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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B28B
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  B28B
管理番号 1051635
異議申立番号 異議2001-70251  
総通号数 26 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1993-11-19 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-01-23 
確定日 2001-12-12 
異議申立件数
事件の表示 特許第3068262号「土練済み生製品切断用の切断機における切断線の断線検知装置」の請求項1、3ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3068262号の請求項1に係る特許を取り消す。 同請求項3ないし5に係る特許を維持する。 
理由 1.手続きの経緯
本件特許第3068262号発明は、平成3年7月22日に出願され、平成12年5月19日に特許の設定登録がなされたものである。
これに対し、特許異議申立人高浜工業株式会社より、本件請求項1、3乃至5に係る発明について特許異議申立てがなされ、本件請求項1に係る発明にのみ平成13年5月11日付けで取消理由通知がなされたが、特許権者からは何らの応答もない。
2.本件発明
特許異議申立ての対象である本件請求項1、3乃至5に係る発明(以下、本件発明1、3乃至5」という)は、特許請求の範囲の請求項1、3乃至5に記載された事項によって特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】枠本体の両端に一対の腕部を突成したコ字形をなす支持枠の前記両腕部の間に切断線を緊張して張り渡した構造になり、被焼成物の素地成形工程において前記切断線により土練済み生製品の切断を行うようにした土練済み生製品切断用の切断機において、前記切断線として導電性材料を用い、該切断線に電流を流す通電回路と、前記切断線への通電が遮断されたことを検出する検出手段とを設けたことを特徴とする土練済み生製品切断用の切断機における切断線の断線検知装置。
【請求項3】枠本体の両端に一対の腕部を突成したコ字形をなす支持枠の前記両腕部の間に切断線を緊張して張り渡した構造になり、被焼成物の素地成形工程において前記切断線により土練済み生製品の切断を行うようにした土練済み生製品切断用の切断機において、前記切断線に前記支持枠の前記両腕部の間での緊張力を付与する引張りコイルばねを設け、該引張りコイルばねに被検出子を固着するとともに、該被検出子が所定の位置にあるか否かを検出するセンサを設けたことを特徴とする土練済み生製品切断用の切断機における切断線の断線検知装置。
【請求項4】枠本体の両端に一対の腕部を突成したコ字形をなす支持枠の前記両腕部の間に切断線を緊張して張り渡した構造になり、被焼成物の素地成形工程において前記切断線により土練済み生製品の切断を行うようにした土練済み生製品切断用の切断機において、前記切断線の緊張部分に、引張りコイルばねによって前記切断線と略直角方向へ引張り付勢された被検出子を係止し、該被検出子が所定の位置にあるか否かを検出するセンサを設けたことを特徴とする土練済み生製品切断用の切断機における切断線の断線検知装置。
【請求項5】枠本体の両端に一対の腕部を突成したコ字形をなす支持枠の前記両腕部の間に切断線を緊張して張り渡した構造になり、被焼成物の素地成形工程において前記切断線により土練済み生製品の切断を行うようにした土練済み生製品切断用の切断機において、前記切断線の緊張部分が所定の位置にあるか否かを検出するセンサを設けたことを特徴とする土練済み生製品切断用の切断機における切断線の断線検知装置。」
3.特許異議申立てについて
(特許異議申立ての理由)
本件請求項1に係る発明は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であるか、甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、また本件請求項3に係る発明は甲第3号証及び甲第4号証に記載の発明に基づいて、本件請求項4に係る発明は甲第4号証及び甲第5号証に記載の発明に基づいて、本件請求項5に係る発明は甲第3号証及び甲第6号証に記載の発明に基づいて、それぞれ当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定により特許を受けることができない。
(証拠の記載内容)
甲第1号証:ドイツ実用新案登録第1924339号明細書
(a)「この考案は、特に粘土または粘土のようなものの素地を引き出す設備からの押出成形体の切断機に関し、少なくとも、押出体を横切り接近して配置され、かつ揺動する特に針金である切断プロファイルを備え、少なくとも2つの引張部に支持されているものである。この種の切断機は、設備からの連続する素地を切断できるようにしたものである。」(訳文第1頁)
(b)「この考案は課題に基づき、とくに粘土で押出成形された素地のための切断機を提供するために設計されたもので、切断線の張設により全部の必要な設備が同期あるいは申し分のない順序で連続してスイッチが切られることにある。」(訳文第2頁)
(c)「図1によれば、切断装置は、主に略U形の弓具1、その(弓具1)脚端の間にある張設された切断線4から構成されている。弓具1から絶縁された引張部2、3の範囲には、監視電流10が通電された針金4があり、(監視電流は、)変圧器6から給電されるようになっており、交流リレー5において生じるものである。切断線4の引張部2は、接地側13、変圧器6の二次コイル12まで閉回路となっており、弓具1から絶縁された引張部3は、リレー5を越えて二次コイルの他端に接続されている。リレー5は、接点14を有しており、また、これ(リレー5)は制御電流回路16における作動接点15、通電された制御回路17をそれぞれ有し、三相整流継電器7を越え電動機8へ導かれている。切断線4が切れた場合、図1のような状態にあると、監視電流10が中断されてリレー5を作動させ、一方では三相整流継電器7を越えて、いくつかの電動機8が同期され、または運転中に順次に起こる。その時の設備が据え付けられるように、一方(単独)の設備とその電動機との間に配置された、例えばクラッチ機構に電動機8は作用する。」(訳文第3頁最終行乃至第4頁)
甲第2号証:東ドイツ特許第216413号公報
「この発明は、垂直な切断を確実に達成する塑性を有する素地、とりわけ陶磁器の素地体の切断の装置に関する。陶磁器工業におけるこの発明の適用は、押出装置の製造、粘土成形品および同様の製品に与えられるものである。
切断車8の上方には、垂直に揺動可能な切断線20を伴った切断弓形具19があり、すなわち、切断線は水平に調節可能に整えることができる。切断弓形具19は、光ゲート15、16との間隙を水平方向に調整可能となっており、これで長さは押出断面を選択して終わりとなっている。図3から明らかなように、切断線20は導電性に形成されており、そして、切断線の断線のときに、例えば押出機のクラッチ解除により押送りを妨げる電気信号を確実に発生させることができるように、絶縁ライナ21が切断弓形具19に固定されている。」(訳文全文)
甲第3号証:特開昭61-237604号公報
(a)「本実施例の切断装置1は、押出成形体(押出成形装置から押出されて来た連続するハニカム構造のセラミック生素地製品)40を載置した受台50が搬送されるローラーコンベア11と、送り機構5により、平行移動可能な移動台4と、この移動台4上に立設された支柱3a(反対側にもう一本の支柱3bがある)に支えられた切断枠2とを備えている。」(第2頁左下欄第11行乃至第18行)
(b)「第2図に示すように、切断枠2は、ローラーコンベア11上を搬送されて来る押出成形体40の幅方向に並設された、2本のアーム2a、2bを備えており、一方のアーム2aの先端部にローラー30が固定され、他方のアーム2bの中央部にローラー29が取付けられている。
アーム2aの上方には、ローラー27および水平シリンダ23が装着されており、アーム2bの上方には、ローラー28が取付けられている。
ローラー29、30の間には、細線(例えば、0.1〜0.05mmφの鋼線)21が直線的に張設されており、この細線の両端は、スプリング25、26を介して水平シリンダ23のアクチュエータ23aに係止されている。」(第2頁右下欄第6行乃至第19行)
甲第4号証:米国特許第2316876号明細書
(a)「この発明は作動中にカッターまたはソ-のうち1つ以上破損し、あるいは脱落することにより、操作者が不完全なカッターを交換または修理し、操作を再開することができるために、機械が自動的に停止して警告するものであり、」(訳文第1頁第3行乃至第6行)
(b)「他の目的は、自動的な停止および、カッターまたはソーの破損、あるいは脱落により直ちに機械の停止を果たし、同時に機械の状態について操作者へ可視的または音響的に警告を与えるという信号を兼ね備えたことを明確に示す種類の機械を用意することである。」(訳文第1頁10行乃至第13行)
(c)「図1を参照することにより、接触部材30は複数のブレードのラインを横切って完全に拡張し、機械の正常なオペレーションを妨げず接触の影響を受けないための距離として、ナット29のトップから間隔をおいて配置され、ブレード支持体23に取り付けられたブレード1つまたは1つ以上のブレード20が破損したり解き外れる事態において上方への部材30の動作の原因となることが着目されるであろう。
軸31の一端には、被覆体37’に固定されたピンまたは軸37に固定されたアーム36を有するリンク35を通じて順番に接続されたアーム34に接続されており、図5の37aに示されるリミットスイッチの一部を形成している。このスイッチは、スイッチ部38と協動する接触体40とを含む。電流は、スイッチ部38に接続された線42を通じ、そこから接触体39と線44を通じてカム軸12との駆動関係を有するモータ43へ供給される。」(訳文第2頁第21行乃至第3頁3行)
(d)「しかし、パンが自動的に機械あるいはこの種の機械へ供給され、機械が連続操作において維持されるという機械あるいはこの種の機械へ供給される巨大なバン焼き施設における大量生産に機械が適用される。
ブレードあるいはソー20の一つまたは一つ以上が破損あるいは支持体から脱落する場合、ロッド24は制御が解かれ、スプリング26により回動部材30と接触するように上方に押し付けられる。これは、部材30を揺動する結果となり、アーム34がアーム36を下方へ引く原因となり、スイッチ部38により接触部39をクリアーとし、モータ43への回路を遮断し後者(モータ43)は停止する。」(訳文第3頁第24行乃至第4頁第4行)
甲第5号証:ドイツ特許公開第2353085号明細書
(a)「図1の切断装置は、垂直方向の往復する弓形具2を備えた枠体1を有している。弓形具は固定具3、4を有し、それらには切断針金5が固定されている。固定具3、4の中心には支持機構6なるものがある。後者(支持機構6)は引っ張りばね7を含むが、結合部材8の上方にあり切断針金5に作用し、横切ったその方向へ生じた張力Pを与える。」(訳文第2頁下から第3行乃至第3頁第2行)
(b)「図2に開示された切断装置は、図1に開示された切断装置と原則的に一致して設計されている。」(訳文第3頁第18行乃至第19行)
(c)「粘性を有する原料押出体、とりわけ粘土押出体の切断装置であって、弓形具に固定され、張設された切断針金を有する支持装置を備え、支持装置(6、6a)は、固定具(3、4、3a、4a)の間の切断針金(5、5a)を作用させ、横切る切断針金に作用する張力(P)を実施させることを特徴とする。」(訳文第4頁)
甲第6号証:実願昭62-11551号(実開昭63-120724号)のマイクロフィルム
(a)「リミットスイッチ2がオフになると、自己保持が解除され、操作回路への給電が止まって機械が停止する。
上述した帯鋸刃切損検知装置は、第8図に示すように、機械25がポータブル型鋸盤の場合はケーシング上部26に、大型鋸盤の場合はケーシング内部27に取付け、車輪16を帯鋸刃17上に押付けてドッグ4がリミットスイッチ2をオンさせるようにしておく。」(第6頁第16行乃至第7頁第4行)
(b)「動作を説明する。切断作業中に帯鋸刃17が切損すると車輪16およびロッド5はスペーサ9と下部バネ受け金物8を介して圧縮バネ12の力で押し下げられ、リミットスイッチ2が作動して操作回路は開の状態となり、鋸盤は停止し、特に自動化ラインでは、関連のラインの操作をも停止可能になる。」(第7頁第11行乃至第17行)
(当審の判断)
(1)本件発明1について
当審が先に通知した取消理由の概要は、本件発明1が甲第2号証に記載された発明であるか、又は甲第2号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は同条第2項の規定により特許を受けることができないというものであるが、この取消理由は妥当なものと認められるから、本件発明1についての特許は取り消されるべきものである。
(2)本件発明3について
上記甲第3号証には、セラミック生素地製品の切断装置に関し、コ字形をなす切断枠にスプリングを介して直線的に細線を張設した構成の切断装置が記載されているから、これを本件発明3の記載振りに則って整理すると、「枠本体の両端に一対の腕部を突成したコ字形をなす支持枠の前記両腕部の間に切断線を緊張して張り渡した構造になり、被焼成物の素地成形工程において前記切断線により土練済み生製品の切断を行うようにした切断機において、前記切断線に前記支持枠の前記両腕部の間での緊張力を付与する引張りコイルばねを設けたセラミック生素地製品切断用の切断機」の発明(以下、甲3発明」という)が記載されていると云える。
そこで、本件発明3と甲3発明とを対比すると、本件発明3の「土練済み生製品」は、甲3発明の「セラミック生素地製品」に相当するから、本件発明3は、「該引張りコイルばねに被検出子を固着するとともに、該被検出子が所定の位置にあるか否かを検出するセンサを設けた」点で甲3発明と相違していると云える。
次に、この相違点について検討すると、甲第4号証には、パンスライス機のブレードが破損した場合の検知装置が記載されているが、この検知装置はロッド24がスプリング26により上方に押し付けられて回動部材30と接触するように構成されたものであり、本件発明3の「引張りコイルばねに被検出子を固着するとともに、該被検出子が所定の位置にあるか否かを検出するセンサを設けた」ものではない。
してみると、本件発明3は、上記甲第3号証及び甲第4号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができないから、特許異議申立人の上記主張は採用することができない。
(3)本件発明4について
上記甲第4号証に記載の検知装置は、上述したとおりのものであり、「切断線の緊張部分に、引張りコイルばねによって前記切断線と略直角方向へ引張り付勢された被検出子を係止し、該被検出子が所定の位置にあるか否かを検出するセンサを設けた」ものでもない。
また、上記甲第5号証には、弓具と切断針金とからなる粘土成形体の切断器具が記載されているだけであり、この証拠には切断線の断線を検知する検知手段は示唆されていない。
してみると、本件発明4は、上記甲第4号証及び甲第5号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができないから、特許異議申立人の上記主張は採用することができない。
(4)本件発明5について
上記甲第6号証には、「帯鋸刃折損検知装置」が記載されているが、この検知装置は、「切断作業中に帯鋸刃17が切損すると車輪16およびロッド5はスペーサ9と下部バネ受け金物8を介して圧縮バネ12の力で押し下げられ、リミットスイッチ2が作動して操作回路は開の状態となり、鋸盤は停止し、」という記載によれば、車輪及びロッドやリミットスイッチ等により構成されるものであり、「切断線の緊張部分が所定の位置にあるか否かを検出するセンサを設けた」ものではない。
してみると、本件発明5は、上記甲第3号証及び甲第6号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることができないから、特許異議申立人の上記主張は採用することができない。
4.むすび
以上のとおり、本件発明1についての特許を取り消す。
本件発明3乃至5についての特許は、特許異議申立ての証拠を検討しても、これを取り消すことはできない。
また、他にこれら発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。


 
異議決定日 2001-10-24 
出願番号 特願平3-206582
審決分類 P 1 652・ 113- ZC (B28B)
P 1 652・ 121- ZC (B28B)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 徳永 英男  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 唐戸 光雄
山田 充
登録日 2000-05-19 
登録番号 特許第3068262号(P3068262)
権利者 高砂工業株式会社
発明の名称 土練済み生製品切断用の切断機における切断線の断線検知装置  
代理人 野口 宏  
代理人 村山 信義  

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