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審決分類 審判 全部申し立て 産業上利用性  A61K
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部申し立て 4項(5項) 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部申し立て 2項進歩性  A61K
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  A61K
管理番号 1051480
異議申立番号 異議1999-70524  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1990-08-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 1999-02-15 
確定日 2001-09-26 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2786493号「医薬エアゾール製剤」の請求項1ないし17に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2786493号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由
【1】手続の経緯

本件特許第2786493号発明は、平成1年12月6日(パリ条約による優先権主張1988年12月6日、英国)の出願であって、平成10年5月29日にその特許権の設定登録がなされ、その後、高島一及びベーリンガー、インゲルハイム、ゲーエムベーハーにより特許異議の申立てがなされ、当審により平成11年6月23日付で第1回目の取消理由通知がなされ、平成12年7月6日付で訂正拒絶理由通知がなされ、平成13年7月25日付で第2回目の取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年7月31日に訂正請求がなされたものである(なお、先の取消理由通知に対する訂正請求は取り下げられた)。


【2】訂正の適否についての判断

1.訂正の内容
・訂正事項a
特許請求の範囲に
「 【請求項1】医薬、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、界面活性剤、及びカウリブタノール価による極性が1,1,1,2-テトラフルオロエタンより高い少なくとも1種の化合物を含むエアゾール製剤。
【請求項2】10ミクロン以下のメジアン粒子径を有する医薬粒子の溶液又は懸濁液の形態である製剤であって、経口又は鼻からの吸入により患者へ投与するのに適する請求項1に記載のエアゾール製剤。
【請求項3】CHClF2,CH2F2,CF3CH3又はそれらの混合物を含み、その含有量が、噴射組成物の5重量%以下である請求項1又は2に記載のエアゾール製剤。
【請求項4】カウリブタノール価による極性が1,1,1,2-テトラフルオロエタンより高い化合物が、アルコール、飽和炭化水素及びこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項1又は2又は3に記載のエアゾール製剤。
【請求項5】(a)治療的に有効量の医薬、及び(b)クロロフルオロカーボンを実質的に含まない噴射剤を含み、該噴射剤が1,1,1,2-テトラフルオロエタンであり、吸入により肺に搬送するのに適したエアゾール製剤。
【請求項6】医薬が、サルブタモール、ジプロピオン酸ベクロメタゾン及びクロモグリク酸二ナトリウムからなる群から選ばれるものである請求項5に記載の製剤。
【請求項7】さらに(c)界面活性剤を含む請求項5に記載の製剤。
【請求項8】さらに、1,1,1,2-テトラフルオロエタンより極性の高い化合物を含む請求項5に記載の製剤。
【請求項9】前記極性の高い化合物がエタノールであり、医薬が超微粉砕懸濁液の形態にある請求項8に記載の製剤。
【請求項10】計量バルブを備えたエアゾール容器中に収容されたエアゾール製剤であって、該製剤が、(a)治療的に有効量の医薬、及び(b)クロロフルオロカーボンを実質的に含まない噴射剤を含み、該噴射剤が1,1,1,2-テトラフルオロエタンであり、該エアゾール容器から吸入により肺に搬送するのに適したエアゾール製剤。
【請求項11】吸入により肺に搬送するのに適したエアゾール溶液製剤の製造方法において、
(a)エアゾール容器を準備する工程、及び
(b)該容器に、
(i)前記製剤の治療的に有効な複数の投与量を与えるのに十分な量の医薬、
(ii)前記容器から、治療的に有効な複数の投与量を噴射するのに十分な量の噴射剤であって、クロロフルオロカーボンを実質的に含まず、1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含む噴射剤を、
装填する工程、及び
(c)該医薬を溶解する工程、
を含む方法。
【請求項12】吸入により肺に搬送するのに適したエアゾール懸濁液製剤の製造方法において、
(a)エアゾール容器を準備する工程、及び
(b)該容器に、
(i)治療的に有効な複数の投与量を与えるのに十分な量の医薬、
(ii)前記容器から、治療的に有効な複数の投与量を噴射するのに十分な量の噴射剤であって、クロロフルオロカーボンを実質的に含まず、1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含む噴射剤を、
装填する工程、及び
(c)該医薬を懸濁する工程、
を含む方法。
【請求項13】吸入により肺に搬送するのに適したエアゾール製剤の製造方法において、
(a)エアゾール容器を準備する工程、及び
(b)該容器に、
(i)治療的に有効な複数の投与量を与えるのに十分な量の医薬、
(ii)前記容器から、治療的に有効な複数の投与量を噴射するのに十分な量の噴射剤であって、クロロフルオロカーボンを実質的に含まず、1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含む噴射剤、
(iii)エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、イソプロピルミリステート及びこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物、及び
(iv)界面活性剤を、
装填する工程、
を含む方法。
【請求項14】計量バルブを備えたエアゾール容器から医薬を含むエアゾール製剤を搬送する方法において、該製剤が該容器から吸入により肺に搬送するのに適したものであり、前記製剤中に、クロロフルオロカーボンを実質的に含まず、1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含む噴射剤を使用することを特徴とする方法。
【請求項15】エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン及びイソプロピルミリステートからなる群から選ばれる化合物を使用することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】医薬が、サルブタモール、ジプロピオン酸ベクロメタゾン及びクロモグリク酸二ナトリウムからなる群から選ばれるものである請求項14に記載の方法。
【請求項17】医薬エアゾール製剤であって、
(a)治療的に有効量の医薬、
(b)1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含む噴射剤、
及び
(c)1,1,1,2-テトラフルオロエタンより極性の高い少なくとも1種の化合物を含み、
該医薬は、該製剤中に実質的に完全に溶解しており、1,1,1,2-テトラフルオロエタンより極性の高い化合物は、1,1,1,2-テトラフルオロエタンと混和性であり、該製剤は、吸入により肺に搬送するのに適したものである製剤。 」
とあるのを
「 (1) 医薬、少なくとも製剤の50重量%の分量の1,1,1,2-テトラフルオロエタン、界面活性剤、及びカウリブタノール価による極性が1,1,1,2-テトラフルオロエタンより高い少なくとも1種の化合物を含み、前記製剤がクロロフルオロカーボン及びCHClF2、CH2F2及びCF3CH3を含まず、前記製剤が経口または鼻からの吸入に適しており、その製剤が10ミクロンより小さいメジアン粒子サイズを有する医薬粒子の溶液又は懸濁液の形態であるエアゾール製剤。
(2) カウリブタノール価による極性が1,1,1,2-テトラフルオロエタンより高い化合物がアルコール、飽和炭化水素及びこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項1に記載のエアゾール製剤。
(3) 医薬が、サルブタモール、ジプロピオン酸ベクロメタゾン及びクロモグリク酸二ナトリウムからなる群から選ばれるものである請求項2に記載の製剤。
(4) 前記カウリブタノール価による極性が1,1,1,2-テトラフルオロエタンより高い化合物がエタノールであり、医薬が超微粉砕懸濁液の形態にある請求項2に記載の製剤。 」
と訂正し、
・訂正事項b
特許明細書第2頁第11〜12行(特許第2786493号公報(以下単に特許公報という)第2頁第4欄第36〜37行)に
「 加圧吸入器からの吸収 」
とあるのを
「 加圧吸入器からの吸入 」
と訂正し、
・訂正事項c
特許明細書第4頁第9行(特許公報第3頁第5欄第19行)に
「 イゾブタン 」
とあるのを
「 イソブタン 」
と訂正し、
・訂正事項d
特許明細書第20頁第9行(特許公報第6頁第11欄第3行)に
「 アミノの塩 」
とあるのを
「 アミンの塩 」
と訂正し、
・訂正事項e
特許明細書第29頁第4行(特許公報第7頁第14欄第25行)に
「 ジエチレングリコールジオレート 」
とあるのを
「 ジエチレングリコールジオレエート 」
と訂正し、
・訂正事項f
特許明細書第29頁第8行(特許公報第7頁第14欄第29行)に
「 グリセリルトリオレート 」
とあるのを
「 グリセリルトリオレエート 」
と訂正するものである。

2.訂正の目的の適否、拡張・変更の存否、及び新規事項の追加の有無
訂正事項aは、請求項2,3,5,7,8及び10〜17を削除し、請求項1を、医薬、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、界面活性剤、及びカウリブタノール価による極性が1,1,1,2-テトラフルオロエタンより高い少なくとも1種の化合物の4成分を併せて含むことを要件とするエアゾール製剤の発明に係るものに限定し、かつ同請求項1の製剤の成分である1,1,1,2-テトラフルオロエタンの含有割合を限定し、クロロフルオロカーボン及びCHClF2、CH2F2及びCF3CH3を含まない旨限定し、経口または鼻からの吸入に適したものである旨限定し、さらに10ミクロンより小さいメジアン粒子サイズの医薬粒子の溶液又は懸濁液の形態である旨の限定を付するものであり、請求項4、6及び9をこの順に請求項1の従属項である請求項2〜4とするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、上記訂正に併せて請求項4,6及び9の請求項番号を順に2〜4とすることは、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。そして、1,1,1,2-テトラフルオロエタンの分量を少なくとも製剤の50重量%にすることは特許公報第4頁第8欄第39〜40行に、クロロフルオロカーボン及びCHClF2、CH2F2及びCF3CH3を含まない点は特許公報第3頁第6欄第17〜22行に(なお、同箇所の「フレオン22、フレオン32、フレオン143a」が各々順にCHClF2、CH2F2、CF3CH3を示すことは特許公報第3頁第5欄第7〜10行参照)、経口または鼻からの吸入に適するものである点や10ミクロン以下のメジアン粒子サイズを有する医薬粒子の溶液または懸濁液の形態をとることは特許公報の請求項2及び第6頁第11欄第9〜11行に、各々記載されていることから、この訂正は特許明細書に記載した事項の範囲内のものである。
訂正事項bは、例えば訂正事項aにおいて訂正された請求項1に「経口または鼻からの吸入」と記載されているのに整合せしめるため、或いはより自然な日本語とするため「(加圧)吸入器からの吸収」を「(加圧)吸入器からの吸入」と訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明又は誤記の訂正を目的とするものである。そして、この訂正は特許明細書に記載した事項の範囲内のものである。
訂正事項c〜fは、飽和炭化水素の慣用和名として存在しない「イゾブタン」を、その前後の記載からみても明らかに特定可能な慣用の化合物名である「イソブタン」に改めたり、その他、化合物に係る技術用語を当該分野において妥当な表記に改めるものであるから、いずれも誤記の訂正を目的とするものである。そして、これらの訂正は特許明細書に記載した事項の範囲内のものである。
そして、これら訂正事項a〜fの訂正はいずれも、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

3.独立特許要件の判断
(1)訂正明細書の請求項1〜4に係る発明は、その特許請求の範囲の第1〜4項に記載されたとおりのものである。
(2)同請求項1〜4に係る発明は、後の【3】3.で述べるように、特許異議申立人の提出した証拠方法及びその主張する理由によっては、特許を受けることができないものであるとすることはできない。
そして、他に特許出願の際独立して特許を受けることができない理由を発見しないので、同請求項1〜4に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する同法第126条第2〜4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。


【3】特許異議の申立てについて

1.本件発明
上記【2】で示したように、上記訂正が認められるので、本件請求項1〜4に係る発明は、当該訂正明細書の特許請求の範囲に記載されたとおりのものである(【2】1.の訂正事項a参照)。

2.特許異議申立ての理由の概要

(1) 特許異議申立人高島一(以下申立人1という)は、本件発明は、甲第1号証(特開平2-200627号公報(本件特許出願の公開公報))、甲第2号証(特表平6-508149号公報)、甲第3号証(特開昭53-40693号公報)、甲第4号証(Product Information Atochem Oct.1988)、甲第5号証(特許権者が欧州特許庁に提出した1994年8月18日付の書面)、甲第6号証(特開昭52-80282号公報)、甲第7号証(津田恭介・野上寿代表編集「医薬品開発基礎講座XI 薬剤製造法(下)」(昭和46-11-15) 地人書館 第541〜551頁)、甲第8号証(粟津・金庭他編「最新薬剤学 第5改稿版」(昭和62-5-20) 廣川書店 第281〜285頁)、甲第9号証(ベコダイド(登録商標)インヘラーの添付文書)、甲第10号証(特開昭63-211237号公報)及び甲第11号証(深井三郎著「今日の新薬(第5版)」(昭和63-4-30) 薬業時報社 第196頁、第344頁)、資料1(新村出編「広辞苑」(1992年10月9日第4版第2刷発行) 岩波書店 第1150頁「じっしつてき」の項、第2371頁「ほとんど」の項)、資料2(昭和63年10月1日付日刊工業新聞(日刊工業新聞社)第12頁)、資料3(昭和63年2月29日付日刊工業新聞(日刊工業新聞社)第4頁)、資料4(昭和63年10月21日付日刊工業新聞(日刊工業新聞社)第13頁)、資料5(昭和63年6月22日付日刊工業新聞(日刊工業新聞社)第1頁)、資料6(昭和63年9月2日付日刊工業新聞(日刊工業新聞社)第2頁)、資料7(Nature, (1988 JAN.) 331 p.201)及び資料8(サルタノール(登録商標)インヘラーの添付文書)、を提出し、以下のように主張している:
(1-1) 本件特許出願における平成9年8月25日付の手続補正書による補正は要旨変更であるから、本件特許に係る出願は当該手続補正書の提出時にしたものとみなされる。そして、本件訂正前の請求項1〜17に係る各発明は、平成9年8月25日の前に頒布された甲第1、2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当する発明に対し特許されたものである。よって、同請求項1〜17の各発明に係る特許は、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(1-2) たとえ上の補正が要旨変更でないとしても、本件訂正前の請求項14〜16に係る各発明は、産業上利用することができる発明ではないから、同法第29条第1項柱書の規定に違背して特許されたものである。また、本件訂正前の請求項1、3及び4に係る各発明は甲第3号証に記載された発明であるから、同法第29条第1項第3号に該当する発明に対して特許されたものである。さらに、本件訂正前の請求項1〜17に係る各発明は、甲第3、4、6〜11号証に記載された各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。以上から、本件訂正前の請求項1〜17の各発明に係る特許は、いずれも同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(1-3) 本件明細書の発明の詳細な説明の記載に不備があり、本件訂正前の請求項5〜17に係る特許は、特許法第36条第3項又は第4項及び第5項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

(2)特許異議申立人ベーリンガー、インゲルハイム、ゲーエムベーハー(以下申立人2という)は、甲第1号証(特開平2-200627号公報(本件特許出願の公開公報))、甲第2号証(米国特許第5190029号明細書)、甲第3号証(特開昭53-40693号公報)、甲第4号証(特開昭52-80282号公報)、甲第5号証(DU PONT UPDATE 1982年3月号)、甲第6号証(米国特許第2885427号明細書)、甲第7号証(米国特許第2868691号明細書)、甲第8号証(英国特許第837465号明細書)、甲第9号証(米国特許第3219533号明細書)、甲第10号証(米国特許第3897779号明細書)及び甲第11号証(DICTIONNAIRE VIDAL(1979) 第1926〜1927頁)、を提出し、以下のように主張している:
(2-1) 本件特許出願における平成9年8月25日付の手続補正書による補正は要旨変更であるから、本件特許に係る出願は当該手続補正書の提出時にしたものとみなされる。したがって、本件訂正前の請求項1〜17に係る各発明は、平成9年8月25日の前に頒布された甲第1、2号証に記載された発明であるか、甲第1,2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同請求項1〜17に係る特許は、特許法第29条第1項第3号に該当する発明に対し特許されたものであるか、又は特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものである。よって、同請求項1〜17の発明に係る特許は、いずれも同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(2-2) 本件訂正前の請求項1、4に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であるから、同請求項1,4の発明に係る特許は、特許法第29条第1項第3号の規定に該当する発明に対してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(2-3) 本件訂正前の請求項1〜17に係る各発明は、甲第3〜11号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同請求項1〜17の発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第113条第2号の規定により取り消されるべきものである。
(2-4) 本件明細書の発明の詳細な説明の記載に不備があり、本件訂正前の請求項5〜17の発明に係る特許は、特許法第36条第3項又は第4項及び第5項に規定する要件を満たしていない特許出願についてなされたものであり、同法第113条第4号の規定により取り消されるべきものである。

3.当審の判断

(1)申立人1の異議申立てについて

(1-1) 2.(1)(1-1)について
申立人1が提示した理由は、医薬、1,1,1,2-テトラフルオロエタン(以下プロペラント134aということがある)、界面活性剤、及びカウリブタノール価による極性が1,1,1,2-テトラフルオロエタンより高い少なくとも1種の化合物(以下アジュバントということがある)の4成分を含むことを要件とするエアゾール製剤以外の発明、即ち、上記平成9年8月25日付の手続補正書による補正によって追加された、医薬及びプロペラント134aの2成分や更に界面活性剤或いはアジュバントのいずれか一方のみを加えた3成分の発明、については、特許出願当初の明細書に何等記載されていないことを、その主張の根拠とするものである。
しかしながら、上記訂正により、本件請求項1〜4は、上記4成分を含むことを要件とするものとなったので、上記主張の根拠はもはや存在しない。したがって、本件特許の出願日が平成9年8月25日に繰り下がるとすることはできないから、甲第1,2号証は、いずれも本件優先日前に頒布された刊行物であるとはいえない。
よって、甲第1,2号証の記載内容について検討するまでもなく、本件の請求項1〜4に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当する発明であるとはいえない。

(1-2) 2.(1)(1-2)について

(A) 産業上の利用性について
申立人は、訂正前の請求項14〜16がいずれも「計量バルブを備えたエアゾール容器から医薬を含むエアゾール製剤を搬送する方法」に係る発明であって、業として利用できない発明であるか、医療行為に該当するものであるとして、同請求項14〜16に係る各発明が産業上の利用可能性を有しない旨を主張しているが、これらエアゾール製剤を搬送する方法に係る発明は、訂正後の特許請求の範囲からは削除されているので、もはやかかる申立人が主張する理由については検討を要しないことは明らかである。

(B) 新規性進歩性について

(B-1)甲第3〜11号証、資料2〜8の記載について
(i) 甲第3号証には、CHClF2、CH2F2およびCF3-CH3から選ばれる、水素を含有するクロロフルオロ炭素又はフルオロ化炭素(A)と、CH2ClF、CClF2-CHClF、CF3-CHClF、CHF2-CClF2、CHClF-CHF2、CF3-CH2Cl、CHF2-CHF2、CF3-CH2F(プロペラント134aと同一)、CClF2-CH3およびCHF2-CH3から成る群から選ばれる、水素を含有するクロロフルオロ炭素(B)の混合物を含有するエーロゾル用噴射剤組成物(本件発明にいうエアゾール製剤に相当する。以下エアゾール製剤という)に関して記載されており、同製剤が、クロロフルオロカーボン(CFC)に属するフレオン11及びフレオン12の代替となり得る高溶解力を付与されかつ安定な好適な性質の噴射剤組成物の提供を目的とするものであることが記載されており(第3頁右上欄下から第6行〜左下欄第9行、同頁右下欄第11〜15行)、さらに飽和炭化水素噴射剤から成る第三成分(C)を含有することができること、当該第三成分(C)としてn-ブタン、イソブタン、ペンタン及びイソペンタン(各々いずれも本件でいうアジュバントの一に該当する)が好適であることも記載されており(第3頁右下欄第5〜8行)、(A)〜(C)の三成分組成物として好適なものとしてフレオン134a(プロペラント134aと同一)及びn-ブタンを含むものも記載されている(第4頁左下欄第9,13及び18行、第8頁例9)。また、三成分組成物の好適な組成は成分(A):5〜60%、成分(B):5〜95%、成分(C):0〜50%(一般に少なくとも1%)、最も好適には成分(A):10〜50%、成分(B):10〜80%、成分(C):5〜40%、であることも記載されており(第5頁左上欄第14〜19行)、同エアゾール製剤が、さらにエタノールやプロピレングリコール(これらも各々本件でいうアジュバントの一に該当する)等の有機溶剤(第5頁左下欄第15行右下欄第1行)、界面活性剤(第5頁右下欄第2〜3行)や、薬理作用、抗病原作用等を有する活性成分(第5頁右下欄下から第4〜5行。本件でいう医薬に相当する)を含有し得ることも記載されている。
(ii) 甲第4号証には、クロロフルオロカーボン(CFC)の成層圏オゾン層に対する影響が考慮されていること、フレオン11及び12の代替品としてF134a(プロペラント134aと同一)が開発中であることが記載されている(第1頁)。
なお、甲第5号証においては、甲第4号証が1988年10月即ち本件優先日の前に頒布されたものとされている(第4頁)。
(iii) 甲第6号証には、エアゾール製品が多くの人体用品、殺虫剤、塗料等他種多様の用途に使用されていることが記載されており(第2頁右上欄第9〜10行)、エアゾール噴射剤に係るフルオロ飽和脂肪族炭化水素の一としてフロン134a(プロペラント134aと同一)が記載されており(第4頁第1表、第5頁第2表、第6頁第3表)、一般的な噴射剤としてフロン125(CF3CHF2)/フロン134※(フロン134及びその異性体。以下同様)、フロン134※/フロン124※、フロン134※/フロン143、フロン143a/フロン134※等が例示されている(第4頁左下欄)。
(iv) 甲第7号証には、エアゾール製剤が、医薬品等多方面にわたって応用され、剤型も種々のものが製剤化されている旨記載されており(第541頁第2〜3行)、その中で懸濁系のものが、不溶の主薬を通常10μ以下の微細粉末として液化ガス中に懸濁させたものであり、かつ粒子の凝集成長防止と再分散性の改良を目的として界面活性剤を併用することが多いことも記載されており(第543頁「(c)懸濁系」の項)、液化ガス噴射剤として液化石油ガス類はフロン類に比して化学的に安定、低コスト、低毒性および比重が小であるなどの利点を有し、多くの場合フロン類と混合して用いられること、n-,i-ブタン及びプロパンを主体とした混合物として供給されることも記載されている(第549頁「(B)液化石油ガス類(liquified petroleum gas)」の項)。
(v) 甲第8号証には、医薬品におけるエアゾール製剤が1950年代前半頃に皮膚科領域の外用剤として火傷の処置等に用いられていたことの他、内用剤として1955年には喘息治療を目的としたエピネフリンの吸入剤が発売されていたことが記載されており(第282頁「a)エアゾール製剤」の項)、固体の薬物を噴射剤に分散したエアゾール製剤において、薬物として数μmの微粒子のものを使用し分散剤として界面活性剤を添加することが記載されており(第284頁最終行〜第285頁第2行)、溶液状のエアゾール製剤において薬物が溶解しない場合にはエタノール(本件でいうアジュバントの一に該当する)を用いることも記載されている(第285頁第3〜5行)。
(vi) 甲第9号証には、プロピオン酸ベクロメタゾン(本件発明にいう医薬に相当する)のエアゾール製剤であるベコタイド50・100(いずれも登録商標)について記載されており、同製剤が噴霧吸入により適用されること(第1頁左欄の「用法・用量」の項)、添加物としてオレイン酸(本件でいう界面活性剤の一に該当する)、トリクロルモノフルオルメタン及びジクロルジフルオルメタンを含有していること(第1頁左欄「※組成」表)、も記載されている。
なお、甲第9号証中には、同号証が本件特許出願の前に頒布されたものであることを裏付ける記載は認められず、むしろ、第1頁左欄の「組成」表、同右欄の「10.過量投与」の項、第2頁右欄「使用期限」の項に※が、第2頁右欄の「文献請求先」「商品情報お問い合わせ先」の項に※※が、各々付されており、第1頁左上に「※※1996年1月改訂 ※1995年2月改訂」との注が記載されていることからみて、同号証自体は早くても1996年1月以降に頒布されたとみるのが相当である。
(この点に関し、申立人1は特許異議申立書において、甲第11号証にはベコタイドインヘラー(登録商標)が我が国で1978年(昭和53年)に市販された旨記載されていることを基に、甲第9号証記載のエアゾール製剤が本件優先日前に公知又は公用であったことを主張する(申立書中の例えば第31頁下から第3〜8行)が、甲第9号証記載のエアゾール製剤が甲第11号証記載の上記ベコタイドインヘラーと製剤として同一のものであることについて申立人は何等合理的説明をしていないから、申立人のかかる主張は具体的根拠を欠くものといわざるを得ない。)
よって、甲第9号証は本件優先日前に頒布された刊行物であるとは認められない。
(vii) 甲第10号証には、LHRH類似体(本件でいう医薬に相当する)、親油性反対イオン、水、エチルアルコール、界面活性剤及び噴射剤からなる、吸入治療用のエアゾール製剤について記載されており(例えば特許請求の範囲1,6)、肺へ薬物を沈着せしめるのに薬物を10ミクロン以下の粒子サイズに微細化することは一般的であることも記載されており(第2頁左下欄第18〜20行)、各種の親油性反対イオンの存在がLHRH類似体の平衡溶解度を有意に改善すること(第4頁右上欄下から第3行〜左下欄第1行)、界面活性剤が非イオン界面活性剤を意図すること(第4頁左上欄下から第4〜5行)、親油性反対イオンとして一定範囲の炭素数のアルキルスルホン酸及びその塩等が挙げられること(第4頁右上欄第3〜11行)、噴射剤としてクロロフルオロカーボン類又はハイドロカーボン類、例えばトリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、クロロジフルオロメタン及びジクロロテトラフルオロメタン(ジクロロジフルオロメタンかジクロロテトラフルオロエタン等の誤記と考えるのが自然である)などが挙げられること(第4頁右上欄第12〜17行)も記載されており、噴射剤が製剤中の50%以上を占める製剤の例についても記載されている(第6頁第1表)。
(viii) 甲第11号証には、日本国内における治療剤としてのエアゾール製剤の開発の歴史について記載されており、ベコダイドインヘラー(日本グラクソ)等のエアゾール製剤が市販された時期についても記載されている(第196頁「<昭和57年>」の項、第344頁「<昭和48年>」の項)。
(ix) 資料2〜7には、HFC134a(プロペラント134aと同一)がフロン12の代替品として最有力視されていたこと、HFC134aが商業規模で生産されたこと、完全にハロゲン化されたフロンの生産・使用が中止ないし規制されるすう勢にあったこと、もしくは、HFC134aの毒性試験が国内でまた各社で広く行われていたこと、が記載されている。
資料8には、硫酸サルブタモールのエアゾール製剤であるサルタノール(登録商標)インヘラーについて記載されている。

(B-2) 新規性についての対比・判断
本件の請求項1に係る発明と甲第3号証記載の発明とを比較するに、両者は、1,1,1,2-テトラフルオロエタン及びカウリブタノール価による極性が1,1,1,2-テトラフルオロエタンより高い少なくとも1種の化合物を含むエアゾール製剤である点で共通している一方、少なくとも以下の(イ)〜(ニ)の点で相違している:
(イ) 前者は、医薬を併せて含有するものであり、当該医薬が10ミクロンより小さいメジアン粒子サイズを有する医薬粒子の溶液又は懸濁液の形態で含まれていることを要件とするのに対し、後者では医薬に相当する成分を併せて配合し得る旨の一般的な記載があるのみで、特定粒子径の医薬を配合する旨限定されていない。
(ロ) 前者が、1,1,1,2-テトラフルオロエタンが少なくとも製剤の50重量%であることが要件となっているのに対し、後者においてはプロペラント134aを候補の一として含む(B)成分の好適な含有割合が5〜95%、最も好適には10〜80%と記載されているのみであり、具体的にプロペラント134aを全体の50重量%以上含有せしめることについては具体的に記載されていない。
(ハ) 前者が、クロロフルオロカーボン及びCHClF2,CH2F2及びCF3CH3を含まないことを要件としているのに対し、後者では、CHClF2,CH2F2及びCF3CH3から選ばれる化合物を含有することが要件とされている。
(ニ) 前者が、経口又は鼻からの吸入に適したものである旨を要件とするのに対し、後者では経口又は鼻から吸入するのに適した態様のものとする旨の特段の記載はみられない。
よって、本件の請求項1に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であるということはできない。
また、本件の請求項2〜4に係る発明は、いずれも本件の請求項1を引用して記載されているエアゾール製剤に係る発明であって、同請求項1に係る発明を更に技術的に限定したものであるから、甲第3号証に記載されたものとはいえないことは明らかである。

(B-3) 進歩性についての対比・判断

(B-3-1)
本件の請求項1に係る発明と甲第3号証記載の発明との間の相違点は、上の(B-2)で述べたとおりである。
そして、特に相違点(ハ)については、CHClF2,CH2F2及びCF3CH3のいずれかを含有することを要件とする甲第3号証の記載のみに基づいて、当該要件と全く背反する(即ち、クロロフルオロカーボンの他CHClF2,CH2F2,CF3CH3を含まない)ことを要件とする本件請求項1に係る発明を想起することは、当業者といえども困難といわざるを得ない。しかも、噴射剤として特にプロペラント134aのみを主剤として採用し、かつ上記クロロフルオロカーボン、CHClF2,CH2F2、CF3CH3のいずれをも併せて含有せしめないという、上記(ロ)、(ハ)の点を併せて具備せしめることにより、安定なエアゾール製剤を得ることについては、甲第3号証の他甲第4号証、甲第6〜11号証のいずれにも記載されていないし、かつ示唆もされていない。
そして、同請求項1に係る発明は、上記(イ)〜(ニ)の相違点に係る要件を併せて具備することにより、オゾン層への悪影響がなく、吸入治療に適し、かつ安定なエアゾール製剤を得ることを可能にするという、本件特許明細書記載の効果を奏するものである。
よって、(仮に甲第9号証が本件優先日前に頒布されたものであるとしても)、本件の請求項1に係る発明が甲第3、4、6〜11号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。資料2〜8を参酌しても同様である。

(B-3-2)
もっとも、申立人1は、平成11年7月19日付で上申書を提出して甲第10号証に関して言及し、噴射剤としてプロペラント134aを採用することが容易であった点について述べているので、この点甲第10号証について検討する。
本件請求項1に係る発明と甲第10号証に記載されている発明とは、
前者では少なくとも製剤の50重量%の分量のプロペラント134aを含み、かつクロロフルオロカーボン、CHClF2、CH2F2、CF3CH3を含まないのに対し、
後者では(噴射剤として)クロロフルオロカーボン類又はハイドロカーボン類、例えばトリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、クロロジフルオロメタン(CH2F2)などが挙げられる旨記載されるにとどまり、プロペラント134aを含有せしめることやクロロフルオロカーボン、CHClF2、CH2F2、CF3CH3を含まないことについては記載がない、
という点で相違している。
当該相違点について検討すると、環境保護等を考慮して甲第10号証記載の噴射剤に代えてプロペラント134aを採用しようとすること自体の動機付けはあるといえるかもしれない。
しかしながら、例えば特許権者が平成12年1月11日付意見書に添付した乙5号証(又は平成13年2月27日付上申書に添付した参考資料5)であるPharmaceutical Technology, (March 1990) p.26,28,30,32,33 には、プロペラント134aは確かにP-12等のCFCの代替物として有望であることは記載されているものの、P-12と比較すると安定性の点で劣っていたり、また反応しやすく分解性が高いため、噴射剤と他のMDI組成物成分、例えば界面活性剤や薬剤等、との間で不親和性を生じる原因となる可能性があること等も記載されているし(p.32左欄「Stability.」の項)、また他方で、MDIに採用されている全ての界面活性剤に対して溶媒力に乏しいこと(p.32左欄「Solvent strength.」の項)や密度の点でも主なCFCと比較して必ずしも望ましくないこと(p.32左欄「Stability.」の項)等も記載されており、慣用のCFCであるP-11と混合したものを噴射剤として採用することにより、界面活性剤の溶解性等において向上した噴射剤が得られた例についても記載されている(p.32右欄「P-11/P-134a Propellant Blends」〜p.33右欄、TableIII・IV)。これらの記載は、たとえCFCの代替物としてプロペラント134aが有力な候補であったことが本件優先日前広く知られていたとしても、そのことのみを以て、噴射剤の主剤としてプロペラント134aのみを採用し、これを界面活性剤と併せて含有せしめることにより安定なエアゾールを得ることは、本件優先日もしくは特許出願日の後ですら当業者にとり容易なことではなかったという問題が存在していたことを示唆するものである。ましてや、かかる困難性が、10ミクロンより小さい径の固体医薬及びアジュバントをさらに含む4成分系とすることにより解決されるであろうことは、甲第10号証はもとより上記決定書中で引用された他の文献、申立人1が提示した他の各甲号証や資料のいずれにも記載も示唆もされていないことから考えれば、特定の医薬であるLHRH類似体の吸入治療用として好適なエアゾール製剤を得るという、本件訂正後の請求項1に係る発明とは異なる目的を有する甲第10号証記載のエアゾール製剤において、医薬(LHRH類似体)、CFC噴射剤、界面活性剤に加えたまたま本件でいうアジュバントの一に該当するエチルアルコールをも含むことが要件とされているとはいえ、CFC噴射剤にかえて特にプロペラント134aを採用した場合でも、上記の界面活性剤の溶解度等に係る問題のない、安定なエアゾール製剤が得られたであろうことは、当業者といえども予測し得なかったとするのが相当である。
してみると、甲第10号証記載のエアゾール製剤において、採用されているCFC噴射剤を全体の50重量%のプロペラント134aにおきかえることが、当業者にとり格別の困難性を伴わず直ちになし得たことである、とすることはできない。
そして、本件の請求項1に係る発明は、上に挙げた相違点に係る要件を併せて具備することにより、オゾン層への悪影響がなく、吸入治療に適し、かつ安定なエアゾール製剤を得ることを可能にするという、本件特許明細書記載の効果を奏するものである。
以上から、甲第10号証に記載された発明に対し、申立人1が提示した特許異議申立書又は上申書中で引用されているプロペラント134aに係る公知文献のいずれを組み合わせても、当業者が本件の請求項1に係る発明を容易になし得たということはできない。

(B-3-3)
また、本件の請求項2〜4に係る発明は、いずれも本件の請求項1を引用して記載されているエアゾール製剤に係る発明であって、同請求項1に係る発明を更に技術的に限定したものであるから、少なくとも上で述べた理由から、同請求項1に係る発明と同様、甲第3、4、6〜11号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえないことは明らかである。

(1-3) 2.(1)(1-3)について
この理由に関する申立人の特許異議申立書における主張は、概ね以下の(A)〜(D)のとおりのものである(特許異議申立書第21〜24頁の「エ.理由2:記載不備(請求項5〜17)」参照):
(A) 本件訂正前の請求項のうち5,6,10〜12,14は医薬及びプロペラント134aの2成分からなる製剤に関し、同請求項7は医薬、プロペラント134a及び界面活性剤の3成分、同請求項8,9,15〜17は医薬、プロペラント134a及びアジュバントの3成分からなる製剤に関するものであるところ、発明の詳細な説明には、医薬、プロペラント134a、界面活性剤及びアジュバントの4成分を併せて含有せしめた製剤についてしか記載がみられないし、それ以外の、即ち上記2成分又は3成分の製剤に係る発明については、全く記載がみられないか、少なくとも当業者が容易に実施し得る程度の記載がなされているとはいえない。またかかる明細書の記載からみて、上記4成分を併せて含有せしめることが本件発明の目的を達成するために必須の要件であることは明らかである。
(B) 訂正前の請求項8,9,17における「1,1,1,2-テトラフルオロエタンより極性の高い」化合物の意味する内容が明確でない。
(C) 訂正前の請求項5〜16における「クロロフルオロカーボンを実質的に含まない」との記載が不明瞭である(なお、この主張を裏付ける資料として資料1が提出されている)。
(D) 訂正前の請求項17の「該医薬は、該製剤中に実質的に完全に溶解しており」なる状態が明りょうでない。
しかしながら、本件の訂正後の特許請求の範囲においては、上記主張(A)〜(D)の対象となっている請求項もしくは請求項中の記載は全て削除されているから、もはや申立人の主張する理由については検討を要しないことは明らかである。
よって、この理由によっても、本件の請求項1〜4に係る発明について、明細書の記載が特許法第36条の規定に違反しているということはできない。

(2)申立人2の異議申立てについて

(2-1) 2.(2)(2-1)について
この理由についての申立人2の主張は、その内容(特許異議申立書第2〜6頁の「4.3.1 要旨変更について」の項参照)からみて、申立人1が提示した上記理由2.(1)(1-1)についての主張と同趣旨のものである。
したがって、上記3.(1)(1-1)で述べたのと同じ理由により、本件特許の出願日が平成9年8月25日に繰り下がるとすることはできず、甲第1,2号証は、いずれも本件優先日前に頒布された刊行物であるとはいえない。
よって、甲第1,2号証の記載内容について検討するまでもなく、本件の請求項1〜4に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当する発明であるとはいえない。

(2-2) 2.(2)(2-2)・(2-3)について

(A) 甲第3〜11号証の各甲号証の記載について
(i) 甲第3号証は、申立人1が提出した甲第3号証と同一である(記載内容については上記(1)(1-2)(B)(B-1)(i)参照)。
(ii) 甲第4号証は、申立人1が提出した甲第6号証と同一である(記載内容については上記(1)(1-2)(B)(B-1)(iii)参照)。
(iii) 甲第5号証には、CFC11やCFC12等の代替物としてリペラント134aが好ましい候補の一であることが記載されている。
(iv) 甲第6号証には、1,1,1-トリフルオロ-2-ハロエタンの合成方法について記載されており、1,1,1,2-テトラフルオロエタンが低沸点、高安定性及び低毒性のためエアゾール噴射剤として有用であることが記載されている(第1頁第2欄第14〜19行、第49〜53行)。
(v) 甲第7号証には、医薬、噴射剤及び共溶媒を含む吸入療法用のエアゾール製剤について記載されており(第1頁第1欄最下段落)、共溶媒が医薬の液化噴射剤中への溶解を助け該医薬物質の分解を促進しないものであること、好適な共溶媒は極性が噴射剤と医薬との中間にあることも記載されており(第1頁第2欄第61〜66行)、共溶媒の例として非毒性低級アルコール及びエーテル例えばエタノール、ジエチルエーテル、クロロホルム、エタノールと水の混合物、クロロホルムとエタノールの混合物が挙げられることも記載されている(第2頁第3欄第4〜7行)。
(vi) 甲第8号証には、医薬、P11やP12等の噴射剤、非イオン系界面活性剤を含むエアゾール製剤について記載されており(例えば第12頁のclaim1)、該エアゾール製剤が、粒径1〜5μm程度のものが90%より多くを占める医薬粒子の懸濁液状のものであることも記載されている(例えば実施例3)。
(vi) 甲第9号証には、吸入や眼科療法に好適で安定な、非毒性噴射剤、エタノールを含んだ固体医薬の分散液又は懸濁液の自己噴射製剤について記載されており(例えば第1頁第1欄第54〜67行、第3頁第5欄のExample2)、エタノールが懸濁した医薬粒子の追加の希釈剤としての他、当該粒子の凝集又は沈降の防止のためにも必須であることも記載されている(第2頁第3欄第20〜31行)。
(vii) 甲第10号証には、トリアムシノロンアセトナイドエアゾール製剤の吸入による喘息の処置について記載されており、好ましい態様として、トリアムシノロンアセトナイドは約0.5〜10ミクロンへ微粉砕され、改良されたスプレー特性を有する比較的高い圧力システムを与えるようにジクロロジフルオロメタン中に懸濁されること、超音波エネルギーと共に無水エタノール又はソルビタントリオレエートが使用されれば、噴射剤中のトリアムシノロンアセトナイドの分散が改良され、細かい粒子の割合を増加せしめるとともに凝集物の割合を減少せしめること(第1欄第30〜39行)、等も記載されている。
(viii) 甲第11号証には、吸入用ワクチンエアゾール製剤であるSPREMUNAN(登録商標)について、成分として凍結乾燥トータルバクテリア抗原、ソルビタンセスキオレエート、無水アルコール及びジクロロジフルオロメタンを含有するものであることが記載されている(第1926頁右欄上)。
(B) 2.(2)(2-2)について
本件の請求項1〜4に係る発明がいずれも甲第3号証に記載されたものとはいえないことは、上記(1)(1-2)(B)(B-2)で述べたとおりである。
(C) 2.(2)(2-3)について
本件の請求項1に係る発明と甲第3号証記載の発明との間の相違点については、上の(1)(1-2)(B)(B-2)で(イ)〜(ニ)として述べたとおりである。
そして、特に上記相違点(ハ)については、CHClF2,CH2F2及びCF3CH3のいずれかを含有することを要件とする甲第3号証の記載のみに基づいて、当該要件と全く背反する(即ち、クロロフルオロカーボンの他CHClF2,CH2F2及びCF3CH3を含まない)ことを要件とする本件請求項1に係る発明を想起することは、当業者といえども困難といわざるを得ない。しかも、噴射剤として特にプロペラント134aのみを主剤として採用し、かつ上記クロロフルオロカーボン、CHClF2,CH2F2、CF3CH3のいずれをも併せて含有せしめないという、上記(ロ)、(ハ)の点を併せて具備せしめることにより、安定なエアゾール製剤を得ることについては、甲第3号証の他甲第4号証、甲第6〜11号証、資料2〜8のいずれにも記載されていないし、かつ示唆もされていない。
そして、本件の請求項1に係る発明は、上記(イ)〜(ニ)の相違点に係る要件を併せて具備することにより、オゾン層への悪影響がなく、吸入治療に適し、かつ安定なエアゾール製剤を得ることを可能にするという、本件特許明細書記載の効果を奏するものである。
よって、本件の請求項1に係る発明が、甲第3〜11号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
また、本件の請求項2〜4に係る発明は、いずれも本件の請求項1を引用して記載されているエアゾール製剤に係る発明であって、同請求項1に係る発明を更に技術的に限定したものであるから、少なくとも上で述べた理由から、同請求項1に係る発明と同様、甲第3〜11号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえないことは明らかである。
(D) 2.(2)(2-4)について
この理由に関する申立人2の主張は、その内容(特許異議申立書第14〜15頁の「4.3.3 理由3」の項参照)からみて、申立人1が提示した上記(1)(1-3)の(A)と同趣旨のものである。
しかしながら、これまた上述したとおり、本件の訂正後の特許請求の範囲においては、上記主張(A)の対象となっている請求項もしくは請求項中の記載は全て削除されているから、もはや申立人の主張する理由については検討を要しないことは明らかである。
よって、この理由によっても、本件の請求項1〜4に係る発明について、明細書の記載が特許法第36条の規定に違反しているということはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、申立人1,申立人2が提示した特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては、本件訂正後の請求項1〜4に係る各発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に各発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおりに決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
医薬エアゾール製剤
(57)【特許請求の範囲】
(1)医薬、少なくとも製剤の50重量%の分量の1,1,1,2-テトラフルオロエタン、界面活性剤、及びカウリブタノール価による極性が1,1,1,2-テトラフルオロエタンより高い少なくとも1種の化合物を含み、前記製剤がクロロフルオロカーボン及びCHClF2、CH2F2及びCF3CH3を含まず、前記製剤が経口または鼻からの吸入に適しており、その製剤が10ミクロンより小さいメジアン粒子サイズを有する医薬粒子の溶液又は懸濁液の形態であるエアゾール製剤。
(2)カウリブタノール価による極性が1,1,1,2-テトラフルオロエタンより高い化合物がアルコール、飽和炭化水素及びこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項1に記載のエアゾール製剤。
(3)医薬が、サルブタモール、ジプロピオン酸ベクロメタゾン及びクロモグリク酸二ナトリウムからなる群から選ばれるものである請求項2に記載の製剤。
(4)前記カウリブタノール価による極性が1,1,1,2-テトラフルオロエタンより高い化合物がエタノールであり、医薬が超微粉砕懸濁液の形態にある請求項2に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
本発明は医薬エアゾール製剤に関するものであり、特に、クロロフルオロカーボンをほとんど含まない、肺、鼻、口腔又は局所投与に適する製剤に関するものである。
1950年代なかばに計量投与加圧吸入器が紹介されて以来、気管支拡張剤やステロイドを喘息患者の気道へ運搬するため吸入がもっとも広く使われる手段となっている。気管支拡張剤の経口投与と比較して、吸入は迅速に作用しまた全身的副作用が生じにくい。より最近、加圧吸入器からの吸入が、気管支病の治療にはほとんど関連しない、たとえばエルゴタミンのような他の薬剤の投与のために選ばれた手段となってきている。
計量投与量吸入器は、製造に用いられる噴射剤系の推進力に依存する。噴射剤は、一般に、液化クロロフルオロカーボン(以下、単に「CFC」という)の混合物を含むものであり、このCFCは製剤に望ましい蒸気圧や安定性を与えるべく選ばれたものである。プロペラント11,12及び114は、吸入投与のためのエアゾール製剤中で最も広く用いられている噴射剤である。
近年、CFCが地球をとり囲むオゾン層と反応し、オゾン層破壊に関与していることが確証されている。CFCの使用の削減を求める圧力が世界中で沸き起こっており、多数の政府がCFCの「非必須の」使用を禁止している。このような「非必須の」使用は冷媒や発泡剤としてのCFCの使用を含むが、現在のところ、CFCの医薬への使用(CFCの総使用量の1%以下に相当する)は制限されていない。しかし、CFCのオゾン層への悪影響を考慮すると、吸入エアゾール中の使用に適する別の噴射剤システムの探索が望まれる。
米国特許第4,174,295号は、CHClF2(フレオン22)、CH2F2(フレオン32)及びCF3-CH3(フレオン143a)からなる群から選ばれる水素含有クロロフルオロカーボン又はフルオロカーボン(イ)と、CH2ClF(フレオン31)、CClF2-CHClF(フレオン123a)、CF3-CHClF(フレオン124)、CHF2-CClF2(フレオン124a)、CHClF-CHF2(フレオン133)、CF3-CH2Cl(フレオン133a)、CHF2-CHF2(フレオン134)、CF3-CH2F(フレオン134a)、CClF2-CH3(フレオン142b)及びCHF2-CH3(フレオン152a)からなる群から選ばれる水素含有フルオロカーボン又はクロロフルオロカーボン(ロ)との混合物からなるエアゾール噴射剤組成物を開示している。この組成物はたとえばn-ブタン、イソブタン、ペンタン又はイソペンタンのような飽和炭化水素噴射剤からなる第三成分(ハ)を含んでいてもよい。この噴射剤組成物は5〜60%の(イ)、5〜95%の(ロ)及び0〜50%の(ハ)を含み、ヘアースプレー、汗抑制製品、香料、室内消臭剤、塗料、殺虫剤、家庭用掃除用製品やワックス等への分野への応用が適当であると言われている。この組成物はたとえば塩化メチレンやエタノール等の分散助剤や溶媒を含んでいてもよい。
後述するカウリブタノール価による極性が1,1,1,2-テトラフルオロエタンより高いアジュバント、及び界面活性剤と併用される場合、1,1,1,2-テトラフルオロエタンが、医薬エアゾール製剤の噴射剤として使用されるための特に望ましい性質を有することが見い出された。
本発明によれば、医薬、界面活性剤、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、及び後述するカウリブタノール価による極性が1,1,1,2-テトラフルオロエタンより高い少なくとも1種の化合物を含むエアゾール製剤が提供される。
1,1,1,2-テトラフルオロエタン(以下、単に「プロペラント134a」という)より極性が高い化合物(以下、単に「アジュバント」という)と併用された場合、プロペラント134aは、吸入治療に適するエアゾール製剤の噴射剤として用いられることが見出された。アジュバントはその使用量においてプロペラント134aと混和するものでなければならない。適切なアジュバントは、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールのようなアルコール、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ネオペンタンのような炭化水素、プロペラント11,12,114,113,142b,152a,124と通常称される他の噴射剤やジメチルエーテルを含む。単独又は複数のこのようなアジュバントとプロペラント134aとの併用によって、CFCに基づく噴射剤系に匹敵する性能を有する噴射剤系が得られ、また、通常のバルブ部材や医薬製剤において公知の界面活性剤や添加剤を用いることができ、これらのことは特に有利である。何故ならば、ヒトの肺へ医薬を運搬するための計量投与吸入器において、このような化合物の使用や毒性がしっかり確立されているためのである。好ましいアジュバントは大気圧、室温(22℃)で液体や気体のものである。
最近、麻酔薬として使用される特定のCFCはそれがより低い大気中で分解されるため、重大なオゾン破壊剤ではないことが立証されている。このような化合物は本発明の高極性成分を有する。該化合物の例として、2-ブロモ-2-クロロ-1,1,1,-トリフルオロエタン、2-クロロ-1-(ジフルオロメトキシ)-1,1,2-トリフルオロエタン及び2-クロロ-2-(ジフルオロメトキシ)-1,1,1-トリフルオロエタン等が挙げられる。
先行技術とは対照的に、本発明の組成物は有効特性を与えるためにフレオン22、フレオン32やフレオン143aの存在を必要としないため、このような噴射剤は好ましくは存在しないか、または噴射剤組成物の5重量%より少ない量で存在する。本発明の組成物は好ましくはCFCを含まない。
使用される特定のアジュバント及びこのアジュバントの濃度は、用いられる特定の医薬及び製剤の望ましい物性を考慮して選択される。
プロペラント134aと医薬との二成分混合物で又はこれらとソルビタントリオレエートのような通常の界面活性剤とを組み合わせて使用した場合、加圧吸入器との使用のために望ましい性質を有する配合物が得られないことが見い出された。極性、蒸気圧、密度、粘度や界面張力のような全ての物理的パラメーターは、安定なエアゾール製剤を得るために重要であり、そして、プロペラント134aより極性の高い化合物の選択を適切に行うことにより、プロペラント134aを用いた安定なエアゾール製剤が調製される。
プロペラント134aに、プロペラント134aより極性の高い化合物を添加することにより、プロペラント134a単独中に溶解する場合に比べてより多量の界面活性剤が溶解し得る混合物が得られる。溶解した多量の界面活性剤の存在により、安定で均一な医薬粒子の懸濁液が調製できる。溶解した界面活性剤の多量の存在はまた特定の医薬の安定な溶液製剤を得ることに役立っている。
プロペラント134a及びアジュバントの極性を定量し、誘電率により、又は誘電率を屈折率(物質の屈折率は容易に測定できるかあるいは文献によって求めることができる)の2乗に関係づけるマックスウェル方程式を用いて、これらの極性を比較することができる。
あるいは、溶媒性能を予測するため、アジュバントの極性はカウリブタノール価を用いて測定し得る。測定方法はASTM規格:デジグネーション1133〜86に記載されている。しかし、前記試験方法の範囲は40℃以上の沸点を有する炭化水素溶媒に限定されている。噴射剤として要求されるより揮発性な物質に適用するため、この試験方法を下記のように改変した。
標準化
通常の試験では、カウリ樹脂溶液はトルエンに対して標準化されたトルエンの価が105と定められ、また75容量%のn-ヘプタンと25容量%のトルエンの混合液の値が40と定められている。試料が40より多いカウリブタノール価を有する場合は、75%n-ヘプタンと25%トルエンの単一の対照標準を用いるのがより適切である。ASTM規格の試験方法を用いて対照標準の滴定量が35mlと45mlの間になるまで、カウリブタノール溶液の濃度を調整する。
揮発性化合物に対する方法
試験された揮発性物質の密度は試験後、試料の添加重量から容量滴定により計算される。
カウリブタノール溶液(20g)をエアゾールボトル中に秤量する。非計量バルブをボトルにクリンプし、ボトルと試料の重量を測定する。ASTM規格に詳述される手順にできるだけ沿って(ASTMに規定される)終点に達するまで、揮発性試料を少しづつエアゾールボトルからトランスファー締め具を介して移動させる。滴定に用いたカウリブタノール溶液とともにエアゾールボトルを再秤量する。
カウリブタノール価は次式を用いて計算される。

式中、W2は滴定後のエアゾールボトルの重量(g)であり、W1は滴定前のエアゾールボトルの重量(g)であり、dは試料の密度(g/ml)であり、BはASTM規格で規定されているように20gのカウリブタノール溶液を滴定するために必要とされるヘプタン・トルエン混合物のmlである。
滴定量(V)が溶液からカウリ樹脂の沈殿を伴って得られた場合、より高いカウリブタノール価が極性のより高い試料を表わす。
もし、試料とカウリブタノール溶液が混和しないならば、おそらく過度の低い極性のため試料とブタノールが混和しないせいであろうと考えられる。しかし、過度の高い極性もまた不混和をもたらすであろうとも考えられる。このことは、試料と水との混和性をチェックすることにより試験される。もし、試料が水とも混和せずかつカウリブタノール溶液とも混和しない場合は、カウリブタノール価は低すぎて測定できず、その極性はカウリブタノール溶液への正しい滴定量を与えるいずれの物質の極性より低いとみなされる。
好ましくは、アジュバントとその濃度を特に選択することにより6.0〜8.5(cal/cm3)1/2の溶解パラメーターを有する混合物が得られる。6.0(cal/cm3)1/2以下の溶解パラメーターを有する噴射剤系は界面活性剤にとって都合の悪い溶媒であり、医薬の不安定な懸濁製剤をもたらす。プロペラント134aとアジュバントを含む噴射剤系の好ましい溶解パラメーターは6.5〜7.8(cal/cm3)1/2の範囲内である。
噴射剤系の蒸気圧は医薬に推進力を与えるため、重要な因子である。プロペラント134aの蒸気圧が望ましい範囲内となるよう該蒸気圧を減じるアジュバントが選択される。このことはこの投与形態の製造にとって有利となり、室温で目的蒸気圧を変化させる大きな融通性をもたらす。プロペラント134aの蒸気圧を抑制するのに必要とされる一方、アジュバントの選択の別の因子は、エアゾール製剤を製造しそれを容器に封入する目的のため混合物がより低い温度に下げられた場合、アジュバントは容易に不混和(demix)となってはいけないことである。
またアジュバントの選択に応じて、望むならば、蒸気圧を増加させてもよい。いくつかの噴射剤混合物はラウールの法則から逸脱することが見い出された。特定のアルコールを添加しても室温でプロペラント134aとの混合物の蒸気圧はほとんど変わらない。しかし、プロペラント134aより低い蒸気圧を有する特定の炭化水素を添加すると、混合物はより高い蒸気圧を有するようになる。
本発明の製剤の25℃における蒸気圧は、一般に20〜150psig(1.4〜10.3×105N/m2)の範囲であり、好ましくは40〜90psig(2.8〜6.2×105N/m2)の範囲である。
アジュバントの選択はまた、製剤の密度を変えるために必要とされる。密度を適切に調節することにより分散した医薬粉末の沈殿またはクリーミング傾向を減じることができる。製剤の密度は一般に0.5〜2.0g/cm3の範囲であり、好ましくは0.8〜1.8g/cm3の範囲であり、より好ましくは1.0〜1.5g/cm3の範囲である。
アジュバントの選択はまた製剤の粘度(好ましくは10cP以下)の調節のため必要とされる。
アジュバントの選択はまた噴射剤系の界面張力を調節するために必要とされる。最適な医薬粒子の分散と安定性を得るため、製剤の界面張力は望ましくは70dynes/cm以下である。
プロペラント134aは一般にエアゾール製剤中に、製剤にたいして少なくとも50重量%存在し、通常60重量%〜95重量%存在する。
プロペラント134aと極性の高い成分は一般にプロペラント143a:高極性成分が50:50〜99:1の重量比で、好ましくは70:30〜98:2の重量比で、より好ましくは85:15〜95:5の重量比で用いられる。プロペラント134aより極性の高い、好ましい化合物はエタノール、ペンタン、イソペンタン及びネオペンタンである。
本発明のエアゾール製剤は、製剤を安定化させるためまたバルブ部材を滑りやすくするため、界面活性剤を含む。望ましい界面活性剤は、公知の、たとえば英国特許第837465号及び第994734号や米国特許第4,352,789号に開示されている、非フッ素系界面活性剤とフッ素系界面活性剤の両方を含む。
望ましい界面活性剤の例を次に挙げる。
とうもろこし油、オリーブ油、綿実油、ひまわり油のような天然資源由来の油、
商品名スパン(Span)85として得られるソルビタントリオレエート、
商品名スパン80として得られるソルビタンモノオレエート、
商品名スパン20として得られるソルビタンモノラウレート、
商品名ツウィーン(Tween)20として得られるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート、
商品名ツウィーン80として得られるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、
商品名エピクロン(Epikuron)、特にエピクロン200として得られる天然資源由来のレシチン、
商品名ブリジ(Brij)92として得られるオレイルポリオキシエチレン(2)エーテル、
商品名ブリジ72として得られるステアリルポリオキシエチレン(2)、
商品名ブリジ30として得られるラウリルポリオキシエチレン(4)エーテル、
商品名ゲナポル(Genapol)0-020として得られるオレイルポリオキシエチレン(2)エーテル、
商品名シンペロニック(Synperonic)として得られるオキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック共重合体、
オレイン酸、合成レシチン、ジエチレングリコールジオレエート、テトラヒドロフルフリルオレエート、エチルオレエート、イソプロピルミリステート、グリセリルトリオレエート、グリセリルモノラウレート、グリセリルモノオレエート、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノリシノレエート、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコール400、セチルピリジニウムクロリド。
界面活性剤は一般に製剤の総重量にたいして5重量%を超えない量で存在する。これらは、通常界面活性剤:医薬が1:100〜10:1の重量比で存在するが、製剤中の医薬濃度が非常に低い場合は界面活性剤はこの重量比を超えてもよい。
望ましい固体医薬は、たとえば、血管収縮のためのアミン、酵素、アルカロイド又はステロイドのような、抗アレルギー剤、鎮痛剤、気管支拡張剤、抗ヒスタミン剤、治療用たん白質やペプチド、鎮咳剤、抗狭心症製剤、抗生物質、抗炎症製剤、ホルモン剤やスルホンアミド、又はこれらの複数の組み合わせを含む。
使用可能な医薬の例として次の医薬が挙げられる。
イソプロテレノール〔アルファー(イソプロピルアミノメチル)プロテカテキュイルアルコール〕、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、グルカゴン、アドレノクロム(adrenochrome)、トリプシン、エピネフリン、エフエドリン、ナルコチン、コデイン、アトロビン、ヘパリン、モルフィン、ジヒドロモルフィノン、エルゴタミン、スコポラミン、メタピリレン、シアノコバラミン、テルブタリン、リミテロール(rimiterol)、サルブタモール、フルニゾリド(flunisolide)、コルヒチン、ピルブテロール、ベクロメタゾン、オルシプレナリン、フェンタニール、及びジアモルフィン。他に、ネオマイシン、ストレプトマイシン、ペニシリン、プロカインペニシリン、テトラサイクリン、クロロテトラサイクリンやヒドロキシテトラサイクリンのような抗生物質、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾンやプレドニゾロンのような副腎皮質刺激ホルモンや副腎皮質ホルモン、インシュリン、クロモリンナトリウム(cromolyn sodium)のような抗アレルギー化合物も挙げられる。
前記列挙された医薬は遊離の塩基又は公知の単独あるいは複数の塩のいずれかの形態で用いられる。遊離の塩基又は塩の選択は、製剤中の医薬の物理的安定性に影響を与える。たとえば、本発明の製剤中においてサルブタモールの遊離塩基は、硫酸サルブタモールより高い分散安定性を与える。
前記医薬について次に挙げる塩を用いることができる。
酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重酒石酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、ジヒドロクロリド、エデト酸塩、エディシレート(edisylate)エストレート(estolate)、エシレート(esylate)、フマル酸塩、フルシプテート(fluceptate)、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グルコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシネート(hexylresorcinate)、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、臭化メチル塩、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、ムチン酸塩、ナプシレート(napsylate)、硝酸塩、パモ酸塩(エンボネート)、パントテン酸塩、リン酸塩/ピロリン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サルチル酸塩、ステアリン酸塩、次酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩及びトリエチオダイド(triechiodide)。
カチオン塩もまた用いることができる。望ましいカチオン塩は、ナトリウムやカリウムなどのようなアルカリ金属、及び例えばグリシン、エチレンジアミン、コリン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、オクタデジルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、1-アミノ-2-プロパノール-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)プロパン-1,3-ジオールや1-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-2 イソプロピルアミノエタノールのような薬学的に許容される公知のアンモニウム塩やアミンの塩を含む。
大きい粒子は容器のバルブやオリフィスを目詰りさせる可能性があるので、医薬上の目的から粉末粒子の直径は100ミクロン以下であることが望ましい。好ましくは、粒子の直径は25ミクロン以下である。生理学上の理由から微細に分割された固体粉末粒子の直径は25ミクロン以下であることが望ましく、より好ましくは約10ミクロン以下である。吸入治療に用いる粉末の粒子径は好ましくは2〜10ミクロンの範囲である。
製造されたエアゾールの使用形態によって課せられる以外には、粒子径に下限はない。粉末が固体医薬である場合、粒子径の下限は身体組織に容易に吸収され保持されるような下限である。粒子が直径1/2ミクロン以下で吸入により投与された場合、粒子は患者から吐き出されやすい。
医薬の濃度は目的の投与量によって異なるが、一般に0.01〜5重量%である。
本発明の製剤はCFCを用いる製剤と同様の方法により、計量バルブ付エアゾール容器に封入され希釈される。
以下、本発明を実施例により説明する。
次の成分が実施例で用いられた。
硫酸サルブタモールB.P.(超微粉砕) -サルブタモール
ジプロピオン酸ベクロメタゾン
イソプロピルソルベート(超微粉砕) -BDP
クロモグリク酸ナトリウムB.P.(超微粉砕) -DSCG
ソルビタントリオレエート -スパン(Span)85
リポイド(Lipoid)S100という商品名で商業的に得られるレシチン
-リポイドS100
オレイン酸B.P. -オレイン酸
1,1,1,2-テトラフルオロエタン -P134a
エチルアルコールB.P. -エタノール
n-ペンタン、標準研究試薬 -n-ペンタン
実施例の製剤を次の方法により調製した。
各々の医薬と界面活性剤は組み合わせて、小ビーカー中に秤量した。例えばエタノールのような噴射剤系の高沸点成分を必要量、加え、混合物をシルバーソン(Silverson)ミキサーを用いて均質化した。必要量の混合物をP.E.T.ボトル中に入れ、エアゾールバルブを正しくクリンプした。プロペラント134aを必要量加圧封入により加えた。
実施例1〜6
サルブタモールを含む製剤
各々の製剤を下記の表のとおりに調製した。

全ての製剤はサルブタモールの懸濁液を含む。エタノールを含む実施例4〜6のものはn-ペンタンを含む実施例1〜3のものより安定であるようにみえ、沈降傾向も少なかった。
実施例7〜12
ジプロピオン酸ベクロメタゾンを含む製剤
各々の製剤を下記の表のとおりに調製した。


n-ペンタンを含む製剤については、実施例9のものより実施碗7と8のものの方が濁りが少なく、また実施例8のものは4〜5日後に溶液となった。
実施例10〜12では、溶液製剤が得られた。
実施例13〜18
クロモグリク酸ナトリウムを含む製剤
各々の製剤を下記の表のとおりに調製した。

実施例13〜18では懸濁製剤が得られ、エタノールを含む実施例16〜18のものはn-ペンタンを含む実施例13〜15のものより安定な性質を示した。
実施例19〜23
次の実施例ではプロペラント134aとともに種々のアジュバントを用いた。

各々の実施例では容積5mlであり、安定な懸濁形態であった。
実施例24
本実施例では次の基本的な製剤において種々の界面活性剤を用いた。

安定な懸濁液を作るため、特定された濃度で次の界面活性剤を用いた。
1. スパン85 A,B.
2. スパン80 A.
3. スパン20 A.
4. ツウィーン20 A.
5. ツウィーン80 A.
6. オレイン酸 A,B.
7. エピクロン200 B.
8. 合成レシチン B.
9. ブリジ92 A.
10. ブリジ72 A.
11. ブリジ30 B.
12. ゲナポル0-020 A.
13. ジエチレングリコールジオレエート A.
14. テトラヒドロフルフリルオレエート A.
15. エチルオレエート A.
16. イソプロピルミリステート B.
17. グリセリルトリオレエート A,B.
18. グリセリルモノラウレート A.
19. グリセリルモノオレエート A.
20. グリセリルモノステアレート A.
21. グリセリルモノリシノレエート A.
22. セチルアルコール A.
23. ステアリルアルコール B.
24. ポリエチレングリコール400 B.
25. シンペロニックPE L61 A.
26. シンペロニックPE L64 A.
27. シンペロニックPE L92 A.
28. シンペロニックPE L94 A.
29. セチルピリジニウムクロリド A.
30. FC 807遊離酸(主にビス(パーフルオロ
-n-オクチル-N-エチルスルホンアミドエ
チル)ホスフェートからなる) A,B.
31. とうもろこし油 B.
 
訂正の要旨 訂正の要旨
・訂正事項a
特許請求の範囲に
「 【請求項1】医薬、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、界面活性剤、及びカウリブタノール価による極性が1,1,1,2-テトラフルオロエタンより高い少なくとも1種の化合物を含むエアゾール製剤。
【請求項2】10ミクロン以下のメジアン粒子径を有する医薬粒子の溶液又は懸濁液の形態である製剤であって、経口又は鼻からの吸入により患者へ投与するのに適する請求項1に記載のエアゾール製剤。
【請求項3】CHClF2,CH2F2,CF3CH3又はそれらの混合物を含み、その含有量が、噴射組成物の5重量%以下である請求項1又は2に記載のエアゾール製剤。
【請求項4】カウリブタノール価による極性が1,1,1,2-テトラフルオロエタンより高い化合物が、アルコール、飽和炭化水素及びこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項1又は2又は3に記載のエアゾール製剤。
【請求項5】(a)治療的に有効量の医薬、及び(b)クロロフルオロカーボンを実質的に含まない噴射剤を含み、該噴射剤が1,1,1,2-テトラフルオロエタンであり、吸入により肺に搬送するのに適したエアゾール製剤。
【請求項6】医薬が、サルブタモール、ジプロピオン酸ベクロメタゾン及びクロモグリク酸二ナトリウムからなる群から選ばれるものである請求項5に記載の製剤。
【請求項7】さらに(c)界面活性剤を含む請求項5に記載の製剤。
【請求項8】さらに、1,1,1,2-テトラフルオロエタンより極性の高い化合物を含む請求項5に記載の製剤。
【請求項9】前記極性の高い化合物がエタノールであり、医薬が超微粉砕懸濁液の形態にある請求項8に記載の製剤。
【請求項10】計量バルブを備えたエアゾール容器中に収容されたエアゾール製剤であって、該製剤が、(a)治療的に有効量の医薬、及び(b)クロロフルオロカーボンを実質的に含まない噴射剤を含み、該噴射剤が1,1,1,2-テトラフルオロエタンであり、該エアゾール容器から吸入により肺に搬送するのに適したエアゾール製剤。
【請求項11】吸入により肺に搬送するのに適したエアゾール溶液製剤の製造方法において、
(a)エアゾール容器を準備する工程、及び
(b)該容器に、
(i)前記製剤の治療的に有効な複数の投与量を与えるのに十分な量の医薬、
(ii)前記容器から、治療的に有効な複数の投与量を噴射するのに十分な量の噴射剤であって、クロロフルオロカーボンを実質的に含まず、1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含む噴射剤を、
装填する工程、及び
(c)該医薬を溶解する工程、
を含む方法。
【請求項12】吸入により肺に搬送するのに適したエアゾール懸濁液製剤の製造方法において、
(a)エアゾール容器を準備する工程、及び
(b)該容器に、
(i)治療的に有効な複数の投与量を与えるのに十分な量の医薬、
(ii)前記容器から、治療的に有効な複数の投与量を噴射するのに十分な量の噴射剤であって、クロロフルオロカーボンを実質的に含まず、1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含む噴射剤を、
装填する工程、及び
(c)該医薬を懸濁する工程、
を含む方法。
【請求項13】吸入により肺に搬送するのに適したエアゾール製剤の製造方法において、
(a)エアゾール容器を準備する工程、及び
(b)該容器に、
(i)治療的に有効な複数の投与量を与えるのに十分な量の医薬、
(ii)前記容器から、治療的に有効な複数の投与量を噴射するのに十分な量の噴射剤であって、クロロフルオロカーボンを実質的に含まず、1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含む噴射剤、
(iii)エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン、イソプロピルミリステート及びこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物、及び
(iv)界面活性剤を、
装填する工程、
を含む方法。
【請求項14】計量バルブを備えたエアゾール容器から医薬を含むエアゾール製剤を搬送する方法において、該製剤が該容器から吸入により肺に搬送するのに適したものであり、前記製剤中に、クロロフルオロカーボンを実質的に含まず、1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含む噴射剤を使用することを特徴とする方法。
【請求項15】エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン及びイソプロピルミリステートからなる群から選ばれる化合物を使用することを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】医薬が、サルブタモール、ジプロピオン酸ベクロメタゾン及びクロモグリク酸二ナトリウムからなる群から選ばれるものである請求項14に記載の方法。
【請求項17】医薬エアゾール製剤であって、
(a)治療的に有効量の医薬、
(b)1,1,1,2-テトラフルオロエタンを含む噴射剤、
及び
(c)1,1,1,2-テトラフルオロエタンより極性の高い少なくとも1種の化合物を含み、
該医薬は、該製剤中に実質的に完全に溶解しており、1,1,1,2-テトラフルオロエタンより極性の高い化合物は、1,1,1,2-テトラフルオロエタンと混和性であり、該製剤は、吸入により肺に搬送するのに適したものである製剤。 」
とあるのを、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的として
「 (1) 医薬、少なくとも製剤の50重量%の分量の1,1,1,2-テトラフルオロエタン、界面活性剤、及びカウリブタノール価による極性が1,1,1,2-テトラフルオロエタンより高い少なくとも1種の化合物を含み、前記製剤がクロロフルオロカーボン及びCHClF2、CH2F2及びCF3CH3を含まず、前記製剤が経口または鼻からの吸入に適しており、その製剤が10ミクロンより小さいメジアン粒子サイズを有する医薬粒子の溶液又は懸濁液の形態であるエアゾール製剤。
(2) カウリブタノール価による極性が1,1,1,2-テトラフルオロエタンより高い化合物がアルコール、飽和炭化水素及びこれらの混合物からなる群から選ばれる請求項1に記載のエアゾール製剤。
(3) 医薬が、サルブタモール、ジプロピオン酸ベクロメタゾン及びクロモグリク酸二ナトリウムからなる群から選ばれるものである請求項2に記載の製剤。
(4) 前記カウリブタノール価による極性が1,1,1,2-テトラフルオロエタンより高い化合物がエタノールであり、医薬が超微粉砕懸濁液の形態にある請求項2に記載の製剤。 」
と訂正し、
・訂正事項b
特許明細書第2頁第11〜12行(特許第2786493号公報(以下単に特許公報という)第2頁第4欄第36〜37行)に
「 加圧吸入器からの吸収 」
とあるのを、明りょうでない記載の釈明又は誤記の訂正を目的として
「 加圧吸入器からの吸入 」
と訂正し、
・訂正事項c
特許明細書第4頁第9行(特許公報第3頁第5欄第19行)に
「 イゾブタン 」
とあるのを、誤記の訂正を目的として
「 イソブタン 」
と訂正し、
・訂正事項d
特許明細書第20頁第9行(特許公報第6頁第11欄第3行)に
「 アミノの塩 」
とあるのを、誤記の訂正を目的として
「 アミンの塩 」
と訂正し、
・訂正事項e
特許明細書第29頁第4行(特許公報第7頁第14欄第25行)に
「 ジエチレングリコールジオレート 」
とあるのを、誤記の訂正を目的として
「 ジエチレングリコールジオレエート 」
と訂正し、
・訂正事項f
特許明細書第29頁第8行(特許公報第7頁第14欄第29行)に
「 グリセリルトリオレート 」
とあるのを、誤記の訂正を目的として
「 グリセリルトリオレエート 」
と訂正する。
異議決定日 2001-09-05 
出願番号 特願平1-317415
審決分類 P 1 651・ 14- YA (A61K)
P 1 651・ 532- YA (A61K)
P 1 651・ 121- YA (A61K)
P 1 651・ 113- YA (A61K)
P 1 651・ 531- YA (A61K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 後藤 圭次  
特許庁審判長 田中 倫子
特許庁審判官 宮本 和子
大久保 元浩
登録日 1998-05-29 
登録番号 特許第2786493号(P2786493)
権利者 ライカー ラボラトリース インコーポレーテッド
発明の名称 医薬エアゾール製剤  
代理人 小林 純子  
代理人 赤岡 迪夫  
代理人 小林 純子  

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