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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) E01D
管理番号 1052505
審判番号 審判1998-35541  
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-03-25 
種別 無効の審決 
審判請求日 1998-11-06 
確定日 2001-12-17 
事件の表示 上記当事者間の特許第2676598号の特許無効審判事件について、併合のうえ、次のとおり審決する。 
結論 特許第2676598号発明の明細書の請求項1、2及び3に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 第一 手続きの経緯、本件特許発明
本件特許第2676598号発明は、平成7年9月14日に出願され、平成9年7月25日に設定登録がなされたものである。その特許発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 高架橋の床版の下方に所定の作業空間を形成して床版の下面を覆うように設ける恒久足場の足場兼用吸音部材であって、多数の透孔を有する上面板と、多数の透孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面板と、下面板の膨出部内を含む上面板と下面板との間に充填した吸音材とで構成したことを特徴とする高架橋の足場兼用吸音部材。
【請求項2】 前記膨出部を帯状に形成したことを特徴とする請求項1記載の高架橋の足場兼用吸音部材。
【請求項3】 前記下面板の膨出部内を含む上面板と下面板との間に充填する吸音材を空洞を有するブロック体で形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の高架橋の足場兼用吸音部材。」

第二 審判請求
一 これに対して、以下の11件の無効審判が請求された。
請求1:平成10年審判第35505号(請求人、阪神高速道路公団)
請求2:平成10年審判第35522号(請求人、株式会社栗本鐵工所)
請求3:平成10年審判第35524号(請求人、新日本製鐵株式會社)
請求4:平成10年審判第35535号(請求人、川崎重工業株式会社)
請求5:平成10年審判第35541号(請求人、神鋼鋼線工業株式会社)
請求6:平成10年審判第35553号(請求人、日立造船株式会社)
請求7:平成10年審判第35560号(請求人、株式会社神戸製鋼所)
請求8:平成10年審判第35569号(請求人、日本鋼管株式会社)
請求9:平成10年審判第35582号(請求人、三菱重工業株式会社)
請求10:平成10年審判第35588号(請求人、川崎製鉄株式会社)
請求11:平成10年審判第35599号(請求人、日本碍子株式会社)
各無効審判における当事者の主張は、概略、以下のとおりである。なお、各請求人の証拠方法を一覧に示すと別表のとおりとなる。

二 請求1:平成10年審判第35505号について
1 請求人、阪神高速道路公団の主張
請求項1〜3にそれぞれ記載された発明は、何れも甲第1号証に記載された発明と同一であり、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものである。
又、請求項1及び2に記載された発明は、甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項3に記載された発明は、甲第1号証〜甲第5号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、それぞれ、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないものである。
さらに、請求項1及び2に記載された発明は、弁駁書とともに提出した甲第6号証、及び甲第1号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により、特許を受けることができないものである。
よって、本件の請求項1〜3にそれぞれ記載された発明の特許は、同法123条1項2号の規定により無効とされるべきである。

甲第1号証:実願昭61-22117号(実開昭62-138710号)のマイクロフィルム
甲第2号証:技報第12号、監修、阪神高速道路公団、平成5年3月発行、発行所、財団法人阪神高速道路管理技術センター、139〜146頁、「円筒型裏面吸音材の設計 神戸管理部 調査設計課 米倉 徹 若林繁充 丸山 悟」
甲第3号証:発明協会公開技報公技番号94-12086号(1994年6月15日発行)
甲第4号証:特開平4-174109号公報
甲第5号証:特開平7-82708号公報
甲第6号証:技報第20号、首都高速道路公団、1988年3月発行、66〜70頁、「2-1-9 高架橋裏面吸音板の構造検討 東京保全部設計課扇谷 就」

2 被請求人らの主張
甲第1号証に記載された発明の高架橋の吸音被覆構造は、断面がほぼ三角形状の吸音長尺材が、適宜間隔をおいて取り付けられるもので、吸音長尺材のみによる吸音効果はさほど期待できず、高架橋を走行する車両の騒音や高架橋の下方の道路を走行している車両の騒音の低減効果が得にくいという問題点を有するもので、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成及び作用効果を異にする。又、甲第1号証に記載された発明の高架橋の吸音被覆構造に用いられている断面がほぼ三角形状の吸音長尺材は、適宜間隔をおいて取り付けられるもので、請求項1に係る発明にいう「恒久足場」を構築するためには、吸音長尺材のみでは足りず、パンチングメタル、エキスパンドメタル等の多孔板を適宜間隔をおいて配設される複数の吸音長尺材上に敷設して形成することが必要となるものであって、足場兼用吸音部材単独で「恒久足場」が構築できる請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成において根本的に相違する。
甲第2号証〜甲第4号証に記載された発明の円筒型裏面吸音材(吸音パイプ)、足場兼用円筒型吸音材、吸音筒は、いずれも複数適宜間隔をおいて取り付けられるものであり、吸音効果はさほど期待できず、高架橋を走行する車両の騒音や高架橋の下方の道路を走行している車両の騒音の低減効果が得にくいという問題点を有するもので、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成及び作用効果を異にする。又、適宜間隔をおいて取り付けられるものであるため、請求項1に係る発明にいう「恒久足場」を構築するためには、吸音パイプ、吸音長尺材のみでは足りず、パンチングメタル、エキスパンドメタル等の多孔板を適宜間隔をおいて配設される複数の吸音パイプ、円筒型吸音材上に敷設して形成することが必要となるものであって、足場兼用吸音部材単独で「恒久足場」が構築できる請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とはその構成において根本的に相違する。
甲第5号証に記載された発明の高架道路は、吸音筒が複数適宜間隔をおいて取り付けられるものであり、吸音効果はさほど期待できず、高架橋を走行する車両の騒音や高架橋の下方の道路を走行している車両の騒音の低減効果が得にくいという問題点を有するもので、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成及び作用効果を異にする。又、請求項1に係る発明にいう「恒久足場」を構築するためのものではなく、足場兼用吸音部材単独で「恒久足場」が構築できる請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成において根本的に相違する。
請求項1に係る発明は、甲第1号証〜甲第5号証に記載されておらず、又示唆もない、特許請求の範囲の請求項1に記載した「高架橋の床版の下方に所定の作業空間を形成して床版の下面を覆うように設ける恒久足場の足場兼用吸音部材」であることを前提とし、「多数の透孔を有する上面板と、多数の透孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面板と、下面板の膨出部内を含む上面板と下面板との間に充填した吸音材とで構成」することを構成要件として有し、この構成により、甲第1号証〜甲第5号証に記載された発明によっては達成できない、「高架橋を走行する車両の騒音や高架橋の下方の道路を走行している車両の騒音を確実に軽減することができることから、恒久足場上の作業空間の作業環境を良好に維持することができ」ることに加えて、足場兼用吸音部材単独で恒久足場が構築でき、「補修作業を行う都度足場を組み立てる必要がないことと相挨って、作業効率を向上することができる」等の顕著な作用効果を奏するものである。したがって、請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一でなく、又、甲第1号証〜甲第5号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
請求項2及び3は、請求項1を引用するものであり、請求項1に係る発明の構成要件のすべてを含むものであるから、当然に、請求項2及び3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一でなく、又、甲第1号証〜甲第5号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

三 請求2:平成10年審判第35522号について
1 請求人、株式会社栗本鐵工所の主張
請求項1〜3に係る本件各特許発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明、並びに甲第3号証、甲第4号証や甲第5号証に記載等の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、いずれも特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件の請求項1〜3にそれぞれ記載された発明の特許は、同法123条1項2号の規定により無効とされるべきである。

甲第1号証:特開平7-180118号公報
甲第2号証:実願昭49-153468号(実開昭51-78701号)のマイクロフィルム
甲第3号証:特開昭49-85828号公報
甲第4号証:特開平3-290514号公報
甲第5号証:実願昭61-22117号(実開昭62-138710号)のマイクロフィルム

2 被請求人らの主張
甲第1号証に記載された発明の高架式建造物における桁裏面の被覆用ルーバーは、複数本のルーバー構成部材を互いに並行して吸音用開□部を形成するように配設し、開□部を閉塞してルーバー構成部材間に吸音材を設けたものであり、ルーバー構成部材の下面等において、下方の道路を走行している車両の騒音が反射しやすく、又、ルーバー構成部材の吸音効果自体もさほど期待できず、下方の道路を走行している車両の騒音の低減効果が得にくいという問題点を有するもので、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とはその構成及び作用効果を異にする。
甲第2号証に記載された発明の吸音パネルは、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材の特徴点を備えておらず、またそもそも、甲第2号証に記載された発明の吸音パネルは、室内での反響を防いで音響効果を高めるため等に使用される室内用の吸音パネルであって、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その対象を全く異にする。
甲第3号証に記載された発明の吸音部材は、単に、多数の孔33を形成したアルミニウム合金よりなる表面材30の間に、グラスファイバー等よりなる吸音材31を充填したブロック体で構成されたものであり、甲第4号証に記載された発明の防音壁は、多数のスリットを設けた正面板12と背面板13の間にが吸音材14が充填されたものであり、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成及び作用効果を異にする。
甲第5号証に記載された発明の高架橋の吸音被覆構造は、断面がほぼ三角形状の吸音長尺材が、適宜間隔をおいて取り付けられるもので、吸音長尺材のみによる吸音効果はさほど期待できず、高架橋を走行する車両の騒音や高架橋の下方の道路を走行している車両の騒音の低減効果が得にくいという問題点を有するもので、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成及び作用効果を異にする。
請求項1に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証並びに周知技術として挙げられた甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載されておらず、又示唆もない、特許請求の範囲の請求項1に記載した「高架橋の床版の下方に所定の作業空間を形成して床版の下面を覆うように設ける恒久足場の足場兼用吸音部材」であることを前提とし、「多数の透孔を有する上面板と、多数の透孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面板と、下面板の膨出部内を含む上面板と下面板との間に充填した吸音材とで構成」することを構成要件として有し、この構成により、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明並びに甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された周知技術によっては達成できない、「高架橋を走行する車両の騒音や高架橋の下方の道路を走行している車両の騒音を確実に軽減することができることから、恒久足場上の作業空間の作業環境を良好に維持することができ」ることに加えて、足場兼用吸音部材単独で恒久足場が構築でき、「補修作業を行う都度足場を組み立てる必要がないことと相挨って、作業効率を向上することができる」等の顕著な作用効果を奏するものである。したがって、請求項1に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明並びに甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
請求項2及び3は、請求項1又は請求項2を引用するものであり、請求項1に係る発明の構成要件のすべてを含むものであるから、当然に、請求項2及び3に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明並びに甲第3号証、甲第4号証及び甲第5号証に記載された周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

四 請求3:平成10年審判第35524号について
1 請求人、新日本製鐵株式會社の主張
請求項1〜3に係る本件各特許発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、いずれも特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件の請求項1〜3にそれぞれ記載された発明の特許は、同法123条1項2号の規定により無効とされるべきである。

甲第1号証:実願昭61-22117号(実開昭62-138710号)のマイクロフィルム
甲第2号証:実願昭49-153468号(実開昭51-78701号)のマイクロフィルム

2 被請求人らの主張
甲第1号証に記載された発明の高架橋の吸音被覆構造は、断面がほぼ三角形状の吸音長尺材が、適宜間隔をおいて取り付けられるもので、吸音長尺材のみによる吸音効果はさほど期待できず、高架橋を走行する車両の騒音や高架橋の下方の道路を走行している車両の騒音の低減効果が得にくいという問題点を有するもので、請求項1の発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成及び作用効果を異にする。又、甲第1号証に記載された発明の高架橋の吸音被覆構造に用いられている断面がほぼ三角形状の吸音長尺材は、適宜間隔をおいて取り付けられるもので、請求項1に係る発明にいう「恒久足場」を構築するためには、吸音長尺材のみでは足りず、パンチングメタル、エキスパンドメタル等の多孔板を適宜間隔をおいて配設される複数の吸音長尺材上に敷設して形成することが必要となるものであって、足場兼用吸音部材単独で「恒久足場」が構築できる請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成において根本的に相違する。
甲第2号証に記載された発明の吸音パネルは、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材の特徴点を備えておらず、またそもそも、甲第2号証に記載された発明の吸音パネルは、室内での反響を防いで音響効果を高めるため等に使用される室内用の吸音パネルであって、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その対象を全く異にする。
請求項1に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載されておらず、又示唆もない、特許請求の範囲の請求項1に記載した「高架橋の床版の下方に所定の作業空間を形成して床版の下面を覆うように設ける恒久足場の足場兼用吸音部材」であることを前提とし、「多数の透孔を有する上面板と、多数の透孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面板と、下面板の膨出部内を含む上面板と下面板との間に充填した吸音材とで構成」することを構成要件として有し、この構成により、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明によっては達成できない、「高架橋を走行する車両の騒音や高架橋の下方の道路を走行している車両の騒音を確実に軽減することができることから、恒久足場上の作業空間の作業環境を良好に維持することができ」ることに加えて、足場兼用吸音部材単独で恒久足場が構築でき、「補修作業を行う都度足場を組み立てる必要がないことと相挨って、作業効率を向上することができる」等の顕著な作用効果を奏するものである。したがって、請求項1に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
請求項2及び3は、請求項1又は請求項2を引用するものであり、請求項1に係る発明の構成要件のすべてを含むものであるから、当然に、請求項2及び3に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

五 請求4:平成10年審判第35535号について
1 請求人、川崎重工業株式会社の主張
請求項1に係る本件特許発明は、甲第2号証に記載された発明と、甲第3号証及び甲第9号証、さらに甲第4号証及び甲第8号証にそれぞれ記載の周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
請求項2に係る本件特許発明は、甲第2号証に記載された発明と、甲第3号証及び甲第4号証にそれぞれ記載の周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
請求項3に係る本件特許発明は、甲第2号証に記載された発明と、甲第3号証ないし甲第7号証にそれぞれ記載の周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件の請求項1〜3にそれぞれ記載された発明の特許は、同法123条1項2号の規定により無効とされるべきである。

甲第2号証:実願昭61-22117号(実開昭62-138710号)のマイクロフィルム
甲第3号証:実願平5-59742号(実開平7-25013号)のCD-ROM
甲第4号証:実願昭59-135647号(実開昭61-49399号)のマイクロフィルム
甲第5号証:特開平2-269208号公報
甲第6号証:特開平7-82708号公報
甲第7号証:実公平5-2646号公報
甲第8号証:実願昭58-183143号(実開昭60-90307号)のマイクロフィルム
甲第9号証:特開昭49-85828号公報

2 被請求人らの主張
甲第2号証に記載された発明の高架橋の吸音被覆構造は、吸音部材が断面中空三角形状の複数の吸音長尺材を適宜間隔をおいて併設して成る吸音面状体にて構成されているが、適宜間隔をおいて併設されている吸音長尺材のみによる吸音効果はさほど期待できず、下方の道路を走行している車両の騒音の低減効果が得にくいという問題点を有するもので、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成及び作用効果を異にする。
甲第3号証に記載された発明の街路用防音壁は、単に、多孔板よりなる高さ1m前後の扁平な箱体の内部に、吸音材が充填されてなるものであり、甲第4号証に記載された発明の消音装置は、単に、壁面に断面円弧状の溝を設けるようにしたものであり、甲第5号証に記載された発明の遮音壁材は、片面に凹窪部を有する平板の凹窪部内に吸音材として耐熱性繊維材を充填し、この耐熱性繊維材を充填した平板の2枚を重ね合わせて焼成することにより吸音材を焼成平板内部に挟持させたものであり、甲第8号証に記載された発明の境界防音壁は、音源側の片面を連続凹面円弧状にコンクリート成形したものであり、それぞれ請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成及び作用効果だけでなく、その対象を異にする。
甲第6号証に記載された発明の吸音筒は、単に、中空状のグラスウールを配したものであり、甲第7号証に記載された発明の中空状の柱状吸音体は、アルミニウム繊維等の金属繊維の積層体を金網によりサンドイッチ状に挟んだ金属吸音体と遮音材とからなるものであり、甲第9号証に記載された発明の吸音部材は、単に、多数の孔を形成したアルミニウム合金よりなる表面材の間に、グラスファイバー等よりなる吸音材が充填され、ブロック体で構成されたものであり、それぞれ請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成及び作用効果を異にする。
請求項1に係る発明は、甲第2号証及び周知の技術事項(甲第3〜9号証)に開示されておらず、又示唆もない、特許請求の範囲の請求項1に記載した「高架橋の床版の下方に所定の作業空間を形成して床版の下面を覆うように設ける恒久足場の足場兼用吸音部材」であることを前提とし、「多数の透孔を有する上面板と、多数の透孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面板と、下面板の膨出部内を含む上面板と下面板との間に充填した吸音材とで構成」することを構成要件として有し、この構成により、甲第2号証に記載された発明及び周知の技術事項によっては達成できない、「高架橋を走行する車両の騒音や高架橋の下方の道路を走行している車両の騒音を確実に軽減することができることから、恒久足場上の作業空間の作業環境を良好に維持することができ」ることに加えて、足場兼用吸音部材単独で恒久足場が構築でき、「補修作業を行う都度足場を組み立てる必要がないことと相挨って、作業効率を向上することができる」等の顕著な作用効果を奏するものである。したがって、請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び周知の技術事項(甲第3〜9号証)に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
請求項2及び3は、請求項1又は請求項2を引用するものであり、請求項1に係る発明の構成要件のすべてを含むものであるから、当然に、請求項2及び3に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び周知の技術事項(甲第3〜9号証)に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

六 請求5:平成10年審判第35541号について
1 請求人、神鋼鋼線工業株式会社の主張
請求項1に係る本件特許発明は、甲第1号証〜甲第3号証にそれぞれ記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項2に係る本件特許発明は、甲第1号証〜甲第3号証にそれぞれ記載された発明及び甲第4号証に記載されたような周知の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項3に係る本件特許発明は、甲第1号証〜甲第4号証にそれぞれ記載された発明及び甲第5号証に記載されたような周知の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、いずれも特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件の請求項1〜3にそれぞれ記載された発明の特許は、同法123条1項2号の規定により無効とされるべきである。

甲第1号証:技報第20号、首都高速道路公団、1988年3月発行、66〜70頁、「2-1-9 高架橋裏面吸音板の構造検討 東京保全部設計課扇谷 就」
甲第2号証:特公平4-49604号公報
甲第3号証:実願昭61-22117号(実開昭62-138710号)のマイクロフィルム
甲第4号証:実願昭49-153468号(実開昭51-78701号)のマイクロフィルム
甲第5号証:実公平5-2646号公報

2 被請求人らの主張
甲第1号証に記載された発明の高架橋裏面作業床兼用吸音板は、下方の道路を走行している車両の騒音が反射しやすく、このため下方の道路を走行している車両の騒音の低減効果が得にくいという問題点を有するもので、甲第2号証に記載された発明のアルミニウム合金製橋梁用常設点検通路装置は、下方の道路を走行している車両の騒音の低減効果を有するものではなく、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成及び作用効果を異にする。
甲第3号証に記載された発明の高架橋の吸音被覆構造は、断面中空三角形状で、その中空部内に吸音材が充填されている吸音長尺材は、適宜間隔をおいて取り付けられるものであることから、吸音長尺材のみによる吸音効果はさほど期待できず、高架橋を走行する車両の騒音や高架橋の下方の道路を走行している車両の騒音の低減効果が得にくいという問題点を有するもので、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成及び作用効果を異にする。又、甲第3号証に記載された発明の高架橋の吸音被覆構造に用いられている断面中空三角形状で、その中空部内に吸音材が充填されている吸音長尺材は、適宜間隔をおいて取り付けられるもので、請求項1に係る発明にいう「恒久足場」を構築するためには、吸音長尺材のみでは足りず、パンチングメタル、エキスパンドメタル等の多孔板を適宜間隔をおいて配設される複数の吸音長尺材上に敷設して形成することが必要となるものであって、足場兼用吸音部材単独で「恒久足場」が構築できる請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成において根本的に相違する。
甲第4号証に記載された発明の吸音パネル、及び甲第5号証に記載された発明の吸音装置は、高架橋を走行する車両の騒音や高架橋の下方の道路を走行している車両の騒音を確実に軽減することができるようにした請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成及び作用効果を異にする。
請求項1に係る発明は、甲第1号証〜甲第5号証に記載されておらず、又示唆もない、特許請求の範囲の請求項1に記載した「高架橋の床版の下方に所定の作業空間を形成して床版の下面を覆うように設ける恒久足場の足場兼用吸音部材」であることを前提とし、「多数の透孔を有する上面板と、多数の透孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面板と、下面板の膨出部内を含む上面板と下面板との間に充填した吸音材とで構成」することを構成要件として有し、この構成により、甲第1号証〜甲第5号証に記載された、それぞれの発明及び周知の技術事項によっては達成できない、「高架橋を走行する車両の騒音や高架橋の下方の道路を走行している車両の騒音を確実に軽減することができることから、恒久足場上の作業空間の作業環境を良好に維持することができ」ることに加えて、足場兼用吸音部材単独で恒久足場が構築でき、「補修作業を行う都度足場を組み立てる必要がないことと相挨って、作業効率を向上することができる」等の顕著な作用効果を奏するものである。したがって、請求項1に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明、並びに甲第4号証及び甲第5号証に記載されたような周知な発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
請求項2及び3は、請求項1又は請求項2を引用するものであり、請求項1に係る発明の構成要件のすべてを含むものであるから、当然に、請求項2及び3に係る発明は、甲第1号証、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明、並びに甲第4号証及び甲第5号証に記載されたような周知な発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

七 請求6:平成10年審判第35553号について
1 請求人、日立造船株式会社の主張
請求項1に記載された発明は、甲第1号証に記載された発明と同一であり、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものである。
又、請求項1に係る本件特許発明は、甲第2号証及び甲第3号証にそれぞれ記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項2に係る本件特許発明は、甲第1号証〜甲第3号証にそれぞれ記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項3に係る本件特許発明は、甲第1号証〜甲第4号証にそれぞれ記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、いずれも特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件の請求項1〜3にそれぞれ記載された発明の特許は、同法123条1項2号の規定により無効とされるべきである。

甲第1号証:実願昭61-22117号(実開昭62-138710号)のマイクロフィルム
甲第2号証:実願昭49-153468号(実開昭51-78701号)のマイクロフィルム
甲第3号証:発明協会公開技報公技番号94-12086号(1994年6月15日発行)
甲第4号証:特開平7-82708号公報

2 被請求人らの主張
甲第1号証に記載された発明の高架橋の吸音被覆構造は、吸音部材が断面中空三角形状の複数の吸音長尺材を適宜間隔をおいて併設して成る吸音面状体にて構成されているが、適宜間隔をおいて併設されている吸音長尺材のみによる吸音効果はさほど期待できず、下方の道路を走行している車両の騒音の低減効果が得にくいという問題点を有するもので、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成及び作用効果を異にする。又、甲第1号証に記載された発明の高架橋の吸音被覆構造に用いられている断面がほぼ三角形状の吸音長尺材は、適宜間隔をおいて取り付けられるもので、請求項1に係る発明にいう「恒久足場」を構築するためには、吸音長尺材のみでは足りず、パンチングメタル、エキスパンドメタル等の多孔板を適宜間隔をおいて配設される複数の吸音長尺材上に敷設して形成することが必要となるものであって、足場兼用吸音部材単独で「恒久足場」が構築できる請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成において根本的に相違する。
甲第2号証に記載された発明の吸音パネルは、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材の特徴点を備えておらず、またそもそも、甲第2号証に記載された発明の吸音パネルは、室内での反響を防いで音響効果を高めるため等に使用される室内用の吸音パネルであって、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その対象を全く異にする。
甲第3号証に記載された発明の高速道路高架裏面等に使用する騒音対策用円筒型吸音材及び甲第4号証に記載された発明の高速道路は、吸音効果はさほど期待できず、下方の道路を走行している車両の騒音の低減効果が得にくいという問題点を有するもので、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成及び作用効果を異にする。
請求項1に係る発明は、甲第1号証〜甲第4号証に記載されておらず、又示唆もない、特許請求の範囲の請求項1に記載した「高架橋の床版の下方に所定の作業空間を形成して床版の下面を覆うように設ける恒久足場の足場兼用吸音部材」であることを前提とし、「多数の透孔を有する上面板と、多数の透孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面板と、下面板の膨出部内を含む上面板と下面板との間に充填した吸音材とで構成」することを構成要件として有し、この構成により、甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明によっては達成できない、「高架橋を走行する車両の騒音や高架橋の下方の道路を走行している車両の騒音を確実に軽減することができることから、恒久足場上の作業空間の作業環境を良好に維持することができ」ることに加えて、足場兼用吸音部材単独で恒久足場が構築でき、「補修作業を行う都度足場を組み立てる必要がないことと相挨って、作業効率を向上することができる」等の顕著な作用効果を奏するものである。したがって、請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一でなく、又、甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
請求項2及び3は、請求項1又は請求項2を引用するものであり、請求項1に係る発明の構成要件のすべてを含むものであるから、当然に、請求項2及び3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と同一でなく、又、甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

八 請求7:平成10年審判第35560号について
1 請求人、株式会社神戸製鋼所の主張
請求項1及び2に係る本件特許発明は、甲第1号証〜甲第6号証に記載の発明に基づいて、あるいは甲第8号証〜甲第11号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、請求項3に係る本件特許発明は、甲第1号証〜甲第7号証に記載の発明に基づいて、あるいは甲第8号証、甲第9号証、及び甲第2号証〜甲第7号証に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、いずれも特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
又、請求項1及び2に記載された各発明は、甲第8号証又は甲第9号証に記載された発明と同一であり、特許法29条1項3号に該当し、それぞれ特許を受けることができないものである。
よって、本件の請求項1〜3にそれぞれ記載された発明の特許は、同法123条1項2号の規定により無効とされるべきである。

甲第1号証:特開平7-180118号公報
甲第2号証:実願昭56-128200号(実開昭58-32809号)のマイクロフィルム
甲第3号証:特開昭50-65017号公報
甲第4号証:特開昭49-92827号公報
甲第5号証:実願昭49-153468号(実開昭51-78701号)のマイクロフィルム
甲第6号証:特開昭51-121925号公報
甲第7号証:実願平1-35401号(実開平2-125013号)のマイクロフィルム
甲第8号証:特開平4-174109号公報
甲第9号証:発明協会公開技報公技番号94-12086号(1994年6月15日発行)
甲第10号証:実願昭61-22117号(実開昭62-138710号)のマイクロフィルム
甲第11号証:実願平1-35400号(実開平3-18214号)のマイクロフィルム

2 被請求人らの主張
甲第1号証に記載された発明の高架式建造物における桁裏面の被覆用ルーバーは、複数本のルーバー構成部材を互いに並行して吸音用開□部を形成するように配設し、開□部を閉塞してルーバー構成部材間に吸音材を設けたものであり、ルーバー構成部材の下面等において、下方の道路を走行している車両の騒音が反射しやすく、又、ルーバー構成部材の吸音効果自体もさほど期待できず、下方の道路を走行している車両の騒音の低減効果が得にくいという問題点を有するもので、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とはその構成及び作用効果を異にする。
甲第2号証に記載された発明の化粧板、甲第5号証に記載された発明の吸音パネル、甲第6号証に記載された発明の吸音体ユニット、甲第11号証に記載された発明の透視型防音壁は、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材の特徴点を備えておらず、またそもそも、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その対象を全く異にする。
次に、甲第3号証、甲第4号証及び甲第7号証には、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材を示唆する記載はない。
さらに、甲第8号証に記載された発明の吸音筒及びこれを用いた吸音装置、甲第9号証に記載された発明の足場兼用円筒型吸音材、及び甲第10号証に記載された発明の高架橋の吸音被覆構造は、吸音効果はさほど期待できず、下方の道路を走行している車両の騒音の低減効果が得にくいという問題点を有するもので、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成及び作用効果を異にする。
請求項1に係る発明は、甲第1号証〜甲第11号証に記載されておらず、又示唆もない、特許請求の範囲の請求項1に記載した「高架橋の床版の下方に所定の作業空間を形成して床版の下面を覆うように設ける恒久足場の足場兼用吸音部材」であることを前提とし、「多数の透孔を有する上面板と、多数の透孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面板と、下面板の膨出部内を含む上面板と下面板との間に充填した吸音材とで構成」することを構成要件として有し、この構成により、甲第1号証〜甲第11号証に記載された発明によっては達成できない、「高架橋を走行する車両の騒音や高架橋の下方の道路を走行している車両の騒音を確実に軽減することができることから、恒久足場上の作業空間の作業環境を良好に維持することができ」ることに加えて、足場兼用吸音部材単独で恒久足場が構築でき、「補修作業を行う都度足場を組み立てる必要がないことと相挨って、作業効率を向上することができる」等の顕著な作用効果を奏するものである。したがって、請求項1に係る発明は、甲第1号証〜甲第6号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものでも、甲第8号証又は甲第9号証に記載された発明と同一でも、さらに、甲第8号証〜甲第11号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
請求項2は、請求項1を引用するものであり、請求項1に係る発明の構成要件のすべてを含むものであるから、当然に、請求項2に係る発明は、甲第1号証〜甲第6号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものでも、甲第8号証又は甲第9号証に記載された発明と同一でも、さらに、甲第8号証〜甲第11号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
請求項3は、請求項1又は2を引用するものであり、請求項1に係る発明の構成要件のすべてを含むものであるから、当然に、請求項3に係る発明は、甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものでも、さらに、甲第8号証、甲第9号証、及び甲第2号証〜甲第7号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

九 請求8:平成10年審判第35569号について
1 請求人、日本鋼管株式会社の主張
請求項1及び2に係る本件特許発明は、甲第1号証(先願)に記載された発明であり、特許法29条の2の規定に該当し、それぞれ特許を受けることができないものである。
又、請求項1〜3に係るそれぞれの発明は、甲第2号証に記載された発明と同一であり、特許法29条1項3号に該当し、それぞれ特許を受けることができないものである。
さらに、請求項1〜3に係るそれぞれの発明は、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、いずれも特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件の請求項1〜3にそれぞれ記載された発明の特許は、同法123条1項2号の規定により無効とされるべきである。

甲第1号証:特開平8-302624号公報
甲第2号証:実願昭61-22117号(実開昭62-138710号)のマイクロフィルム
甲第3号証:実願昭49-153468号(実開昭51-78701号)のマイクロフィルム

2 被請求人らの主張
甲第1号証に記載された発明の吸音パネルは、枠材を枠組みしてパネル枠を形成し、該パネル枠の表面側に複数の化粧ルーバーが適宜間隔をおいて取付けられ、パネル枠内に吸音材を内蔵させたもので、高架橋を走行する車両の騒音や高架橋の下方の道路を走行している車両の騒音を確実に軽減することができるようにした請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成を異にする。
甲第2号証に記載された発明の高架橋の吸音被覆構造は、吸音部材が断面中空三角形状の複数の吸音長尺材を適宜間隔をおいて併設して成る吸音面状体にて構成されているが、適宜間隔をおいて併設されている吸音長尺材のみによる吸音効果はさほど期待できず、下方の道路を走行している車両の騒音の低減効果が得にくいという問題点を有するもので、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成を及び作用効果を異にする。又、甲第2号証に記載された発明の高架橋の吸音被覆構造に用いられている断面がほぼ三角形状の吸音長尺材は、適宜間隔をおいて取り付けられるもので、請求項1に係る発明にいう「恒久足場」を構築するためには、吸音長尺材のみでは足りず、パンチングメタル、エキスパンドメタル等の多孔板を適宜間隔をおいて配設される複数の吸音長尺材上に敷設して形成することが必要となるものであって、足場兼用吸音部材単独で「恒久足場」が構築できる請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成において根本的に相違する。
甲第3号証に記載された発明の吸音パネルは、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材の特徴点を備えておらず、またそもそも、甲第3号証に記載された発明の吸音パネルは、室内での反響を防いで音響効果を高めるため等に使用される室内用の吸音パネルであって、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その対象を全く異にする。
請求項1に係る発明は、甲第1号証(先願)に記載された発明であり、特許法29条の2の規定に該当し特許を受けることができないものであるとも、甲第2号証に記載された発明と同一であり、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができないものであるともすることはできない。
又、請求項1に係る発明は、甲第2号証及び甲第3号証に記載されておらず、また示唆もない、特許請求の範囲の請求項1に記載した「高架橋の床版の下方に所定の作業空間を形成して床版の下面を覆うように設ける恒久足場の足場兼用吸音部材」であることを前提とし、「多数の透孔を有する上面板と、多数の透孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面板と、下面板の膨出部内を含む上面板と下面板との間に充填した吸音材とで構成」することを構成要件として有し、この構成により、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明によっては達成できない、「高架橋を走行する車両の騒音や高架橋の下方の道路を走行している車両の騒音を確実に軽減することができることから、恒久足場上の作業空間の作業環境を良好に維持することができ」ることに加えて、足場兼用吸音部材単独で恒久足場が構築でき、「補修作業を行う都度足場を組み立てる必要がないことと相挨って、作業効率を向上することができる」等の顕著な作用効果を奏するものである。したがって、請求項1に係る発明は、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
請求項2は、請求項1を引用するものであり、請求項1に係る発明の構成要件のすべてを含むものであるから、当然に、請求項2に係る発明は、甲第1号証(先願)又は甲第2号証に記載された発明と同一でなく、さらに、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
請求項3は、請求項1又は2を引用するものであり、請求項1に係る発明の構成要件のすべてを含むものであるから、当然に、請求項3に係る発明は、甲第2号証に記載された発明と同一でなく、さらに、甲第2号証及び甲第3号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

十 請求9:平成10年審判第35582号について
1 請求人、三菱重工業株式会社の主張
請求項1及び2に係るそれぞれの発明は、甲第2号証に記載された発明と同一であり、特許法29条1項3号に該当し、それぞれ特許を受けることができないものである。
さらに、請求項1及び2に係るそれぞれの発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3〜5号証に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、いずれも特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
請求項3に係る発明は、甲第2号証及び甲第5号証に記載されたそれぞれの発明に基づいて、又は、甲第2号証、甲第5号証に記載された発明及び甲第3、4号証に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、いずれも特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件の請求項1〜3にそれぞれ記載された発明の特許は、同法123条1項2号の規定により無効とされるべきである。

甲第2号証:特開平7-180118号公報
甲第3号証:実願昭61-22117号(実開昭62-138710号)のマイクロフィルム
甲第4号証:発明協会公開技報公技番号94-12086号(1994年6月15日発行)
甲第5号証:特開平4-174109号公報

2 被請求人らの主張
甲第2号証に記載された発明の高架式建造物における桁裏面の被覆用ルーバーは、複数本のルーバー構成部材を互いに並行して吸音用開□部を形成するように配設し、開□部を閉塞してルーバー構成部材間に吸音材を設けたものであり、ルーバー構成部材の下面等において、下方の道路を走行している車両の騒音が反射しやすく、又、ルーバー構成部材の吸音効果自体もさほど期待できず、下方の道路を走行している車両の騒音の低減効果が得にくいという問題点を有するもので、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とはその構成及び作用効果を異にする。
甲第3号証に記載された発明の高架橋の吸音被覆構造は、吸音部材が断面中空三角形状の複数の吸音長尺材を適宜間隔をおいて併設して成る吸音面状体にて構成されているが、適宜間隔をおいて併設されている吸音長尺材のみによる吸音効果はさほど期待できず、下方の道路を走行している車両の騒音の低減効果が得にくいという問題点を有するもので、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成を及び作用効果を異にする。又、甲第3号証に記載された発明の高架橋の吸音被覆構造に用いられている断面がほぼ三角形状の吸音長尺材は、適宜間隔をおいて取り付けられるもので、請求項1に係る発明にいう「恒久足場」を構築するためには、吸音長尺材のみでは足りず、パンチングメタル、エキスパンドメタル等の多孔板を適宜間隔をおいて配設される複数の吸音長尺材上に敷設して形成することが必要となるものであって、足場兼用吸音部材単独で「恒久足場」が構築できる請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成において根本的に相違する。
甲第4号証に記載された発明の足場兼用円筒型吸音材、及び甲第5号証に記載された発明の吸音装置は、吸音効果自体はさほど期待できず、下方の道路を走行している車両の騒音の低減効果が得にくいという問題点を有するもので、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材の特徴点を備えていない。
請求項1に係る発明は、甲第2号証〜甲第5号証に記載されておらず、又示唆もない、特許請求の範囲の請求項1に記載した「高架橋の床版の下方に所定の作業空間を形成して床版の下面を覆うように設ける恒久足場の足場兼用吸音部材」であることを前提とし、「多数の透孔を有する上面板と、多数の透孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面板と、下面板の膨出部内を含む上面板と下面板との間に充填した吸音材とで構成」することを構成要件として有し、この構成により、甲第2号証〜甲第5号証に記載された発明によっては達成できない、「高架橋を走行する車両の騒音や高架橋の下方の道路を走行している車両の騒音を確実に軽減することができることから、恒久足場上の作業空間の作業環境を良好に維持することができ」ることに加えて、足場兼用吸音部材単独で恒久足場が構築でき、「補修作業を行う都度足場を組み立てる必要がないことと相挨って、作業効率を向上することができる」等の顕著な作用効果を奏するものである。したがって、請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明と同一でなく、さらに甲第2号証に記載された発明及び甲第3〜5号証に記載された周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
請求項2は、請求項1を引用するものであり、請求項1に係る発明の構成要件のすべてを含むものであるから、当然に、請求項2に係る発明は、甲第2号証に記載された発明と同一でなく、さらに、甲第2号証に記載された発明及び甲第3〜5号証に記載された周知の技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
請求項3は、請求項1又は2を引用するものであり、請求項1に係る発明の構成要件のすべてを含むものであるから、当然に、請求項3に係る発明は、甲第2号証及び甲第5号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものでもなく、甲第2号証、甲第5号証に記載された発明及び甲第3,4号証に記載された周知の技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。

十一 請求10:平成10年審判第35588号について
1 請求人、川崎製鉄株式会社の主張
請求項1〜3に係るそれぞれの発明は、甲第1号証〜甲第4号証にそれぞれ記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、いずれも特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
請求項1〜32に係るそれぞれの発明は、甲第5号証(先願)に記載された発明であり、特許法29条の2の規定に該当し、それぞれ特許を受けることができないものである。
よって、本件の請求項1〜3にそれぞれ記載された発明の特許は、同法123条1項2号の規定により無効とされるべきである。

甲第1号証:特開平7-180118号公報
甲第2号証:実願平5-45189号(実開平7-15807号)のCD-ROM
甲第3号証:実願昭61-22117号(実開昭62-138710号)のマイクロフィルム
甲第4号証:実公平5-2646号公報
甲第5号証:特開平8-302624号公報

2 被請求人らの主張
甲第1号証に記載された発明の高架式建造物における桁裏面の被覆用ルーバー、甲第3号証に記載された発明の高架橋の吸音被覆構造、及び甲第4号証に記載された発明の吸音装置は、吸音効果はさほど期待できず、下方の道路を走行している車両の騒音の低減効果が得にくいという問題点を有するもので、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成を及び作用効果を異にする。
甲第2号証に記載された発明のルーバー取付構造は、下面に吸音用開口を形成し、中空部材内に吸音材を充填したルーバーを、吸音用開口の幅がルーバー取付間隔に対して30%以上望ましくは50%以上となるように配設するようにしたもので、ルーバーによる吸音効果はさほど期待できず、下方の道路を走行している車両の騒音の低減効果を得にくいという問題点を有するもので、またそもそも、甲第2号証に記載された発明のルーバー取付構造におけるルーバーは、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材の特徴点を備えていない。
請求項1に係る発明は、甲第1号証〜甲第4号証に記載されておらず、又示唆もない、特許請求の範囲の請求項1に記載した「高架橋の床版の下方に所定の作業空間を形成して床版の下面を覆うように設ける恒久足場の足場兼用吸音部材」であることを前提とし、「多数の透孔を有する上面板と、多数の透孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面板と、下面板の膨出部内を含む上面板と下面板との間に充填した吸音材とで構成」することを構成要件として有し、この構成により、甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明によっては達成できない、「高架橋を走行する車両の騒音や高架橋の下方の道路を走行している車両の騒音を確実に軽減することができることから、恒久足場上の作業空間の作業環境を良好に維持することができ」ることに加えて、足場兼用吸音部材単独で恒久足場が構築でき、「補修作業を行う都度足場を組み立てる必要がないことと相挨って、作業効率を向上することができる」等の顕著な作用効果を奏するものである。したがって、請求項1に係る発明は、甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
甲第5号証に記載された発明の吸音パネルは、枠材を枠組みしてパネル枠を形成し、該パネル枠の表面側に複数の化粧ルーバーが適宜間隔をおいて取付けられ、パネル枠内に吸音材を内蔵させたもので、「高架橋の床版の下方に所定の作業空間を形成して床版の下面を覆うように設ける恒久足場の足場兼用吸音部材」であることを前提とし、「多数の透孔を有する上面板と、多数の透孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面板と、下面板の膨出部内を含む上面板と下面板との間に充填した吸音材とで構成」することにより、高架橋を走行する車両の騒音や高架橋の下方の道路を走行している車両の騒音を確実に軽減することができるようにした請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成を異にする。
請求項1に係る発明は、甲第5号証(先願)に記載された発明であり、特許法29条の2の規定に該当し特許を受けることができないものであるとすることはできない。
請求項2は、請求項1を引用するものであり、請求項1に係る発明の構成要件のすべてを含むものであるから、当然に、請求項2に係る発明は、甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものでなく、甲第5号証(先願)に記載された発明でもない。
請求項3は、請求項1又は2を引用するものであり、請求項1に係る発明の構成要件のすべてを含むものであるから、当然に、請求項3に係る発明は、甲第1号証〜甲第4号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものでなく、甲第5号証(先願)に記載された発明でもない。

十二 請求11:平成10年審判第35599号について
1 請求人、日本碍子株式会社の主張
請求項1に係る発明は、甲第1号証、甲第3号証に記載された発明及び甲第4〜6号証に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものである。
請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明と同一であり、特許法29条1項3号に該当し、それぞれ特許を受けることができないものである。
請求項2に係る発明は、甲第1号証〜甲第6号証に記載された発明に基づいて、請求項3に係る発明は、甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明に基づいて、それぞれ、当業者が容易に発明をすることができたものであり、
よって、本件の請求項1〜3にそれぞれ記載された発明の特許は、同法123条1項2号の規定により無効とされるべきである。

甲第1号証:特開平7-180118号公報
甲第2号証:実願昭61-22117号(実開昭62-138710号)のマイクロフィルム
甲第3号証:技報第5号、監修、阪神高速道路公団、昭和61年3月発行、発行所、財団法人阪神高速道路管理技術センター、12〜24頁、「高架裏面反射音対策」計画部環境対策室 高橋文治、大阪第三建設部設計課 都良伸、計画部環境対策室 溝渕修治
甲第4号証:実願平5-45189号(実開平7-15807号)のCD-ROM
甲第5号証:実公平5-2646号公報
甲第6号証:実願平3-3601号(実開平4-99708号)のマイクロフィルム
甲第7号証:実願昭49-153468号(実開昭51-78701号)のマイクロフィルム

2 被請求人らの主張
甲第1号証に記載された発明の高架式建造物における桁裏面の被覆用ルーバー、及び甲第5号証に記載された発明の吸音装置は、下方の道路を走行している車両の騒音の低減効果が得にくいという問題点を有するもので、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成を及び作用効果を異にする。
甲第2号証に記載された発明の高架橋の吸音被覆構造は、吸音部材が断面中空三角形状の複数の吸音長尺材を適宜間隔をおいて併設して成る吸音面状体にて構成されているが、適宜間隔をおいて併設されている吸音長尺材のみによる吸音効果はさほど期待できず、下方の道路を走行している車両の騒音の低減効果が得にくいという問題点を有するもので、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成を及び作用効果を異にする。又、甲第2号証に記載された発明の高架橋の吸音被覆構造に用いられている断面がほぼ三角形状の吸音長尺材は、適宜間隔をおいて取り付けられるもので、請求項1に係る発明にいう「恒久足場」を構築するためには、吸音長尺材のみでは足りず、パンチングメタル、エキスパンドメタル等の多孔板を適宜間隔をおいて配設される複数の吸音長尺材上に敷設して形成することが必要となるものであって、足場兼用吸音部材単独で「恒久足場」が構築できる請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成において根本的に相違する。
甲第3号証に記載された発明の吸音材は、吸音材の下面、すなわち、表面保護材は、平面状に形成されているため、下方の道路を走行している車両の騒音が反射しやすく、このため下方の道路を走行している車両の騒音の低減効果が得にくいという問題点を有するもので、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その構成を及び作用効果を異にする。
甲第4号証に記載された発明のルーバー取付構造、及び甲第6号証に記載された発明の化粧用吸音ルーバーは、ルーバーによる吸音効果はさほど期待できず、下方の道路を走行している車両の騒音の低減効果を得にくいという問題点を有するもので、またそもそも、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材の特徴点を備えていない。
甲第7号証に記載された発明の吸音パネルは、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材の特徴点を備えておらず、またそもそも、甲第7号証に記載された発明の吸音パネルは、室内での反響を防いで音響効果を高めるため等に使用される室内用の吸音パネルであって、請求項1に係る発明の高架橋の足場兼用吸音部材とは、その対象を全く異にする。
請求項1に係る発明は、甲第1号証〜甲第7号証に記載されておらず、又た示唆もない、特許請求の範囲の請求項1に記載した「高架橋の床版の下方に所定の作業空間を形成して床版の下面を覆うように設ける恒久足場の足場兼用吸音部材」であることを前提とし、「多数の透孔を有する上面板と、多数の透孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面板と、下面板の膨出部内を含む上面板と下面板との間に充填した吸音材とで構成」することを構成要件として有し、この構成により、甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明によっては達成できない、「高架橋を走行する車両の騒音や高架橋の下方の道路を走行している車両の騒音を確実に軽減することができることから、恒久足場上の作業空間の作業環境を良好に維持することができ」ることに加えて、足場兼用吸音部材単独で恒久足場が構築でき、「補修作業を行う都度足場を組み立てる必要がないことと相挨って、作業効率を向上することができる」等の顕著な作用効果を奏するものである。したがって、請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明と同一でなく、又、甲第1号証、甲第3号証に記載された発明、及び甲第4〜6号証に記載された周知技術に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。
請求項2は、請求項1を引用するものであり、請求項1に係る発明の構成要件のすべてを含むものであるから、当然に、請求項2に係る発明は、甲第1号証〜甲第6号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
請求項3は、請求項1又は2を引用するものであり、請求項1に係る発明の構成要件のすべてを含むものであるから、当然に、請求項3に係る発明は、甲第1号証〜甲第7号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものでない。

第三 引用刊行物記載の事項
一 平成10年特許庁審判第35582号の審判請求人、三菱重工業株式会社が甲第2号証として提出した、本件特許発明の出願前に公知の刊行物である、特開平7-180118号公報、及び甲第3号証として提出した、本件特許発明の出願前に公知の刊行物である、実願昭61-22117号(実開昭62-138710号)のマイクロフィルムには、それぞれ以下の事項が記載されているものと認められる。

二 特開平7-180118号公報(以下「引用例1」と言う。)には、特に、以下1〜11の記載があり、
1 「【請求項1】複数本のルーバー構成部材(6A)を互いに並行して吸音用開口部(8)を形成するように配設し、前記開口部(8)を閉塞して前記ルーバー構成部材(6A)間に吸音材(10)を設けているとともに、高架式建造物(1)の桁裏面(1a)との間に空気層(11)を形成しかつ該裏面(1a)を覆って装着されていることを特徴とする高架式建造物における桁裏面の被覆用ルーバー。
【請求項2】ルーバー構成部材(6A)の上部に、梁部材(5)に対する取付け部(6c)を備えていることを特徴とする請求項1記載の高架式建造物における桁裏面の被覆用ルーバー。
【請求項3】複数本のルーバー構成部材(6A)を互いに並行して吸音用開口部(8)を形成するように配設し、前記開口部(8)を閉塞して前記ルーバー構成部材(6A)間に吸音材(10)を設けているとともに、前記ルーバー構成部材(6A)の長手方向と交差して複数本のつなぎ部材(18)を配設し、該つなぎ部材(18)で前記複数本のルーバー構成部材(6A)を互いに接合してパネルとしていることを特徴とする高架式建造物における桁裏面の被覆用ルーバーパネル。
【請求項4】吸音材(10)の上面を、有孔板による枠体(21)で補強していることを特徴とする請求項3に記載の高架式建造物における桁裏面の被覆用ルーバーパネル。」(同公報2頁1欄2〜24行、特許請求の範囲)、

2 「吸音効率を向上して騒音対策を確実に行なうことができ、かつ重量の増大およびコストの上昇を回避しながら吸音用開口率を大きくして吸収音域を拡大できる高架式建造物における桁裏面の被覆用ルーバーを提供することを第1の目的としている。更に、本発明は前記目的に加えて、構築施工期間を短期にできるとともに、構築後における点検等にも有利なルーバーパネルを提供することが第2の目的である。」(同公報2頁2欄49行〜3頁3欄6行、段落番号【0009】)、

3 「【作用】本発明に係る高架式建造物におけ桁裏面の被覆用ルーバー6によれば、各ルーバー構成部材6A間の吸音用開□部8に吸音材10を配設し、該吸音材10の上部に空気層11を設けたので、上記開□部8を経た音は吸音材10内に進入する際に吸収されるとともに、桁裏面1aにて反転して再度吸音材10から出る際にも吸収されることから、従来の吸音材を敷設したり、充填したりしただけの構造に比べて吸音効率を向上でき、それだけ騒音対策を確実に行えることができる。」(同公報3頁3欄44行〜4欄2行、段落番号【0014】)、

4 「更に、本発明に係るルーバーパネル17によれば、吸音材10の上面に有孔板よりなる枠体21を設けていることから、吸音効率を低下させることなく、構築後の点検用歩廊にすることができる。」(同公報3頁4欄20〜23行、段落番号【0017】)、

5 「上記ルーバー構成部材6Aは、・・・合成樹脂またはアルミ合金、鋼などの金属あるいはこれらの複合材料よりなっていて、実施例では、図1に示すように、断面大略王字形に形成されたFRP製のもので、高さ100mm、厚さ5mmの縦壁6aの上端に幅60mmの上壁6bが一体に形成され、該上壁6bに長手方向の凹溝とされた受け部6cが一体形成されている。・・・さらに上記縦壁6aの上壁6bと下壁6dとの中間部には幅60mmの支持壁6eが一体に形成されており、この支持壁6eにより上記ルーバー構成部材6A間には高さ50mmの上段部と高さ25mmの下段部に区分けされた吸音材10の取付け部が構成されている。」(同公報3頁4欄49行〜4頁5欄20行、段落番号【0021】【0022】)、

6 「上記各ルーバー構成部材6A間の開口部8はグラスウール、発泡ウレタンあるいは連続気泡を有する金属系材料等よりなる吸音材10で閉塞されている。図示の実施例では、開口部8の長手方向に延びるグラスウールからなる厚さ50mmの吸音材10であり、この吸音材10は上記各ルーバー構成部材6Aの支持壁6e間に架け渡して配設されており、該支持壁6eと上壁6bとで挟持されている。」(同公報4頁5欄25〜32行、段落番号【0023】)、

7 「図6〜図8に示す第1実施例に係るパネル17は、図5で示した中空断面構造とされた複数本のルーバー構成部材16を互いに並行して吸音用開口部8を形成するように配設し、該開口部8を閉塞して前記ルーバー構成部材16間に吸音材10を設けているとともに、前記ルーバー構成部材16の長手方向と交差して複数本のつなぎ部材18を配設し、該つなぎ部材18を前記複数本のルーバー構成部材16の取付け部16AにスライドボルトV等で工場等によって接合することで図6で示す如くパネル化したものである。」(同公報5頁7欄11〜20行、段落番号【0032】)、

8 「更に、開口部8を閉塞して配設された吸音材10上には、有孔板よりなるボックス形状の枠体21が嵌合状に備えられていて吸音材10を補強しており、ルーバーパネル17を取付け部19によって高架建造物の桁裏面に空気層11を形成して装着したとき、前記枠体21が点検用等のための歩廊とされている。」(同公報5頁7欄35〜40行、段落番号【0035】)、

9 「更に、枠体21としては、有孔板であればよく、多数の孔を有する制振鋼板、エキステンションメタル、多数の孔を有する硬質樹脂板およびこれのサンドイッチ構造材等であってもよい。」(同公報5頁8欄18〜21行、段落番号【0039】)、

10 「【発明の効果】以上詳述した通り本発明に係るルーバーによれは、重量の増大およびコストの上昇を回避しながら、吸音効率を向上できるとともに、吸収音域を拡大でき、騒音対策を確実に行える効果がある。また、本発明に係るルーバーパネルによれば、前述の作用効果に加えて、現場施工期間を短縮化して装着できるし、装着も正確かつ堅牢にできるとともに装着後の点検等の作業空間も増大できる。」(同公報5頁8欄26〜33行、段落番号【0040】)、

11 図1、図2、図6〜10、
これらの記載によると、
「高架式建造物の桁裏面の下方に所定の作業空間を形成して桁裏面の下面を覆うように設ける点検用歩廊兼用吸音部材であって、少なくとも、多数の透孔を有する上面板よりなるボックス形状の枠体に、吸音材を設けて構成した高架式建造物の点検用歩廊兼用吸音部材」が、
そして、「前記吸音材を帯状に形成した高架式建造物の点検用歩廊兼用吸音部材」
及び、「前記吸音材をブロック体で形成した高架式建造物の点検用歩廊兼用吸音部材」
が開示されているものと認める。

三 実願昭61-22117号(実開昭62-138710号)のマイクロフィルム(以下「引用例2」と言う。)には、特に、以下1〜8の記載があり、
1 「(1) 高架橋のスラブの下部に配設される橋桁部の側面及び下面に吸音部材を被覆して成り、上記吸音部材が断面中空三角形状の複数の吸音長尺材を適宜間隔をおいて併設して成る吸音面状体にて構成されることを特徴とする高架橋の吸音被覆構造。
(2) 吸音面状体が、適宜間隔をおいて配設される複数の吸音長尺材と、これら吸音長尺材に敷設される多孔板とで構成されることを含む実用新案登録請求の範囲第1項記載の高架橋の吸音被覆構造。」(同明細書1頁5〜13行、実用新案登録請求の範囲)、

2 「高架橋における騒音伝達媒体となる橋桁部を吸音部材にて被覆して、騒音の吸収及び防止を図れるようにしたことを特徴とする高架橋の吸音被覆構造を提供しようとするものである。」(同明細書3頁4〜8行)、

3 「[作用]上記技術的手段は次のように作用する。
高架橋の橋桁部の側面及び下面に被覆される吸音部材を、断面三角形状の複数の吸音長尺材を適宜間隔をおいて併設して形成することにより、下方からの騒音を吸収し、その反射音を減衰する。また、橋桁部を吸音面状体にて被覆することにより、美観の向上が図れる。」(同明細書4頁6〜13行)、

4 「この考案の吸音被覆構造は、高架橋1を構成するコンクリート製スラブ2の下部に配設される鉄骨製橋桁部3の側面及び下面に吸音部材10を被覆した構造となっている。この場合、上記吸音部材10は、第4図に示すような断面がほぼ三角形状(具体的には中空扇形)の吸音長尺材12を複数適宜間隔をおいて併設して成る吸音面状体14にて形成されている。」(同明細書4頁19行〜5頁6行)、

5 「なお、上記吸音長尺材12は単なる中空状であってもよいが、例えば第5図に示すように、吸音長尺材12のほぼ全領域に多数の吸音用小孔22を穿設すると共に、吸音長尺材12の中空部内に吸音材24を充填した構造とすることもできる。この実施例では吸音長尺材12の上方へ抜けた音もスラブ2等で反射した場合にこれらも吸収することができる。なおこの場合、上記吸音材24は例えばガラスクロス等の空気を透過し、吸音性能を損わない材質の保護フィルム26内に充填されるグラスウール、ロックウール等の材質のものが使用される。」(同公報6頁3〜13行)、

6 「第6図はこの考案の第二実施例を示すもので、上記吸音面状体14を例えばパンチングメタル、エキスパンドメタル等の多孔板30を上記した適宜間隔をおいて配設される複数の吸音長尺材12上に敷設して形成した場合である。このように吸音面状体14の一部を多孔板30にて構成することにより、吸音長尺材12の併設が容易になると共に、より一層吸音効果が向上し、しかも、多孔板30上に作業員Aが乗って橋桁部3の点検補修を可能にすることができる。」(同明細書6頁14行〜7頁3行)、

7 「【考案の効果】以上に説明したように、この考案の高架橋の吸音被覆構造によれば、高架橋のスラブの下部に配設される鉄骨製橋桁部を適宜間隔をおいて併設された複数の断面中空三角形状の吸音長尺材にて形成される吸音面状体で被覆するため、以下のような効果が得られる。
1)橋桁部を被覆する吸音面状体が適宜間隔をおいて併設される複数の中空三角形状の吸音長尺材にて形成されるため、高架橋の下方を通過する自動車の警笛や高架橋自体から生じる振動音等の騒音を吸収緩和した状態で反射させて、騒音公害を防止することができる。
2)上記のように長尺材にて構成される吸音面状体にて橋桁部を被覆するのみでよいため、既存の高架橋に対しても容易に改修を行うことができると共に、労力の削減及び費用の低廉化を図ることができる。
3)橋桁部が吸音面状体にて被覆されるため、美観の向上を図ることもできる。」(同明細書9頁4行〜10頁3行)、

8 第1図及び第4〜7図、
これらの記載によると、
「高架橋のスラブの下方に所定の作業空間を形成してスラブの下面を覆うように設ける恒久足場の足場兼用吸音面状体であって、多数の吸音用小孔を有する上面部と、多数の吸音用小孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面部と、下面部の膨出部内を含む上面部と下面部との間に充填した吸音材を有する吸音長尺材と、適宜間隔をおいて配設される複数の吸音長尺材上に敷設した多孔板とで構成した高架橋の足場兼用吸音面状体」が、
そして、「前記膨出部を帯状に形成した高架橋の足場兼用吸音面状体」
が開示されているものと認める。

四 さらに、実願昭49-153468号(実開昭51-78701号)のマイクロフィルム(別表の資料2)、特開昭49-85828号公報(別表の資料4)、及び特開昭49-92827号公報(別表の資料23)には、下記の記載があり、
「それぞれ多数の孔を有する板と板の間に充填する吸音材に、空洞を形成する」点
が、周知の技術手段であることが認められる。
1 実願昭49-153468号(実開昭51-78701号)のマイクロフィルム(以下、「周知例1」と言う。)
(1) 「柱状又は筒状に成形した複数本の吸音材1・・を互いに平行又は略平行に並列させるとともに、この並列吸音材1・・群の両側に、孔あき板2、2を各吸音材1・・の外側に略沿うべく凹凸状にして一体に組付けてある吸音パネル。」(同明細書1頁5〜9行、実用新案登録請求の範囲)
(2) 「本考案は、単位面積あたりの吸音効果が高く、しかも吸音材の使用量が少ない割に良好な吸音効果を確保できる吸音パネルを提供するものである。」(同明細書1頁11〜14行)
(3) 「1はグラスウール、ロックウールなどの吸音材、2は金属製(合成樹脂などでもよい。)の孔あき板であり、両孔あき板2、2の対向側辺にはヒンジ3・・が一体成形されている。3aは枢支軸である。
前記吸音材1は、第3図に示すように、円筒状(又は中実の柱状)に形成され、互いに平行となるよう間隔を隔てて並列されている。」(同明細2頁8〜15行)
(4) 第2図及び第3図

2 特開昭49-85828号公報(以下、「周知例2」と言う。)
(1) 「26は複数個の吸音部材で、前記枠21に設けた取付部27にボルト28およびナット29により取付けてある。したがってこの吸音部材は高架道路10の下面15付近より垂下しており、表面はアルミニウム合金板よりなる表面材30で覆われ、内部にはグラスファイバー等よりなる吸音材31がある。この吸音部材26は内部に吸音材31を充満させることなく中央付近等に空間を形成してもよい。33は前記吸音部材26の表面材30の両面にそれぞれ形成した孔で、これより音を入れて吸音するようにしてある。」(同公報2頁左上欄8〜18行)
(2) 第5図

3 特開昭49-92827号公報(以下、「周知例3」と言う。)
(1) 「吸音部材16は表面が多数の孔18をあけたアルミニウム合金板等よりなる表面材17で構成してあり、かつ内部にはたとえばグラスファイバー等の吸音材19が配置してある。前記吸音部材16の内部には吸音材19を表面材17の内周面に沿ってのみ配置して中央部を中空にしてもよい。」(同明細書1頁右下欄17行〜2頁左上欄3行)
(2) 第4図

第四 当審での検討
一 請求項1に係る発明について
1 請求項1に係る発明と引用例1記載のものとの対比
本件請求項1に係る発明と引用例1記載のものとを対比すると、本件請求項1に係る発明における、「高架橋」、「床版」、「恒久足場」は、それぞれ引用例1記載のものにおける、「高架式建造物」、「桁裏面」、「点検用歩廊」に対応し、両者は次の点で一致する。
「高架橋の床版の下方に所定の作業空間を形成して床版の下面を覆うように設ける恒久足場の足場兼用吸音部材であって、少なくとも、多数の透孔を有する上面板よりなるボックス形状の枠体に、吸音材を設けて構成した高架橋の足場兼用吸音部材」
そして、両者は、下記の相違点1の点で相違している。
相違点1
請求項1に係る発明においては、その恒久足場の足場兼用吸音部材が、多数の透孔を有する上面板と、多数の透孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面板と、下面板の膨出部内を含む上面板と下面板との間に充填した吸音材とで構成しているのに対し、引用例1記載のものにおいては、少なくとも、多数の透孔を有する上面板よりなるボックス形状の枠体に、吸音材を設けて構成している点。

2 相違点1に対する検討
引用例1のものにおいては、明細書(特に、さきの「第三 引用刊行物記載の事項」の二の1【請求項4】、4、6、8、9)及び図6〜10の各記載を参照すると、足場兼用吸音部材は、少なくとも、多数の透孔を有する上面板よりなるボックス形状の枠体に吸音材を設けて構成されており、請求項1に係る発明での「上面板」に対応する構成は有するものの、多数の透孔を有する上面板と、多数の透孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面板と、下面板の膨出部内を含む上面板と下面板との間に充填した吸音材とで、足場兼用吸音部材を構成する点は開示されていない。
いっぽう、引用例2において、「高架橋のスラブの下方に所定の作業空間を形成してスラブの下面を覆うように設ける恒久足場の足場兼用吸音面状体であって、多数の吸音用小孔を有する上面部と、多数の吸音用小孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面部と、下面部の膨出部内を含む上面部と下面部との間に充填した吸音材を有する吸音長尺材と、適宜間隔をおいて配設される複数の吸音長尺材上に敷設した多孔板とで構成した高架橋の足場兼用吸音面状体」が、公知の技術手段として開示されている。
引用例2に記載のものは、高架橋において、そのスラブの下方に、騒音を吸収するとともに作業員が乗って橋桁部の点検補修を可能とする足場兼用吸音面状体を有するものであって、「上面板」及び「下面板」との明示はされてはいないものの、多数の吸音用小孔を有する上面部と、多数の吸音用小孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面部と、下面部の膨出部内を含む上面部と下面部との間に充填した吸音材を有する吸音長尺材の構成が開示されている。
してみると、引用例1におけるような、高架式建造物(高架橋)の点検用歩廊(恒久足場)兼用吸音部材において、少なくとも多数の透孔を有する上面板よりなるボックス形状の枠体に吸音材を設けて構成されているものに代えて、引用例2におけるような吸音長尺材の構成を採用し、その際、特に吸音長尺材の上面部を上面板とし、下面部を下面板として、請求項1に係る発明におけるように構成するようなことは、引用例1及び引用例2がいずれも高架橋の足場兼用吸音部材に関するものであること、さらに引用例1に引用例2を適用することによる構成の組み合わせ又は置換を阻害する特段の要因もないことを考慮すると、格別顕著な困難性を見出すことはできず、当業者が必要に応じて容易になし得た程度のことである。
しかも、全体として、本件請求項1に係る発明によってもたらされる効果も、引用例1及び引用例2に記載のそれぞれのものから、当業者であれば当然に予測することができる程度のものであって、格別顕著なものとはいえない。
したがって、本件請求項1に係る発明は、引用例1及び引用例2にそれぞれ記載されたものに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

二 請求項2に記載の発明について
1 請求項2に係る発明と引用例1記載のものとの対比
本件請求項2に係る発明と引用例1記載のものとを対比すると、本件請求項2に係る発明における、「高架橋」、「床版」、「恒久足場」は、それぞれ引用例1記載のものにおける、「高架式建造物」、「桁裏面」、「点検用歩廊」に対応し、両者は次の点で一致する。
「高架橋の床版の下方に所定の作業空間を形成して床版の下面を覆うように設ける恒久足場の足場兼用吸音部材であって、少なくとも、多数の透孔を有する上面板よりなるボックス形状の枠体に、吸音材を設けて構成した高架橋の足場兼用吸音部材」
そして、両者は、下記の相違点2、3の点で相違している。
相違点2
請求項2に係る発明においては、その恒久足場の足場兼用吸音部材が、多数の透孔を有する上面板と、多数の透孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面板と、下面板の膨出部内を含む上面板と下面板との間に充填した吸音材とで構成しているのに対し、引用例1記載のものにおいては、少なくとも、多数の透孔を有する上面板よりなるボックス形状の枠体に、吸音材を設けて構成している点。
相違点3
上記相違点2に関連して、請求項2に係る発明においては、下面板の、下方に突出する膨出部を帯状に形成したのに対し、引用例1記載のものにおいては、吸音材を帯状に形成しているものの、下面板を有しないことから、このような構成を備えていない点。

2 相違点2及び相違点3に対する検討
引用例1のものにおいては、足場兼用吸音部材は、少なくとも、多数の透孔を有する上面板よりなるボックス形状の枠体に吸音材を設け、さらに吸音材を帯状に形成して構成されており、請求項2に係る発明での「上面板」に対応する構成は有するものの、多数の透孔を有する上面板と、多数の透孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面板と、下面板の膨出部を帯状に形成し、下面板の膨出部内を含む上面板と下面板との間に充填した吸音材とで、足場兼用吸音部材を構成する点は開示されていない。
いっぽう、引用例2において、「高架橋のスラブの下方に所定の作業空間を形成してスラブの下面を覆うように設ける恒久足場の足場兼用吸音面状体であって、多数の吸音用小孔を有する上面部と、多数の吸音用小孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面部と、下面部の膨出部内を含む上面部と下面部との間に充填した吸音材を有する吸音長尺材と、適宜間隔をおいて配設される複数の吸音長尺材上に敷設した多孔板とで構成した高架橋の足場兼用吸音面状体」が、そして、「前記膨出部を帯状に形成した高架橋の足場兼用吸音面状体」が、公知の技術手段として開示されている。
引用例2に記載のものは、高架橋において、そのスラブの下方に、騒音を吸収するとともに作業員が乗って橋桁部の点検補修を可能とする足場兼用吸音面状体を有するものであって、「上面板」及び「下面板」との明示はされてはいないものの、多数の吸音用小孔を有する上面部と、多数の吸音用小孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面部と、下面部の膨出部を帯状に形成し、下面部の膨出部内を含む上面部と下面部との間に充填した吸音材を有する吸音長尺材の構成が開示されている。
してみると、引用例1におけるような、高架式建造物(高架橋)の点検用歩廊(恒久足場)兼用吸音部材において、少なくとも多数の透孔を有する上面板よりなるボックス形状の枠体に吸音材を設けて構成されているものに代えて、引用例2におけるような吸音長尺材の構成を採用し、その際、特に吸音長尺材の上面部を上面板とし、下面部を下面板とするとともに、下面板の膨出部を帯状に形成し、請求項2に係る発明におけるように構成するようなことは、引用例1及び引用例2がいずれも高架橋の足場兼用吸音部材に関するものであること、そして、引用例1において吸音材を帯状に形成する点が開示されていること、さらに引用例1に引用例2を適用することによる構成の組み合わせ又は置換を阻害する特段の要因もないことを考慮すると、格別顕著な困難性を見出すことはできず、当業者が必要に応じて容易になし得た程度のことである。
しかも、全体として、本件請求項2に係る発明によってもたらされる効果も、引用例1及び引用例2に記載のそれぞれのものから、当業者であれば当然に予測することができる程度のものであって、格別顕著なものとは言えない。
したがって、本件請求項2に係る発明は、引用例1及び引用例2にそれぞれ記載されたものに基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

三 請求項3に記載の発明について
1 請求項1を引用した、請求項3に係る発明と引用例1記載のものとの対 比
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明を引用し、請求項1又は2に係る発明における吸音材にさらに限定を加えたものである。
請求項1を引用する本件請求項3に係る発明と引用例1記載のものとを対比すると、本件請求項3に係る発明における、「高架橋」、「床版」、「恒久足場」は、それぞれ引用例1記載のものにおける、「高架式建造物」、「桁裏面」、「点検用歩廊」に対応し、両者は次の点で一致する。
「高架橋の床版の下方に所定の作業空間を形成して床版の下面を覆うように設ける恒久足場の足場兼用吸音部材であって、少なくとも、多数の透孔を有する上面板よりなるボックス形状の枠体に、ブロック体で形成した吸音材を設けて構成した高架橋の足場兼用吸音部材」
そして、両者は、下記の相違点4、5の点で相違している。
相違点4
請求項1を引用した、請求項3に係る発明においては、その恒久足場の足場兼用吸音部材が、多数の透孔を有する上面板と、多数の透孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面板と、下面板の膨出部内を含む上面板と下面板との間に充填した吸音材とで構成しているのに対し、引用例1記載のものにおいては、少なくとも、多数の透孔を有する上面板よりなるボックス形状の枠体に、吸音材を設けて構成している点。
相違点5
請求項1を引用した、請求項3に係る発明においては、下面板の膨出部内を含む上面板と下面板との間に充填するブロック体としての吸音材に、空洞を有するのに対し、引用例1記載のものにおいては、吸音材をブロック体で形成しているものの、空洞を有するとの構成を備えていない点。

2 相違点4及び相違点5に対する検討
引用例1のものにおいては、足場兼用吸音部材は、少なくとも、多数の透孔を有する上面板よりなるボックス形状の枠体にブロック体で形成した吸音材を設けて構成されており、請求項3に係る発明での「上面板」に対応する構成、さらに吸音材をブロック体で形成する構成は有するものの、多数の透孔を有する上面板と、多数の透孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面板と、下面板の膨出部内を含む上面板と下面板との間に充填した吸音材と、ブロック体としての吸音材に空洞を有して、足場兼用吸音部材を構成する点は開示されていない。
いっぽう、引用例2において、「高架橋のスラブの下方に所定の作業空間を形成してスラブの下面を覆うように設ける恒久足場の足場兼用吸音面状体であって、多数の吸音用小孔を有する上面部と、多数の吸音用小孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面部と、下面部の膨出部内を含む上面部と下面部との間に充填した吸音材を有する吸音長尺材と、適宜間隔をおいて配設される複数の吸音長尺材上に敷設した多孔板とで構成した高架橋の足場兼用吸音面状体」が、公知の技術手段として開示されている。
引用例2に記載のものは、高架橋において、そのスラブの下方に、騒音を吸収するとともに作業員が乗って橋桁部の点検補修を可能とする足場兼用吸音面状体を有するものであって、「上面板」及び「下面板」との明示はされてはいないものの、多数の吸音用小孔を有する上面部と、多数の吸音用小孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面部と、下面部の膨出部内を含む上面部と下面部との間に充填した吸音材を有する吸音長尺材の構成が開示されている。
又、「第三 引用刊行物記載の事項」の四において検討したように、「それぞれ多数の孔を有する板と板の間に充填する吸音材に、空洞を形成する」点は、この種の吸音材においては、広く知られている周知の技術手段である(さきの周知例1〜3を参照のこと)。
してみると、引用例1におけるような、高架式建造物(高架橋)の点検用歩廊(恒久足場)兼用吸音部材において、少なくとも多数の透孔を有する上面板よりなるボックス形状の枠体にブロック体として形成した吸音材を設けて構成されているものに代えて、引用例2におけるような吸音長尺材の構成を採用し、その際、特に吸音長尺材の上面部を上面板とし、下面部を下面板とするとともに、下面板の膨出部内を含む上面板と下面板との間に充填するブロック体としての吸音材に空洞を形成し、請求項3に係る発明におけるように構成するようなことは、引用例1及び引用例2がいずれも高架橋の足場兼用吸音部材に関するものであること、そして、上記「空洞を形成する」点が周知の技術手段であること、さらに引用例1に引用例2及び上記周知の技術手段を適用することによる構成の組み合わせ又は置換を阻害する特段の要因もないことを考慮すると、格別顕著な困難性を見出すことはできず、当業者が必要に応じて容易になし得た程度のことである。
しかも、全体として、請求項1を引用した、本件請求項3に係る発明によってもたらされる効果も、引用例1及び引用例2に記載のそれぞれのもの、そして周知の技術手段から、当業者であれば当然に予測することができる程度のものであって、格別顕著なものとは言えない。
したがって、請求項1を引用した、本件請求項3に係る発明は、引用例1及び引用例2にそれぞれ記載されたもの、そして周知の技術手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 請求項2を引用した、請求項3に係る発明と引用例1記載のものとの対 比
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明を引用し、請求項1又は2に係る発明における吸音材にさらに限定を加えたものである。
請求項2を引用する本件請求項3に係る発明と引用例1記載のものとを対比すると、本件請求項3に係る発明における、「高架橋」、「床版」、「恒久足場」は、それぞれ引用例1記載のものにおける、「高架式建造物」、「桁裏面」、「点検用歩廊」に対応し、両者は次の点で一致する。
「高架橋の床版の下方に所定の作業空間を形成して床版の下面を覆うように設ける恒久足場の足場兼用吸音部材であって、少なくとも、多数の透孔を有する上面板よりなるボックス形状の枠体に、ブロック体で形成した吸音材を設けて構成した高架橋の足場兼用吸音部材」
そして、両者は、下記の相違点6〜8の点で相違している。
相違点6
請求項2を引用した、請求項3に係る発明においては、その恒久足場の足場兼用吸音部材が、多数の透孔を有する上面板と、多数の透孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面板と、下面板の膨出部内を含む上面板と下面板との間に充填した吸音材とで構成しているのに対し、引用例1記載のものにおいては、少なくとも、多数の透孔を有する上面板よりなるボックス形状の枠体に、吸音材を設けて構成している点。
相違点7
上記相違点6に関連して、請求項2を引用した、請求項3に係る発明においては、下面板の、下方に突出する膨出部を帯状に形成したのに対し、引用例1記載のものにおいては、吸音材を帯状に形成しているものの、下面板を有しないことから、このような構成を備えていない点。
相違点8
請求項2を引用した、請求項3に係る発明においては、下面板の膨出部内を含む上面板と下面板との間に充填するブロック体としての吸音部材に、空洞を有するのに対し、引用例1記載のものにおいては、吸音材をブロック体で形成しているものの、空洞を有するとの構成を備えていない点。

4 相違点6、相違点7及び相違点8に対する検討
引用例1のものにおいては、足場兼用吸音部材は、少なくとも、多数の透孔を有する上面板よりなるボックス形状の枠体にブロック体で形成した吸音材を設け、さらに吸音材を帯状に形成して構成されており、請求項3に係る発明での「上面板」に対応する構成、さらに吸音材をブロック体で形成する構成は有するものの、多数の透孔を有する上面板と、多数の透孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面板と、下面板の膨出部を帯状に形成し、下面板の膨出部内を含む上面板と下面板との間に充填した吸音材と、ブロック体としての吸音材に空洞を有して、恒久足場兼用吸音部材を構成する点は開示されていない。
いっぽう、引用例2において、「高架橋のスラブの下方に所定の作業空間を形成してスラブの下面を覆うように設ける恒久足場の足場兼用吸音面状体であって、多数の吸音用小孔を有する上面部と、多数の吸音用小孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面部と、下面部の膨出部内を含む上面部と下面部との間に充填した吸音材を有する吸音長尺材と、適宜間隔をおいて配設される複数の吸音長尺材上に敷設した多孔板とで構成した高架橋の足場兼用吸音面状体」が、そして、「前記膨出部を帯状に形成した高架橋の足場兼用吸音面状体」が、公知の技術手段として開示されている。
引用例2に記載のものは、高架橋において、そのスラブの下方に、騒音を吸収するとともに作業員が乗って橋桁部の点検補修を可能とする足場兼用吸音面状体を有するものであって、「上面板」及び「下面板」との明示はされてはいないものの、多数の吸音用小孔を有する上面部と、多数の吸音用小孔を有し、下方に突出する膨出部を形成した下面部と、下面部の膨出部を帯状に形成し、下面部の膨出部内を含む上面部と下面部との間に充填した吸音材を有する吸音長尺材の構成が開示されている。
又、「第三 引用刊行物記載の事項」の四において検討したように、「それぞれ多数の孔を有する板と板の間に充填する吸音材に、空洞を形成する」点は、この種の吸音材においては、広く知られている周知の技術手段である(さきの周知例1〜3を参照のこと)。
してみると、引用例1におけるような、高架式建造物(高架橋)の点検用歩廊(恒久足場)兼用吸音部材において、少なくとも多数の透孔を有する上面板よりなるボックス形状の枠体にブロック体として形成した吸音材を設けて構成されているものに代えて、引用例2におけるような吸音長尺材の構成を採用し、その際、特に吸音長尺材の上面部を上面板とし、下面部を下面板とするとともに、下面板の膨出部を帯状に形成し、さらに下面板の膨出部内を含む上面板と下面板との間に充填するブロック体としての吸音材に空洞を形成し、請求項3に係る発明におけるように構成するようなことは、引用例1及び引用例2がいずれも高架橋の足場兼用吸音部材に関するものであること、そして、引用例1において吸音材を帯状に形成する点が開示されていること、上記「空洞を形成する」点が周知の技術手段であること、さらに引用例1に引用例2及び上記周知の技術手段を適用することによる構成の組み合わせ又は置換を阻害する特段の要因もないことを考慮すると、格別顕著な困難性を見出すことはできず、当業者が必要に応じて容易になし得た程度のことである。
しかも、全体として、請求項2を引用した、本件請求項3に係る発明によってもたらされる効果も、引用例1及び引用例2に記載のそれぞれのもの、そして周知の技術手段から、当業者であれば当然に予測することができる程度のものであって、格別顕著なものとは言えない。
したがって、請求項2を引用した、本件請求項3に係る発明は、引用例1及び引用例2にそれぞれ記載されたもの、そして周知の技術手段に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第五 結び
以上、本件特許は、他の無効審判請求の理由を検討するまでもなく、特許法123条1項2号の規定に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲

 
審理終結日 2000-06-15 
結審通知日 2000-06-27 
審決日 2000-07-19 
出願番号 特願平7-262179
審決分類 P 1 112・ 121- Z (E01D)
最終処分 成立  
前審関与審査官 太田 恒明  
特許庁審判長 幸長 保次郎
特許庁審判官 鈴木 公子
小野 忠悦
登録日 1997-07-25 
登録番号 特許第2676598号(P2676598)
発明の名称 高架橋の足場兼用吸音部材  
代理人 鳥居 和久  
代理人 林 清明  
代理人 大塚 文昭  
代理人 林 清明  
代理人 中村 稔  
代理人 植木 久一  
代理人 大石 皓一  
代理人 園田 敏雄  
代理人 小谷 悦司  
代理人 森本 義弘  
代理人 弟子丸 健  
代理人 田中 久喬  
代理人 千葉 剛宏  
代理人 鎌田 文二  
代理人 佐藤 辰彦  
代理人 中村 誠  
代理人 内藤 俊太  
代理人 森 治  
代理人 明田 莞  
代理人 東尾 正博  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 森 治  
代理人 林 清明  
代理人 山田 正紀  
代理人 森 治  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 安田 敏雄  
代理人 小杉 佳男  
代理人 村松 敏郎  
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