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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 E05F
管理番号 1052877
審判番号 審判1999-14261  
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-09-02 
確定日 2002-02-18 
事件の表示 平成 6年特許願第271987号「上げ下げ窓用バランサー」拒絶査定に対する審判事件〔平成 8年 5月28日出願公開、特開平 8-135296、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成6年11月7日の出願であって、その請求項1及び2に係る発明(以下、「本願発明1及び2」という)は、平成10年12月28日付けの全文補正明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。

「【請求項1】 線状障子吊下げ部材と、吊下げ部材巻取ドラムと、可動障子を上向きに付勢する定荷重渦巻きばねと、吊下げ部材巻取ドラムおよび定荷重渦巻きばねの間に両者間で力を伝達するように設けられ、かつ複数の円筒歯車を有する歯車装置とを備えている上げ下げ窓用バランサー。
【請求項2】 吊下げ部材巻取ドラムおよび定荷重渦巻きばねが基板に配置されており、吊下げ部材巻取ドラムが基板に対して直交する軸線の周りに回転自在であり、定荷重渦巻きばねの中心線が基板に対して直交している請求項1記載の上げ下げ窓用バランサー。」

2.刊行物
(1)これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された実公昭37-2984号公報(以下、「刊行物1」という。)には、窓硝子釣合装置に関して、
(ア)「図において1は上下方向に開閉する窓硝子。2は窓側の上部に取付けたケース。3はケース2内に支軸4をもつて回転自在に収めた吊上げドラム。5は鋼帯等可撓性の材料からなる吊条で、下端は窓硝子1の上端に取付け、他端はケース側面の口6から、その部分に設けた導転子7を経て吊上げドラム8(当審注:「3」の誤りと認める。)上に導き、吊上げドラム3に定着する。8はケース2内に固定した支軸9により遊転自在に架した回転函で、その内部には巻バネとして渦巻帯バネ10を収め、このバネの一端は支軸9に、また他端は回転函内面に各定着し、回転函8が回転すれば、その回転方向に従つてバネ10は締まり、あるいは弛緩するように構成する。11はこの回転函8の一端に連設した錘形溝車で、その最小径部に取付けたロープ12を溝車11上から前記吊上げドラム8(当審注:「3」の誤りと認める。)の端に設けた溝部13に捲きつけてその端を溝部13に固着するものである。」(1頁左欄9ないし26行)、
(イ)「図面に示すように、巻バネ10を収納する回転函8に連設した錘形溝車11と、これに並設した窓硝子1の吊上げドラム3とをロープ12によつて捲き掛け連動させた窓硝子釣合装置の構造。」(登録請求の範囲)
と記載されている。
(ウ)また、第1図及び第2図には、吊上げドラム3の支軸4、及び渦巻帯バネを収納した回転函8の支軸9がケース2の左右側壁(第2図において、ケース2を構成する左右の側壁)に直交して設けられる点が記載されている。
これらの記載及び第1図、第2図の記載からみて、刊行物1には、「吊条と、吊上げドラムと、窓硝子を上向きに付勢する渦巻帯バネと、吊上げドラムおよび渦巻帯バネの間に両者間で力を伝達するように設けられたロープとを備えている窓硝子釣合装置。」の発明、及び、「吊上げドラムおよび渦巻帯バネがケースに配置されており、吊上げドラムがケースの左右側壁に対して直交する支軸の周りに回転自在であり、渦巻帯バネを収納した回転函の支軸がケースの左右側壁に対して直交していること」が記載されていると認められる。

(2)同じく、実願平3-108777号(実開平5-40567号)のCD-ROM(以下、「刊行物2」という。)には、「上げ下げ窓10は、周知のように、上下枠11,12及び左右の竪枠13,13からなる窓枠内に、障子14を上下動可能に設けたものであって、前記図5に示した構造のバランサー15を竪枠13内に内蔵している。上記バランサー15は、前記同様に、竪枠1上部に配置される螺旋筒状の捩じりバネ16と、該捩じりバネ16の下端部に設けたナット部材17に螺合するネジ板18とにより構成されており、該ネジ板18の下端部が障子14に固定されている。そして、本実施例に示す上げ下げ窓用バランサーの調整装置20は、図2及び図3に示すように、ケーシング21内に回転可能に収納された4個の歯車22,23a,23b,24により構成されている。まず第1の歯車22は、捩じりバネ回動部材となるものであって、その下部には、捩じりバネ16上端部のバネ保持部材16aに連結される突片22aが突設されている。第2,第3の歯車23a,23bは、後述の第4の歯車24と竪枠13との間隔を適当に設けて第4の歯車24を回動させる際の操作性を向上させるために設けられるもので、単に回転を伝達するだけのものである。第4の歯車24は、操作部材となるものであるとともに、これらの調整用歯車の回転を阻止する固定手段を備えたものである。この第4の歯車24の下部には、ドライバーにより捩じりバネ16を強め方向に回動させるための溝24aが設けられており、その上面には、該第4の歯車24と一体に回動する係止爪25が設けられている。この係止爪25は、第4の歯車24の軸に固着された円盤部25aと、該円盤部25aから突出した爪部25bとから形成されている。また、上記係止爪25に対応するケーシング21部分には、該係止爪25に係止する一対の係止部26a,26bを有する係止部材26が摺動可能に設けられている。係止部26a,26bは、係止部材26の摺動方向前後に対向して設けられており、係止部材26の前後動により、いずれか一方が前記係止爪25に係合するように形成されている。そして、係止部材26は、ケーシング21との間に設けたスプリング27により、図2において左側に付勢されており、通常の状態では、図2において右側に位置する係止部26aが係止爪25に係合している。」(段落【0011】ないし【0018】)と記載されている。

3.対比・判断
(1)本願発明1について
本願発明1と刊行物1に記載の発明とを比較すると、刊行物1に記載の発明の「吊条」、「吊上げドラム」、「窓硝子」、「渦巻帯バネ」及び「窓硝子釣合装置」が、それぞれ本願発明1の「線状障子吊下げ部材」、「吊下げ部材巻取ドラム」、「可動障子」、「定荷重渦巻きばね」及び「上げ下げ窓用バランサー」に相当し、刊行物1に記載の発明の「ロープ」と本願発明1の「歯車装置」はともに力を伝達する伝達手段であるから、両者は、「線状障子吊下げ部材と、吊下げ部材巻取ドラムと、可動障子を上向きに付勢する定荷重渦巻きばねと、吊下げ部材巻取ドラムおよび定荷重渦巻きばねの間に両者間で力を伝達する伝達手段とを備えている上げ下げ窓用バランサー。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点
本願発明1では、吊下げ部材巻取ドラムおよび定荷重渦巻きばねの間に設けられる伝達手段が複数の円筒歯車を有する歯車装置であるのに対し、刊行物1に記載の発明では、吊下げ部材巻取ドラムおよび定荷重渦巻きばねの間に設けられる伝達手段がロープである点

そこで、相違点について検討すると、刊行物2には、上げ下げ窓用バランサーにおいて、力の伝達手段として複数の歯車を設けることが記載されている。しかし、本願発明1は、複数の円筒歯車を有する歯車装置を、吊下げ部材巻取ドラムおよび定荷重渦巻きばねの間に設けることによりはじめて、明細書に記載の「複数の円筒歯車の回転時の摩擦や、歯車の噛み合いによって、吊下げ部材巻取ドラムおよび定荷重渦巻きばねの間の力の伝達に抵抗を付与することができるので、1つの定荷重渦巻きばねで種々の重量の可動障子に適応させることができる。したがって、窓枠の高さが変更されて障子の重量が変わった場合にも、1種類のバランサーで対応することができ、コストが安くなる。」(段落【0032】)という顕著な効果を奏するものであり、この効果は、刊行物1に記載の発明及び刊行物2に記載の技術事項からは予測できないものであるから、本願発明1は、刊行物1及び2に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(2)本願発明2について
本願発明2は、本願発明1をさらに限定したものであるから、上記本願発明1についての判断と同様の理由により、刊行物1及び2に記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願については、原査定の理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2002-02-05 
出願番号 特願平6-271987
審決分類 P 1 8・ 121- WY (E05F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 長島 和子長島 和子  
特許庁審判長 木原 裕
特許庁審判官 鈴木 公子
中田 誠
発明の名称 上げ下げ窓用バランサー  
代理人 岸本 瑛之助  
代理人 渡邊 彰  
代理人 日比 紀彦  
代理人 岸本 守一  

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