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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 無効とする。(申立て全部成立) E04F
管理番号 1052701
審判番号 審判1999-35369  
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-12-10 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-07-15 
確定日 2001-12-07 
事件の表示 上記当事者間の特許第2874841号発明「畳」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第2874841号発明の明細書の請求項1及び2に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.経緯
本件特許第2874841号は、平成7年6月2日に出願され、平成11年1月14日に特許登録され、平成11年7月15日に東亜コルク株式会社より無効審判の請求があり、平成11年11月1日に被請求人より審判事件答弁書の提出があり、平成12年2月8日に請求人より審判事件弁駁書の提出があり、平成12年6月1日に大阪の審判廷で両当事者出席の上、口頭審理が行われた。

2.請求人の請求の理由の概要
請求人は、審判請求書、弁駁書及び上記口頭審理期日において、本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、本件特許発明1及び2という。)についての特許を無効とすべき理由として概略次のように主張する。
本件特許発明1及び2は、次の(1)または(2)のいづれかの理由により、特許法第29条第2項に該当し特許を受けることができないものであり、これらの発明についての特許は特許法第123条第1項第2号の規定により、無効とすべきである。
(1)本件特許発明1及び2は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。
(2)本件特許発明1及び2は、甲第4号証または甲第5号証に記載された発明と、甲第7号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

3.被請求人の主張の概要
被請求人は、審判事件答弁書及び上記口頭審理期日において、概略次のように主張する。
(1)本件特許発明1及び2は、甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。
(2)本件特許発明1及び2は、甲第4号証または甲第5号証に記載された発明と、甲第7号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。

4.本件特許発明の認定
本件特許発明1及び2は、特許公報の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】炭化した木質ボード層と、わらマット、木質系インシュレーションボード等の層とを含むことを特徴とする畳。
【請求項2】炭化木質ボードが炭化コルクボードである請求項1記載の畳。」

5.請求人の提出した証拠について
請求人は、甲第1号証ないし甲第10号証を書証として提出して、本件特許発明1及び2は、当業者が容易に発明できたものであって特許法第29条第2項に該当する旨主張するので以下検討する。
請求人が提示した甲各号証には次の記載が認められる。
(1)甲第1号証(実用新案登録第3006402号公報:発行平成7年1月24日)
明細書の段落番号0009に、第1図及び第2図に掲載の畳13の畳床9が、「上から、厚さ6mmの薄コルク板1、15mmの軟繊維板(インシュレーションボード)2、厚さ20mmの発泡合成樹脂板(例えば、ポリスチレンフオーム)3、厚さ12mmの厚コルク板4を順次積層し、接着、縫着、あるいは止め具等(図示していない)で一体化」したことが記載されている。
(2)甲第2号証(編者代表 上坂酉三、「商品大辞典」昭和44年3月10日発行、株式会社東洋経済新報社)
512頁左欄下から7行ないし同頁右欄4行に、「地中海沿岸の諸国に生育するコルクガシ樹皮のコルク層から得られ・・たちくず、およびあべまきからのものは砕いて再結合整形し、再生コルクとして用いる。この板状のものがコルク板で、その大部分を占める炭化コルク板は、粒状に砕いたものを型に圧縮充填し、300〜400℃の炉中に入れて焼き、板状に成形したものである。」とコルク板について記載されている。
(3)甲第3号証(ポルトガルISOCOR社のカタログ:発行日不明)、甲第3号証の1(甲第3号証のカタログ第2頁の翻訳文)
ISOCOR社は、ポルトガルのコルク板のメーカーであり、ISOCOR社のカタログの2頁に、インシュレーションコルクボードに関する概説が記載されており、概説の本文下から10行目以下の「CORKBORD is obtained・・cut into slabs.」を翻訳すると、「コルクボードは、コルク微粒をオートクレープに入れて作ります。オートクレープは圧力がまのような働きをし、300℃の温度、および所定の圧力でコルク微粒を加熱/加圧します。外気との接触がなく加熱した結果、コルク樹脂自体がそれぞれの細胞の外部に放出されます。その後、コルク微粒が結合して、コルクボードが暗褐色になります。一定量を加熱/加圧した後、オートクレープはコルクボードの圧縮ブロックを作り、これが冷却されてスラブ形状に切断されます。」(甲第3号証の1)となる。
(4)甲第4号証(実公平6-24514号公報:公告平成6年6月29日)
公報2頁左欄28行ないし35行に第1図に示す実施例1の畳床についての説明があり、「1がベニヤ板(厚さ2mm)であって、該ベニヤ板1の下側に炭化コルクボード2(厚さ15mm)およびコルクボード3(厚さ12mm)が順次重ねてある一方、ベニヤ板1の上側には面状発熱体4を挟んで、コルクボード3(厚さ12mm)およびコルクシート5(厚さ3mm)が順次重ねてあり、これらの積層体を第2図に示したように縦縁と平行に数条、縫製6して暖房畳床としたものである。」と記載されている。
(5)甲第5号証(株式会社センリュウの「トコルーク畳」のカタログ:発行日不明)
最終頁の右上部に掲載された写真に畳床が写されており、畳床としてコルクが用いられていることが認められる。
(6)甲第6号証(平成3年6月24日発行の日刊工業新聞の「トコルーク畳」の欄)
甲第6号証の日刊工業新聞に株式会社センリュウの「トコルーク畳」が掲載されている。
(7)甲第7号証(登録実用新案第28343号公報:登録大正2年7月31日)
公報の登録請求の範囲の欄に「図面に示す如く「コルク」層の断片を耐水法により圧搾凝固したるものを床として之に所要の座表及び縁布の表装を施して作りたる「コルク」畳の構造」(注、旧字体は新字体に変換した。)と記載されている。
さらに、図面に、畳床Aにコルクを使用した畳が記載されている。
(8)甲第8号証(実公昭62-35793号公報:公告昭和62年9月11日)
公報1頁右欄20行ないし2頁左欄1行に第1図に示す実施例の畳についての説明があり、「矩形コルク板でなる基板1の上面に、同じく矩形ベニヤ板でなる補強板2を重ねて、当接面を接着剤で被着させると共に、補強板2の上面には基板1と同様の矩形コルク板でなる上層材3を重ねて、補強板2との当接面を接着剤で被着させて畳床4を構成し、該畳床4に畳表5を張設して畳6としたものである。」と記載され、公報2頁左欄19行ないし右欄1行に第3図に示す実施例の畳についての説明があり、「前記実施例と同様の基板1の上面に、補強板2を重ね、補強板2の上面に、厚さ約3mmのコルク板でなる上層材9を重ねて畳床10とし、該畳床10に畳表5を張設して畳11としたものである。」と記載されている。
(9)甲第9号証(実公平3-48373号公報:公告平成3年10月16日)
公報1頁右欄27行ないし2頁左欄6行に図面に示す実施例の畳についての説明があり、「上部から軟質コルク薄板1(例えば3mm)、硬質コルク板2(例えば12mm)、ベニヤ板3、発泡合成樹脂板4(例えば硬質ウレタン)、コルク板5および合成樹脂シート6(例えばビニールシート)を順次重ねて接着剤又は縫着、或いは止金具などで一体化した後、畳表7を被着し、縫着して畳を構成する。」と記載されている
(10)甲第10号証(実公平3-55695号公報:公告平成3年12月12日)
公報1頁右欄23行ないし25行に第1図及び第2図に示す実施例の畳についての説明があり、「コルク板1の上綿に綿テープ2を介して綿ネット3を添着し、該綿ネット3の上側に畳表4を通常の要領で層着して畳としてある。」と記載されている。

6.本件特許発明1について
(1)本件特許発明1と甲第4号証に記載されたものを対比すると、甲第4号証に記載された発明の実施例の1つとして記載された第1図において、畳床は、「1がベニヤ板(厚さ2mm)であって、該ベニヤ板1の下側に炭化コルクボード2(厚さ15mm)およびコルクボード3(厚さ12mm)が順次重ねてある一方、ベニヤ板1の上側には面状発熱体4を挟んで、コルクボード3(厚さ12mm)およびコルクシート5(厚さ3mm)が順次重ねて」(公報2頁左欄29行ないし33行)層状に設けられている。
そこで本件特許発明1と甲第4号証の第1図に記載されたものとを比較すると、甲第4号証に記載されたものの炭化コルクボードは本件特許発明1の炭化した木質ボードに相当するものの、わらマットや木質系インシュレーションボードは記載されていないから、両者は、「炭化した木質ボード層と、木質系のボードの層とを含むことを特徴とする畳。」において一致し、本件特許発明1の畳の木質系のボードは木質系インシュレーションボードであるのに対し、甲第4号証に記載されたもののにはそのようなボードは記載されていない点でのみ相違していると認められる。
(2)以下、相違点について検討する。
本件特許発明1においては、木質系のボードとして木質系インシュレーションボードを用いているが、畳床として木質系インシュレーションボードを用いることは、本件特許の出願前に周知の技術的事項にすぎない(例えば、「畳の専門知識」157ないし158頁の「(3)合成床の種類」、竹中知哉編集、株式会社たたみ新聞社、昭和53年4月10日発行、または、被請求人の提出した乙第9号証の30ないし31頁参照)のであって、甲第4号証に記載された木質系のボードであるコルクボードやベニヤ板に換えて、該周知の木質系インシュレーションボードを適用することにより、本件特許発明1の上記相違点に係る構成とすることは、両者がともに畳床の技術分野に属することから、当業者が容易に想到できたことと認められる。
また、一般に、コルクボードは、断熱性、吸音性、耐振性、防虫効果を有し、比重が1よりも小さいものであることは本件特許出願前によく知られた事項であり(例えば甲第10号証参照)、コルクボードに換えて炭化コルクボードとしても同様の特性や効果を有すると考えられる。また、炭化コルクについては、一般に木炭は、湿気を吸収したり放出したりする調湿の機能や、脱臭の機能を有するものであることが、本件特許出願前によく知られた事項であって(本件特許の明細書において従来の技術で例示した実願平4-49836号(実開平6-6583号)のCDROMにもそのことが記載されている。)、コルク樫等の木の皮であるコルクを炭化させた炭化コルクにおいても木炭と同じように調湿の機能や、脱臭の機能を期待できると考えられることから、本件特許発明1において炭化した木質系ボード(コルクボード)を用いたことによって生じる作用効果、つまり、足の臭いの除去、ダニ等の発生、繁殖の防止、畳の清潔さ、すがすがしさの維持、畳の廃棄に関して問題が少ない、自然な踏足感等の作用効果は、炭化した木質系ボード(コルクボード)を用いることによって期待できる作用効果であって、その作用効果は当業者において予測の範囲内であると考えられる。
なお、被請求人が提出した乙第1号証には、炭化コルクの特長として、断熱効果、吸音効果、防振効果、防臭効果、調湿効果、耐久性、防虫効果、耐火性、安全性(燃やしても有毒物質を出さない)が記載されており、乙第1号証が本件特許の出願後に発行されたものであったとしても、炭化コルクの特長が本件特許の出願前後で変わるとも考えられない。
したがって、本件特許発明1は、甲第4号証に記載されたもの及び周知の技術的事項から当業者が容易に発明できたものと認められる。
(3)被請求人の主張に対して
被請求人は、審判事件答弁書において、甲第4号証に記載されたコルクボードについて、次のように主張する。
すなわち、甲第4号証記載の畳床はヒーターを内蔵することから、「畳床の藁が発熱体のON、OFFによる加熱と冷却を繰り返し受けて脆くなり、およそ1年でバラバラとなる為、畳床としての機能を維持できなくなる問題点があった。」と記載されており、従来のようなわらの畳床をその構成から積極的に排除することを明らかにしている。もちろん、炭化木質ボード(炭化コルクボード)による消臭・除湿効果を利用するものでもない。このように、甲第4号証に記載の畳床は普通の畳のための床ではなく、暖房器具として捉えられるべきものである。このような先行技術から、「自然な踏足感」、「足の臭いの除去」、「ダニ等の発生の防止」、「清潔さ、すがすがしさの維持」などという本件発明の目的や効果が出てくるはずがない。
検討するに、甲第4号証において、わらを用いないようにしたのは、発熱体と共に用いた場合には、わらがバラバラになるという問題があるからであって、本件特許発明1のように発熱体を用いることを必須の構成要件としない場合までその使用を排除したとは考えられない。
また、本件特許発明1においては、「わら」は層を構成するものの1つとして挙げられているにすぎず必須の構成要件ではないのであって、甲第4号証に記載された発明のコルクに換えて、木質系インシュレーションボードを適用することを妨げる要因になるとは考えられない。

7.本件特許発明2について
本件特許発明2は、本件特許発明1の炭化した木質ボードが「炭化コルクボード」であると限定したものであるが、上記5の(4)に記載したように、甲第4号証には炭化コルクボードが記載されている。
したがって、本件特許発明2は、甲第4号証に記載されたもの及び周知の技術的事項から当業者が容易に発明できたものと認められる。

8.結論
以上のように、本件特許発明1及び2は、甲第4号証に記載されたもの及び周知の技術的事項から当業者が容易に発明できたものであるから、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当する。
また、審判に関する費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2000-08-14 
結審通知日 2000-08-25 
審決日 2000-09-05 
出願番号 特願平7-160028
審決分類 P 1 112・ 121- Z (E04F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 七字 ひろみ  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 鈴木 公子
小野 忠悦
登録日 1999-01-14 
登録番号 特許第2874841号(P2874841)
発明の名称 畳  
代理人 小林 良平  
代理人 辻本 一義  
代理人 吉田 哲  
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