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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 E04H |
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管理番号 | 1051669 |
異議申立番号 | 異議2001-72620 |
総通号数 | 26 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1998-03-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-09-26 |
確定日 | 2002-01-21 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3149163号「鉄骨構造物の耐震構造」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3149163号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
〔1〕本件発明 本件特許第3149163号の請求項1に係る発明(平成3年8月16日出願、平成13年1月19日設定登録)は、明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。 「【請求項1】一般の建築用鋼材よりなる柱と梁部材から構成されるラーメン構造の鉄骨構造物であって、上下の前記梁部材間に間柱が配設されてなる耐震構造において、前記間柱を、上の梁に固定されたH形鋼からなる間柱ブラケットと、下の梁に固定された前記間柱ブラケットと同形状のH形鋼からなる間柱ブラケットと、前記一対の間柱ブラケットと同形状のH形鋼である、前記一対の間柱ブラケットの間に接続された前記間柱ブラケットより耐力の低い小耐力間柱部材とにより構成し、前記一対の間柱ブラケットと前記小耐力間柱部材とをボルトにより接続したことを特徴とする鉄骨構造物の耐震構造。」 〔2〕特許異議の申立ての理由 特許異議申立人青木恭光は、甲第1号証〜甲第6号証を提出して、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証記載の発明に甲第2号証〜甲第6号証記載の発明を組み合わせて容易に類推できるので、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は取り消されるべきである旨主張する。 甲第1号証:特開平1-203543号公報 甲第2号証:「実例でわかる工作しやすい鉄骨設計」技報堂出版株式会社、 1991年2月15日発行、38、39、42、43、72、73頁 甲第3号証:「鉄骨鉄筋コンクリート構造設計例集」技報堂出版株式会社、 1989年3月10日発行、360〜362頁 甲第4号証:「鉄骨の構造設計」技報堂出版株式会社、1982年9月5 日発行、350〜353頁 甲第5号証:「鋼構造の補剛設計」森北出版株式会社、1982年6月 1日発行、314、315頁 甲第6号証:「高力ボルト接合」日本鋼構造協会、昭和47年9月18日 増補版発行、「序にかえて」の頁 〔3〕特許異議の申立てについての判断 1.各甲第号証の記載事項 (1)甲第1号証には、以下の記載が認められる。 a「この発明は、地震等により、構造物が受ける振動エネルギーを吸収するための弾塑性ダンパーに関するものである。」(1頁左下欄12〜14行)、 b「弾塑性ダンパー1は、軟鋼等より一定大きさに形成された直方体形の金属製ブロック2の中央部に複数個の孔3,…を、両端部に複数個のボルト孔4,…をそれぞれ設けることにより形成されている。……尚、金属製ブロックにかえて一定厚さを有する金属板に孔3,…とボルト孔4,…を設けて弾塑性ダンパー1としてもよい。」(2頁左上欄8〜19行) c「第2図は、柱に使用した場合で、弾塑性ダンパー1は、柱5の中央部に設置されている。」(2頁右上欄1〜3行) d「何れの場合にも上下柱5,5間又は左右梁6,6間のウェブ7,7の両側に双方に跨って添わされ、且つの両端をボルト孔4,…とこれに対応して形成されたウェブ7,7のボルト孔4,…を貫通する複数本の高力ボルト8,…によって柱又は、梁6のウェブ7にボルト止めすることにより、取りつけられている。」(2頁右上欄6〜12行) e「このような構成において、構造物が地震を受け柱・梁架構の弾性変形域を越えると、弾塑性ダンパー1の中央部の孔3,…の周縁部が塑性変形して地震エネルギーを吸収することにより構造物の破壊を防ぐ。」(2頁右上欄19行〜左下欄4行) また、図2には、一般の建築用鋼材よりなる柱と梁部材から構成されるラーメン構造の鉄骨構造物が示されている。 以上の記載及び技術常識によれば、甲第1号証には、 「一般の建築用鋼材よりなる柱と梁部材から構成されるラーメン構造の鉄骨構造物であって、上下の梁部材間に間柱が配設されてなる耐震構造において、前記間柱を、上の梁に固定されたH形鋼からなる柱と、下の梁に固定された前記上の梁に固定されたH形鋼からなる柱と同形状のH形鋼からなる柱と、弾塑性ダンパーとにより構成し、一対の柱と弾塑性ダンパーとをボルトにより接続した鉄骨構造物の耐震構造」 の発明が記載されていると認められる。 (2)甲第2号証には、72頁上欄(NO.10-5、改善例)にH形鋼の間柱が示され、また、例えば43頁上欄(NO.5-2、改善例)に、同形状のH形鋼の梁で梁端部と梁中央部とをボルトで接続した例が示されている。 (3)甲第3号証には、同形状のH形鋼をボルトで接続した柱の例が示されている。 (4)甲第4号証には、同形状のH形鋼をボルトで接続した柱の例が示されれている。 (5)甲第5号証には、同形状のH形鋼を鉛直に連結した橋脚の支柱の例が示されている。 (6)甲第6号証には、「2.高力ボルト接合について」の欄に、「高力ボルト接合」に関して「解体が容易である」、「これらの特徴を生かして、従来は短期の仮設物に支圧接合形式で使用されることが多く...」と記載されている)。 2.対比・判断 本件請求項1に係る発明と甲第1号証記載の発明とを対比すると、甲第1号証記載の発明の「弾塑性ダンパー」は、軟鋼等により一定大きさに形成された直方体形の金属製ブロック2あるいは金属板の中央部に複数個の孔3を設けたものであり、その中央部の孔3の周縁部が塑性変形して地震エネルギーを吸収することにより構造物の破壊を防ぐもの(上記b、eの記載参照。)であるから、上下の梁に固定されたH形鋼からなる柱よりも耐力が低い小耐力部材であることは明らかであり、また、間柱の一部を構成する部材といえるから、両者は、 「一般の建築用鋼材よりなる柱と梁部材から構成されるラーメン構造の鉄骨構造物であって、上下の梁部材間に間柱が配設されてなる耐震構造において、前記間柱を、上の梁に固定されたH形鋼と、下の梁に固定された前記上の梁に固定されたH形鋼と同形状のH形鋼と、前記一対のH形鋼の間に接続された前記H形鋼より耐力の低い小耐力間柱部材とにより構成し、前記一対のH形鋼と小耐力間柱部材とをボルトにより接続した鉄骨構造物の耐震構造」 である点で一致するものの、次の点で相違する。 相違点 本件請求項1に係る発明では、上下の梁に固定されたH形鋼が間柱ブラケットであり、小耐力間柱部材が一対の間柱ブラケットと同形状のH形鋼であるのに対し、甲第1号証記載の発明では、上下の梁に固定されたH形鋼が柱であり、小耐力間柱部材が弾塑性ダンパーである。 そこで上記相違点について検討すると、前示のように甲第2号証に、H形鋼の間柱が示され、甲第3号証に、同形状のH形鋼をボルトで接続した柱が示され、甲第4号証に、同形状のH形鋼をボルトで接続した柱が示され、甲第5号証に、同形状のH形鋼を鉛直に連結した橋脚の支柱が示されている。 しかしながら、これらの接続された同形状のH形鋼は、その上下に接続されたH形鋼より耐力の低いものではなく、同じ耐力のものと解されるから、上記甲第2号証〜甲第5号証には、H形鋼を用いた間柱、及び同形状のH形鋼をボルトで接続した柱が示されているにすぎず、いずれにも、上下の梁に固定されたH形鋼からなる間柱あるいは間柱ブラケットの間に接続される、間柱あるいは間柱ブラケットより耐力の低い小耐力間柱部材を、間柱あるいは間柱ブラケットと同形状のH形鋼とすることについては、何ら記載されていないし、それを示唆する記載もない。また、甲第6号証も、高力ボルトによる接合が記載されているにすぎないから、甲第1号証記載の発明に甲第2号証〜甲第6号証記載の発明を組み合わせても、相違点における本件請求項1に係る発明の構成にはなり得ない。 したがって、本件請求項1に係る発明は、甲第1号証〜甲第6号証記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。 、 〔4〕むすび 以上のとおりであるから、異議申立人の主張する理由及び提出した証拠方法によっては、本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2001-12-26 |
出願番号 | 特願平9-252229 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(E04H)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 五十幡 直子 |
特許庁審判長 |
木原 裕 |
特許庁審判官 |
鈴木 公子 中田 誠 |
登録日 | 2001-01-19 |
登録番号 | 特許第3149163号(P3149163) |
権利者 | 大成建設株式会社 |
発明の名称 | 鉄骨構造物の耐震構造 |
代理人 | 崔 秀▲てつ▼ |
代理人 | 森 哲也 |
代理人 | 根本 宏 |
代理人 | 内藤 嘉昭 |