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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G04C
管理番号 1052350
審判番号 不服2001-3651  
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-08-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-03-08 
確定日 2002-01-10 
事件の表示 平成9年特許願第70271号「指針式携帯時計」拒絶査定に対する審判事件[平成10年8月25日出願公開、特開平10-227876]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、昭和61年4月30日に出願した特願昭61-100165号の一部を平成9年3月24日に新たな特許出願としたものであって、その請求項1に係る発明は、平成9年4月23日付け及び平成13年4月9日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「少なくとも歯車部と該歯車部より外径の小さいカナ部からなる番車の前記歯車部及び前記カナ部が他の番車と噛合い番車列を構成する指針式携帯時計において、前記番車の1つは、一方のほぞが固定部材に設けられた軸受に軸支され、他方のほぞが外部操作部材と連動して移動可能である支持部材に設けられた軸受に軸支されてなり、前記外部操作部材の操作に対応し前記支持部材が移動したとき、前記支持部材に軸支された番車のカナ部は他の番車との噛合いを解除し、歯車部は他の番車との噛合いを保持しており、その場合、前記固定部材の前記軸支の位置から、他の番車と噛み合う前記歯車部までの距離lに比べ他の番車と噛み合う前記カナ部までの距離mの方が長くなっており、前記番車の1つの前記他方のほぞは前記支持部材の軸受穴によって軸支されていることを特徴とする指針式携帯時計。」
なお、本願については、平成10年11月24日付けの手続補正がされたが、これは平成12年3月23日付けの補正の却下の決定により却下された。
2.引用刊行物記載の発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、実願昭56-144532号(実開昭58-49281号)のマイクロフィルム(以下、引用例という。)には、次の事項が記載されている。
「1は地板、2は巻真・・・・・4は三番車外しレバーで・・・ダボ1c・・・を中心に回転可能となっている。三番外しレバー・・・・・L字曲げした4c部で巻真2と、またフォーク状の4d部で三番車の下柄と係合している。・・・地板1の中心穴1dには歯車とカナが一体の分針車5が押し込まれている。6は三番車でこの下柄6cは地板のトラック穴1eと前記三番外しレバーのフォーク部4dでガイドされている。7は四番車で分針車の中心穴に押込まれている。・・・・・10は受で前記各番車の柄を受けるとともに、断面方向で番車とのスキ間(アガキ)を確保し地板に固定されている。
次に作動を説明すると、巻真が押込まれた通常の状態(第2図、第3図)から巻真を引出すと、第4図、第5図に示す様に、巻真先端部2bと係合している三番車外しレバー4は、・・・時計方向に回転する。したがって三番外しレバー先端のフォーク部4dも同時に回転し、三番車の下柄は三番外しレバーフォーク部4eで押され地板のトラック穴1eに添って、分針車と遠ざかる方向に傾けられ分針歯車5bと、三番カナ6aの噛合が外れる、この時三番歯車6bと四番カナ7aは噛合ったままの状態を保持する。・・・この状態で巻真をまわすと、・・・分針および時針の修正が可能となる。」(第3頁第10行〜第5頁第12行。第2〜5図)と記載されている。
なお、引用例に記載のものにおいて、三番カナ6aの外径が三番歯車6bの外径より小さいこと、及び、受10が三番車6を軸支する位置から、四番車7と噛み合う三番歯車6bまでの距離に比べ分針車5と噛み合う三番カナ6aまでの距離の方が長くなっていることは歯車輪列を構成するうえでの当然の構成にすぎず、このことは図面の記載とも合致している。また、受10が番車を軸支する箇所が軸受として構成されることは自明な事項である。してみると、引用例には、
「少なくとも三番歯車6bと該歯車部より外径の小さい三番カナ6aからなる三番車6の前記歯車部及び前記カナ部が四番車7及び分針車5と噛合い番車列を構成する指針式時計において、
三番車6は、一方の柄が受10に設けられた軸受に軸支され、他方の柄が巻真2と連動して移動可能である三番車外しレバー4に設けられたフォーク部4d、4e及び地板1に設けられたトラック穴1eに軸支されてなり、
前記巻真の操作に対応し前記三番車外しレバーが移動したとき、前記三番車外しレバーに軸支された三番車のカナ部は分針車との噛合いを解除し、歯車部は四番車との噛合いを保持しており、
その場合、前記受の前記軸支の位置から、四番車と噛み合う前記歯車部までの距離に比べ分針車と噛み合う前記カナ部までの距離mの方が長くなっており、
三番車の1つの前記他方の柄は前記三番車外しレバーのフォーク部4d、4e及び地板1に設けられたトラック穴1eによって軸支されていることを特徴とする指針式時計。」
が記載されている。
3.対比・判断
3-1.対比
そこで、本願発明と上記引用例に記載されている発明を対比すると、引用例に記載されている「三番車6」、「三番歯車6b」、「三番カナ6a」、「四番車7;分針車5」、「柄」、「受10」、「巻真2」、「三番車外しレバー4」は、それぞれ本願発明における「番車」、「歯車部」、「カナ部」、「他の番車」、「ほぞ」、「固定部材」、「外部操作部材」、「支持部材」に相当するから、両者は、
「少なくとも歯車部と該歯車部より外径の小さいカナ部からなる番車の前記歯車部及び前記カナ部が他の番車と噛合い番車列を構成する指針式時計において、前記番車の1つは、一方のほぞが固定部材に設けられた軸受に軸支され、他方のほぞが外部操作部材と連動して移動可能である支持部材に設けられた軸受に軸支されてなり、前記外部操作部材の操作に対応し前記支持部材が移動したとき、前記支持部材に軸支された番車のカナ部は他の番車との噛合いを解除し、歯車部は他の番車との噛合いを保持しており、その場合、前記固定部材の前記軸支の位置から、他の番車と噛み合う前記歯車部までの距離lに比べ他の番車と噛み合う前記カナ部までの距離mの方が長くなっており、前記番車の1つの前記他方のほぞは前記支持部材によって軸支されていることを特徴とする指針式時計。」の点で一致し、以下の点で相違する。
3-1-1.相違点イ
本願発明のものにおいては、番車の他方のほぞが支持部材の軸受け穴に軸支されているのに対して、引用例のものにおいては、番車(三番車)の他方のほぞが、支持部材(三番車外しレバー)のフォーク部4d、4eと地板1のトラック穴1eとから構成される軸受け部によって軸支されている点
3-1-2.相違点ロ
本願発明のものは、指針式携帯時計であるが、引用例のものは、指針式時計である点
3-2.判断
そこで、上記相違点について検討する。
3-2-1.相違点イについて
輪列を構成する番車の「ほぞ」を軸支するのに軸受穴を用いることは、例えば引用例のものにも示されているように周知手段である。そして、上記引用例記載のものにおいて、他方のほぞを軸支するのに周知技術である軸受穴を用いることは容易に想到しうる技術的事項にすぎない。
なお、審判請求人は、審判請求書の請求の理由において、
「引用文献Aでは、前記三番車6の下ほぞ6cが、前述のように平面方向においては三番外しレバー4のフォーク部4d、4eの間の長溝とこの長溝にほぼ直交する位置に形成されている地板のトラック穴1eとに囲まれた空間で案内されているため、前記下ほぞ6cの平面方向の位置は、正確には定まらないものです。
即ち、前記下ほぞ6cの平面方向の位置出しにおいては、まず前記フォーク部4d、4eの長溝の中で移動可能ですので一律的には平面位置が定まらず、他部材の地板のトラック穴1eを必ず必要としますから、これらの2部材によりガイドされる前記下ほぞ6cは、その平面位置のバラツキが必然的に大きくなってしまいます。」
と述べて、引用例のものにおける下ほぞ6cの平面方向の位置の不正確さを指摘しているが、引用例のものにおいても、トラック穴1eとフォーク部4d、4eとで規定される空間部(当該空間部は、三番車外しレバーの移動に伴ってトラック穴とフォーク部との重なり箇所として平面的には一律的に特定されるものである。)によって下ほぞ6cが軸支されており、その軸支位置が平面的に不正確であるとは言えない。また、仮に審判請求人の主張のとおりであったとしても、下ほぞ6cの平面方向の位置の正確さについては、引用例のフォーク部4d、4eと地板1のトラック穴1eに代え上記周知技術である軸受穴を適用することによって当業者が当然に期待できる効果にすぎない。
3-3-2.相違点ロについて
指針式時計が携帯用として使用されることは、単なる用途の限定にすぎない。
4.むすび
したがって、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
 
審理終結日 2001-11-09 
結審通知日 2001-11-13 
審決日 2001-11-27 
出願番号 特願平9-70271
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G04C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 櫻井 仁  
特許庁審判長 高瀬 浩一
特許庁審判官 山川 雅也
三輪 学
発明の名称 指針式携帯時計  
代理人 上柳 雅誉  

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