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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01N |
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管理番号 | 1052914 |
審判番号 | 不服2000-16480 |
総通号数 | 27 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1992-08-06 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-10-16 |
確定日 | 2002-02-26 |
事件の表示 | 平成 3年特許願第 53117号「アルツハイマー病に特異的な抗原の存在を決定する方法」拒絶査定に対する審判事件〔平成 4年 8月 6日出願公開、特開平 4-216464、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1. 本願発明 本願は、平成3年(1991年)2月26日(パリ条約による優先権主張、1990年2月26日、米国)の出願であって、その請求項1ないし8に係る発明は、平成11年8月27日付で補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の各請求項に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 ATCCNo.HB9205として識別されるハイブリドーマ細胞株。 【請求項2】 請求項1に記載のハイブリドーマ細胞株により産生されるモノクローナル抗体。 【請求項3】 請求項2に記載の抗体と免疫学的に反応性のある抗原を含むタンパク質調製物であって、前記調製物は、(a)ホモジネート用のトリス緩衝液中で脳の皮質組織の試料をホモジナイズし、および(b)(a)ステップのホモジネートから粒状の物質を除去する、工程を含んでなるプロセスにより得られるタンパク質調製物。 【請求項4】 (a)ATCCNo.HB9205として識別されるハイブリドーマ細胞株により産生されたモノクローナル抗体と被験者から得られた試料とを接触させて、第1抗体-抗原複合体を形成させ、および(b)前記複合体の量を測定する、工程を含む、被験者のアルツハイマー病を検出する方法。 【請求項5】 抗原として用いられる試料が脳脊髄液、脳組織抽出物および血液から選択される請求項4に記載の方法。 【請求項6】 抗体が、固体マトリックスに取り付けられている請求項4または5に記載の方法。 【請求項7】 アルツハイマー病を有する被験者の脳組織に見出された第2抗原決定因子と免疫学的に反応性のある第2抗体と、第1抗体-抗原複合体と、を接触させ、第2抗体-抗原複合体を形成させる工程をさらに含む請求項4ないし6のいずれか1項に記載の方法。 【請求項8】 第2抗原決定因子が第1抗原決定因子と同一または異なっている請求項7に記載の方法。」 2. 原査定の拒絶理由の概要 原査定の拒絶理由の概要は、以下のようなものである。 「 本願の請求項4の発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 (1) 米国特許第4666829号明細書 (2) 特開昭63-118656号公報 」 3. 引用刊行物の記載事項 刊行物1には、(a)アルツハイマー病患者の脳血管アミロイド沈着物からポリペプチド(AAP:アルツハイマー・アミロイド・ポリペプチド)を精製し、そのポリペプチドのアミノ酸配列を決定したこと(要約欄)、(b)このポリペプチドを使用して、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体を製造でき、モノクローナル抗体は、AAPまたはPF(ポリペプチド断片)を使用して製造可能であること(4欄5行〜18行)、(c)抗体は、AAPに対するものであれ、PFに対するものであれ、標準化されたイムノアッセイ、例えば、放射線イムノアッセイ(RIA)および酵素結合イムノソーベントアッセイ(ELISA)、において使用することが可能であり、例えば、競合法において、一定量の標識をしたAAPと抗体とを患者の血清サンプルに混合する。生成する抗原抗体複合体を分離する。標識化複合体のパーセントを測定値を患者血清中のAAPの量の決定に使用することができること(4欄19行〜29行)、そして(d)PF(ポリペプチド断片)に対する抗体を産生するハイブリドーマ(クローンCW1/1、CW1/2、CW1/3)を製造し(7欄、例X)、(e)患者の血清または脳髄液の試料を、抗体を使用して放射線イムノアッセイの競合法で測定した(7欄〜8欄、例XII)ことが記載されている。 また、刊行物2には、酵素標識抗体を第3抗体として使用する、サンドイッチ免疫測定法が記載されている。 4.本願請求項4に係る発明と刊行物1記載の発明との対比・検討 (イ)本願請求項4に係る発明と、刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1の例XIIに記載の放射線イムノアッセイは、被験者のアルツハイマー病を検出する方法に相当し、「抗体」と被験者から得られた試料とを接触させて、第1抗体-抗原複合体を形成させ、および、前記複合体の量を測定する、工程を含む、ものであるが、刊行物1の例XIIに記載の放射線イムノアッセイにおいて使用された「抗体」は、ポリクローナル抗体であるのか、モノクローナル抗体であるのか不明であるし、刊行物1に記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株(クローンCW1/1、CW1/2、CW1/3)は、本件請求項4の「ATCCNo.HB9205として識別されるハイブリドーマ細胞株」と同一のものとは認められない。 (ロ)そうすると、本願請求項4に係る発明は、刊行物1に記載された発明と、「抗体と被験者から得られた試料とを接触させて、第1抗体-抗原複合体を形成させ、および、前記複合体の量を測定する、工程を含む、被験者のアルツハイマー病を検出する方法」である点で一致するものの、前者が、「抗体」として「モノクローナル抗体」を使用するのに対し、後者では、「抗体」としてポリクローナル抗体を使用するのか、モノクローナル抗体を使用するのか特定されていない点、及び前者では、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株が「ATCCNo.HB9205として識別されるハイブリドーマ細胞株」であるのに対し、刊行物1には、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株としては「クローンCW1/1、CW1/2、CW1/3」が記載されている点で相違する。 (ハ)そこで、これらの相違点について検討する。 刊行物1に記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株(クローンCW1/1、CW1/2、CW1/3)は、本件請求項4の「ATCCNo.HB9205として識別されるハイブリドーマ細胞株」と同一のものとは認められないところ、本願明細書の実験1では、抗体として、「ATCCNo.HB9205として識別されるハイブリドーマ細胞株」により産生されたモノクローナル抗体(ALZ-50)を使用している。そして、本願明細書の図3および表1に示されている結果は、実験1の結果であり、図3には、ALZ-50の特異性、直線性が示されており、表1には、検出の正確さが示されている。 また、本願明細書の実験2でも、抗体として、「ATCCNo.HB9205として識別されるハイブリドーマ細胞株」により産生されたモノクローナル抗体(ALZ-50)を使用しているものと認められる。そして、本願明細書の表2および図4に示されている結果は、実験2の結果であり、本願明細書の表2および図4には、非アルツハイマー病群である通常群(NC)および他の神経学的病気群(NDC)と、アルツハイマー病(AD)群とについて、ADAP(アルツハイマー病関連タンパク質:アルツハイマー抗原)の濃度を測定した結果が示されている。 表2および図4によれば、実質的にアルツハイマー病群は、非アルツハイマー病群よりも顕著に高いADAP濃度を有しており、非アルツハイマー病群は、ADAPを全く検出していない。また、他の神経学的病気群(NDC)の臨床的に痴呆症であると診断された人(全28人中16人)は、ADAPが全く存在しない。この結果は、アルツハイマー病にのみ特有なものでなく他の疾患にも同様に見られる病理学的な特徴である神経原繊維の濃縮体および神経斑(NP)の測定値と、アルツハイマー病とする診断所見との間には、相関がないということを示すものである。 実験1〜実験2の結果によれば、本願請求項4の発明の方法は、特異性、直線性において優れており、そして、通常および他の神経学的病気と、アルツハイマー病とを明確に識別可能であることを示している。 上記の本件明細書記載事項によれば、本件請求項4の発明は、刊行物1記載のハイブリドーマ細胞株(クローンCW1/1、CW1/2、CW1/3)とは異なり、かつそれらのハイブリドーマ細胞株についての記載があっても容易に想到できるものとはいえない「ATCCNo.HB9205として識別されるハイブリドーマ細胞株」という特定のハイブリドーマ細胞株の産生するモノクローナル抗体を使用する上記相違点の構成を有することにより、優れた効果を奏するものと認められる。 そして、刊行物2にも、上記相違点の構成を示唆する記載はない。 5. むすび したがって、本願請求項4に係る発明は、刊行物1〜刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2002-02-13 |
出願番号 | 特願平3-53117 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(G01N)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 加々美 一恵 |
特許庁審判長 |
後藤 千恵子 |
特許庁審判官 |
渡部 利行 植野 浩志 |
発明の名称 | アルツハイマー病に特異的な抗原の存在を決定する方法 |
代理人 | 古川 秀利 |
代理人 | 黒岩 徹夫 |
代理人 | 曾我 道照 |
代理人 | 池谷 豊 |
代理人 | 鈴木 憲七 |
代理人 | 長谷 正久 |