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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  D04B
審判 全部申し立て 2項進歩性  D04B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  D04B
管理番号 1051436
異議申立番号 異議2000-72680  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-03-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-07-11 
確定日 2001-09-17 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2996633号「衣料用シームレス経編地」の請求項1〜8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2996633号の請求項1〜6に係る特許を維持する。 
理由 A.手続きの経緯
本件特許第2996633号の発明は、平成9年9月2日に特許出願され、平成11年10月29日にその特許の設定登録がなされたが、その後、株式会社タケダレース及び日本マイヤー株式会社より特許異議の申立てがなされ、平成13年1月29日付けで取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年4月9日に特許異議意見書と訂正請求書(補正有り)が提出されたものである。

B.訂正の適否についての判断
1、訂正請求書に対する補正の適否について
本件訂正請求書に対して、平成13年6月25日付けで手続補正書が提出されているので補正の適否について検討する。
当該手続補正書の補正の内容は、訂正請求書の「(1)訂正の内容の(f)」における「生地部は乱止め組織」という記載(2個所)を、「生地部は鎖編み・乱止め組織」と補正するものであるが、もともと本件明細書段落【0005】には「生地部は乱止め組織」という記載はなく「生地部は鎖編み・乱止め組織」と記載されているから、当該補正は、単に訂正請求書の誤記を補正するものであって、訂正請求書の要旨を変更するものではなく、特許法第131条第2項の規定に適合するので、当該補正を認める。
2、訂正の目的及び内容
(1)特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として、特許請求の範囲の記載、
「【請求項1】ラッセル経編地であって、前記経編地は一枚の連続した衣料用編地であり、編み目の進行方向に沿って生地部とレース部が一体的に連結して編まれてなり、かつ前記生地部は鎖編み・乱止め組織であることを特徴とする衣料用シームレス経編地。
【請求項2】生地部の幅がレース部の幅の3倍以上である請求項1に記載の衣料用シームレス経編地。
【請求項3】レース部が編み目の進行方向に沿って複数形成されている請求項1又は2に記載の衣料用シームレス経編地。
【請求項4】経編地が、非弾性糸を用いた編地(リジット組織)、一方向に弾性糸を用いた編地(ワンウェイ組織)及び二方向に弾性糸を用いた編地(ツーウェイ組織)から選ばれる少なくとも一つの編地組織である請求項1〜3のいずれかに記載の衣料用シームレス経編地。
【請求項5】ワンウェイ組織またはツーウエイ組織に用いる糸が、弾性繊維糸に非弾性繊維糸を巻き付けたカバード糸である請求項4に記載の衣料用シームレス経編地。
【請求項6】生地部が無地又は無地柄の編地である請求項1〜5のいずれかに記載の衣料用シームレス経編地。
【請求項7】レース部が、柄又は細幅レースの編地である請求項1〜6のいずれかに記載の衣料用シームレス経編地。
【請求項8】レース部が隣接する少なくとも一方の生地部との境界部の編み組織から糸抜きされて端部が形成されている請求項1〜7のいずれかに記載の衣料用シームレス経編地。」を、
【請求項1】における「生地部」の構成を「鎖編み・乱止め組織」から「鎖編み・乱止め組織からなる地組織で形成された無地又は無地柄の編地」に、レース部の構成を「地組織にレース模様が形成された柄又は細幅レースの編地」に訂正し、特許請求の範囲【請求項6】及び【請求項7】を削除し、【請求項8】を【請求項6】として、
「【請求項1】ラッセル経編地であって、前記経編地は一枚の連続した衣料用編地であり、編み目の進行方向に沿って生地部とレース部が一体的に連結して編まれてなり、かつ前記生地部は鎖編み・乱止め組織からなる地組織で形成された無地又は無地柄の編地であり、前記レース部は前記地組織にレース模様が形成された柄又は細幅レースの編地であることを特徴とする衣料用シームレス経編地。
【請求項2】生地部の幅がレース部の幅の3倍以上である請求項1に記載の衣料用シームレス経編地。
【請求項3】レース部が編み目の進行方向に沿って複数形成されている請求項1又は2に記載の衣料用シームレス経編地。
【請求項4】経編地が、非弾性糸を用いた編地(リジット組織)、一方向に弾性糸を用いた編地(ワンウェイ組織)及び二方向に弾性糸を用いた編地(ツーウェイ組織)から選ばれる少なくとも一つの編地組織である請求項1〜3のいずれかに記載の衣料用シームレス経編地。
【請求項5】ワンウェイ組織またはツーウエイ組織に用いる糸が、弾性繊維糸に非弾性繊維糸を巻き付けたカバード糸である請求項4に記載の衣料用シームレス経編地。
【請求項6】レース部が隣接する少なくとも一方の生地部との境界部の編み組織から糸抜きされて端部が形成されている請求項1〜5のいずれかに記載の衣料用シームレス経編地。」と訂正する。
(以下、訂正後の請求項1の発明を「本件訂正発明1」といい、同請求項2以降の発明を順次「本件訂正発明2」などという)
(2)特許請求の範囲の訂正にともない、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを整合させるため明りょうでない記載の釈明を目的として、明細書の、
ア.段落【0005】欄中の記載、
「生地部は鎖編み・乱止め組織であることを特徴とする。」を、
「生地部は鎖編み・乱止め組織からなる地組織で形成された無地又は無地柄の編地であり、前記レース部は前記地組織にレース模様が形成された柄又は細幅レースの編地であることを特徴とする。」と訂正する。
イ.段落【0010】欄中の記載、
「編地であってもよい。」を、
「編地である。」と訂正する。
ウ.段落【0010】欄中の記載、
「編地であることが好ましい。」を、
「編地である。」と訂正する。
(3)誤記の訂正を目的として、明細書の、
段落【0014】、段落【0016】及び段落【0018】欄中の記載、
「MRSEGF」を、
「MRSEJF」と訂正する。
3、訂正の目的の適否及び拡張・変更の存否
上記(1)の訂正における、【請求項1】の訂正は、生地部の構成を「鎖編み・乱止め組織」から「鎖編み・乱止め組織からなる地組織で形成された無地又は無地柄の編地」に限定し、レース部の構成を「前記地組織にレース模様が形成された柄又は細幅レースの編地」に限定するものであから、特許請求の範囲を減縮するものである。
また、生地部が「鎖編み・乱止め組織からなる地組織で形成された無地又は無地柄の編地」であること及びレース部が「前記地組織にレース模様が形成された柄又は細幅レースの編地」であることは、訂正前の特許請求の範囲の請求項6、7及び図面(図1〜3)などに記載されている。
特許請求の範囲【請求項6】及び【請求項7】の削除は特許請求の範囲の減縮であり、項番号の訂正は明りょうでない記載の釈明である。
上記(2)ア〜ウの訂正は、減縮訂正された特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを整合させるための訂正であって、それぞれ明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。
上記(3)の訂正は、特許権者の提出した参考資料1(KARL MAYER社 ラッセル編機パンフレット)の記載からみても、誤記の訂正であると認められる。
そして、上記(1)、(2)ア〜ウ及び(3)の各訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、また、これらの訂正は、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
4、むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。

C.特許異議の申立についての判断
1、特許異議申立人 日本マイヤー株式会社の申立てに対して
(1) 特許異議申立の理由の概要
特許異議申立人 日本マイヤー株式会社(以下、申立人という)は、証拠として甲第1〜26号証及び検証申出書を提出し、概略次の主張をしている。
本件明細書の記載には不備があり、訂正前の本件請求項1に係る発明は、特許法第36条4項及び第6項第2号の規定に違反して特許されたものであり(主張1)、訂正前の本件請求項1〜10に係る発明は、甲第8〜26号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである(主張2)から、訂正前の本件請求項1〜10に係る特許は取り消されるべきものである。
(2)、申立人が提出した甲号証の記載事項
甲第1号証:「広辞苑」 617頁 新村出編 1991年11月15日 (株)岩波書店発行
「きじ ・・・布・織物などの地質。また、布、織物。などの加工を施すための材料織物。・・・」
甲第2号証:「JIS工業用語大辞典 第4版」 2034頁 1995年11月20日(財)日本規格協会発行
「レース lace 糸をより合わせ、組み合わせ、結び、編み合わせ、又は生地にししゅうするなどして作った透孔のある布地及びこれに類する布地の総称」
甲第3号証の1:「広辞苑」 2719頁 新村出編 1991年11月15日 (株)岩波書店発行
「レース【lace】糸を編み、組み合わせ、より合わせるなどして、種々の透かし模様を作った布地や編地。・・・」
甲第3号証の2:特許第2941803号公報(平成11年8月30日発行)
平成11年2月12日出願の「シームレス経編地の製造方法」と題する発明
甲第4号証:「ラッセル入門」 220頁、227頁及び239頁 昭和37年12月20日(株)絹人絹特報発行
「1枚おさの編地は薄く、伸縮性が大で、ほぐれやすい性質があるので、衣料としては適さない。しかしラッセル・レースの地組織に用いられることが多い。」(220頁下から7〜5行)
「3枚おさを使用するものは、3枚のうち2枚のおさで地組織を編み、他の1枚で立毛をつくり起毛して用いる。」(227頁18〜19行)
「ラッシェル編機でよこ入りするには、少くとも2組のガイド・バーが必要で、この内1組でよこ入れを行う。」(239頁18〜19行)
甲第5号証:「JIS用語辞典 繊維編」 160頁、168頁付図及び199頁 1987年7月15日(財)日本規格協会発行
「2-19 鎖編 くさりあみ 毎コース(1-10)同一針にラッピング(4-14)させた鎖状の編目(1-2)のたて編の組織。付図2-14」(160頁 繊維用語メリヤス部門 168頁)
「404 地糸 じいと 糸レースの地を構成する糸。」(199頁 繊維用語レース部門)
「407 鎖編 地組織 じそしき 地糸の組織。」(199頁 繊維用語レース部門)
甲第6号証:「経編全集」 58頁 昭和57年10月1日 (株)繊維技術ジャーナル発行
「4.5.1 鎖編(ピラーステッチ、チェーンステッチ) 毎コース、同一のニードルにオーバーラップしてチェーン状のループを形成する編地の構成単位であり、単独では平編地を構成しない(図4-20)」(第58頁)
甲第7号証の1:本件特許公報の図1〜図7
甲第7号証の2:特許第2941803号公報の図4〜7
甲第8号証:「LIFESTYLE AND LACE [暮らしとレース]」 1996年10月5日 全日本レース商業会発行
「Classification(レースの区分)・・・巾や大きさによってリバーレース、ラッセルレース、トーションレースいずれもだいたい同じ様な用途に利用されています。・・・
<柄や模様構成による呼び名>●オールオーバーレース、ボーダーレース、スポットテース・・・」(第2頁右欄)
「ラッセルレース ラッセルレースはリバーレースに類似した製品ですが、ラッセルレース機は経編機の一種で、柄模様は編み組織からできています。同じ糸レースでも撚り合わせ組織のリバーレースとは、まったく異なったものです。ラッセルレース機は近年急速な技術開発が行われ、柄出しの範囲が著しく広がるとともに、繊細で高品位なレースが作られるようになりました。」(第17頁)
「下着の写真及び●落下板ラッセルレース・・・地組織はくさり編みですが、柄糸を地組織に編込まず、両端のみで止めることによって柄糸を浮かせたラッセルレースのことです。」(第21〜22頁)
甲第9号証の1:実公昭62一11992号公報
「帯状素材の一側をレース組織に、他側を、ゴム状繊維を波状に浮き出させた滑り止め組織に、且つ前記レース組織と前記滑り止め組織間にすかしを形成するように、全体を前記素材の長手方向に伸縮自在に編成した婦人下着類用縁素材。」(実用新案登録請求の範囲)
「これによってレース組織と滑り止め組織を別個に作製する必要がなく、しかもガードル主材への縫い付け作業もその工程を半減できるという利点をもたらしたのである。」(第1頁左欄26行〜右欄1行)
甲第9号証の2:実開昭56-160918号公報
「レース地又は網地とそれらの幅方向両端に設けるトリミング部とを一体に編んで複数枚のストールを作成すると共に隣合うストール間を捨て糸、つなぎ糸等の接続糸で連結してなるストール。」(実用新案登録請求の範囲)
「従来のストールは第1図に示す如く、所定幅のレース地又は網地Aの幅方向両側B、Cに別途編んだトリミングレースDを縫いつけていた。
この場合、レース地又は網地Aは、幅の広いレース地や網地からストール用の所望幅に切取らなければならないため、大量にストールを作る場合は切取り作業が大変であり、またトリミング用レースDを別途編まなければならず、しかもそれをレース地や網地Aに縫いつけなければならないためかなり多くの手間がかかり、ひいては生産効率が悪く、コスト高になるという欠点があった。
本考案はこれらの欠点を一掃したもので、以下これを第3図の一実施例に基づき詳細に説明する。」(第1頁下4行〜第2頁9行)
「本考案は叙上のように、トリミング部(2)をレース地又は網地(1)と一体に編んであるため、従来のようにレース地を切断したり、それにトリミング用レースを縫いつけたりする必要が一切ないため作業能率が極めて向上する。」(第3頁15〜19行)
甲第10号証:登録意匠第653171号公報
意匠に係る物品 細巾レース地
<申立人は、当該甲第10号証に係る「細巾レース地」の検証を申し出ている>
甲第11号証の1:「Tntimo piu mare」 1993年1月号 表紙、中表紙、奥付、40頁、54頁
甲第11号証の2:「BFIA」 1994年11月号 表紙、奥付け、13頁
甲第11号証の3:「Tntimo piu mare」 1993年6月号 表紙、中表紙、奥付、その他の写真の頁2枚
これら甲第11号証には、「レース部分を有するショーツ、ボディスーツ、スリップ等」の記載が認められる。
甲第12号証:「ブリュッセル王立美術歴史博物館所蔵、ヨーロッパのレース」1987年 京都国立近代美術館発行 6頁、9〜16頁、115頁、117頁、119〜120頁、123〜125頁、128〜129頁、134頁、168頁
「レース及びレース製の衣料品」の記載が認められる。
甲第13号証:「kettenwirk-praxis」90〜91頁 1996年4月〜6月号 カールマイヤー社発行
「レースのカーテン」の記載が認められる。
甲第14号証:「kettenwirk-praxis」85〜86頁、89〜92頁 1996年7月〜9月号 カールマイヤー社発行
「レースのカーテン」の記載が認められる。
甲第15号証:「kettenwirk-praxis」99〜100頁 1996年10月〜12月号、カールマイヤー社発行
「レースのカーテン」の記載が認められる。
甲第16号証:「kettenwirk-praxis」91頁、93頁、95頁、99頁 1997年1月〜3月号 カールマイヤー社発行
「レースのカーテン」の記載が認められる。
甲第17号証:特開昭60-65162号公報
「ほつれにくい経編レース地」と題する発明。
甲第18号証:登録意匠第735051号公報
意匠に係る物品 細幅レース
甲第19号証:「経編全集 Warp Knitting」79頁 昭和57年10月1日 (株)繊維技術ジャーナル発行
「エラスチック使用の弾性組織」についての記載が認められる。
甲第20号証:特開平7-70893号公報
「ポリウレタン弾性糸のような弾性繊維の裸糸又は該裸糸に、合成繊維、半合成繊維、再生繊維などのフィラメント糸、紡績糸を被覆した複合弾性糸が好ましく、この被覆糸としては綿糸が好ましい。」(第6頁右欄23〜26行)
甲第21号証:特開平9一119046号公報
「複数のウェールの少なくとも一部の夫々に、複数の伸縮糸を共に編み込むとともに、前記複数の伸縮糸の内の一部を、少なくとも一部のコースにおいて複数の前記ウェールに渡って編み込んで」(第3頁左欄22〜26行)
甲第22号証:特公昭62-60490号公報
「複合弾性糸は、第2弾性糸を芯としてその周囲に通常の繊維糸条をら線状に巻きつけたカバリング糸」(第2頁左欄37〜39行)
甲第23号証:実公平8一394号公報
「エラスティック・カバード糸」(第3頁左欄8行)
甲第24号証:実公昭53-8784号公報
「この組織は糸5が単に耳部の鎖編ウエールに対して挿入式に編込まれているだけであり、しかもそのウエール数は極少数であるから、この糸に対し適度の距離をおいて鋏を入れておき、一端からこの糸5を引き抜けば容易に隣接する細幅レースは分離することができる。」(第1頁右欄5〜10行)
甲第25号証:実開昭62-162283号公報
「左右の片を綴り糸で綴ったレーステープを介して適数の短冊状単位布片を縫成しとことを特徴とするカーテン地。」(実用新案登録請求の範囲)
甲第26号証:実公昭63一11196号公報
「抜き糸41を除去することによって第2図に示す一定横幅の地編糸組織1,1からなるテープに分かれるものである。」(第2頁右欄11〜13行)
(3)本件発明
本件発明は、適法に訂正されて、補正後の特許請求の範囲1〜6に記載されたとおりのものである(上記訂正発明1〜6参照)。
(4)判断
ア.主張1に対して
a.申立人は、訂正前の本件請求項1の発明などにおける「生地部」と「レース部」という用語の技術的意味・内容が、甲第1号証などに記載されている「生地」と「レース」という用語の説明と矛盾しており、それらの技術的な意味が不明である旨の主張をしている。
しかしながら、本件訂正発明1などにおける「生地部」と「レース部」は、「ラッシェル編み機を用いて形成されたシームレス経編地」における「生地部」と「レース部」であって、これらの用語の解釈にあたり、甲第1号証などに記載されている一般的な「生地」と「レース」に対する説明を適用することは合理的でない。
そして、本件訂正発明1などに記載されている「生地部」と「レース部」は、本件の発明の詳細な説明及び図面(第1〜3図)の記載からみて、ラッシェル編み機を用いて形成されたシームレス経編地において、地組織にレース模様を形成した部分が「レース部」であり、レース模様がない部分、すなわち地組織のままの部分が「生地部」であることは明確であるから、本件訂正発明1などにおける「生地部」と「レース部」の用語の技術的な意味が不明であるとはいえない。
b.また、申立人は、訂正前の本件請求項1の発明などに記載されている生地部を構成する「鎖編み・乱止め組織」は、甲第5号証などに記載されている「鎖編み」の説明からみて、また「乱止め組織」なる用語が経編技術の分野において使用されていないから、その技術的な意味が不明である旨の主張をしている。
しかしながら、本件訂正発明1などにおける「鎖編み」は、「ラッシェル編み機を用いて形成されたシームレス経編地」における「鎖編み」であって、この用語の解釈にあたり、甲第5号証などに記載されている「鎖編み」の一般的な説明を適用することは合理的でない。
そして、本件訂正発明1などに記載されている「鎖編み・乱止め組織」は、本件の発明の詳細な説明の項に、「前記において、鎖編み組織とは通常の経編地のプレーン(平坦)な編み組織のことであり、また乱止め組織とは例えば編目のループの一つに引っかけができてもその破壊が伝播しない組織をいい、」(段落【0005】中)と明確に説明されているから、その用語の技術的な意味が不明であるとはいえない。
したがって、本件明細書の記載には、申立人の主張するような不備があるとはいえない。
イ.主張2に対して
(本件訂正発明1に対して)
申立人は、訂正前の本件請求項1の発明は、甲第8〜17号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している。
本件請求項1の発明は訂正され、上記の「ラッセル経編地であって、前記経編地は一枚の連続した衣料用編地であり、編み目の進行方向に沿って生地部とレース部が一体的に連結して編まれてなり、かつ前記生地部は鎖編み・乱止め組織からなる地組織で形成された無地又は無地柄の編地であり、前記レース部は前記地組織にレース模様が形成された柄又は細幅レースの編地であることを特徴とする衣料用シームレス経編地。(本件訂正発明1)」であって、特に次の3つの要件を具備するものである。
すなわち、本件訂正発明1は、「ラッセル経編地であること」(以下、この要件を「ラッセル経編地要件」という)、「編み目の進行方向に沿って生地部とレース部が一体的に連結して編まれていること」(以下、この要件を「一体連結要件」という)及び「生地部は鎖編み・乱止め組織からなる地組織で形成された無地又は無地柄の編地であり、レース部は前記地組織にレース模様が形成された柄又は細幅レースの編地であること」(以下、この要件を「生地部・レース部構造要件」という)という3つの要件を同時に具備するものである。
そこで、本件訂正発明1(前者)と甲第8〜17号証に記載された発明とを対比すると、甲第8〜17号証には、それら3つの要件を同時に備えた発明については記載されておらず、また、それら3つの要件を同時にそなえることを示唆する記載も認められない。
すなわち、甲第8号証には、ラッセルレース機により編まれたラッセル経編地(ラッセルレース)について記載されているものの、前者の「一体連結要件」及び「生地部・レース部要件」についての記載はなく、それらを示唆する記載も見られない。
甲第9号証の1には、婦人下着類用縁素材の発明が記載されており、レース組織2に滑り止め組織3とが一体に連結されているけれども、この婦人下着類用縁素材は婦人下着類の縁に縫い付けられるものであるから、滑り止め組織3が前者における生地部に相当するものであるとはいえず、甲第9号証の1には前者の3つの要件のいずれもが開示されていない。
甲第9号証の2には、一見、前者の生地部に相当する様に見える網地Aと、レース部に相当する様に見えるトリミング用レースDとが一体的に連結して編まれているストールの発明が記載されているけれども、このストールがラッセル経編地からなるものであるとは記載されていないし、また、網地Aとトリミング用レースDの編み構造についてはまったく記載されていないので、結局、甲第9号証の2には前者の「ラッセル経編地要件」及び「生地部・レース部構造要件」については記載されておらず、それらを示唆する記載もないと認められる。
甲第10〜16号証には、婦人下着類などの各種レース製品が記載されているけれども、これらのレース製品がラッセル経編地からなるものであるとは記載されていないし、これらのレース製品はいずれも、前者の生地部に相当する部分のないレース(総レース)からなるものであると認められるから、これら甲第10〜16号証には、前者の3つの要件のいずれについても記載されておらず、それらを示唆する記載もないと認められる。
なお、申立人は甲第10号証(登録意匠第653171号公報 意匠に係る物品 細巾レース地)の検証を申し出ているが、当合議体において特許庁保存の登録意匠第653171号「細巾レース地」の原本を参照したので、別途の検証は実施しない。
甲第17号証には、ほつれにくい経編レース地の発明が記載されているけれども、このレース地はミシンなどを用いて下着などの縁部に取り付けるものであるから、前者の3つの要件のいずれについても記載されておらず、それらを示唆する記載もないと認められる。
そして、本件訂正発明1は、上記3つの要件を含む特許請求の範囲請求項1記載の要件を備えたことにより、本件特許明細書記載のとおりの効果を奏し得ているものと認められる。
したがって、本件訂正発明1は、甲第8〜17号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(本件訂正発明2〜6に対して)
申立人は、訂正前の本件請求項2〜8の発明は、上記甲第8〜17号証に加え甲第18〜26号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであると主張しているけれども、訂正後の本件訂正発明2〜6は、本件訂正発明1の「衣料用シームレス経編地」に対して、さらに技術的な限定を付加した発明であり、しかも、申立人の提出した甲第18〜26号証を検討しても、本件訂正発明1の前記3つの要件を備えた発明については記載されておらず、それら3つの要件を同時に備えることを示唆する記載もないと認められるから、結局、本件訂正発明2〜6は、「本件訂正発明1に対して」の項に記載したのと同様の理由により、甲第8〜26号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
2、特許異議申立人 株式会社タケダレースの申立に対して
特許異議申立人 株式会社タケダレースの提出した証拠及び申立の理由は、上記特許異議申立人 日本マイヤー株式会社の提出した証拠及び申立の理由とまったく同じものである。
したがって、特許異議申立人 株式会社タケダレースの特許異議申立に対する判断は、特許異議申立人 日本マイヤー株式会社の申立に対する上記判断と同じである。
3、むすび
上記のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1〜6の発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1〜6の発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
衣料用シームレス経編地
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 ラッセル経編地であって、前記経編地は一枚の連続した衣料用編地であり、編み目の進行方向に沿って生地部とレース部が一体的に連結して編まれてなり、かつ前記生地部は鎖編み・乱止め組織からなる地組織で形成された無地又は無地柄の編地であり、前記レース部は前記地組織にレース模様が形成された柄又は細幅レースの編地であることを特徴とする衣料用シームレス経編地。
【請求項2】 生地部の幅がレース部の幅の3倍以上である請求項1に記載の衣料用シームレス経編地。
【請求項3】 レース部が編み目の進行方向に沿って複数形成されている請求項1又は2に記載の衣料用シームレス経編地。
【請求項4】 経編地が、非弾性糸を用いた編地(リジット組織)、一方向に弾性糸を用いた編地(ワンウェイ組織)及び二方向に弾性糸を用いた編地(ツーウェイ組織)から選ばれる少なくとも一つの編地組織である請求項1〜3のいずれかに記載の衣料用シームレス経編地。
【請求項5】 ワンウェイ組織またはツーウェイ組織に用いる糸が、弾性繊維糸に非弾性繊維糸を巻き付けたカバード糸である請求項4に記載の衣料用シームレス経編地。
【請求項6】 レース部が隣接する少なくとも一方の生地部との境界部の編み組織から糸抜きされて端部が形成されている請求項1〜5のいずれかに記載の衣料用シームレス経編地。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、生地部とレース部が一体的に連結して編まれてなる衣料用シームレス経編地に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の経編地は、例えばラッセル編み機を用いて、生地部とレース部がそれぞれ別個に編まれていた。そのために、例えば女性の下着(ショーツ、スリップ等)の身生地部の周辺にレース部を取り付ける場合、もっぱら縫製手段によって一体化していた。
【0003】
しかしながら、縫製を行うと縫製部分は必ず身生地部分及びレース部分の厚さより厚くなるため、着心地が良くないうえ、縫製線が外に突出したりして、ファッション的、デザイン的にも問題があった。そのうえ従来の経編機では、生地部とレース部を一体的に編もうとしても、生地部とレース部とでは編み目密度が異なるため、編み速度も異なり、均一に編成できないという問題もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は前記従来の問題を解決するため、生地部とレース部が一体的に連結して編まれてなる衣料用シームレス経編地を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明の衣料用シームレス経編地は、ラッセル経編地であって、前記経編地は一枚の連続した衣料用編地であり、編み目の進行方向に沿って生地部とレース部が一体的に連結して編まれてなり、かつ前記生地部は鎖編み・乱止め組織からなる地組織で形成された無地又は無地柄の編地であり、前記レース部は前記地組織にレース模様が形成された柄又は細幅レースの編地であることを特徴とする。前記において、鎖編み組織とは通常の経編地のプレーン(平坦)な編み組織のことであり、また乱止め組織とは例えば編目のループの一つに引っかけができてもその破壊が伝播しない組織をいい、どちらもそれ自体は当業界では良く知られている組織である。
【0006】
前記した本発明の衣料用シームレス経編地においては、生地部の幅がレース部の幅の3倍以上であることが好ましい。下着などのインナーウェアに用いる場合、身生地部を内側に広く用い、レース部を外側の狭い部分に配置するのに適しているからである。
【0007】
また前記した本発明の衣料用シームレス経編地においては、レース部が編み目の進行方向に沿って複数形成されていることが好ましい。下着などのインナーウェアに用いる場合、左右対象配置して用いるのに適しているからである。
【0008】
また前記した本発明の衣料用シームレス経編地においては、経編地が、非弾性糸を用いた編地(リジット)、一方向に弾性糸を用いた編地(ワンウェイ)及び二方向に弾性糸を用いた編地(ツーウェイ)から選ばれる少なくとも一つの編地であることが好ましい。リジットの場合は、ブラウス等に有用であり、ワンウェイ又はツーウェイは下着などのインナーウェアに有用である。
【0009】
また前記した本発明の衣料用シームレス経編地においては、生地部の地組織が、弾性繊維糸に非弾性繊維糸を巻き付けたカバード糸であることが好ましい。好ましい弾性と肌ざわり(タッチ)に優れるからである。ここで非弾性繊維としては、ナイロン、ポリエステル等の合成繊維フィラメント、ナイロン、ポリエステル、アクリル等合成繊維の短繊維の紡績糸、レーヨン等の化学繊維糸、木綿、麻、絹、ウールなどの天然繊維糸、ポリエステル/木綿、レーヨン/木綿などの混紡糸など任意の糸を用いることができる。
【0010】
また前記した本発明の衣料用シームレス経編地においては、生地部は無地又は無地柄の編地である。
また前記した本発明の衣料用シームレス経編地においては、レース部が、柄又は細幅レースの編地である。
【0011】
また前記した本発明の衣料用シームレス経編地においては、レース部が隣接する少なくとも一方の生地部との境界部の編み組織から糸抜きされて端部を形成することもできる。もちろん、ハサミやカットマシンなどでカットしてもよい。なお編地端部は直線でも良いし曲線でも良い。
【0012】
以上説明した通り、本発明によれば、編み目の進行方向に沿って生地部とレース部が一体的に連結して編まれていることにより、生地部とレース部の間の縫製部分をなくすことができるので、着心地が良く、縫製線が外に突出することもなく、ファッション的、デザイン的に優れた衣料用シームレス経編地を提供できる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下実施の形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。図1は非弾性糸を用いた編地(リジット)の編み組織図、図2は一方向に弾性糸を用いた編地(ワンウェイ)の編み組織図、図3は生地部がツーウェイ、レース部は編み立て方向に伸びるワンウェイの編み組織図である。これらの編み組織図は、実際の経編地の縮小コピーに説明を加えている。
【0014】
(実施の形態1)
図1はリジットの編み組織図を説明する図である。図1において、1は経編地の1ユニットを示し、2は細幅レース部、3は生地部、4は編み立て方向を示している。細幅レース部2の幅は例えば96ニードル、生地部3の幅は例えば96ニードル×3幅=288ニードルで形成する。細幅レース部(L1〜L24)2に使用する糸は、柄糸として、例えばナイロンフィラメントのウーリー加工糸(仮撚加工による嵩高糸)繊度:70デニール-フィラメント数:48本を3本撚った糸(3子撚糸)を用いた。また細幅レース部2と生地部3の全体には、ジャカードによりL25としてナイロンフィラメント(繊度:70デニール-フィラメント数:48本)糸を用いた。さらにL26,L27としては、地組織(鎖編み、乱止め)の使用糸としてナイロンフィラメント(繊度:40デニール-フィラメント数:34本)糸を用いた。L29の使用糸としてナイロンフィラメント(繊度:70デニール-フィラメント数:48本)糸の2本撚糸を用いた。編み終わった後の編み地を染め仕上げした後、抜き用糸L29をカットして、生地を分離した。これにより、図1のような編み地が得られた。得られた編み地は、全体で幅36cm、長さ1mであり、レース部2の幅は8cm、生地部3の幅は28cmであった。またレース部2の重量は23g(目付換算で287.5g/m2)、生地部3の重量は40g(目付換算で142.9g/m2)、全体の重量は63g(目付換算で175g/m2)であった。
前記において、ラッセル経編機としてはカールマイヤー社製のMRSEJF31/1/24を用いた。この編み機の糸の積極送り装置(カールマイヤー社製EBA装置)は、市販品は3機設けられているが、このEBA装置を4機に改良し、レース地及び生地の各々の部分の給糸をEBA装置を用いて行った。具体的には、前記L25,L26にそれぞれ2機、合計4機EBA装置を用いることにより、均一に編成することができた。
【0015】
(実施の形態2)
次に図2はワンウェイの編み組織図を説明する図である。ここでワンウェイとは、編み立て方向4に弾性糸による伸縮性を発現する編み物をいう。
図2において、11は経編地の1ユニットを示し、12は細幅レース部、13は生地部を示している。細幅レース部12の幅は例えば96ニードル、生地部13の幅は例えば96ニードル×3幅=288ニードルで形成する。細幅レース部(L1〜L24)12に使用する糸は、柄糸として、例えばナイロンフィラメントのウーリー加工糸(仮撚加工による嵩高糸)70デニール-フィラメント数:48本を3本撚った糸(3子撚糸)を用いた。また細幅レース部12と生地部13の全体には、ジャカードによりL25としてナイロンフィラメント(繊度:70デニール-フィラメント数:48本)糸を用いた。さらにL26,L27としては、地組織(鎖編み、乱止め)の使用糸としてナイロンフィラメント(繊度:40デニール-フィラメント数:34本)糸を用いた。さらに細幅レース部12の左側約1/3まではL31としてポリウレタンフィラメント(繊度:120デニール)の表面にナイロンフィラメント(繊度:20デニール-フィラメント数:7本)を巻き付けたカバード糸を2本挿入して使用し、その右側から生地部13全体にかけて、ポリウレタンフィラメント(繊度:120デニール)の表面にナイロンフィラメント(繊度:20デニール-フィラメント数:7本)を巻き付けたカバード糸を1本挿入して使用した。L29の使用糸としてナイロンフィラメント(繊度:70デニール-フィラメント数:48本)糸の2本撚糸を用いた。編み終わった後の編み地を染め仕上げした後、抜き用糸L29をカットして、生地を分離した。これにより、図2のような編み地が得られた。得られた編み地は、全体で幅36cm、長さ1mであり、レース部2の幅は8cm、生地部3の幅は28cmであった。またレース部2の重量は23g(目付換算で287.5g/m2)、生地部3の重量は40g(目付換算で142.9g/m2)、全体の重量は63g(目付換算で175g/m2)であった。
【0016】
前記において、ラッセル経編機としてはカールマイヤー社製のMRSEJF31/1/24を用いた。この編み機の糸の積極送り装置(カールマイヤー社製EBA装置)は、市販品は3機設けられているが、このEBA装置を6機に改良し、レース地及び生地の各々の部分の給糸をEBA装置を用いて行った。具体的には、前記L25,L26,L31にそれぞれ2機、合計6機EBA装置を用いることにより、均一に編成することができた。
【0017】
(実施の形態3)
次に図3は生地部がツーウェイ、レース部は編み立て方向に伸びるワンウェイの編み組織図を説明する図である。ここでツーウェイとは、編み立て方向4とそれに直交する方向の2方向に弾性糸による伸縮性を発現する編み物をいう。図3において、21は経編地の1ユニットを示し、22は細幅レース部、23は生地部を示している。細幅レース部22の幅は例えば96ニードル、生地部13の幅は例えば96ニードル×3幅=288ニードルで形成する。細幅レース部(L1〜L24)22に使用する糸は、柄糸として、例えばナイロンフィラメントのウーリー加工糸(仮撚加工による嵩高糸)70デニール-フィラメント数:48本を3本撚った糸(3子撚糸)を用いた。また細幅レース部22と生地部23の全体には、ジャカードによりL25としてナイロンフィラメント(繊度:70デニール-フィラメント数:48本)糸を用いた。さらに、細幅レース部22の地組織(鎖編み、乱止め)の使用糸L26,L27としてナイロンフィラメント(繊度:40デニール-フィラメント数:34本)糸を用い、生地部23の地組織(鎖編み、乱止め)の使用糸L26としてポリウレタン(繊度:30デニール)糸の表面にナイロンフィラメント(繊度:40デニール-フィラメント数:34本)を巻き付けたカバード糸を使用した。さらに細幅レース部22の左側約1/3まではL31としてポリウレタンフィラメント(繊度:120デニール)の表面にナイロンフィラメント(繊度:20デニール-フィラメント数:7本)を巻き付けたカバード糸を2本挿入して使用し、その右側からレース部の右端まで、ポリウレタンフィラメント(繊度:120デニール)の表面にナイロンフィラメント(繊度:20デニール-フィラメント数:7本)を巻き付けたカバード糸を1本挿入して使用した。L29の使用糸としては、ナイロンフィラメント(繊度:70デニール-フィラメント数:48本)糸の2本撚糸を用いた。編み終わった後の編み地を染め仕上げした後、抜き用糸L29をカットして、生地を分離した。これにより、図3のような編み地が得られた。得られた編み地は、全体で幅36cm、長さ1mであり、レース部2の幅は8cm、生地部3の幅は28cmであった。またレース部2の重量は23g(目付換算で287.5g/m2)、生地部3の重量は40g(目付換算で142.9g/m2)、全体の重量は63g(目付換算で175g/m2)であった。
【0018】
前記において、ラッセル経編機としてはカールマイヤー社製のMRSEJF31/1/24を用いた。この編み機の糸の積極送り装置(カールマイヤー社製EBA装置)は、市販品は3機設けられているが、このEBA装置を6機に改良し、レース地及び生地の各々の部分の給糸をEBA装置を用いて行った。具体的には、前記L25,L26,L31にそれぞれ2機、合計6機EBA装置を用いることにより、均一に編成することができた。
【0019】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明によれば、編み目の進行方向に沿って生地部とレース部が一体的に連結して編まれていることにより、生地部とレース部の間の縫製部分をなくすことができるので、着心地が良く、縫製線が外に突出することもなく、ファッション的、デザイン的に優れた衣料用シームレス経編地を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態の非弾性糸を用いた編地(リジット)の編み組織図。
【図2】 本発明の別の実施の形態の一方向に弾性糸を用いた編地(ワンウェイ)の編み組織図。
【図3】 本発明のさらに別の実施の形態の生地部がツーウェイ、レース部は編み立て方向に伸びるワンウェイの編み組織図。
【符号の説明】
1,11,21 経編地の1ユニット
2,12,22 細幅レース部
3,13,23 生地部
4 編み立て方向
 
訂正の要旨 特許第2996633号発明の明細書中、
1、特許請求の範囲の記載、
「【請求項1】ラッセル経編地であって、前記経編地は一枚の連続した衣料用編地であり、編み目の進行方向に沿って生地部とレース部が一体的に連結して編まれてなり、かつ前記生地部は鎖編み・乱止め組織であることを特徴とする衣料用シームレス経編地。
【請求項2】生地部の幅がレース部の幅の3倍以上である請求項1に記載の衣料用シームレス経編地。
【請求項3】レース部が編み目の進行方向に沿って複数形成されている請求項1又は2に記載の衣料用シームレス経編地。
【請求項4】経編地が、非弾性糸を用いた編地(リジット組織)、一方向に弾性糸を用いた編地(ワンウェイ組織)及び二方向に弾性糸を用いた編地(ツーウェイ組織)から選ばれる少なくとも一つの編地組織である請求項1〜3のいずれかに記載の衣料用シームレス経編地。
【請求項5】ワンウェイ組織またはツーウエイ組織に用いる糸が、弾性繊維糸に非弾性繊維糸を巻き付けたカバード糸である請求項4に記載の衣料用シームレス経編地。
【請求項6】生地部が無地又は無地柄の編地である請求項1〜5のいずれかに記載の衣料用シームレス経編地。
【請求項7】レース部が、柄又は細幅レースの編地である請求項1〜6のいずれかに記載の衣料用シームレス経編地。
【請求項8】レース部が隣接する少なくとも一方の生地部との境界部の編み組織から糸抜きされて端部が形成されている請求項1〜7のいずれかに記載の衣料用シームレス経編地。」を、
「【請求項1】ラッセル経編地であって、前記経編地は一枚の連続した衣料用編地であり、編み目の進行方向に沿って生地部とレース部が一体的に連結して編まれてなり、かつ前記生地部は鎖編み・乱止め組織からなる地組織で形成された無地又は無地柄の編地であり、前記レース部は前記地組織にレース模様が形成された柄又は細幅レースの編地であることを特徴とする衣料用シームレス経編地。
【請求項2】生地部の幅がレース部の幅の3倍以上である請求項1に記載の衣料用シームレス経編地。
【請求項3】レース部が編み目の進行方向に沿って複数形成されている請求項1又は2に記載の衣料用シームレス経編地。
【請求項4】経編地が、非弾性糸を用いた編地(リジット組織)、一方向に弾性糸を用いた編地(ワンウェイ組織)及び二方向に弾性糸を用いた編地(ツーウェイ組織)から選ばれる少なくとも一つの編地組織である請求項1〜3のいずれかに記載の衣料用シームレス経編地。
【請求項5】ワンウェイ組織またはツーウエイ組織に用いる糸が、弾性繊維糸に非弾性繊維糸を巻き付けたカバード糸である請求項4に記載の衣料用シームレス経編地。
【請求項6】レース部が隣接する少なくとも一方の生地部との境界部の編み組織から糸抜きされて端部が形成されている請求項1〜5のいずれかに記載の衣料用シームレス経編地。」と訂正する。
2.明細書の段落【0005】欄中の記載、「生地部は鎖編み・乱止め組織であることを特徴とする。」を、
「生地部は鎖編み・乱止め組織からなる地組織で形成された無地又は無地柄の編地であり、前記レース部は前記地組織にレース模様が形成された柄又は細幅レースの編地であることを特徴とする。」と訂正する。
3.明細書の段落【0010】欄中の記載、「編地であってもよい。」を、
「編地である。」と訂正する。
4.明細書の段落【0010】欄中の記載、「編地であることが好ましい。」を、
「編地である。」と訂正する。
5.明細書の段落【0014】、段落【0016】及び段落【0018】欄中の記載、「MRSEGF」を、
「MRSEJF」と訂正する。
異議決定日 2001-08-29 
出願番号 特願平9-237510
審決分類 P 1 651・ 537- YA (D04B)
P 1 651・ 121- YA (D04B)
P 1 651・ 536- YA (D04B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 真々田 忠博  
特許庁審判長 小林 正巳
特許庁審判官 石井 克彦
喜納 稔
登録日 1999-10-29 
登録番号 特許第2996633号(P2996633)
権利者 豊栄繊維株式会社
発明の名称 衣料用シームレス経編地  
代理人 蔦田 正人  
代理人 乕丘 圭司  
代理人 鎌田 耕一  
代理人 鎌田 耕一  
代理人 蔦田 璋子  
代理人 佐藤 公博  
代理人 蔦田 正人  
代理人 黒田 茂  
代理人 佐藤 公博  
代理人 池内 寛幸  
代理人 乕丘 圭司  
代理人 黒田 茂  
代理人 辻丸 光一郎  
代理人 蔦田 璋子  
代理人 辻丸 光一郎  
代理人 池内 寛幸  

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