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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B41M
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  B41M
審判 全部申し立て 発明同一  B41M
管理番号 1051522
異議申立番号 異議2000-70299  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-05-15 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-01-28 
確定日 2001-12-19 
異議申立件数
事件の表示 特許第2925699号「熱転写カバーフイルム」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2925699号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 
理由
I.手続の経緯
特許第2925699号に係る発明は、平成2年10月4日に出願され、平成11年5月7日に設定登録され、その後、特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成12年11月6日に訂正請求書が提出され、訂正拒絶理由通知がなされ、その指定期間内に意見書提出等何らの応答もなされなかったものである。
II.訂正の適否について
1.訂正請求書による訂正の適否

特許権者は、願書に添付された明細書の
特許請求の範囲「【請求項1】基材フィルム上に透明樹脂層を剥離可能に設け、更にその表面に感熱接着剤層を設けてなる熱転写カバーフィルムにおいて、上記感熱接着剤層が耐光化剤を含有することを特徴とする熱転写カバーフィルム。
【請求項2】耐光化剤が紫外線吸収剤、酸化防止剤又は光安定化剤である請求項1 に記載の熱転写カバーフィルム。
【請求項3】感熱接着剤層がガラス転移温度(Tg)40〜75℃の樹脂からなる請求項1に記載の熱転写カバーフィルム。
【請求項4】基材フィルムと透明樹脂層との間に剥離層が設けられている請求項1 に記載の熱転写カバーフィルム。」との記載を、
「【請求項1】基材フィルム上に透明樹脂層を剥離可能に設け、更にその表面に感熱接着剤層を設けてなる熱転写カバーフィルムにおいて、上記感熱接着剤層が酸化防止剤又は光安定化剤を含有することを特徴とする熱転写カバーフィルム。
【請求項2】感熱接着剤層がガラス転移温度(Tg)40〜75℃の樹脂からなる請求項1に記載の熱転写カバーフィルム。
【請求項3】基材フィルムと透明樹脂層との間に剥離層が設けられている請求項1 に記載の熱転写カバーフィルム。」とする訂正〈訂正事項A〉、
同明細書の表1
「 紫外線吸収剤 酸化防止剤 光安定化剤 蛍光増白剤
(TINUVIN-P) (IRGANOX-245) (TINUVIN-144) (ユビテックス-OB)
実施例1 1部添加 - - -
実施例2 - 1部添加 - -
実施例3 - - 1部添加 -
実施例4 - - - 0.01部添加
実施例5 1部添加 1部添加 - -
実施例6 1部添加 - 1部添加 -
実施例7 - 1部添加 1部添加 -
実施例8 1部添加 1部添加 1部添加 0.01部添加」
との記載を、
「 酸化防止剤 光安定化剤 蛍光増白剤
(IRGANOX-245) (TINUVIN-144) (ユビテックスOB)
実施例1 1部添加 - -
実施例2 - 1部添加 -
実施例3 1部添加 - -
実施例4 - 1部添加 -
実施例5 1部添加 1部添加 -
実施例6 1部添加 1部添加 0.01部添加」
とする訂正〈訂正事項B-(5)〉、
同明細書の表2
「 耐光性 暗退色 増白効果
実施例1 5% 8% なし
実施例2 13% 3% なし
実施例3 14% 9% なし
実施例4 15% 8% 有り
実施例5 5% 4% なし
実施例6 6% 9% なし
実施例7 14% 3% なし
実施例8 4% 2% 有り
比較例1 10% 8% なし
比較例2 15% 6% 若干の黄変
比較例3 14% 9% なし
比較例4 15% 8% なし
比較例5 10% 6% なし
比較例6 11% 9% なし
比較例7 14% 7% なし
比較例8 9% 5% 少し有り」
との記載を、
「 耐光性 暗退色 増白効果
実施例1 13% 3% なし
実施例2 14% 9% なし
実施例3 5% 4% なし
実施例4 6% 9% なし
実施例5 14% 3% なし
実施例6 4% 2% 有り
比較例1 10% 8% なし
比較例2 15% 6% 若干の黄変
比較例3 14% 9% なし
比較例4 15% 8% なし
比較例5 10% 6% なし
比較例6 11% 9% なし
比較例7 14% 7% なし
比較例8 9% 5% 少し有り」
とする訂正〈訂正事項B-(7)〉等を求めている。
特許権者は、訂正事項Aについて、取消理由通知書により指摘された取消理由を解消するための訂正で、特許請求の範囲の減縮に相当するものであり適法である旨、及び、訂正事項B-(5)、B-(7)について、特許請求の範囲の減縮の訂正に伴い、特許請求の範囲と発明の詳細な説明欄の記載との不整合を正すための訂正で、明瞭でない記載の釈明に相当するものであり適法である旨主張する。
そこで以下に検討する。
〈訂正事項B-(5)〉は、
実施例欄中の第1表(本件発明に係る熱転写カバーフィルムの製造に係る実施例1〜8で、「接着剤層用インキ」に配合される添加剤の種類と添加量を示す表である。)について、紫外線吸収剤の添加量を示す欄を縦一列すべて削除し、
かつ、実施例1の添加剤の種類と添加量(紫外線吸収剤のみ1部添加)を示す横一行と、実施例4の添加剤の種類と添加量(蛍光増白剤のみ0.01部添加)を示す横一行とを削除する訂正であり、見かけ上は、特許請求の範囲の訂正(紫外線吸収剤の添加を除外する減縮の訂正)に準じた形式となっている。
しかし、該訂正後の第1表によって配合添加剤の種類・量が説明される実施例6は、「接着剤層用インキ」に、紫外線吸収剤は添加せず、酸化防止剤を1部添加、光安定化剤を1部添加、蛍光増白剤を0.01部添加して熱転写カバーフィルムを調製する事例となっており、
出願当初の明細書には全く開示されていなかった調製事例であるから、
該訂正は、願書に添付した明細書に記載のない新規事項を加入するものであり、特許法第120条の4第3項で準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書の規定に適合しない。
〈訂正事項B-(7)〉は、
実施例欄中の第2表(本件発明に係る実施例1〜8で調製した熱転写カバーフィルムの使用結果により作用効果を評価する表である。)について、上述のとおり、第1表に準じた訂正がなされている。
そして、該訂正後の第2表で使用結果が説明される実施例6は、「接着剤層用インキ」に、紫外線吸収剤は添加せず、酸化防止剤を1部添加、光安定化剤を1部添加、蛍光増白剤を0.01部添加して熱転写カバーフィルムを調製した事例の使用結果を示すものであり、
出願当初の明細書には開示されていない調製例の使用結果を示すものであるから、
該訂正は、願書に添付した明細書に記載のない新規事項を加入するものであり、特許法第120条の4第3項で準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書の規定に適合しない。
したがって、本件訂正は、特許法第120条の4第3項で準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書の規定に違反するものであるから、訂正を認めることはできない。
III.特許異議申立てについての判断
1.本件発明
上記訂正は認められないから、本件請求項1〜4に係る発明は、特許明細書の特許請求の範囲請求項1〜4に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
A.基材フィルム上に
B.透明樹脂層を剥離可能に設け、
C.更にその表面に感熱接着剤層を設けてなる熱転写カバーフィルムにおいて、
D.上記感熱接着剤層が耐光化剤を含有することを特徴とする熱転写カバーフィルム。
【請求項2】
E.耐光化剤が紫外線吸収剤、
F.酸化防止剤
G.又は光安定化剤である請求項1 に記載の熱転写カバーフィルム。
【請求項3】
H.感熱接着剤層がガラス転移温度(Tg)40〜75℃の樹脂からなる請求項1に記載の熱転写カバーフィルム。
【請求項4】
I.基材フィルムと透明樹脂層との間に剥離層が設けられている請求項1 に記載の熱転写カバーフィルム。」
(なお、当審にて、証拠方法に記載の発明との対比の便宜から、文節化と、A〜Iの文節符号の付与を行った。)
2.取消理由の概要
当審が通知した取消理由は、
証拠方法1:特願平1-281459号(特開平3-142288号公報参照)
証拠方法2:特開昭58-149048号公報
証拠方法3:特開昭59-85793号公報
証拠方法4:特開昭60-204397号公報
証拠方法5:特開昭59-127798号公報
証拠方法6:特開平1-237193号公報
証拠方法7:特開平1-208193号公報
を引用し、
《理由1》
本件の請求項1、2、4に係る発明は、それぞれ、証拠方法2〜4に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものであるから、
本件の請求項3に係る発明は、証拠方法4に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号の規定に違反して特許されたものであるから、
《理由2》
また、本件の請求項2、3に係る発明は、それぞれ、証拠方法2〜7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、
《理由3》
さらに、本件の請求項1、2、3に係る発明は、それぞれ、証拠方法1の先願明細書に記載された発明と同一であり、特許法第29条の2の規定に違反して特許されたものであるから、特許を取り消すべきであるとするものである。
3.各証拠方法の記載内容
(1)証拠方法1の先願明細書の記載内容
証拠方法1の先願明細書には、「転写箔」(発明の名称)に関して、
「(1)耐熱性ベースフィルム上に、このベースフィルムから剥離容易な剥離層、紫外線吸収剤を含む接着剤層を順次積層して成る転写箔。
(2)剥離層が耐摩擦剤と熱可塑性樹脂から成り、その熱可塑性樹脂がポリメチルメタアクリレート、ニトロセルロースまたはポリメチルメタアクリレートとニトロセルロースの混合物であることを特徴とする請求項(1)記載の転写箔。
(3)接着層が紫外線吸収剤と、ガラス転移点が50℃以上の熱可塑性樹脂から成ることを特徴とする請求項(1)または(2)記載の転写箔。」(特許請求の範囲)、
「(産業上の利用分野)本発明は転写箔に関する。更に詳しくは、いわゆる昇華性染料で染色したプラスチック材料の表面に加熱転写して、染料の変褪色やブリードを防止することのできる転写箔に関する。」(第1頁左下欄第17行〜同頁右下欄第3行)、
「また、剥離層(12)は熱転写時に容易にベースフィルム(11)から剥離する必要がある。また、転写された後の保護膜の機能を果たす必要がある。保護膜の機能とは染料による画像の外部からの化学的及び機械的損傷を防ぐことである。この両者の機能を満たすためには耐摩擦剤と熱可塑性樹脂の混合物を使用すれば良い。」(第2頁右下欄第7〜13行)、
「接着層(13)に使用する熱可塑性樹脂はガラス転移点(Tg)が50以上のものが使用できる。・・・また、ガラス転移点が110℃以下のものが好ましい。」(第3頁右下欄第14〜19行)と記載されている。
(2)証拠方法2の記載内容
証拠方法2には、「カラーハードコピー印画紙用カバーフィルム」(発明の名称)に関して、
「耐熱性基材および上記耐熱性基材上に形成され、上記耐熱性基材に対して接着性を有せず、加熱により印画紙表面に溶融転着する無色透明の紫外線遮断層を有するカラーハードコピー印画紙用カバーフィルム。」(特許請求の範囲)、
「発明の詳細な説明 本発明は・・・さらに詳しく説明すると、昇華性染料を使ってできた転写紙から印画紙側に転写染着されてできるカラーコピーの表面上に紫外線を透さない薄い透明樹脂層を比較的取扱い易い厚さと強度を持つ基材側から加熱圧着により転写して退色性を防いだカールの少ない保護層を形成しうるカラーハードコピー印画紙用カバーフィルムに関するものである。」(第1頁左下欄第10行〜同頁右下欄第1行)、
「カバー材(C)は2層より成り基材側一層は基材と融着しない無色透明な架橋型耐熱樹脂層・・・(C’)より成り、他の一層は印画紙と上層(C’)に対して密着性のある無色透明層(C”)より成る。・・・紫外線を防ぐためカバー材中に所定量の紫外線吸収剤を加えることが好ましい。」(第2頁右上欄第14行〜同頁左下欄第2行)、
「基材表面はカバー材との剥離を容易にするためシリコン系またはフッ素系の剥離処理を行ってもかまわない。」(第2頁左下欄第8〜10行)と記載され、
実施例1には、25μポリエステルフィルムの耐熱性基材の片側表面に、シリコーン系剥離剤を塗工して剥離処理してから、カバー材を積層して、印画紙用カバーフィルムを調製することが示されている。
(3)証拠方法3の記載内容
証拠方法3には、「昇華転写式ハードコピー用カバーフィルム」(発明の名称)に関して、
「印画紙表面に融着される昇華転写式ハードコピー用カバーフィルムにおいて、該カバーフィルムが蛍光増白剤と樹脂とを主体とする層を含むことを特徴とする昇華転写式ハードコピー用カバーフィルム。」(特許請求の範囲)、
「蛍光増白剤は樹脂に対して0.01〜5PHR加えると効果的である。また、カバーフィルム層中に紫外線吸収剤を含ませるを可とする。」(第2頁右下欄第13〜16行)、
「本発明についての実験3は12μポリエステルフィルムによる基材(1a)上に1PHRの蛍光増白剤WhiteflouorG(住友化学工業社製)が溶解された5μのセルロースアセテートブチレート(住友バイエル社製)より成る第2図の如き第1層(1b)を形成し、その上に5μのポリエステル樹脂層を第2層(1b’)とした転写カバーフィルム層を作成した。これを前述の印画紙上に同様な条件で加熱圧着した後、ポリエステルフィルムの基材(1a)のみ取り除き転写カバーフィルム層を形成した。」(第3頁右下欄第19行〜第4頁左上欄第8行)、
「基材(1a)とカバーフィルム層(1b)との剥離を容易にするためにシリコン系またはフッ素系の剥離処理を行なってもかまわない。」(第4頁右下欄第5〜8行)と記載されている。
(4)証拠方法4の記載内容
証拠方法4には、「カラーハードコピー印画紙用カバーフィルム」(発明の名称)に関して、
「昇華転写により印画されたカラーハードコピー印画紙表面上に形成されるカラーハードコピー印画紙用カバーフィルムにおいて、ガラス転移温度40℃以上、吸水率(ASTM D570)2%以下にて形成する層を少なくとも一層有するようにしたカラーハードコピー印画紙用カバーフィルム。」、
「産業上の利用分野 本発明は・・・さらに詳しく説明すると、昇華性染料を使ってできた転写紙から印画紙側に転写染着されてできるカラーコピーの表面上に紫外線を透さない薄い透明樹脂層を比較的取扱い易い厚さと強度を持つ基材側から加熱圧着により転写して退色性を防いだカールの少ない保護層を形成しうるカラーハードコピー印画紙用カバーフィルムに関するものである。」(第1頁左下欄第13行〜同頁右下欄第3行)、
「基材の厚さは、3〜100μmの範囲が好ましい。また、第1の層(2)の厚みは1〜100μmが好ましく、基材との接着性のないものが好ましいが、基材と対向する面に剥離処理をしてもよい。また、第2の層(3)は染料の吸着性の高い樹脂であることが好ましくセルロースプロピオネート等を用いることができる。また、夏場の車中等を考慮するとガラス転移温度を70℃以上とするとさらに好ましい。また、変色剤、吸収剤、蛍光増白剤を添加してもよい。」(第4頁右下欄第9〜19行)、
と記載され、
実施例として、ポリエチレンテレフタレートフイルム基材上に、ポリスチレン樹脂等からなるカバーフィルム第1層、内部可塑化ポリエステル樹脂等からなるカバーフィルム第2層(ガラス転移温度は40℃(実施例2)、47℃(実施例3)、43℃(実施例5))の2層の樹脂層を設けたカバーフイルムを調製し、印画紙の転写画像上に加熱圧着し、ポリエチレンテレフタレートフイルム基材を剥離したことが示されている。
(5)証拠方法5の記載内容
証拠方法5には、「カラー転写紙」(発明の名称)に関して、
「少なくとも1つのカラー記録用昇華性色素及びワックスを主剤とし少なくとも紫外線吸収剤を有する透明の熱溶融性保護膜を同一基紙の表面に塗り分けたカラー転写紙。」(特許請求の範囲)、
「保護膜11はワックスを主剤とし、中に透明な紫外線吸収剤12、酸化防止剤13等を含有する透明な熱溶融性層として形成されている。」(第2頁右上欄第5〜8行)、
「基紙の表面はなめらかで、熱溶融性保護膜との結びつきは弱くカラー転写紙8を受像紙15から分離すると、いったん溶融した熱溶融性保護膜は受像紙15の表面に移る。この時の転写は画面全面に行っても良いし、いずれかの染料がついている所にのみ行っても良い。このように転写が完了すると、第8図に示すように、受像紙15の記録面は、紫外線吸収剤や酸化防止剤を含む保護膜11’に覆われることになり、紫外線や空中の酸素に対して遮断され、受像紙上の染料は安定であり、長い間にわたって美しい色調を保つことができる。」(第2頁左下欄第13行〜同頁右下欄第4行)と記載されている。
(6)証拠方法6の記載内容
証拠方法6には、「ラミネートフィルム」(発明の名称)に関して、
「(1)熱移行性染料を有する熱転写シートから移行された染料により画像が形成された画像形成層の表面をラミネートするラミネートフィルムであって、シート状基材の一方の面に熱で接着性が発現する接着層を設けてなることを特徴とするラミネートフィルム。」(特許請求の範囲請求項1)、
「以下、本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。第1図において1はラミネートフィルムを示し、該フィルム1はシート状基材2の一方の面に接着層3が設けられて構成されている。上記シート状基材としては、ポリエチレンフィルム、・・・のうち、透明もしくは半透明のもの(これらは有色透明もしくは有色半透明でもよい)等が挙げられ・・・」(第2頁左上欄第15行〜同頁右上欄第8行)、
「接着層3には必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定化剤、滑性剤等を添加することもできる。紫外線吸収剤、光安定化剤は画像形成層の転写画像の耐光性を向上させるものであり、又、滑性剤はラミネートフィルム同士が使用前に接着してしまうのを防止する効果があるものである。」(第2頁右下欄下から第4行〜第3頁左上欄第3行)と記載されている。
3.対比・判断
(1)特許法第29条第1項第3号違反について
〈請求項1に係る発明について〉
本件請求項1に係る発明と証拠方法2記載の発明とを対比するに、
後者の「カラーハードコピー印画紙用カバーフィルム」、「耐熱性基材」、「カバー材2層のうちの基材側一層の、基材と融着しない無色透明な架橋型耐熱性樹脂層」、「カバー材2層のうちの他の一層の、印画紙と密着性のある無色透明樹脂層」、「カバー材に配合される紫外線吸収剤」は、それぞれ、前者の「熱転写カバーフィルム」、「基材フィルム」、「剥離可能な透明樹脂層」、「感熱接着剤層」、「感熱接着剤層に含有される耐光化剤」に相当するから、
証拠方法2には、
「A.基材フィルム上に
B.透明樹脂層を剥離可能に設け、
C.更にその表面に感熱接着剤層を設けてなる熱転写カバーフィルムにおいて、
D.上記感熱接着剤層が耐光化剤を含有することを特徴とする熱転写カバーフィルム。」という本件請求項1に係る発明の構成がすべて記載されている。
本件請求項1に係る発明と証拠方法3記載の発明とを対比するに、
後者の「昇華転写式ハードコピー用カバーフィルム」、「12μポリエステルフィルムの基材(1a)」、「転写カバーフィルム2層のうちの基材側第1層の、透明樹脂層」、「転写カバーフィルム2層のうちの第2層の、加熱接着性のある樹脂層」、「カバーフィルム層中に配合される紫外線吸収剤」は、それぞれ、前者の「熱転写カバーフィルム」、「基材フィルム」、「剥離可能な透明樹脂層」、「感熱接着剤層」、「感熱接着剤層に含有される耐光化剤」に相当するから、
証拠方法3には、
「A.基材フィルム上に
B.透明樹脂層を剥離可能に設け、
C.更にその表面に感熱接着剤層を設けてなる熱転写カバーフィルムにおいて、
D.上記感熱接着剤層が耐光化剤を含有することを特徴とする熱転写カバーフィルム。」という本件請求項1に係る発明の構成がすべて記載されている。
本件請求項1に係る発明と証拠方法4記載の発明とを対比するに、
後者の「カラーハードコピー印画紙用カバーフィルム」、「ポリエチレンテレフタレートフィルム基材」、「カバーフィルム2層のうちの基材側第1層の、透明樹脂層」、「カバーフィルム2層のうちの第2層の、加熱接着性のある樹脂層」、「紫外線を透さないカバーフィルム層中に配合される吸収剤」は、それぞれ、前者の「熱転写カバーフィルム」、「基材フィルム」、「剥離可能な透明樹脂層」、「感熱接着剤層」、「感熱接着剤層に含有される耐光化剤」に相当するから、
証拠方法4には、
「A.基材フィルム上に
B.透明樹脂層を剥離可能に設け、
C.更にその表面に感熱接着剤層を設けてなる熱転写カバーフィルムにおいて、
D.上記感熱接着剤層が耐光化剤を含有することを特徴とする熱転写カバーフィルム。」という本件請求項1に係る発明の構成がすべて記載されている。
結局、本件請求項1に係る発明は、証拠方法2、証拠方法3、証拠方法4にそれぞれ記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に規定により特許を受けることができない。
〈請求項2に係る発明について〉
本件請求項2に係る発明と証拠方法2記載の発明とを対比するに、
後者の「カラーハードコピー印画紙用カバーフィルム」、「耐熱性基材」、「カバー材2層のうちの基材側一層の、基材と融着しない無色透明な架橋型耐熱性樹脂層」、「カバー材2層のうちの他の一層の、印画紙と密着性のある無色透明樹脂層」、「カバー材に配合される紫外線吸収剤」は、それぞれ、前者の「熱転写カバーフィルム」、「基材フィルム」、「剥離可能な透明樹脂層」、「感熱接着剤層」、「感熱接着剤層に含有される耐光化剤」に相当し、さらに、後者の「カバー材に配合される紫外線吸収剤」は、前者の「耐光化剤の一つである紫外線吸収剤」にも相当するから、
証拠方法2には、
「A.基材フィルム上に
B.透明樹脂層を剥離可能に設け、
C.更にその表面に感熱接着剤層を設けてなる熱転写カバーフィルムにおいて、
D.上記感熱接着剤層が耐光化剤を含有することを特徴とする熱転写カバーフィルムであって、
E.耐光化剤が紫外線吸収剤であるもの。」という本件請求項2に係る発明の構成がすべて記載されている。
本件請求項2に係る発明と証拠方法3記載の発明とを対比するに、
後者の「昇華転写式ハードコピー用カバーフィルム」、「12μポリエステルフィルムの基材(1a)」、「転写カバーフィルム2層のうちの基材側第1層の、透明樹脂層」、「転写カバーフィルム2層のうちの第2層の、加熱接着性のある樹脂層」、「カバーフィルム層中に配合される紫外線吸収剤」は、それぞれ、前者の「熱転写カバーフィルム」、「基材フィルム」、「剥離可能な透明樹脂層」、「感熱接着剤層」、「感熱接着剤層に含有される耐光化剤」に相当し、さらに、後者の「カバーフィルム層中に配合される紫外線吸収剤」は、前者の「耐光化剤の一つである紫外線吸収剤」にも相当するから、
証拠方法3には、
「A.基材フィルム上に
B.透明樹脂層を剥離可能に設け、
C.更にその表面に感熱接着剤層を設けてなる熱転写カバーフィルムにおいて、
D.上記感熱接着剤層が耐光化剤を含有することを特徴とする熱転写カバーフィルムであって、
E.耐光化剤が紫外線吸収剤であるもの。」という本件請求項2に係る発明の構成がすべて記載されている。
本件請求項2に係る発明と証拠方法4記載の発明とを対比するに、
後者の「カラーハードコピー印画紙用カバーフィルム」、「ポリエチレンテレフタレートフィルム基材」、「カバーフィルム2層のうちの基材側第1層の、透明樹脂層」、「カバーフィルム2層のうちの第2層の、加熱接着性のある樹脂層」、「紫外線を透さないカバーフィルム層中に配合される吸収剤」は、それぞれ、前者の「熱転写カバーフィルム」、「基材フィルム」、「剥離可能な透明樹脂層」、「感熱接着剤層」、「感熱接着剤層に含有される耐光化剤」に相当し、さらに、後者の「紫外線を透さないカバーフィルム層中に配合される吸収剤」は、前者の「耐光化剤の一つである紫外線吸収剤」にも相当するから、
証拠方法4には、
「A.基材フィルム上に
B.透明樹脂層を剥離可能に設け、
C.更にその表面に感熱接着剤層を設けてなる熱転写カバーフィルムにおいて、
D.上記感熱接着剤層が耐光化剤を含有することを特徴とする熱転写カバーフィルムであって、
E.耐光化剤が紫外線吸収剤であるもの。」という本件請求項2に係る発明の構成がすべて記載されている。
結局、本件請求項2に係る発明は、証拠方法2、証拠方法3、証拠方法4にそれぞれ記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に規定により特許を受けることができない。
〈請求項3に係る発明について〉
本件請求項3に係る発明と証拠方法4記載の発明とを対比するに、
後者の「カラーハードコピー印画紙用カバーフィルム」、「ポリエチレンテレフタレートフィルム基材」、「カバーフィルム2層のうちの基材側第1層の、透明樹脂層」、「カバーフィルム2層のうちの第2層の、加熱接着性のある樹脂層」、「紫外線を透さないカバーフィルム層中に配合される吸収剤」は、それぞれ、前者の「熱転写カバーフィルム」、「基材フィルム」、「剥離可能な透明樹脂層」、「感熱接着剤層」、「感熱接着剤層に含有される耐光化剤」に相当し、さらに、後者の「カバーフィルム2層のうちの第2層の、ガラス転移温度40℃以上で加熱接着性のある樹脂層」は、前者の「ガラス転移温度(Tg)40〜75℃の樹脂からなる感熱接着剤層」に相当するから、
証拠方法4には、
「A.基材フィルム上に
B.透明樹脂層を剥離可能に設け、
C.更にその表面に感熱接着剤層を設けてなる熱転写カバーフィルムにおいて、
D.上記感熱接着剤層が耐光化剤を含有することを特徴とする熱転写カバーフィルムであって、
H.感熱接着剤層がガラス転移温度(Tg)40〜75℃の樹脂からなるもの。」という本件請求項3に係る発明の構成がすべて記載されている。
結局、本件請求項3に係る発明は、証拠方法4に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に規定により特許を受けることができない。
〈請求項4に係る発明について〉
本件請求項4に係る発明と証拠方法2記載の発明とを対比するに、
後者の「カラーハードコピー印画紙用カバーフィルム」、「耐熱性基材」、「カバー材2層のうちの基材側一層の、基材と融着しない無色透明な架橋型耐熱性樹脂層」、「カバー材2層のうちの他の一層の、印画紙と密着性のある無色透明樹脂層」、「カバー材に配合される紫外線吸収剤」は、それぞれ、前者の「熱転写カバーフィルム」、「基材フィルム」、「剥離可能な透明樹脂層」、「感熱接着剤層」、「感熱接着剤層に含有される耐光化剤」に相当し、さらに、後者の「シリコーン系剥離剤の塗工による剥離処理層」は、前者の「剥離層」に相当するから、
証拠方法2には、
「A.基材フィルム上に
B.透明樹脂層を剥離可能に設け、
C.更にその表面に感熱接着剤層を設けてなる熱転写カバーフィルムにおいて、
D.上記感熱接着剤層が耐光化剤を含有することを特徴とする熱転写カバーフィルムであって、
I.基材フィルムと透明樹脂層との間に剥離層が設けられているもの。」という本件請求項4に係る発明の構成がすべて記載されている。
本件請求項4に係る発明と証拠方法3記載の発明とを対比するに、
後者の「昇華転写式ハードコピー用カバーフィルム」、「12μポリエステルフィルムの基材(1a)」、「転写カバーフィルム2層のうちの基材側第1層の、透明樹脂層」、「転写カバーフィルム2層のうちの第2層の、加熱接着性のある樹脂層」、「カバーフィルム層中に配合される紫外線吸収剤」は、それぞれ、前者の「熱転写カバーフィルム」、「基材フィルム」、「剥離可能な透明樹脂層」、「感熱接着剤層」、「感熱接着剤層に含有される耐光化剤」に相当し、さらに、後者の「シリコン系またはフッ素系の剥離処理層」は、前者の「剥離層」に相当するから、
証拠方法3には、
「A.基材フィルム上に
B.透明樹脂層を剥離可能に設け、
C.更にその表面に感熱接着剤層を設けてなる熱転写カバーフィルムにおいて、
D.上記感熱接着剤層が耐光化剤を含有することを特徴とする熱転写カバーフィルムであって、
I.基材フィルムと透明樹脂層との間に剥離層が設けられているもの。」という本件請求項4に係る発明の構成がすべて記載されている。
本件請求項4に係る発明と証拠方法4記載の発明とを対比するに、
後者の「カラーハードコピー印画紙用カバーフィルム」、「ポリエチレンテレフタレートフィルム基材」、「カバーフィルム2層のうちの基材側第1層の、透明樹脂層」、「カバーフィルム2層のうちの第2層の、加熱接着性のある樹脂層」、「紫外線を透さないカバーフィルム層中に配合される吸収剤」は、それぞれ、前者の「熱転写カバーフィルム」、「基材フィルム」、「剥離可能な透明樹脂層」、「感熱接着剤層」、「感熱接着剤層に含有される耐光化剤」に相当し、さらに、後者の「基材とカバーフィルムの対向する面との間の剥離処理層」は、前者の「剥離層」に相当するから、
証拠方法4には、
「A.基材フィルム上に
B.透明樹脂層を剥離可能に設け、
C.更にその表面に感熱接着剤層を設けてなる熱転写カバーフィルムにおいて、
D.上記感熱接着剤層が耐光化剤を含有することを特徴とする熱転写カバーフィルムであって、
I.基材フィルムと透明樹脂層との間に剥離層が設けられているもの。」という本件請求項4に係る発明の構成がすべて記載されている。
結局、本件請求項4に係る発明は、証拠方法2、証拠方法3、証拠方法4にそれぞれ記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に規定により特許を受けることができない。
(2)特許法第29条第2項違反について
〈請求項2に係る発明について〉
・請求項2に係る発明は、感熱接着剤層の含有する「耐光化剤」が「E.紫外線吸収剤」、「F.酸化防止剤」、「G.光安定化剤」のいずれかである点に特徴を有するものである。
そして、その耐光化剤が紫外線吸収剤であり、かつ、他の構成も請求項2のものとすべて同一の発明が、証拠方法2、証拠方法3、証拠方法4にそれぞれ記載されているから、請求項2に係る発明が、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないことは、すでに、上記3.(1)で検討したとおりである。
・ここでは、請求項2に係る発明に関して、感熱接着剤層の含有する「耐光化剤」が「E.紫外線吸収剤」以外の「F.酸化防止剤」ないし「G.光安定化剤」のいずれかと限定された構成の場合について、検討しておく。
・感熱接着剤層の含有する「耐光化剤」が「F.酸化防止剤」ないし「G.光安定化剤」のいずれかであるところの本件請求項2に係る発明と、証拠方法2記載の発明とを対比するに、
後者の「カラーハードコピー印画紙用カバーフィルム」、「耐熱性基材」、「カバー材2層のうちの基材側一層の、基材と融着しない無色透明な架橋型耐熱性樹脂層」、「カバー材2層のうちの他の一層の、印画紙と密着性のある無色透明樹脂層」、「カバー材に配合される紫外線吸収剤」は、それぞれ、前者の「熱転写カバーフィルム」、「基材フィルム」、「剥離可能な透明樹脂層」、「感熱接着剤層」、「感熱接着剤層に含有される耐光化剤」に相当するから、
両者は、
「A.基材フィルム上に
B.透明樹脂層を剥離可能に設け、
C.更にその表面に感熱接着剤層を設けてなる熱転写カバーフィルムにおいて、
D.上記感熱接着剤層が耐光化剤を含有することを特徴とする熱転写カバーフィルム。」で一致するが、
後者には、「耐光化剤」として、前者でいう「F.酸化防止剤」、「G.光安定化剤」を使用する構成が記載されていない点で相違する。
相違点について検討するに、証拠方法5には、
「A.基材フィルムの『転写紙』上に
C.感熱接着剤からなる『透明熱溶融性保護層』が設けられた熱転写カバーフィルムであって、
D.その感熱接着剤からなる層が耐光化剤を含有し、
F.その耐光化剤が、酸化防止剤からなるもの。」が記載され、転写画像は、空中の酸素に対して遮断されるので、長い間にわたって美しい色調を保持できる、との作用効果が示されている。
また、証拠方法6には、
「B’.透明樹脂フィルム層、
C.その表面に感熱接着剤層を設けてなる熱転写カバーフィルムであって、
D.その感熱接着剤からなる層が耐光化剤を含有し、
G.その耐光化剤が、光安定化剤からなるもの。」が記載され、熱転写画像の耐光性が向上する、との作用効果が示されている。
してみると、証拠方法2に記載のような、紫外線吸収剤の耐光化剤を含有する感熱接着剤層を有する熱転写カバーフィルムであって、熱転写画像の耐光性付与に使用されるものに、証拠方法5、証拠方法6に記載の同様の熱転写カバーフィルムの耐光化剤を参酌して、紫外線吸収剤に替えて、酸化防止剤や、光安定化剤を配合することとして、
感熱接着剤層の含有する「耐光化剤」が「F.酸化防止剤」ないし「G.光安定化剤」のいずれかであるところの本件請求項2に係る発明を構成することは、
当業者が容易になし得ることと認められる。
また、耐光性向上という作用効果も予測しうる範囲のものと認められる。
結局、本件請求項2に係る発明は、その感熱接着剤層の含有する「耐光化剤」が「F.酸化防止剤」、「G.光安定化剤」のいずれかであると限定された構成の場合においても、証拠方法2、証拠方法5、証拠方法6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(3)特許法第29条の2違反について
〈請求項1に係る発明について〉
本件請求項1に係る発明と証拠方法1の先願明細書記載の発明とを対比するに、
後者の「転写箔」、「耐熱性ベースフィルム」、「ベースフィルムから剥離容易な剥離層」、「接着剤層」、「接着剤層に含有される紫外線吸収剤」は、それぞれ、前者の「熱転写カバーフィルム」、「基材フィルム」、「剥離可能な透明樹脂層」、「感熱接着剤層」、「感熱接着剤層に含有される耐光化剤」に相当するから、
証拠方法1の先願明細書には、
「A.基材フィルム上に
B.透明樹脂層を剥離可能に設け、
C.更にその表面に感熱接着剤層を設けてなる熱転写カバーフィルムにおいて、
D.上記感熱接着剤層が耐光化剤を含有することを特徴とする熱転写カバーフィルム。」という本件請求項1に係る発明の構成がすべて記載されている。
〈請求項2に係る発明について〉
本件請求項2に係る発明と証拠方法1の先願明細書記載の発明とを対比するに、
後者の「転写箔」、「耐熱性ベースフィルム」、「ベースフィルムから剥離容易な剥離層」、「接着剤層」、「接着剤層に含有される紫外線吸収剤」は、それぞれ、前者の「熱転写カバーフィルム」、「基材フィルム」、「剥離可能な透明樹脂層」、「感熱接着剤層」、「感熱接着剤層に含有される耐光化剤」に相当し、さらに、後者の「感熱接着剤層に配合される紫外線吸収剤」は、前者の「耐光化剤の一つである紫外線吸収剤」にも相当するから、
証拠方法1の先願明細書には、
「A.基材フィルム上に
B.透明樹脂層を剥離可能に設け、
C.更にその表面に感熱接着剤層を設けてなる熱転写カバーフィルムにおいて、
D.上記感熱接着剤層が耐光化剤を含有することを特徴とする熱転写カバーフィルムであって、
E.耐光化剤が紫外線吸収剤であるもの。」という本件請求項2に係る発明の構成がすべて記載されている。
〈請求項3に係る発明について〉
本件請求項3に係る発明と証拠方法1の先願明細書記載の発明とを対比するに、
後者の「転写箔」、「耐熱性ベースフィルム」、「ベースフィルムから剥離容易な剥離層」、「接着剤層」、「接着剤層に含有される紫外線吸収剤」は、それぞれ、前者の「熱転写カバーフィルム」、「基材フィルム」、「剥離可能な透明樹脂層」、「感熱接着剤層」、「感熱接着剤層に含有される耐光化剤」に相当し、さらに、後者の「ガラス転移点が50℃以上の熱可塑性樹脂からなる接着剤層」は、前者の「ガラス転移温度(Tg)40〜75℃の樹脂からなる感熱接着剤層」に相当するから、
証拠方法1の先願明細書には、
「A.基材フィルム上に
B.透明樹脂層を剥離可能に設け、
C.更にその表面に感熱接着剤層を設けてなる熱転写カバーフィルムにおいて、
D.上記感熱接着剤層が耐光化剤を含有することを特徴とする熱転写カバーフィルムであって、
H.感熱接着剤層がガラス転移温度(Tg)40〜75℃の樹脂からなるもの。」という本件請求項3に係る発明の構成がすべて記載されている。
したがって、本件請求項1〜3に係る発明は、いずれも、証拠方法1の先願明細書に記載された発明と同一であり、本件発明の発明者が当該先願明細書に記載された発明の発明者と同一の者であるとも、本件出願の出願時の出願人と当該他の出願の出願人とが同一の者であるとも認められないから、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
IV.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1〜4に係る発明は、特許を受けることができないものであり、本件請求項1〜4に係る発明についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、結論のとおり審決する。
 
異議決定日 2001-10-26 
出願番号 特願平2-265103
審決分類 P 1 651・ 113- ZB (B41M)
P 1 651・ 161- ZB (B41M)
P 1 651・ 121- ZB (B41M)
最終処分 取消  
前審関与審査官 藤井 勲野田 定文  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 伏見 隆夫
植野 浩志
登録日 1999-05-07 
登録番号 特許第2925699号(P2925699)
権利者 大日本印刷株式会社
発明の名称 熱転写カバーフイルム  
代理人 吉田 勝廣  

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