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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C02F
審判 全部申し立て 2項進歩性  C02F
管理番号 1051603
異議申立番号 異議2000-72315  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1995-09-12 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-06-05 
確定日 2001-12-17 
異議申立件数
事件の表示 特許第2986330号「藻類除去方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2986330号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第2986330号は、平成6年2月28日に出願され、平成11年10月1日にその特許権の設定登録がなされたものである。
これに対し、平成12年6月5日に飯塚哲夫から特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内の平成12年11月27日に特許異議意見書が提出されたものである。
2.特許異議申立ての概要
特許異議申立人は、証拠方法として、甲第1号証(「浄化槽研究」Vol.5, No.1, 1993年、第57〜67頁、「付着濾過装置による高度処理実証実験について」)、甲第2号証(特開昭51-79960号公報)、甲第3号証(特開平5-123688号公報)及び甲第4号証(特開昭62-33588号公報)を提出して、本件請求項1に係る発明は、次の(1)又は(2)の理由により特許を受けることができないと主張している。
(1)本件請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1号証若しくは甲第2号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができない。
(2)本件請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲第1〜4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
3.本件発明
本件請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本件発明」という)。
「【請求項1】線径が0.01〜2mmの繊維を1〜30mmの相対間隔で配設して構成された接触材を水流中に固定保持して平均流速0.01〜10mm/sの緩やかな移動状態にある水と接触させて、前記水中の藻類を除去することを特徴とする藻類除去方法。」
4.甲各号証の記載内容
甲第1号証〜甲第4号証には、それぞれ以下の事項が記載されている。
(1)甲第1号証(「浄化槽研究」)
(a)「生活排水等の二次処理水に対して高度処理を行なう場合や比較的汚濁度の低い汚水を処理する場合、一般に接触ばっ気法、凝集沈殿法、砂濾過法および生物濾過法が多用されている。これらの高度処理法に比較し、装置のコクパクト化、ランニングコストの低減化、運転および維持管理の容易性を目標にして簡易な方法でBOD,SS等を除去しうる方法について検討を行ない、ひも状接触材を用いた付着濾過方式による実験装置を試作し、各種の実験を行なった。(第1頁左欄第2行〜右欄第4行参照)
(b)「この付着濾過装置は・・・今後高度処理方式の一環として、また既設浄化槽の水質改善の際、あるいは川、沼、池等の直接浄化方式として活用されることが期待できる。」(第66頁左欄第2〜8行参照)
(c)「接触材 材質;塩化ビニリデン、形状;ひも状、モール外径;φ25mm、充填率;約70%、ピッチ;30mm、配列;ちどり状」(第58頁表-1)
(2)甲第2号証(特開昭51-79960号公報)
(d)「排水処理溜に藻類の発生を促進する基材を浮設して排水を浄化することを特徴とする排水の処理方法。」(特許請求の範囲参照)
(e)「葉部繊維の太さは50〜3000デニール、フィルムの幅は1〜20mm、または撚り込み密度は10〜150本/cm程度が太陽光の透過性、水の流通性がよく藻類の付着成育に好ましいものである。」(第2頁左上欄第3〜7行参照)
(f)「本発明は前述した藻類の発生を促進させる基材の片端あるいは両端に浮体を取付け、廃液が排出される排水処理槽あるいは排水処理池などの排水処理溜に該基材を投入してなり、廃液に含まれる硅藻、藍藻の種子が該基材によく付着し、該基材が液面近くに浮いていることにより透光性がよく、また該基材は通水性がよいので付着した藻類は短期間に順調に成育、増加する。このように該基材に付着した藻類により化学薬品処理あるいは細菌処理済の廃液を順次供給しても藻類に窒素、燐などの汚染物質が吸着、固定されて廃液がより浄化されて排水処理される。」(第2頁左上欄第12行〜右上欄第3行参照)
(g)「また、本発明の一実施態様を第2図によって示すと、流入口7と排出口8を有する排水処理槽4内に両端にフロート5を取り付けてなる基材6を液面近くに展開させて浮かしてなる。」(第2頁右上欄第12行〜第15行)
(3)甲第3号証(特開平5-123688号公報)
(h)「本発明の汚水処理装置は、水流の方向を前後に横切る多数の面に鉛直に配列された多数の紐状接触材よりなる浸漬濾床を横切って汚水を流通させることにより、汚水中の浮遊物を紐状接触材に捕捉させて濾過することができ、・・・次の列の紐状接触材に衝突しながら流れ、浮遊物が紐状接触材と接触して捕捉される。」([0006]参照)
(4)甲第4号証(特開昭62-33588号公報)
(i)「軸方向を上下方向とした浮体と、この浮体の周面の上下より放射状に突設した多数本の上下支持杆と、この上下支持杆間に張設され周囲に無数の輪状毛羽を密生した紐条材とより成ることを特徴とするアオコの除去装置。」(特許請求の範囲参照)
(j)「湖沼の水中にロープ等で連繋されて浮遊する付着床7が波浪によって上下左右にゆれ動き水中に浮遊するアオコが上下方向にV字の波型に張られた多数の紐条材5に接触しその輪条毛羽6によって捕捉される。」(第2頁左下欄第9〜13行参照)
5.当審の判断
(1)上記主張(1)について
甲第1号証は、「付着濾過装置による高度処理実証実験」に関するものであり、そこに記載の除去法は、上記(a)に記載のように、除去の対象が生活排水等の二次処理水中のSS及びBODであり、本件発明のような「藻類」ではない。また、この証拠には、上記(b)の「川、沼、池等の直接浄化方式として活用されることが期待できる。」との記載によれば、湖沼等の水を浄化することが示唆されているものの、その具体的な手段について、接触材形状・構造(上記(c))以外の、例えば本件発明の「接触材を水流中に固定保持して平均流速0.01〜10mm/sの緩やかな移動状態にある水と接触させて」藻類を凝集・除去することについてまでは何ら示唆されていない。
してみると、本件発明は、甲第1号証に記載された発明であるとすることはできない。
次に、甲第2号証について検討すると、この証拠に記載の排水処理法は、廃液に含まれる硅藻、藍藻などの種子の付着あるいは生育促進のための繊維状基材を排水処理溜に浮設し、この基材に付着して生育した藻類に窒素、燐などの汚染物質を吸着固定して排水を浄化するというものであるから、排水の藻類を凝集・除去する本件発明とはその技術思想が別異のものである。また、具体的な構成の点でも、この証拠には、本件発明の「線径が0.01〜2mmの繊維を1〜30mmの相対間隔で配設して構成された接触材」や「平均流速0.01〜10mm/sの緩やかな移動状態にある水と接触させ」る点については示唆されていない。
してみると、本件発明は、甲第2号証に記載された発明であるともすることはできない。
したがって、特許異議申立人の上記主張(1)は採用することができない。
(2)上記主張(2)について
甲第3号証には、紐状接触材による汚水処理装置が記載されているが、この汚水処理は、紐状接触材に汚水中の浮遊物を接触させて濾過するものであり、その除去する浮遊物も汚泥のようなものであって本件発明の如き藻類ではなく、穏やかな水流中で繊維状接触材に藻類を凝集・除去するものでもない。
また、甲第4号証について検討すると、この証拠には、湖沼のアオコ(藻類)を輪状毛羽を密生した紐条材に捕捉して除去する方法が記載されているが、この除去方法は、紐条材群よりなる付着床を波浪、水流によって上下左右にゆり動かせて浮遊するアオコと効率よく接触させるものであるから、本件発明のように「接触材を水流中に固定保持」するものではなく、また「平均流速0.01〜10mm/sの緩やかな移動状態にある水と接触させ」るものでもない。
してみると、甲第3号証及び甲第4号証にも、本件発明の特に「接触材を水流中に固定保持して平均流速0.01〜10mm/sの緩やかな移動状態にある水と接触させ」る構成については示唆されていないと云えるから、本件発明は、甲第1〜4号証の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
したがって、特許異議申立人の上記主張(2)も採用することができない。
6.むすび
以上のとおり、特許異議申立の理由及び証拠によっては本件発明についての特許を取り消すことはできない。また、他に本件発明について特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
異議決定日 2001-11-27 
出願番号 特願平6-30644
審決分類 P 1 651・ 121- Y (C02F)
P 1 651・ 113- Y (C02F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 服部 智中村 敬子村守 宏文  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 西村 和美
山田 充
登録日 1999-10-01 
登録番号 特許第2986330号(P2986330)
権利者 村上 光正 大日本プラスチックス株式会社
発明の名称 藻類除去方法  
代理人 原田 寛  
代理人 野河 信太郎  
代理人 野河 信太郎  

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