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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C07H |
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管理番号 | 1051587 |
異議申立番号 | 異議2001-72454 |
総通号数 | 26 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-01-20 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-09-06 |
確定日 | 2001-12-13 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3143269号「ヒノキチオール配糖体およびその製造方法」の請求項1〜4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3143269号の請求項1〜4に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.本件特許 特許第3143269号(平成5年7月5日出願、平成12年12月22日設定登録)の請求項1〜4に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された次の通りのものである。 「【請求項1】 ヒノキチオールを配糖化して糖を結合させたことを特徴とするヒノキチオール配糖体。 【請求項2】 糖がβ-結合によりヒノキチオールに結合されていることを特徴とする請求項1に記載のヒノキチオール配糖体。 【請求項3】 糖を脱水縮合によりヒノキチオールに結合したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヒノキチオール配糖体。 【請求項4】 ヒノキチオールと糖を脱水縮合してヒノキチオールの水酸基に糖をエーテル結合させることを特徴とするヒノキチオール配糖体の製造方法。」 2.申立ての理由の概要 特許異議申立人は、証拠として甲第1号証(特開平3-90016号公報)、甲第2号証(化学辞典第948頁、1985年1月26日、森北出版株式会社発行)、甲第3号証(天然物化学 改訂第4版第80頁、1992年3月19日、株式会社南江堂発行)、甲第4号証(化学大辞典5第909頁、1989年8月15日、共立出版株式会社発行)、甲第5号証(化学大辞典7第486〜487頁、1989年8月15日、共立出版株式会社発行)、甲第6号証(岩波理化学事典 第4版第789頁、第912〜913頁、1987年10月12日、株式会社岩波書店発行)、甲第7号証(天然物の構造と化学 展望と研究序説第66〜67頁、第197頁、昭和62年4月15日、株式会社廣川書店発行)を提出し、請求項1〜4に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから同法第113条第2項に該当し、請求項1〜7に係る発明の特許を取り消すべき旨主張している。 3.特許異議申立人が提出した甲各号証記載の発明 (1)甲第1号証には、 (イ)「下記一般式[I]、[II]及び[III] (但し、式中R1,R2,R3はそれぞれ単糖類、少糖類の残基から選ばれる基である。)でそれぞれ示されるチモール配糖体、シス-3-ヘキセノール配糖体及びサリチル酸メチル配糖体から選ばれる1種又は2種以上の配糖体を含有することを特徴とする口腔用組成物。」(特許請求の範囲第1項); (ロ)「本発明に用いる・・・チモール配糖体・・・は、それぞれチモール・・・と糖、例えばペン夕-O-アセチル-D-グルコピラノース等とを反応させ、グリコシル化反応を進めることによって得ることができる。」(第3頁左上欄第1行〜第7行); (ハ)「更に、チモール・・・に比べ、それぞれの配糖体は水溶性が高い・・。また、チモールは抗菌性の高い物質であり、その配糖体は水溶性が高く、・・・本発明によりチモール配糖体を配合すると、抗菌効果の持続性に優れた口腔用組成物を提供することも可能である。」(第3頁右下欄第17行〜第4頁左上欄第6行) ことが、それぞれ記載されている。 (なお一般式[I]で、R1をH原子に置き換えた化合物がチモールである。) (2)甲第2号証には、配糖体とは「糖のへミアセタール性水酸基と糖でない分子(アグリコンまたはゲニン)との間で脱水縮合した構造を持つものの総称。多くの場合、両者は酸素原子をはさんで結合したいわゆるO-グリコシドである」ことが記載されている。 (3)甲第3号証には、配糖体は、配糖体の糖でない部分の「物質の物性の変化(例えば水溶性の増大、揮発性の低下など)、安定性の増強、生物活性の消失(低毒化)や発現などに関与している」ことが記載されている。 (4)甲第4号証には、チモールの分子量や性質などが記載されている。 (5)甲第5号証には、ヒノキチオールの性質などが記載されている。 (6)甲第6号証には、第789頁にチモールの性質などが記載されている。また、第912〜913頁には、ヒノキチオールの性質などとともに、ヒノキチオールはトロポロンと呼ばれる七員環環式ケトンの誘導体であり、非ベンゼノイド芳香族化合物であることが記載されている。 (7)甲第7号証には、第66〜67頁に、チモールがC10モノテルペンの炭素骨格を有することなどが記載されている。また、第197頁には、ヒノキチオールが不飽和七員環ケトンのヒドロキシ体で、芳香族化合物の性質を有する七員環芳香族化合物であること;「生合成的イソプレン則に従わないモノテルペン」であり、「irregular monoterpene」と称される一群のものに属することなどが記載されている。 4.対比・判断 (1)請求項1に係る発明について (イ)請求項1に係る発明と甲第1号証に記載の発明とを対比すると、両者は配糖体である点で一致し、配糖体の糖でない部分(アグリコン)の構造で相違する。すなわち、請求項1に係る発明ではアグリコンがヒノキチオールであるのに対して、甲第1号証記載の発明ではアグリコンがチモールである点で相違するものである。 (ロ)係る相違点について検討する。ヒノキチオールとチモールとは、モノテルペンに分類されること、化学構造中に「芳香族」環、ヒドロキシル基、イソプロピル基を有するものであるが、両者は環の構成原子数の点で異なっていて、ヒノキチオールは環に結合するカルボニル基を有していてその部分で反応性があるのに対して、チモールはそのようなカルボニル基を有していないので、両者を構造が類似する化合物であるとすることはできない。そして、甲第2号証〜第3号証には、配糖体に関する一般的な記載がなされているだけであり、また甲第4号証〜第7号証には、チモール、ヒノキチオールの性状等に関する記載がなされているだけである。そうしてみると、甲第1号証〜第7号証の記載から、甲第1号証に記載のチモール配糖体におけるアグリコンを、チモールとは構造が類似しないヒノキチオールに代替することを当業者が容易に推考しうるものとすることはできない。 また、甲第1号証〜第7号証には、ヒノキチオールとチモールとが同等のものであるとの記載はないし、当該技術分野において同等のものとして扱われているものとも認めることができない。 (ハ)従って、請求項1に係る発明は、上記甲各号証の記載の発明から当業者が容易に推考しうるものではない。 (2)請求項2〜請求項3に係る発明について 請求項2〜請求項3に係る発明は、いずれも請求項1に係る発明を引用するものであり、請求項1に係る発明を更に技術的に限定したものであるから、上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により、上記甲各号証に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)請求項4に係る発明について 請求項4に係る発明は、ヒノキチオール配糖体の製造方法に関するものである。上記請求項1に係る発明についての判断と同様の理由により、上記甲各号証に記載の発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)まとめ 以上の通り、請求項1〜請求項4に係る発明は、特許異議申立人が提出した甲各号証に記載された発明から当業者が容易に発明をすることができたものではない。 5.むすび 従って、特許異議申立の理由及び証拠によっては、請求項1〜4に係る発明の特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1〜4に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2001-11-21 |
出願番号 | 特願平5-165482 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(C07H)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 中木 亜希 |
特許庁審判長 |
宮本 和子 |
特許庁審判官 |
横尾 俊一 守安 智 |
登録日 | 2000-12-22 |
登録番号 | 特許第3143269号(P3143269) |
権利者 | 日本碍子株式会社 有限会社ビセイケン |
発明の名称 | ヒノキチオール配糖体およびその製造方法 |
代理人 | 名嶋 明郎 |
代理人 | 的場 基憲 |
代理人 | 綿貫 達雄 |
代理人 | 山本 文夫 |