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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  G09F
管理番号 1051530
異議申立番号 異議2000-73946  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-04-10 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-10-23 
確定日 2001-11-26 
異議申立件数
事件の表示 特許第3036465号「発光ダイオードを用いたディスプレイ」の請求項1及び2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3036465号の請求項1及び2に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3036465号(請求項の数2)に係る出願(特願平9-143159号)は、平成5年9月28日に出願された特願平5-241449号を、平成9年3月15日に実願平9-2302号に出願変更し、更に平成9年5月17日に特願平9-143157号に出願変更したものの一部を同日付けで新たな特許出願としたものであって、平成12年2月25日にその請求項1及び2に係る発明について特許の設定登録がなされ、その後、その特許について、丸山綾司及び若園英彦よりそれぞれ特許異議の申立がなされ、取消理由の通知がなされ、その指定期間内である平成13年4月9日に訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由が通知されたものである。

2.訂正の適否

ア.訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。
(1)特許請求の範囲の請求項1の、
「カップ内に発光チップを設けている発光素子全体を封止樹脂で封止してなる発光ダイオードを用いた平面ディスプレイにおいて、
発光ダイオードの封止樹脂が、カップ内部に充填された第一の樹脂部と、第一の樹脂部を包囲する第二の樹脂部とを備え、
第一の樹脂部が、前記発光チップからの可視光をそれよりも長波長の可視光に変換する蛍光物質を含み、かつ、カップの縁部の水平面よりも実質的に低く配置されてなることを特徴とする発光ダイオードを用いたディスプレイ。」を、
「カップ内に発光チップを設けている発光素子全体を封止樹脂で封止してなる発光ダイオードを用いた平面ディスプレイにおいて、
発光ダイオードの封止樹脂が、カップ内部に充填された第一の樹脂部と、第一の樹脂部を包囲する第二の樹脂部とを備え、
第一の樹脂部が、前記発光チップからの可視光をそれよりも長波長の可視光に変換する蛍光物質を含み、かつ、第一の樹脂部をカップの縁部の水平面よりも実質的に低く配置している第1の発光ダイオードと、前記蛍光物質を励起可能な可視光を発光する発光チップを有する第2の発光ダイオードとを、同一平面上に接近して配置してなることを特徴とする発光ダイオードを用いたディスプレイ。」と訂正する。
(2)特許請求の範囲の請求項2の、
「カップ内に発光チップを設けている発光素子全体を封止樹脂で封止してなる発光ダイオードを用いたディスプレイにおいて、
発光ダイオードの封止樹脂が、カップ内部に充填された第一の樹脂部と、第一の樹脂部を包囲する第二の樹脂部とを備え、
第一の樹脂部が、前記発光チップからの青色光をそれよりも長波長の可視光に変換する蛍光物質を含み、かつ、カップの縁部の水平面よりも実質的に低く配置されてなることを特徴とする発光ダイオードを用いたディスプレイ。」を、
「カップ内に発光チップを設けている発光素子全体を封止樹脂で封止してなる発光ダイオードを用いたディスプレイにおいて、
発光ダイオードの封止樹脂が、カップ内部に充填された第一の樹脂部と、第一の樹脂部を包囲する第二の樹脂部とを備え、
第一の樹脂部が、前記発光チップからの青色光をそれよりも長波長の可視光に変換する蛍光物質を含み、かつ、この第一の樹脂部をカップの縁部の水平面よりも実質的に低く配置している第1の発光ダイオードと、青色光を発光する発光チップを有する第2の発光ダイオードとを、同一平面上に接近して配置してなることを特徴とする発光ダイオードを用いたディスプレイ。」と訂正する。

イ.当審の判断
上記訂正事項(1)及び(2)によると、「発光ダイオードの封止樹脂が、カップ内部に充填された第一の樹脂部と、第一の樹脂部を包囲する第二の樹脂部とを備え」る構成は、「第1の発光ダイオード」及び「第2の発光ダイオード」に共通する構成であると認められる。
そして、「第1の発光ダイオード」については、「第一の樹脂部が、前記発光チップからの可視(青色)光をそれよりも長波長の可視光に変換する蛍光物質を含み」とあるように、「第一の樹脂部」の含有物質を具体的に特定しているものの、「第2の発光ダイオード」については、訂正事項(1)では単に「前記蛍光物質(即ち、第1の発光ダイオードにおける第一の樹脂部に含まれる蛍光物質)を励起可能な可視光を発光する発光チップを有する」とし、訂正事項(2)では単に「青色光を発光する発光チップを有する」としているのみで、いずれも、「第2の発光ダイオード」における「第一の樹脂部」内の含有物質自体の特定、あるいは、含有物質の有無の特定が何等なされていない。
そうすると、「第2の発光ダイオード」については、「カップ内部に充填された第一の樹脂部」が蛍光物質を含まず、かつ、「第一の樹脂部を包囲する第二の樹脂部」を備えた構成からなるものをも包括することになると認められる。
しかしながら、かかる「第2の発光ダイオード」の構成は、願書に添付した明細書又は図面に記載されておらず、かつ、これらから直接的かつ一義的に導き出せる事項でもない。
したがって、上記訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとは認められない。
なお、本件特許権者は、平成13年7月31日付けの意見書において、
『本件特許出願日は、平成5年9月28日である。したがって、平成5年改正特許法が適用されるのではなく、訂正事項が明細書の要旨を変更するかどうかが争点となるものである。訂正事項が、「直接的かつ一義的に導き出せる事項であるかどうか」は争点とはならない。
特許法第126条第2項「・・明細書又は図面の訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしなければならない。」との規定(平6法律116で追加)が適用されるのは、平成6年1月1日以降の出願である。』
と主張している。
しかしながら、5年改正法施行日以降になされる訂正請求については、たとえ、5年改正法施行日前の出願に係る特許についてのものであっても、新規事項追加禁止を含む5年特許法所定の要件が適用されるものとした取扱いは合理性を有するものとして肯定されているところである(東京高裁、平成10年(行ケ)第407号判決参照。)から、本件特許権者の上記主張は認められない。

ウ.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の同法第126条第1項ただし書の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。

3.特許異議の申立てについて

ア.本件発明
特許第3036465号の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1及び2」という。)は、特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 カップ内に発光チップを設けている発光素子全体を封止樹脂で封止してなる発光ダイオードを用いた平面ディスプレイにおいて、
発光ダイオードの封止樹脂が、カップ内部に充填された第一の樹脂部と、第一の樹脂部を包囲する第二の樹脂部とを備え、
第一の樹脂部が、前記発光チップからの可視光をそれよりも長波長の可視光に変換する蛍光物質を含み、かつ、カップの縁部の水平面よりも実質的に低く配置されてなることを特徴とする発光ダイオードを用いたディスプレイ。
【請求項2】 カップ内に発光チップを設けている発光素子全体を封止樹脂で封止してなる発光ダイオードを用いたディスプレイにおいて、
発光ダイオードの封止樹脂が、カップ内部に充填された第一の樹脂部と、第一の樹脂部を包囲する第二の樹脂部とを備え、
第一の樹脂部が、前記発光チップからの青色光をそれよりも長波長の可視光に変換する蛍光物質を含み、かつ、カップの縁部の水平面よりも実質的に低く配置されてなることを特徴とする発光ダイオードを用いたディスプレイ。」

イ.引用刊行物
当審が通知した取消理由に引用した刊行物1乃至4には、それぞれ以下に示す事項が記載されている。
刊行物1.特開昭49-122292号公報[異議申立人・丸山綾司が
提出した甲第1号証または異議申立人・若園英彦が提出した
甲第3号証]
刊行物2.特開昭49- 56595号公報[異議申立人・丸山綾司が
提出した甲第9号証または異議申立人・若園英彦が提出した
甲第2号証]
刊行物3.特開平 1-179471号公報[異議申立人・丸山綾司が
提出した甲第2号証]
刊行物4.特開平 5-152609号公報[異議申立人・丸山綾司が
提出した甲第3号証または異議申立人・若園英彦が提出した
甲第4号証]
(1)上記刊行物1には、例えば、
(1-1)公報第1頁左下欄第5〜15行(特許請求の範囲)の
『ダイオードステムの中央部に円錐台形もしくは円錐台形に類似した形状の凹みを設け、凹みの底にp-n接合を含み赤外線を発光するペレットを装着し、一定量の赤外可視変換蛍光体を凹みに落し、前記ペレットの周囲に一定の厚さの赤外可視変換蛍光体の層を形成せしめ、さらにその上に接着剤を滴下し、加熱して赤外可視変換蛍光体を前記ペレットの周囲に固着せしめ、さらにレンズ封止あるいはモールドすることを特徴とする赤外可視変換発光ダイオードの製造方法。』
なる記載、
(1-2)同第2頁左上欄第18行〜右上欄第15行の
『本発明によれば第2図に示すようにダイオードステムの中央部に円錐台形もしくは円錐台形に類似した形状の凹み3を持ったダイオードステム11を用いる。p-n接合を含み赤外線を放射するペレット6は第2図に示した円錐台形または円錐台形に類似した凹み3の底に装着される。次に第3図に示すようにステム11の上方より適当量の赤外可視変換蛍光体を凹み3に落し,ペレット6の周囲に蛍光体層7を形成する。この際蛍光体の量が一定であれば蛍光体層7の厚さは常に一定となる。
次に蛍光体層7とペレット6との密着度をよくするために,第4図のごとく、例えばシリコン樹脂、またはエポキシ樹脂のような適当な粘度の熱硬化性樹脂5を適当量滴下する。第4図に示した熱硬化性樹脂5と蛍光体層7を徐熱し,熱硬化性樹脂5を蛍光体層7の中に浸透させ,さらに加熱硬化させた後レンズ封止あるいはエポキシ樹脂によるモールドを行なう。』
なる記載、
(1-3)同第2頁左下欄第12〜17行の
『かかる手段によって作られた赤外可視変換発光ダイオードは赤外光が周囲の円錐台形もしくは円錐台形に類似した形状の凹み3によって反射されるために蛍光体に吸収される赤外光が増加する。従って可視光の出力が増大するという特徴をも有する。』
なる記載、及び、
(1-4)図面、特に第4図における「熱硬化性樹脂5が凹み3の縁部の水平面とほぼ同レベルまで充填されている」図示内容、
等からみて、下記の発明イが記載されていると認められる。
[発明イ]
ダイオードステム11の中央部に設けた円錐台形形状の凹み3の底にペレット6を装着している発光ダイオード全体を樹脂でモールドしてなる赤外可視変換発光ダイオードにおいて、
発光ダイオードをモールドする樹脂が、凹み3内部に充填された熱硬化性樹脂5と、熱硬化性樹脂5を包囲するエポキシ樹脂とを備え、
熱硬化性樹脂5が、前記ペレット6からの赤外線を可視光に変換する赤外可視変換蛍光体を含み、凹み3の縁部の水平面とほぼ同レベルまで充填されてなる赤外可視変換発光ダイオード。
(2)また、上記刊行物2には、例えば、
(2-1)公報第2頁左上欄第8行〜右上欄第2行の
『本発明においては第2図のごとく、ヘッダーに例えば円錐台形の凹み5を設け、その底にダイオード1を装着する。ステム1とリード線3との間に順方向の電流を流すことによりダイオードの側面より出た光は周囲の円錐台形の壁4によって反射され、前方に集中し、反射鏡を取付けたのと同等な効果を生じる。ダイオードより出て蛍光体2中を通りぬけた赤外光は円錐台の壁による反射のために再度蛍光体中に入り吸収される。このため可視光の強度が増加する。また発生した可視光自体も角度分布が狭くなり前方に光が集中するため正面輝度が向上する。さらに一定量の蛍光体を凹みに入れればダイオード上の蛍光体の厚みは一定になるから、蛍光体塗布が容易になり、可視光出力の再現性がよくなる。』
なる記載、及び、
(2-2)図面、特に第2図における「蛍光体2を、円錐台形の凹み4の上縁部の水平面よりも実質的に低く入れる」ようにした図示内容、
等からみて、下記の事項ロが記載されている。
[事項ロ]
反射鏡の役割をもつ円錐台形の凹み4内部に入れられ、発光ダイオードペレット1より出た光を可視光に変換する波長変換部材を、円錐台形の凹み4の上縁部の水平面よりも実質的に低く入れること。
(3)また、上記刊行物3には、例えば、
(3-1)公報第1頁右下欄第14〜19行の
『立方晶窒化ほう素を母結晶としたp-n接合型素子のp-n接合部に電流を通すと、赤外から紫外域で発光し、発光素子として優れたものであることを確認し得た。また、p-n接合部またはn側表面に蛍光体を附設すると任意の発光色に変化させ得られることを知見し得た。』
なる記載、
(3-2)同第2頁右下欄第2〜12行の
『第1図に示すように、p-n接合を挟むp型部とn型部に銀ペーストの電極4をつけ、p型側を正n型側を負にして70ボルトの順バイアス電圧をかけると、p型からn型に2ミリアンペアの電流が流れた。・・・(中略)・・・2ミリアンペアの電流を通電中に実体顕微鏡でp-n接合素子を観察したところ、p-n接合部に沿ってその近くのn型側に青白い発光が観察された。』
なる記載、及び、
(3-3)同第3頁左上欄第15行〜右上欄第1行の
『実施例5.
実施例1のp-n接合部、またはn側表面に、銀ドープ硫化亜鉛,銅ドープ硫化亜鉛,ユーロピウムドープイットリウムオキシサルファイドの蛍光体をそれぞれ塗布し、p-n接合に順方向の電流を流したところ、それぞれ、青色,緑色,赤色の発光が得られた。』
なる記載、
等からみて、下記の事項ハが記載されている。
[事項ハ]
立方晶窒化ほう素を母結晶としたp-n接合型素子から可視光である青白い光を発光させ、その光を蛍光体によりそれよりも長波長である緑色、赤色に変換すること。
(4)また、上記刊行物4には、例えば、公報第2頁右欄の段落【0008】および【0009】冒頭の
『【0008】図2は本発明のLEDの構造を示す一実施例である。11はサファイア基板の上にGaAlNがn型およびp型に積層されてなる青色発光素子、2および3は図1と同じくメタルステム、メタルポスト、4は発光素子を包囲する樹脂モールドである。・・・(中略)・・・さらに樹脂モールド4には420〜440nm付近の波長によって励起されて480nmに発光ピークを有する波長を発光する蛍光染料5が添加されている。
【0009】
【発明の効果】蛍光染料、蛍光顔料は、一般に短波長の光によって励起され、励起波長よりも長波長光を発光する。』
なる記載からみて、下記の事項ニが記載されている。
[事項ニ]
青色発光素子11から可視光である青色光を発光させ、その光を蛍光染料5によりそれよりも長波長に変換すること。

ウ.対比・判断
本件発明1及び2と上記発明イとを対比すると、上記発明イの「ダイオードステム11の中央部に設けた円錐台形形状の凹み3の底」が本件発明1及び2の「カップ内」に相当し、以下同様に、「ペレット6を装着し」が「発光チップを設け」に、「発光ダイオード」が「発光素子」に、「樹脂でモールド」が「封止樹脂で封止」に、「熱硬化性樹脂5」が「第一の樹脂部」に、「エポキシ樹脂」が「第二の樹脂部」に、「充填」が「配置」に、それぞれ相当している。
また、上記発明イにおける「赤外線を可視光に変換する赤外可視変換蛍光体」と、本件発明1及び2における「可視光をそれよりも長波長の可視光に変換する蛍光物質」とは、いずれも「光を可視光に変換する蛍光物質」である点で共通している。
したがって、両者は、
「カップ内に発光チップを設けている発光素子全体を封止樹脂で封止してなる発光ダイオードにおいて、
発光ダイオードの封止樹脂が、カップ内部に充填された第一の樹脂部と、第一の樹脂部を包囲する第二の樹脂部とを備え、
第一の樹脂部が、前記発光チップからの光を可視光に変換する蛍光物質を含み、かつ、カップの縁部に配置されてなることを特徴とする発光ダイオード」の点で一致し、
(a)第一の樹脂部が、本件発明1及び2では、カップの縁部の水平面よりも実質的に低く配置されてなるのに対し、発明イでは、カップ(凹み3)の縁部の水平面とほぼ同レベルまで配置(充填)されていて、カップ(凹み3)の縁部の水平面よりも実質的に低く配置(充填)されているのかどうか不明である点(以下、「相違点a」という。)、
(b)発光チップが、本件発明1では、可視光を発する発光チップであり、本件発明2では、青色光を発する発光チップであるのに対し、発明イでは、赤外線を発する発光チップである点(以下、「相違点b」という。)、
(c)発光チップからの光を可視光に変換する蛍光物質が、本件発明1及び2では、光の波長をそれよりも長波長に変換するのに対し、発明イでは、赤外線を可視光に変換する点(以下、「相違点c」という。)、
(d)発光ダイオードが、本件発明1及び2では、ディスプレイとして用いられているのに対して、発明イでは、発光ダイオード単体である点(以下、「相違点d」という。)、
で相違している。
以下、上記相違点について検討する。
・相違点aについて
発光ダイオードにおいて、波長変換部材を円錐台形の凹み4(カップ)の上縁部(縁部)の水平面よりも実質的に低く入れる(配置する)こと(事項ロ参照)が上記刊行物2に記載されている以上、かかる配置構成を同一技術分野に属する上記発明イに適用することは当業者にとって容易である。
・相違点b及びcについて
発光チップからの光を可視光に変換する蛍光物質を含むことを前提とした発光ダイオードにおいて、上記事項ハ及びニで示したとおり、発光チップ(事項ハの「p-n接合型素子」、事項ニの「青色発光素子11」)から可視光を発光させ、その可視光を蛍光物質(事項ハの「蛍光体」、事項ニの「蛍光染料5」)によりそれよりも長波長に変換することが上記刊行物3及び4に記載されているように周知の技術である以上、同じ前提の発光ダイオードである上記発明イにおいて、発光チップとして可視光あるいは青色光を発光させるものを選定し、その光を蛍光物質によりそれよりも長波長の可視光に変換することは、当業者が必要に応じて適宜採用し得る程度の事項である。
・相違点dについて
発光ダイオードを用いてディスプレイを構成することは、例えば、特公昭51-27988号公報、特開昭55-149974号公報(異議申立人・丸山綾司が提出した甲第4号証、甲第6号証)に見られるように周知慣用の技術であるから、上記発明イにおける発光ダイオードをディスプレイとして用いることは、当業者であれば容易に推考し得るところである。
そして、本件発明1及び2により奏される効果は、上記各刊行物に記載の事項から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。

エ.むすび
以上のとおりであるから、本件発明1及び2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件発明1及び2についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-09-17 
出願番号 特願平9-143159
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (G09F)
最終処分 取消  
前審関与審査官 塩澤 克利加藤 恵一小原 博生  
特許庁審判長 田中 秀夫
特許庁審判官 松下 聡
和泉 等
登録日 2000-02-25 
登録番号 特許第3036465号(P3036465)
権利者 日亜化学工業株式会社
発明の名称 発光ダイオードを用いたディスプレイ  
代理人 豊栖 康弘  

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