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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04M
管理番号 1052513
審判番号 不服2000-10303  
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-04-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-07-06 
確定日 2002-01-17 
事件の表示 平成 4年特許願第246076号「伝送端末装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年 4月 8日出願公開、特開平 6- 98037]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成4年9月16日の出願であって、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成12年7月28日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「電話回線の極性反転を検出する極性反転検出回路と、ノーリンギング通信起動時電話回線上に現れるNRS信号を検出するNRS検出回路と、このNRS信号検出により通信状態におかれる制御回路及び伝送回路と、を有する伝送端末装置において、
上記制御回路及び伝送回路に電源を供給する内部電池と、
この内部電池とは別に設けられ、上記極性反転検出回路とNRS検出回路との間に介在され極性反転検出回路にてオン制御されて電話回線の電圧を内部回路用の電圧に変換し上記NRS検出回路に電力を供給する電源回路とを備えたことを特徴とする伝送端末装置。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶理由に引用された特開平3-119852号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。

(1)この発明は端末網制御装置に関し、特にノーリンギング通信用の端末網制御装置に関する。(1頁右下欄1〜2行目)

(2)この発明にかかる端末網制御装置は、通信回線を介して与えられる複数の周波数からなる所定のノーリンギング呼出信号に応答してノーリンギング通信を行なう端末網制御装置であって、第1の検出手段、第2の検出手段、および電力供給手段を備える。第1の検出手段は、通信回線から供給される電力により駆動され、ノーリンギング呼出信号に含まれる1つの周波数を検出する。第2の検出手段は、通信回線を介して与えられるノーリンギング呼出信号を検出する。電力供給手段は、第1の検出手段により1つの周波数が検出されたことに応答して、第2の検出手段に電力を供給する。(2頁右下欄2〜19行目)

(3)2次NRS検知回路7には、電池などからなる2次側電源供給回路9から電力が供給される。
電源供給回路4は、加入電話回線1a,1bの電圧を所定の電圧に変圧する変圧回路からなる。(3頁右上欄11〜15行目)

(4)CPU回路8は、2次側電源供給回路9により常時電力の供給を受けている。2次側電源供給回路9は、スタンバイ時にはCPU回路8がスタンバイ状態を維持できる最低電圧を発生しているが、CPU回路8からの制御信号C1に応答してCPU回路動作モード電圧を発生する。(3頁左下欄16〜右下欄1行目)

(5)極性反転検知回路3が、加入電話回線1a,1bのDCバイアスの極性反転を検知し、そのDCバイアスが所定の値を満たしていれば、加入電話回線1a,1bからの電力が電源供給回路4を介して1次NRS検知回路5に供給される。(4頁左上欄2〜8行目)

(6)この端末網制御装置100においては、1次NRS検知回路5により予め定められた1つの周波数が検知されたときにのみ2次NRS検知回路7に電力が供給され、さらに、2次NRS検知回路により所定のNRS信号が検知されたときにのみデータ送受信回路11およびインターフェイス部13に電力が供給される。(4頁右下欄7〜13行目)

そして、以下(7)ないし(10)の事項は自明である。
(7)上記(2)ないし(6)に記載された「検知」と「検出」、「第1の検出手段」と「1次NRS検知回路」、「第2の検出手段」と「2次NRS検知回路」は同義である。
(8)上記「電池等の電力供給源」は「内部電池」である。
(9)上記「電源供給回路」の「所定の電圧」は、「1次NRS検出回路用の電圧」であるから、「内部回路用の電圧」である。
(10)上記「データ送受信回路」は「伝送回路」であり、「CPU回路」は「制御回路」であり、「端末網制御装置」は「伝送端末装置」である。

以上の記載及び添付図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「電話回線の極性反転を検出する極性反転検出回路と、ノーリンギング通信起動時電話回線上に現れるNRS信号を検出する第1及び第2のNRS検出回路と、このNRS信号検出により通信状態におかれる制御回路及び伝送回路と、を有する伝送端末装置において、
上記制御回路及び伝送回路ならびに第2のNRS検出回路に電源を供給する内部電池と、
この内部電池とは別に設けられ、上記極性反転検出回路と第1のNRS検出回路との間に介在され極性反転検出回路にてオン制御されて電話回線の電圧を内部回路用の電圧に変換し上記第1のNRS検出回路に電力を供給する電源回路とを備えたことを特徴とする伝送端末装置。」

また、以下の事項は、引用発明の従来例として、上記引用例に記載されている。(以下、「周知技術」という。)
(イ)ノーリンギング着信時に、極性反転検知回路が加入電話回線の極性反転を検知すると、その極性反転検知回路がNRS検知回路にトリガをかけ、あるいは、その極性反転検知回路がCPUなどにより構成されるトリガ回路を介してNRS検知回路にトリガをかける。それにより、NRS検知回路が電力供給源から電力を受け、加入電話回線にNRS信号が与えられているか否かおよびその信号が正規のNRS信号か否かを判定する。その判定結果に基づいて、その後のルーチンが実行される。(2頁右上欄18行目〜左下欄8行目)

(ロ)加入電話回線に複数の端末網制御装置が接続されている場合には、加入電話回線の極性が反転した後、複数の端末網制御装置のNRS検知回路などが加入電話回線からの電力により駆動されるならば、加入電話回線の電圧が低下する。したがって、通常は、NRS検知回路などは、上記のように、電池など加入電話回線以外の電力供給源により駆動される。しかし、・・・電池等の電力供給源の電力が頻繁に消費されることになる。(2頁左下欄10行目〜右下欄3行目)

3.対比
そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、引用発明の「第1及び第2のNRS検出回路」と本願発明の「NRS検出回路」はともに「NRS信号を検出する回路」であるから、本願発明と引用発明は、以下の<一致点>で一致し、<相違点>で相違する。

<一致点>
「電話回線の極性反転を検出する極性反転検出回路と、ノーリンギング通信起動時電話回線上に現れるNRS信号を検出する回路と、このNRS信号検出により通信状態におかれる制御回路及び伝送回路と、を有する伝送端末装置において、
上記制御回路及び伝送回路に電源を供給する内部電池と、
この内部電池とは別に設けられ、上記極性反転検出回路とNRS信号を検出する回路との間に介在され極性反転検出回路にてオン制御されて電話回線の電圧を内部回路用の電圧に変換し上記NRS信号を検出する回路に電力を供給する電源回路とを備えたことを特徴とする伝送端末装置。」

<相違点>
「NRS信号を検出する回路」に関し、引用発明の回路が「内部電池とは別の電源」を電源とする「第1のNRS検出回路」と「内部電池」を電源とする「第2のNRS検出回路」の2つの回路からなるのに対し、本願発明の回路は「内部電池とは別の電源」を電源とする単一の「NRS検出回路」である点。

4.当審の判断
そこで、上記相違点の回路構成について検討するに、一つの回路を複数の機能ブロックに分割したり、逆に統合すること自体は単なる設計的事項であり、また、上記(イ)に記載されているように単一のNRS検出回路は周知であるから、引用発明の「第1及び第2のNRS検出回路」を統合して、単一の「NRS検出回路」とする程度のことは、当業者が適宜なしえたことと認められる。
ついで、装置の電源について検討するに、装置の全電力を「内部電池とは別の電源」即ち局電源からとると「電話回線の電圧低下」という不都合を引き起こし、また、装置の全電力を「内部電池」からとると「電池の電力が頻繁に消費される」という不都合を引き起こすことは、上記(ロ)に記載されているように、従来から知られていることである。そして、引用発明では利用可能な局電源をNRS検出回路の一部(即ち第1のNRS検出回路)に利用することによって上記不都合を解消したものであるが、この電源配分を全NRS検出回路に拡大できるか否かは単に当該局電源の容量が全NRS検出回路を駆動するに十分であるか否かにより決められるものと考えられる。
したがって、上記統合後のNRS検出回路において、統合前の、引用発明でいう「第2のNRS検出回路」に相当する回路ブロックの電源を「内部電池」から「内部電池とは別の電源」に変更して、統合後のNRS検出回路の全ての電源を「内部電池とは別の電源」とすることは、「内部電池とは別の電源」の電源容量が十分である限り、「内部電池」の頻繁な消耗を避けるという周知の目的を達成するために、当業者であれば、必要に応じて適宜なしえたことと認められる。

また、この変更に基づく効果は当業者であれば十分に予測可能なものである。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例に記載された発明および上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-11-13 
結審通知日 2001-11-20 
審決日 2001-12-04 
出願番号 特願平4-246076
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大日方 和幸岩井 健二  
特許庁審判長 武井 袈裟彦
特許庁審判官 白井 孝治
浜野 友茂
発明の名称 伝送端末装置  
代理人 三好 秀和  
代理人 三好 秀和  

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