンドル9を操作し、ステージ支持部31を上下に微動させて行われる。 【0031】 巨視系の観察から微視系の観察へ切換える場合、光路切換つまみ19を操作して、微視系光路に切換える。次に、ステージ移動つまみ35を操作して、ステージ11を微視光学系側まで移動させる。この段階では、ピントはほぼ合っている。ピントの微調節は、ピント合わせ用ハンドル9を操作し、ステージ支持部31を上下に微動させて行われる。なお、このときの微調節は、微視光学系で対物レンズ4を交換した際の微調節程度で足りる。 【0032】 本実施例の顕微鏡は、上述した各実施例の効果に加えて、更に、巨視光学系と微視光学系とでのピント合わせの調節が不要となると共に、双方の光学系で試料の同一箇所の観察が、試料の位置合わせを行うことなく連続的且つ効率よく行うことができる。 【0033】 次に、本発明の第4の実施例に係るマクロレンズを備えた顕微鏡について、図5を参照して説明する。なお、本実施例の説明に際し、第1の実施例と同一の構成には、同一符号を付してその説明を省略する。 【0034】 通常の透過光式顕微鏡では、コンデンサ41を用いて下から光を照射している。しかし、巨視光学系にコンデンサを適用することは難しく、別の光源が必要であった。 【0035】 本実施例の特徴は、上述した通常の顕微鏡の構成に加えて、巨視光学系で観察する位置、即ち、巨視光学系の光軸B上に高周波光源37が内蔵されたステージ11が適用されている点にある。なお、ステージ11は、このステージ上に載置された試料43が巨視光学系の光軸Bと微視光学系の光軸Aとの間を移動できるように構成されている。高周波光源37が内蔵されているステージ11の部分には、半透明のアクリル板又はすりガラス等で構成された透過部材39が設けられている。 【0036】 巨視系の観察では、高周波光源37から透過部材39を介して透過光を試料に照射させることによって、通常の蛍光灯に比べてちらつきのない均一の光を試料43に照射させることができる。なお、微視系の観察は、通常の顕微鏡と同様に、コンデンサ41を用いて行われる。本実施例の場合も、その効果は、上述した実施例と同様であるため、説明は省略する。 【0037】 【0038】 【0039】 【0040】 【0041】 本発明の第5の実施例に係るマクロレンズを備えた顕微鏡について、図6及び図7を参照して説明する。図6には、上述した各実施例に示された顕微鏡を電動制御するための制御機構のブロック図が示されている。 【0042】 なお、制御機構は、顕微鏡本体内に組込みあるいは外部に設けることができ、CPUからの指令によって、顕微鏡の各動作系を制御できるように構成されている。なお、本実施の場合、制御機構が適用された顕微鏡としては、例えば、図1に示された顕微鏡を基に、以下、説明する。 【0043】 図6に示すように、制御機構は、巨視光学系と微視光学系との光路切換スイッチ(図示しない)がONされた際にCPU57にその信号を出力する入力装置53と、例えばステージ11の水平及び垂直移動量等の所定のデータが記憶されたメモリ55と、を備えており、CPU57から出力された信号によって光路切換59、ステージ移動61、ピント調節63、倍率変更65等が制御可能に構成されている。なお、メモリ55は、ROM又は外部記憶装置によって構成されている。 【0044】 特に、本実施例の制御機構が適用された顕微鏡では、光路切換時におけるステージ11の移動及び上下動の制御に特徴を有しており、上下動については、巨視光学系及び微視光学系相互の焦点位置の高さの違いに合わせて制御され、その移動量は固定されている。つまりオートフォーカス機能による微調節とは意味合いが異なる。以下、本実施例の顕微鏡の動作について図6と共に図7のフローチャートを参照して説明する。 【0045】 図6及び図7に示すように、現在巨視系の観察が行われている際に、微視系の観察に切換える場合、光路切換スイッチ(図示しない)をONする(S1)。このときのON信号は入力装置53を介してCPU57に出力され、巨視光学系への切換か否かが判断される(S2)。この場合、微視光学系への切換であるため、メモリ55からCPU57に微視光学系への移動データが出力される(S3)。CPU57は、出力された移動データを基に、ステージ11(図1参照)のY方向移動(S4)及びピント合わせのためのステージ11のZ方向移動(S5)を制御する。 【0046】 このような微視系の観察が行われている際に、巨視系の観察に切換える場合、光路切換スイッチをONする(S1)。このときのON信号は入力装置53を介してCPU57に出力され、巨視光学系への切換か否かが判断される(S2)。この場合、巨視光学系への切換であるため、メモリ55からCPU57に巨視光学系への移動データが出力される(S6)。CPU57は、出力された移動データを基に、ステージ11(図1参照)のY方向移動(S4)及びピント合わせのためのステージ11のZ方向移動(S5)を制御する。 【0047】 なお、本実施例において、光路切換は手動によって行うことも可能であり、手動による切換終了後、CPU57へ移動データを出力させるように構成することもできる。 【0048】 本実施例の顕微鏡では、光学系の切換に対応してステージ11の移動及び上下動が自動制御されているため、巨視像と微視像の観察の連続性及び効率性が更に助長される。また、図1に示された顕微鏡に用いられたステージ11でも、高精度な移動及び上下動が達成できる。 【0049】 【発明の効果】 本発明は、切換手段によって切換えられた光学系に対して、試料をステージに載置させたままで移動させて、巨視像と微視像の観察を連続的且つ効率よく行うことができる。この結果、巨視光学系によるスライドガラス全体に亘る極低倍率の観察から、微視光学系による高倍率の観察まで、連続的且つ効率よく行うことができる。更に、双方の光学系で試料の同一箇所の観察が、試料の位置合わせを行うことなく連続的且つ効率よく行うことができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の第1の実施例に係るマクロレンズを備えた顕微鏡の全体の構成を概略的に示す側面図。 【図2】 図1に示す顕微鏡に設けられたステージを拡大して示す斜視図。 【図3】 本発明の第2の実施例に係るマクロレンズを備えた顕微鏡の構成であるステージを拡大して示す斜視図であって、(a)は、ステージ本体がステージ基底部に対していっぱいに押された状態を示す図、(b)は、ステージ本体がステージ基底部に対していっぱいに引かれた状態を示す図。 【図4】 (a)は、本発明の第3の実施例に係るマクロレンズを備えた顕微鏡の全体の構成を概略的に示す側面図、(b)は、その上面図。 【図5】 本発明の第4の実施例に係るマクロレンズを備えた顕微鏡に適用されたステージの部分の構成を拡大して示す図。 【図6】 本発明の第5の実施例に係るマクロレンズを備えた顕微鏡に適用された制御機構のブロック図。 【図7】 図6に示す制御機構の動作を示すフローチャート。 【符号の説明】 1...基台、3...支柱、5...巨視光学装置、7...接眼レンズ装置、9...ピント合わせ用ハンドル、11...ステージ、13...光路切換装置、15...巨視系対物レンズ、17...巨視系レンズ、19...光路切換つまみ。 【図面】 |
訂正の要旨 |
[訂正の要旨] 訂正請求書による訂正事項は次のとおりである。 a.特許請求の範囲の請求項1「前記巨視結像光学系と微視結像光学系との切換を行う切換手段と」とあるのを、「前記巨視結像光学系と前記微視結像光学系との切換を行う切換手段と」と訂正する。 b.特許請求の範囲の請求項1「前記切換手段によって切換えられた光学系の光軸に対して前記試料を移動可能で、前記試料が移動した光軸位置が前記切換手段によって切換えられた光学系の焦点位置近傍となるように構成されたステージと」とあるのを、「一方の光学系の光軸から、前記切換手段によって切換えられた他方の光学系の光軸に移動するとき、前記試料に対する光学系の焦点が相互に調整されるように、前記試料を斜め方向に所定の傾斜角度をもって移動するステージと」と訂正する。 c.特許請求の範囲の請求項2を削除する。 d.段落【0008】の「このような目的を達成するために、本発明のマクロレンズを備えた顕微鏡は、試料の巨視像が取得可能なマクロレンズを有する巨視結像光学系と、顕微鏡対物レンズを有する微視結像光学系と、前記巨視結像光学系と微視結像光学系との切換を行う切換手段と、前記切換手段によって切換えられた光学系の光軸に対して前記試料を移動可能で、前記試料が移動した光軸位置が前記切換手段によって切換えられた光学系の焦点位置近傍となるように構成されたステージとを備える。また、本発明の別のマクロレンズを備えた顕微鏡は、試料の巨視像が取得可能なマクロレンズを有する巨視結像光学系と、顕微鏡対物レンズを有する微視結像光学系と、前記巨視結像光学系と微視結像光学系との切換を行う切換手段と、前記切換手段によって切換えられた光学系の光軸に対して前記試料を移動可能なステージと、前記試料が前記ステージによって移動した光軸位置が前記切換手段によって切換えられた光学系の焦点位置近傍となるように固定されている移動量に応じて上下に前記ステージを制御する制御手段とを備える。」を「このような目的を達成するために、本発明のマクロレンズを備えた顕微鏡は、試料の巨視像が取得可能なマクロレンズを有する巨視結像光学系と、顕微鏡対物レンズを有する微視結像光学系と、前記巨視結像光学系と前記微視結像光学系との切換を行う切換手段と、一方の光学系の光軸から、前記切換手段によって切換えられた他方の光学系の光軸に移動するとき、前記試料に対する光学系の焦点が相互に調整されるように、前記試料を斜め方向に所定の傾斜角度をもって移動するステージとを備える。」と訂正する。 e.段落【0037】から【0040】の全文を削除する。 f.段落【0041】の全文を「本発明の第5の実施例に係るマクロレンズを備えた顕微鏡について、図6及び図7を参照して説明する。図6には、上述した各実施例に示された顕微鏡を電動制御するための制御機構のブロック図が示されている。」と訂正する。 g.段落【0043】の「図7」を「図6」と訂正する。 h.段落【0044】の「図7」及び「図8」をそれぞれ「図6」及び「図7」と訂正する。 i.段落【0045】の「図7」及び「図8」をそれぞれ「図6」及び「図7」と訂正する。 j.【図面の簡単な説明】及び図面において、図6を削除する。 k.図6の削除に伴い、図面番号の「図7」を「図6」、「図8」を「図7」にそれぞれ訂正する。 l.訂正後の【図6】において、「第6の実施例」を「第5の実施例」と訂正する。 m.訂正後の【図7】において、「図7」を「図6」と訂正する。 |
異議決定日 | 2001-08-17 |
出願番号 | 特願平4-35110 |
審決分類 |
P
1
651・
-
YA
(G02B)
|
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 笹野 秀生 |
特許庁審判長 |
高橋 美実 |
特許庁審判官 |
伊藤 昌哉 青木 和夫 |
登録日 | 2000-06-23 |
登録番号 | 特許第3081699号(P3081699) |
権利者 | オリンパス光学工業株式会社 |
発明の名称 | マクロレンズを備えた顕微鏡 |
代理人 | 風間 鉄也 |
代理人 | 渡辺 隆男 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 鈴江 武彦 |
代理人 | 風間 鉄也 |