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審決分類 |
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載 B23B 審判 一部申し立て 2項進歩性 B23B |
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管理番号 | 1051357 |
異議申立番号 | 異議2000-71774 |
総通号数 | 26 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1993-07-20 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2000-04-28 |
確定日 | 2001-08-29 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第2968878号「回転切削工具とその切削用差込み工具及びその製作方法」の請求項1ないし3、5ないし12に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本件特許第2968878号発明は、平成3年11月26日(パリ条約による優先権主張、優先日 1990年11月26日、優先権主張国 南アフリカ)に特許出願され、平成11年8月20日にその特許権の設定登録がなされ、平成12年4月28日に特許異議申立人早川和男より請求項1〜3、及び請求項5〜12に係る発明に対して特許異議の申立てがなされ、その後当審の平成13年2月2日付取消理由通知に対して、特許権者より平成13年7月10日付で特許異議意見書及び訂正請求書が提出された。 2.訂正の適否についての判断 1)訂正の内容 a.訂正事項a 特許時の特許明細書における、特許請求の範囲の請求項1〜15の記載 「【請求項1】 回転切削工具のための切削用差込み工具であって、互いに向かい合った第1と第2の側面を備えた本体と、該第1と第2の側面のそれぞれにある凹所に位置し且つ該本体よりも硬度の大きい層とを有し、該層は該切削用差込み工具の中心線を越えて互いに重なり合い、前記切削用差込み工具は、その第1と第2の側面が回転切削工具の軸線に対して実質的に平行に回転切削工具の端に保持されるよう形づくられ、該第1と第2の側面のそれぞれに設けられている前記層は、該層が前記切削工具のリップ即ち主たる切刃を画成するように、前記本体の厚さを横切る方向において互い違いに位置される、切削用差込み工具。 【請求項2】 請求項1に従う切削用差込み工具において、前記切削用差込み工具は概ね楔形またはV形を画成する1対の切刃を有する、該切削用差込み工具。 【請求項3】 請求項2に従う切削用差込み工具において、前記切削用差込み工具は切妻形状にされる、該切削用差込み工具。 【請求項4】 請求項3に従う切削用差込み工具において、ノッチまたはスロットは切刃の間において中心に形成される、該切削用差込み工具。 【請求項5】 請求項2に従う切削用差込み工具において、前記切削用差込み工具は山形の形状にされる、該切削用差込み工具。 【請求項6】 請求項1の切削用差込み工具において、前記切削用差込み工具は.本体よりも硬さの大きな層の一部分から成るチゼルエッジを画成する、該切削用差込み工具。 【請求項7】 請求項1から請求項6の何れか一つの項に従う切削用差込み工具において、本体はタングステン炭化物からなり、層は多結晶質ダイヤモンドからなる、該切削用差込み工具。 【請求項8】 請求項1から請求項7の何れか一つの項に従う切削用差込み工具をその端に保持するように形成された体部を有する回転切削工具において、該体部は、前記切削用差込み工具が前記回転切削工具の端に直径方向に配置されるように、前記切削用差込み工具を固定する1対の向かい合った据付面を画成している、該回転切削工具。 【請求項9】 請求項8に従う回転切削工具において、前記体部が1対の直立する腕を有し、切削用差込み工具の各据付部分を固定する据付面を各腕が画成している、該回転切削工具。 【請求項10】 請求項9に従う回転切削工具において、前記切削用差込み工具の各据付部分が前記切削用差込み工具の本体によって形成されている、該回転切削工具。 【請求項11】 請求項8から請求項10の何れか一つの項に従う回転切削工具において、前記切削用差込み工具が鑞付けによって前記回転切削工具の体部の据付面に固定される、該回転切削工具。 【請求項12】 回転切削工具のための切削用差込み工具を製作する方法であって、第1と第2の互いに向かい合った主面を備えた本体と、本体よりも硬度が大きく且つ各主面の一部分を画成する第1と第2の層とを有し、該第1と第2の層が前記本体の向かい合った両主面に位置されるブランクを用意する工程と、互いに向かい合った主面に対応する第1と第2の側面を備えた本体を有する切削用差込み工具を画定するように、且つ該第1と第2の側面が前記第1と第2の各層から形成されて互い違いに配置された切刃を有するように、前記ブランクを切断する工程とを有する、該回転切削工具のための切削用差込み工具を製作する方法。 【請求項13】 請求項12に従う方法であって、前記ブランクの第1と第2の層が前記ブランクの厚さを横切る方向において互い違いに配置されているものにおいて、前記第1と第2の層の隣接縁から等距離の線を中心として前記ブランクを切断する過程を有する、該方法。 【請求項14】 請求項12または請求項13に従う方法において、複数の山形形状にされた切削用差込み工具がV字形状のパターンを以て前記ブランクから切断される、該方法。 【請求項15】 請求項13または請求項14に従う方法において、前記ブランクは、本体よりも硬い第1と第2の層をその互いに向かい合った側面に有し、前記第1と第2の層は前記ブランクの厚さを横切る方向において互い違いに位置されそして切削用差込み工具の複数列が各第1と第2の層の隣接縁から等距離の線を中心として前記ブランクから切断される、該方法。」 を、 「【請求項1】 回転切削工具のための切削用差込み工具であって.互いに向かい合った第1と第2の側面を備えた本体と、該第1と第2の側面のそれぞれにある凹所に位置し且つ該本体よりも硬度の大きい層とを有し、該層は該切削用差込み工具の中心線を越えて互いに重なり合い、前記切削用差込み工具は、その第1と第2の側面が回転切削工具の軸線に対して実質的に平行に回転切削工具の端に保持されるよう形づくられ、該第1と第2の側面のそれぞれに設けられている前記層は、該層が前記切削工具のリップ即ち主たる切刃を画成するように、前記本体の厚さを横切る方向において互い違いに位置され、前記切削用差込み工具は概ね楔形またはV形を画成する1対の切刃を有し,前記切削用差込み工具は切妻形状にされ、ノッチまたはスロットが切刃の間において中心に形成されている、該切削用差込み工具。 【請求項2】 回転切削工具のための切削用差込み工具を製作する方法であって、第1と第2の互いに向かい合った主面を備えた本体と、本体よりも硬度が大きく且つ各主面の一部分を画成する第1と第2の層とを有し、該第1と第2の層が前記本体の向かい合った両主面に位置されるブランクを用意する工程と、互いに向かい合った主面に対応する第1と第2の側面を備えた本体を有する切削用差込み工具を画定するように、且つ該第1と第2の側面が前記第1と第2の各層から形成されて互い違いに配置された切刃を有するように、前記ブランクを切断する工程とを有し、前記ブランクの第1と第2の層が前記ブランクの厚さを横切る方向において互い違いに配置されているものにおいて、前記第1と第2の層の隣接縁から等距離の線を中心として前記ブランクを切断する過程を有する、該方法。 【請求項3】 請求項2に従う方法において、複数の山形形状にされた切削用差込み工具がV字形状のパターンを以て前記ブランクから切断される、該方法。 【請求項4】 請求項2または請求項3に従う方法において、前記ブランクは、本体よりも硬い第1と第2の層をその互いに向かい合った側面に有し、前記第1と第2の層は前記ブランクの厚さを横切る方向において互い違いに位置されそして切削用差込み工具の複数列が各第1と第2の層の隣接縁から等距離の線を中心として前記ブランクから切断される、該方法。」 と訂正する。 上記特許請求の範囲の訂正個所は次の通りである。 前記取消理由通知で取り消すべきものであるとされた特許時の請求項1〜3、及び請求項5〜12を削除し、特許異議の申立てのされていない特許時の請求項4、13、14及び15を、それぞれ訂正後の請求項1〜4として、このうち特許時の請求項4及び13を独立形式に書き換えたものである。 b.訂正事項b 特許明細書の発明の名称「回転切削工具とその切削用差込み工具及びその製作方法」を、「回転切削工具のための切削用差込み工具及びその製作方法」と訂正する。 c.訂正事項c 特許明細書段落0001の「本発明は回転切削工具用切削用差込み工具の製作方法、切削用差込み工具を有する回転切削工具及び切削用差込み工具それ自体に関する。」を、「本発明は回転切削工具用切削用差込み工具の製作方法及び切削用差込み工具それ自体に関する。」と訂正する。 d.訂正事項d 特許明細書段落0003を 「 【課題を解決するための手段】 本発明に従えば、回転切削工具のための切削用差込み工具は、互いに向かい合った第1と第2の側面を備えた本体と、該第1と第2の側面のそれぞれにある凹所に位置し且つ該本体よりも硬度の大きい層とを有し、該層は該切削用差込み工具の中心線を越えて互いに重なり合い、前記切削用差込み工具は、その第1と第2の側面が回転切削工具の軸線に対して実質的に平行に回転切削工具の端に保持されるよう形づくられ、該第1と第2の側面のそれぞれに設けられている前記層は、該層が前記切削工具のリップ即ち主たる切刃を画成するように、前記本体の厚さを横切る方向において互い違いに位置され、前記切削用差込み工具は概ね楔形またはV形を画成する1対の切刃を有し、前記切削用差込み工具は切妻形状にされ,ノッチまたはスロットが切刃の間において中心に形成されていることを特徴とする。」 と訂正する。 e.訂正事項e 特許明細書段落0004〜0010及び段落0012の各記載を、削除する。 f.訂正事項f 特許明細書段落0011を、 「本発明の回転切削工具のための切削用差込み工具を製作する方法は、 第1と第2の互いに向かい合った主面を備えた本体と、本体よりも硬度が大きく且つ各主面の一部分を画成する第1と第2の層とを有し、該第1と第2の層が前記本体の向かい合った両主面に位置されるブランクを用意する工程と、 互いに向かい合った主面に対応する第1と第2の側面を備えた本体を有する切削用差込み工具を画定するように、且つ該第1と第2の側面が前記第1と第2の各層から形成されて互い違いに配置された切刃を有するように、前記ブランクを切断する工程とを有し, 前記ブランクの第1と第2の層が前記ブランクの厚さを横切る方向において互い違いに配置されているものにおいて、前記第1と第2の層の隣接縁から等距離の線を中心として前記ブランクを切断する過程を有することを特徴とする。」 と訂正する。 g.訂正事項g 特許明細書段落0013の「初めに図1を参照つすると、多結晶ダイヤモンド(PCD)複合ブランク10は」とあるのを、「初めに図1を参照すると、多結晶質ダイヤモンド(PCD)複合ブランク10は」と訂正するものと認める。 h.訂正事項h 特許明細書段落0021の「本発明の切削工具はカラリング(collaring)及びきりもみの間」とあるのを、「本発明の切削用差込み工具を備えた切削工具はカラリング(collaring)及びきりもみの間」と訂正する。 2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 a.上記1)の訂正事項aは、特許時の特許明細書の請求項1〜3、及び請求項5〜12を削除し、同じく特許明細書の請求項4及び請求項12を、訂正後の請求項1及び請求項2として独立形式に直し、同じく特許明細書の請求項14及び請求項15を、訂正後の引用形式の請求項3及び請求項4の請求項として修正したものであるから、これらの訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 b.上記1)の訂正事項b〜f及びhは、上記訂正事項aにおける特許時の特許明細書の特許請求の範囲の訂正と整合するように訂正したものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。また、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 c.上記1)の訂正事項gは、誤記の訂正を目的とするものであって、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 3)むすび 以上のとおりであるから、上記訂正請求は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2〜3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについての判断 本件特許の訂正前の請求項1〜3、及び請求項5〜12に係る発明は、訂正の結果削除され、特許異議の申立ての対象が存在しないので、この特許異議の申立ては、不適法な申立てであって、その補正をすることができないものである。 したがって、本件特許異議の申立ては、特許法第120条の6第1項で準用する第135条の規定によって却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 回転切削工具のための切削用差込み工具及びその製作方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 回転切削工具のための切削用差込み工具であって、互いに向かい合った第1と第2の側面を備えた本体と、該第1と第2の側面のそれぞれにある凹所に位置し且つ該本体よりも硬度の大きい層とを有し、該層は該切削用差込み工具の中心線を越えて互いに重なり合い、前記切削用差込み工具は、その第1と第2の側面が回転切削工具の軸線に対して実質的に平行に回転切削工具の端に保持されるよう形づくられ、該第1と第2の側面のそれぞれに設けられている前記層は、該層が前記切削工具のリップ即ち主たる切刃を画成するように、前記本体の厚さを横切る方向において互い違いに位置され、前記切削用差込み工具は概ね楔形またはV形を画成する1対の切刃を有し、前記切削用差込み工具は切妻形状にされ、ノッチまたはスロットが切刃の間において中心に形成されている、該切削用差込み工具。 【請求項2】 回転切削工具のための切削用差込み工具を製作する方法であって、 第1と第2の互いに向かい合った主面を備えた本体と、本体よりも硬度が大きく且つ各主面の一部分を画成する第1と第2の層とを有し、該第1と第2の層が前記本体の向かい合った両主面に位置されるブランクを用意する工程と、 互いに向かい合った主面に対応する第1と第2の側面を備えた本体を有する切削用差込み工具を画定するように、且つ該第1と第2の側面が前記第1と第2の各層から形成されて互い違いに配置された切刃を有するように、前記ブランクを切断する工程とを有し、 前記ブランクの第1と第2の層が前記ブランクの厚さを横切る方向において互い違いに配置されているものにおいて、前記第1と第2の層の隣接縁から等距離の線を中心として前記ブランクを切断する過程を有する、該方法。 【請求項3】 請求項2に従う方法において、複数の山形形状にされた切削用差込み工具がV字形状のパターンを以て前記ブランクから切断される、該方法。 【請求項4】 請求項2または請求項3に従う方法において、前記ブランクは、本体よりも硬い第1と第2の層をその互いに向かい合った側面に有し、前記第1と第2の層は前記ブランクの厚さを横切る方向において互い違いに位置されそして切削用差込み工具の複数列が各第1と第2の層の隣接縁から等距離の線を中心として前記ブランクから切断される、該方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は回転切削工具用切削用差込み工具の製作方法及び切削用差込み工具それ自体に関する。 【0002】 【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】 中ぐり刃物頭のごとき回転切削工具であって後記本体を直径方向に通る線の各側にそれぞれ1個の腕が位置される1対の腕を画成する円筒形本体を有するものは既知である。各腕には多結晶質ダイヤモンド(PCD)材料から成る本体、例えばPCD層であるPCD成形体、をタングステン炭化物支持体上に有する切削インサートが取付けられる。ツイストドリルのごとき他形式の切削工具であって、1対の切削用差込み工具をツイストドリル本体端に多かれ少なかれ直径方向に向かされた座部に固定された概ねチゼル型のビットを有するものも既知である。 【0003】 【課題を解決するための手段】 本発明に従えば、回転切削工具のための切削用差込み工具は、互いに向かい合った第1と第2の側面を備えた本体と、該第1と第2の側面のそれぞれにある凹所に位置し且つ該本体よりも硬度の大きい層とを有し、該層は該切削用差込み工具の中心線を越えて互いに重なり合い、前記切削用差込み工具は、その第1と第2の側面が回転切削工具の軸線に対して実質的に平行に回転切削工具の端に保持されるよう形づくられ、該第1と第2の側面のそれぞれに設けられている前記層は、該層が前記切削工具のリップ即ち主たる切刃を画成するように、前記本体の厚さを横切る方向において互い違いに位置され、前記切削用差込み工具は概ね楔形またはV形を画成する1対の切刃を有し、前記切削用差込み工具は切妻形状にされ、ノッチまたはスロットが切刃の間において中心に形成されていることを特徴とする。 【0004】 【0005】 【0006】 【0007】 【0008】 【0009】 【0010】 【0011】 本発明の回転切削工具のための切削用差込み工具を製作する方法は、 第1と第2の互いに向かい合った主面を備えた本体と、本体よりも硬度が大きく且つ各主面の一部分を画成する第1と第2の層とを有し、該第1と第2の層が前記本体の向かい合った両主面に位置されるブランクを用意する工程と、 互いに向かい合った主面に対応する第1と第2の側面を備えた本体を有する切削用差込み工具を画定するように、且つ該第1と第2の側面が前記第1と第2の各層から形成されて互い違いに配置された切刃を有するように、前記ブランクを切断する工程とを有し、 前記ブランクの第1と第2の層が前記ブランクの厚さを横切る方向において互い違いに配置されているものにおいて、前記第1と第2の層の隣接縁から等距離の線を中心として前記ブランクを切断する過程を有することを特徴とする。 【0012】 【0013】 【実施例】 初めに図1を参照すると、多結晶質ダイヤモンド(PCD)複合ブランク10は円板の形状にされておりそして向かい合った概ね平坦な面即ち主面を有するタングステン炭化物本体12を有する、前記円板の各主面には、ストリップの形状にされたPCDの層14,16が前記平坦面のそれぞれの凹所6に形成される。層14及び16は平面図において概ね半円形である。層14及び16は前記円板の直径の反対両側に形成されるが、図2に明らかに示されるように、直径を僅かに越えて互いに重なり合う。 【0014】 図3(a)および図3の(b)は前記層14と層16とが重なり合わない前記PCDブランク10の修正形式を示す。 【0015】 次ぎに図4を参照すると、図1のPCDブランク10上に重ねられた切断パターンが図示される。前記切断パターンに従って、前記ブランク10の直径を中心として対称的に、前記ブランクの中心部分から複数の山形の切削用差込み工具18が、鼻端対尾端(nose-to-tail)のパターンで即ちV字形状に、レーザー切断される。単一の切削用差込み工具18が図4の(b)に斜視図で示される。該切削用差込み工具18は山形の向かい合った両翼にその中心線を越えて重なり合うダイヤモンド層を有することが確認され得る。 【0016】 図5及び図6はその上面のスロット即ち溝に形成されたPCD材料20及び22の1対のストリップと、その下面に形成されたスロット即ち溝に千鳥状に配置された1対のストリップ24及び26とを有するPCDブランクの一代替形式を図示する。図6に示されるように、2列の切削用差込み工具が、PCDブランクの向かい合った両側面に位置するPCD材料のストリップの隣接する重なり合う縁から等距離の線を中心として、単一のPCDブランクから切断され得る。これは図4の切断パターンに比し、材料の浪費がより少ない。 【0017】 前記山形の切削用差込み工具は比較的容易に製作され且つPCD材料の浪費を最少化する。言うまでもなく、切削用差込み工具は、例えば図9及び図10に示されるごとく、その他の形状を有し得る。図9の切削用差込み工具は切妻形状にされており、一方、図10の切削用差込み工具は概ね切妻形状であるが、その作用端部に制御スロットまたはノッチを形成されている。しかし、すべての図示された切削用差込み工具は概ね楔形またはV形を画成する切刃を有する。 【0018】 図7は中ぐり刃物頭体部28の斜視図であり、該中ぐり刃物頭体部28はその直径の各側に位置する向かい合って食違いにされた据付面34及び36を画成する1対の直立する腕30及び32を有する。図7の(b)に示されるように、切削用差込み工具18が腕30,32及びそれらのそれぞれの据付面34,36によって画成される座内に嵌装されたとき、前記切削用差込み工具18のタングステン炭化物面は据付面34,36に当接し、そして前記切削用差込み工具18は前記座内の適所に鑞付けされる。図8には組付けられた中ぐり刃物頭の上面図が示される。 【0019】 切削用差込み工具の主側面は中ぐり刃物頭の軸線に平行であることと、完成された中ぐり刃物頭のリップ即ち主切刃は、切削用差込み工具の本体の両側面におけるPCDの層14,16の上縁によって形成されることとが理解され得る。図4の(a)の切削用差込み工具18の場合においては、完成された中ぐり刃物頭は、図示されるごとく、中心タングステン炭化物部分の両側面にダイヤモンド材料の部分を有するチゼルエッジを有する。図示された切削用差込み工具は、それらが単一のユニットとして形成されることと、従って双子差込み工具を有する先行技術回転切削工具を破損させる恐れのあるねじり応力による破損に抵抗することとにおいて、先行技術切削用差込み工具と比較されるとき、特別の有利性を有する。 【0020】 本発明の切削用差込み工具は各種の切削工具、例えばツイストドリル、ルーフ及びフェース(roof and face)中ぐり刃物頭、エンドミル、ルータ及びミリングカッタ、に装着され得ることと、説明された実施例は純粋に例示的であることとは理解されるであろう。 【0021】 本発明の切削用差込み工具を備えた切削工具はカラリング(collaring)及びきりもみの間極度に安定性を有し、双翼先行技術切削工具と比較されるとき、殆どまたは全く振動を発生しないことが認められた。これはカラリングに関して特に注目に値する。何故ならば、振動及び非安定性は先行技術切削工具に関して発生するPCD切刃のチッピングの大部分の原因を成すからである。しかし、開示された本発明の原型切削工具はそのようなチッピングの徴候を示さない。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明に従う切削用差込み工具を形成するために使用される複合ダイヤモンド成形体ブランクの斜視図。 【図2】 図1のブランクの側面図。 【図3】 ブランクの二つの代替形式の側面図。 【図4】 (a)はブランクの切断パターンを示す、図1のブランクの上面図であり、(b)はブランクから切断された単一の切削用差込み工具の斜視図。 【図5】 本発明に従う切削用差込み工具を形成するためのブランクの他の一実施例の斜視図。 【図6】 その切断パターンを示す、図5のブランクの上面図。 【図7】 本発明に従う切削用差込み工具を有する中ぐり刃物頭の分解された及び組立られた斜視図。 【図8】 図7の中ぐり刃物頭の端面図。 【図9】 一代替切削用差込み工具の側面図。 【図10】 他の一代替切削用差込み工具の側面図。 【符号の説明】 10 多結晶ダイヤモンド(PCD)複合ブランク 12 タングステン炭化物本体 14 PCD層 16 PCD層 18 切削用差込み工具 20 PCD材料ストリップ 22 PCD材料ストリップ 24 PCD材料ストリップ 26 PCD材料ストリップ 28 中ぐり刃物頭体部 30 腕 32 腕 34 据付面 36 据付面 |
訂正の要旨 |
1 訂正の要旨 (1)訂正事項a 特許時の特許明細書における、特許請求の範囲の請求項1〜15の記載 「【請求項1】 回転切削工具のための切削用差込み工具であって、互いに向かい合った第1と第2の側面を備えた本体と、該第1と第2の側面のそれぞれにある凹所に位置し且つ該本体よりも硬度の大きい層とを有し、該層は該切削用差込み工具の中心線を越えて互いに重なり合い、前記切削用差込み工具は、その第1と第2の側面が回転切削工具の軸線に対して実質的に平行に回転切削工具の端に保持されるよう形づくられ、該第1と第2の側面のそれぞれに設けられている前記層は、該層が前記切削工具のリップ即ち主たる切刃を画成するように、前記本体の厚さを横切る方向において互い違いに位置される、切削用差込み工具。 【請求項2】 請求項1に従う切削用差込み工具において、前記切削用差込み工具は概ね楔形またはV形を画成する1対の切刃を有する、該切削用差込み工具。 【請求項3】 請求項2に従う切削用差込み工具において、前記切削用差込み工具は切妻形状にされる、該切削用差込み工具。 【請求項4】 請求項3に従う切削用差込み工具において、ノッチまたはスロットは切刃の間において中心に形成される、該切削用差込み工具。 【請求項5】 請求項2に従う切削用差込み工具において、前記切削用差込み工具は山形の形状にされる、該切削用差込み工具。 【請求項6】 請求項1の切削用差込み工具において、前記切削用差込み工具は.本体よりも硬さの大きな層の一部分から成るチゼルエッジを画成する、該切削用差込み工具。 【請求項7】 請求項1から請求項6の何れか一つの項に従う切削用差込み工具において、本体はタングステン炭化物からなり、層は多結晶質ダイヤモンドからなる、該切削用差込み工具。 【請求項8】 請求項1から請求項7の何れか一つの項に従う切削用差込み工具をその端に保持するように形成された体部を有する回転切削工具において、該体部は、前記切削用差込み工具が前記回転切削工具の端に直径方向に配置されるように、前記切削用差込み工具を固定する1対の向かい合った据付面を画成している、該回転切削工具。 【請求項9】 請求項8に従う回転切削工具において、前記体部が1対の直立する腕を有し、切削用差込み工具の各据付部分を固定する据付面を各腕が画成している、該回転切削工具。 【請求項10】 請求項9に従う回転切削工具において、前記切削用差込み工具の各据付部分が前記切削用差込み工具の本体によって形成されている、該回転切削工具。 【請求項11】 請求項8から請求項10の何れか一つの項に従う回転切削工具において、前記切削用差込み工具が鑞付けによって前記回転切削工具の体部の据付面に固定される、該回転切削工具。 【請求項12】 回転切削工具のための切削用差込み工具を製作する方法であって、第1と第2の互いに向かい合った主面を備えた本体と、本体よりも硬度が大きく且つ各主面の一部分を画成する第1と第2の層とを有し、該第1と第2の層が前記本体の向かい合った両主面に位置されるブランクを用意する工程と、互いに向かい合った主面に対応する第1と第2の側面を備えた本体を有する切削用差込み工具を画定するように、且つ該第1と第2の側面が前記第1と第2の各層から形成されて互い違いに配置された切刃を有するように、前記ブランクを切断する工程とを有する、該回転切削工具のための切削用差込み工具を製作する方法。 【請求項13】 請求項12に従う方法であって、前記ブランクの第1と第2の層が前記ブランクの厚さを横切る方向において互い違いに配置されているものにおいて、前記第1と第2の層の隣接縁から等距離の線を中心として前記ブランクを切断する過程を有する、該方法。 【請求項14】 請求項12または請求項13に従う方法において、複数の山形形状にされた切削用差込み工具がV字形状のパターンを以て前記ブランクから切断される、該方法。 【請求項15】 請求項13または請求項14に従う方法において、前記ブランクは、本体よりも硬い第1と第2の層をその互いに向かい合った側面に有し、前記第1と第2の層は前記ブランクの厚さを横切る方向において互い違いに位置されそして切削用差込み工具の複数列が各第1と第2の層の隣接縁から等距離の線を中心として前記ブランクから切断される、該方法。」 を、 「【請求項1】 回転切削工具のための切削用差込み工具であって.互いに向かい合った第1と第2の側面を備えた本体と、該第1と第2の側面のそれぞれにある凹所に位置し且つ該本体よりも硬度の大きい層とを有し、該層は該切削用差込み工具の中心線を越えて互いに重なり合い、前記切削用差込み工具は、その第1と第2の側面が回転切削工具の軸線に対して実質的に平行に回転切削工具の端に保持されるよう形づくられ、該第1と第2の側面のそれぞれに設けられている前記層は、該層が前記切削工具のリップ即ち主たる切刃を画成するように、前記本体の厚さを横切る方向において互い違いに位置され、前記切削用差込み工具は概ね楔形またはV形を画成する1対の切刃を有し,前記切削用差込み工具は切妻形状にされ、ノッチまたはスロットが切刃の間において中心に形成されている、該切削用差込み工具。 【請求項2】 回転切削工具のための切削用差込み工具を製作する方法であって、第1と第2の互いに向かい合った主面を備えた本体と、本体よりも硬度が大きく且つ各主面の一部分を画成する第1と第2の層とを有し、該第1と第2の層が前記本体の向かい合った両主面に位置されるブランクを用意する工程と、互いに向かい合った主面に対応する第1と第2の側面を備えた本体を有する切削用差込み工具を画定するように、且つ該第1と第2の側面が前記第1と第2の各層から形成されて互い違いに配置された切刃を有するように、前記ブランクを切断する工程とを有し、前記ブランクの第1と第2の層が前記ブランクの厚さを横切る方向において互い違いに配置されているものにおいて、前記第1と第2の層の隣接縁から等距離の線を中心として前記ブランクを切断する過程を有する、該方法。 【請求項3】 請求項2に従う方法において、複数の山形形状にされた切削用差込み工具がV字形状のパターンを以て前記ブランクから切断される、該方法。 【請求項4】 請求項2または請求項3に従う方法において、前記ブランクは、本体よりも硬い第1と第2の層をその互いに向かい合った側面に有し、前記第1と第2の層は前記ブランクの厚さを横切る方向において互い違いに位置されそして切削用差込み工具の複数列が各第1と第2の層の隣接縁から等距離の線を中心として前記ブランクから切断される、該方法。」 と訂正する。 上記特許請求の範囲の訂正個所は次の通りである。 特許時の請求項1〜3、及び請求項5〜12を削除し、特許時の請求項4、13、14及び15を、それぞれ訂正後の請求項1〜4として、このうち特許時の請求項4及び13を独立形式に訂正した。 (2)訂正事項b 特許明細書の発明の名称「回転切削工具とその切削用差込み工具及びその製作方法」を、「回転切削工具のための切削用差込み工具及びその製作方法」と訂正する。 (3)訂正事項c 特許明細書段落0001の「本発明は回転切削工具用切削用差込み工具の製作方法、切削用差込み工具を有する回転切削工具及び切削用差込み工具それ自体に関する。」を、「本発明は回転切削工具用切削用差込み工具の製作方法及び切削用差込み工具それ自体に関する。」と訂正する。 (4)訂正事項d 特許明細書段落0003を 「 【課題を解決するための手段】 本発明に従えば、回転切削工具のための切削用差込み工具は、互いに向かい合った第1と第2の側面を備えた本体と、該第1と第2の側面のそれぞれにある凹所に位置し且つ該本体よりも硬度の大きい層とを有し、該層は該切削用差込み工具の中心線を越えて互いに重なり合い、前記切削用差込み工具は、その第1と第2の側面が回転切削工具の軸線に対して実質的に平行に回転切削工具の端に保持されるよう形づくられ、該第1と第2の側面のそれぞれに設けられている前記層は、該層が前記切削工具のリップ即ち主たる切刃を画成するように、前記本体の厚さを横切る方向において互い違いに位置され、前記切削用差込み工具は概ね楔形またはV形を画成する1対の切刃を有し、前記切削用差込み工具は切妻形状にされ,ノッチまたはスロットが切刃の間において中心に形成されていることを特徴とする。」 と訂正する。 (5)訂正事項e 特許明細書段落0004〜0010及び段落0012の各記載を、削除する。 (6)訂正事項f 特許明細書段落0011を、 「本発明の回転切削工具のための切削用差込み工具を製作する方法は、 第1と第2の互いに向かい合った主面を備えた本体と、本体よりも硬度が大きく且つ各主面の一部分を画成する第1と第2の層とを有し、該第1と第2の層が前記本体の向かい合った両主面に位置されるブランクを用意する工程と、 互いに向かい合った主面に対応する第1と第2の側面を備えた本体を有する切削用差込み工具を画定するように、且つ該第1と第2の側面が前記第1と第2の各層から形成されて互い違いに配置された切刃を有するように、前記ブランクを切断する工程とを有し, 前記ブランクの第1と第2の層が前記ブランクの厚さを横切る方向において互い違いに配置されているものにおいて、前記第1と第2の層の隣接縁から等距離の線を中心として前記ブランクを切断する過程を有することを特徴とする。」 と訂正する。 (7)訂正事項g 特許明細書段落0013の「初めに図1を参照つすると、多結晶ダイヤモンド(PCD)複合ブランク10は」とあるのを、「初めに図1を参照すると、多結晶質ダイヤモンド(PCD)複合ブランク10は」と訂正するものと認める。 (8)訂正事項h 特許明細書段落0021の「本発明の切削工具はカラリング(collaring)及びきりもみの間」とあるのを、「本発明の切削用差込み工具を備えた切削工具はカラリング(collaring)及びきりもみの間」と訂正する。 |
異議決定日 | 2001-08-13 |
出願番号 | 特願平3-310753 |
審決分類 |
P
1
652・
121-
XA
(B23B)
P 1 652・ 113- XA (B23B) |
最終処分 | 決定却下 |
前審関与審査官 | 鈴木 充 |
特許庁審判長 |
小林 武 |
特許庁審判官 |
三原 彰英 鈴木 孝幸 |
登録日 | 1999-08-20 |
登録番号 | 特許第2968878号(P2968878) |
権利者 | デ ビアス インダストリアル ダイアモンド デイビジヨン (プロプライエタリイ) リミテツド |
発明の名称 | 回転切削工具のための切削用差込み工具及びその製作方法 |
代理人 | 浅村 皓 |
代理人 | 浅村 皓 |