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審決分類 審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1052993
審判番号 審判1999-6645  
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-11-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-04-26 
確定日 2002-02-06 
事件の表示 平成 5年特許願第 95894号「ソフトウェア自動インストール方法及びソフトウェア自動バージョンアップ方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 6年11月 4日出願公開、特開平 6-309261]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】本願発明
本願は、平成5年4月22日の出願であって、その発明を特定するために必要な事項は、平成10年10月7日付け全文補正明細書、平成11年4月26日付け及び平成11年9月20日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された「ソフトウェア自動インストール方法及びソフトウェア自動バージョンアップ方法」にあるものと認められるところ、当該請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】サーバマシンと、インストールするソフトウェア等を格納するサーバマシン用磁気ディスク装置と、サーバマシンにLAN等によって接続された複数のクライアントマシンと、それぞれのクライアントマシン用の複数のクライアントマシン用磁気ディスク装置とを備えるクライアントーサーバ方式のネットワークシステムにおいて、
サーバマシン用磁気ディスク装置に予めシステム内のクライアントに関する情報であって、所定ソフトウェアをインストールするクライアントを選択するための管理情報を格納し、
それぞれのクライアントマシン用磁気ディスク装置に、サーバマシンがソフトウェアを当該クライアントに対して配信する権利があるか否かを判断するためのサーバ情報を予め格納し、
サーバマシンは管理情報により所望のクライアントマシンを選択し、
サーバマシンから選択したクライアントマシンにインストール開始の指示を出力し、
インストール開始の指示を受けるクライアントマシンはサーバ情報に基づいて当該サーバマシンが自らに対してソフトウェアを配信する権利があるか否か判断し、
当該サーバマシンがソフトウェアを配信する権利があると判断した場合、当該サーバマシンから送られるソフトウェアのインストール処理を実行することを特徴とするソフトウェア自動インストール方法。」
【2】引用刊行物(先願明細書に記載された発明)
これに対して、前置審査における平成11年7月13日付けの拒絶の理由で引用された、本願の出願の日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願平3ー310855号(特開平5ー150994号)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「先願明細書」という。)には、以下のような記載が認められる。
(i)「【産業上の利用分野】本発明は、情報処理システムのソフトウェアダウンロード技術に関し、特にダウンロード対象装置が複数のHOST計算機システムに接続されるシステムにおいて、不正なダウンロードの防止および実行中のダウンロードプログラムの保護が可能とされるダウンロードプログラムの保護方式に適用して有効な技術に関する。」(段落番号【0001】、出願公開公報第2頁左欄44〜50行)
(ii)「【0006】そこで、本発明の目的は、ダウンロードされる側の装置において、ダウンロードの妥当性をチェックすることによってHOST側から不正なソフトウェアを容易にダウンロードできないようにしたダウンロードプログラムの保護方式を提供することにある。
【0007】また、本発明の他の目的は、ダウンロードされる側の状況をHOST側に報告できる機能を持つことにより、不必要なダウンロードの回避および動作中のダウンロードプログラムの保護を行なうことができるダウンロードプログラムの保護方式を提供することにある。」(段落番号【0006】【0007】、同頁右欄第36〜46行)
(iii)「【0010】すなわち、本発明のダウンロードプログラムの保護方式は、少なくともHOST計算機と、このHOST計算機とIOインタフェースを介して接続される通信制御装置を含むIO系周辺装置とを備え、ダウンロードによりHOST計算機がIO系周辺装置にソフトウェアを転送するダウンロードプログラムの保護方式であって、IO系周辺装置のダウンロード制御プログラム内に、予め取り決めた複数個の暗証コードを有する暗証コードテーブルを備え、電源投入時の初期立ち上げ状態では、暗証コードを受け付ける特定のコマンドのみを許可する機能と、HOST計算機から送られた暗証コードと暗証コードテーブル内の暗証コードとが一致した時は、ダウンロードプログラム転送用のコマンドを許可する機能とを持つものである。
【0011】この場合に、前記HOST計算機をHOST計算機システム、前記IO系周辺装置をHOST計算機システムと通信回線を介して接続される分散機システムとし、HOST計算機システムから分散機システムに送られてくる特定フォーマットの暗証コードと、暗証コードテーブル内の暗証コードとが一致した時のみ、HOST計算機システムから送られてきたソフトウェアをダウンロードプログラムとして認めるようにしたものである。
【0012】また、前記HOST計算機またはHOST計算機システム側のソフトウェアに、ダウンロードしようとする相手装置の状況を問い合わせる機能を備え、かつ前記IO系周辺装置または分散機システム側で実行する全てのソフトウェアに、HOST計算機またはHOST計算機システム側の問い合わせに対して装置状態を報告する機能を備えるようにしたものである。」(段落番号【0010】〜【0012】、同頁左欄第4〜33行)
(iv)「【作用】前記したダウンロードプログラムの保護方式によれば、暗証コードテーブルがIO系周辺装置のダウンロード制御プログラム内に備えられることにより、HOST計算機からの暗証コードと暗証コードテーブル内の暗証コードとが一致した時のみ、ダウンロードプログラム転送用のコマンドを許可することができる。これにより、ソフトウェアが不正に、対象としないIO系周辺装置にダウンロードされ、実行されることを防止できる。
【0015】この場合に、HOST計算機がHOST計算機システム、IO系周辺装置が分散機システムとされることにより、HOST計算機システムからの特定フォーマットの暗証コードと、暗証コードテーブル内の暗証コードとが一致した時のみ、HOST計算機システムから送られてきたソフトウェアをダウンロードプログラムとして認めることができる。これにより、ソフトウェアが不正に、対象としない分散機システム内のファイルにダウンロードされ、実行されることを防止できる。
【0016】また、ダウンロード相手装置の状況の問い合わせがHOST計算機またはHOST計算機システム側から行われ、かつ問い合わせに対して装置状態、たとえばダウンロード未または済の状態、ダウンロード済の時はダウンロードされているプログラム名称、バージョン(Ver)/リビジョン(Rev)、作成日付、ダウンロードの可否情報(業務処理中または業務処理完了など)の報告がIO系周辺装置または分散機システム側で実行されることにより、HOST計算機またはHOST計算機システム側のソフトウェアがダウンロードすべきかどうかを自動的に決定することができる。これにより、オペレータの負担を極力少なくすることができる。」(段落番号【0014】〜【0016】、同頁左欄第40行〜同頁右欄第18行)
(v)「【0049】たとえば、本実施例の情報処理システムについては、HOST計算機1,1aとダウンロード対象装置2がIOインタフェースケーブル3,3aで接続されている場合について説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、遠隔地にある分散機システムと通信回線によって結ぶ場合などについても適用可能であり、このようにHOST計算機システムとダウンロード対象装置を回線で接続した場合には、両者の間でやりとりされるコマンドや情報が回線情報データ内に組み込まれる。」(段落番号【0049】、同頁右欄第19〜28行)
以上摘記した記載事項から、先願明細書においても、
「IO系周辺装置のダウンロード制御プログラム内に、予め取り決めた複数個の暗証コードを有する暗証コードテーブルを備え、電源投入時の初期立ち上げ状態では、暗証コードを受け付ける特定のコマンドのみを許可する機能」(段落番号【0010】)を具備するものであるから、IO系周辺装置に、HOST計算機がソフトウェアを当該IO系周辺装置に対して配信する権利があるか否かを判断するための暗証コードを予め暗証コードテーブルとして格納するものと認められる。また、「HOST計算機またはHOST計算機システム側のソフトウェアがダウンロードすべきかどうかを自動的に決定することができる。」(段落番号【0012】)ものであるから、HOST計算機は管理情報により所望のIO系周辺装置を選択し、HOST計算機から選択したIO系周辺装置にインストール開始の指示を出力しているものといえる。さらに、「ダウンロード相手装置の状況の問い合わせがHOST計算機またはHOST計算機システム側から行われ、かつ問い合わせに対して装置状態、たとえばダウンロード未または済の状態、ダウンロード済の時はダウンロードされているプログラム名称、バージョン(Ver)/リビジョン(Rev)、作成日付、ダウンロードの可否情報(業務処理中または業務処理完了など)の報告がIO系周辺装置または分散機システム側で実行される」(段落番号【0016】)ことにより、HOST計算機に予めシステム内のIO系周辺装置に関する情報であって、所定ソフトウェアをインストールするクライアントを選択するための装置状態である可否情報(管理情報)等を格納することとなるものと認められる。
なお、HOST計算機(1)(1a)、及びダウンロード対象装置であるIO系周辺装置(2)は、いずれも制御プログラム等が格納されているのであるから、磁気ディスク装置等の記憶装置を具備することは明らかであり、またIO系周辺装置(2)等遠隔地にある分散機システムと通信回線により結ばれる(段落番号【0049】)ことから、通常、複数のIO系周辺装置(2)等を含むシステムとして構成されることも自明の事項である。
したがって、前記先願明細書には、以下のとおりの発明(以下、「先願発明」という。)が開示されているものと認められる。
「HOST計算機(1)(1a)と、ダウンロードするソフトウェア等を格納する入出力ファイル(5)(5a)を含むHOST計算機用磁気ディスク装置と、HOST計算機(1)(1a)に通信回線やIOインターフェースケーブル(3)(3a)によって接続された複数のIO系周辺装置(2)と、それぞれのIO系周辺装置用の複数のIO系周辺装置用磁気ディスク装置とを備えるIO系周辺装置ーHOST計算機システム方式のネットワークシステムにおいて、
HOST計算機用磁気ディスク装置に予めシステム内のIO系周辺装置に関する情報であって、所定ソフトウェアをダウンロードするIO系周辺装置を選択するための装置状態である可否情報等を格納し、
それぞれのIO系周辺装置用磁気ディスク装置に、HOST計算機がソフトウェアを当該IO系周辺装置に対して配信する権利があるか否かを判断するための暗証コードを予め格納し、
HOST計算機は装置状態である可否情報により所望のIO系周辺装置を選択し、
HOST計算機から選択したIO系周辺装置にダウンロード開始の指示を出力し、
ダウンロード開始の指示を受けるIO系周辺装置は暗証コードに基づいて当該HOST計算機が自らに対してソフトウェアを配信する権利があるか否か判断し、
当該HOST計算機がソフトウェアを配信する権利があると判断した場合、当該HOST計算機から送られるソフトウェアのダウンロード処理を実行するソフトウェア自動ダウンロード方法。」
【3】本願発明と先願発明との対比・判断
本願発明と先願発明とを対比すると、先願明細書に記載された「ダウンロード」は、発明の対象とするHOST計算機等による「情報システム」における技術常識、従来技術に係わる記載(例えば、段落記号【0002】)からみて、本願発明の「インストール」に相当するものと認められ、また先願明細書に記載された「HOST計算機」「IO系周辺装置」「装置状態である可否情報」及び「暗証コード」は、それぞれ本願発明における「サーバマシン」「クライアントマシン」「管理情報」及び「サーバ情報」に相当するものと認められる。
したがって、本願発明と先願発明とは、
「サーバマシンと、インストールするソフトウェア等を格納するサーバマシン用磁気ディスク装置と、サーバマシンに回線によって接続された複数のクライアントマシンと、それぞれのクライアントマシン用の複数のクライアントマシン用磁気ディスク装置とを備えるクライアントーサーバ方式のネットワークシステムにおいて、
サーバマシン用磁気ディスク装置に予めシステム内のクライアントに関する情報であって、所定ソフトウェアをインストールするクライアントを選択するための管理情報を格納し、
それぞれのクライアントマシン用磁気ディスク装置に、サーバマシンがソフトウェアを当該クライアントに対して配信する権利があるか否かを判断するためのサーバ情報を予め格納し、
サーバマシンは管理情報により所望のクライアントマシンを選択し、
サーバマシンから選択したクライアントマシンにインストール開始の指示を出力し、
インストール開始の指示を受けるクライアントマシンはサーバ情報に基づいて当該サーバマシンが自らに対してソフトウェアを配信する権利があるか否か判断し、
当該サーバマシンがソフトウェアを配信する権利があると判断した場合、当該サーバマシンから送られるソフトウェアのインストール処理を実行するソフトウェア自動インストール方法。」で一致し、
(i)サーバマシン(HOST計算機)と複数のクライアントマシン(IO系周辺装置)との接続における回線が、本願発明においては、「LAN等によって接続される」ものであるのに対し、先願発明においては、「通信回線やIOインターフェースケーブル(3)(3a)によって接続される」ものである点、
で、一応相違するものと認められる。
しかしながら、この相違点については、通信回線やIOインターフェースケーブル(3)(3a)による接続においても、LAN等に係る接続として構成されることは当業者に自明の技術常識であり、また先願明細書に記載された先願発明も「情報システム」として構築されるものであるから、LAN等によって接続される構成も示唆があるものと認められる。
したがって、前記一応相違する点の構成は、先願明細書に記載されたものとして実質的に差異がなく、先願明細書には本願発明と実質的に同一の発明が記載されているものと認められる。
なお、審判請求人は、前置審査における意見書において、概要「引例には、所定ソフトウェアのインストールやバージョンアップをするクライアントマシンを選択するための管理情報をサーバマシンの側で予め保持しておき、それに基づいてサーバマシンがクライアントマシンを選択するという構成は全く開示されておりません。」(第3頁第20〜23行[(3)項]参照)旨主張している。
しかしながら、先願明細書には、前記【2】記載のとおり、HOST計算機またはHOST計算機システム側は、例えば「装置状態、たとえばダウンロード未または済の状態、ダウンロード済の時はダウンロードされているプログラム名称、バージョン(Ver)/リビジョン(Rev)、作成日付、ダウンロードの可否情報(業務処理中または業務処理完了など)の報告がIO系周辺装置または分散機システム側で実行される」(段落番号【0016】)とともに、「HOST計算機またはHOST計算機システム側のソフトウェアがダウンロードすべきかどうかを自動的に決定する」(段落番号【0012】)旨記載されており、またサーバマシンとクライアントマシンとに係わる技術常識乃至周知慣用される技術的事項(例えば、原審の拒絶理由に引用された特開昭63-109559号公報)を斟酌しても、サーバマシンがクライアントマシンを選択するという構成は自明の事項であるから、審判請求人の当該主張は採用することができない。
【4】まとめ
以上のとおりであって、本願発明(特許請求の範囲の請求項1に記載された発明)は、先願発明(先願明細書に記載された発明)と同一であると認められ、しかも、本願発明の発明者が先願発明の発明者と同一であるとも、また本願の出願の時に、その出願人が前記先願の出願人と同一であるとも認められないので、本願発明は、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2001-11-20 
結審通知日 2001-11-30 
審決日 2001-12-11 
出願番号 特願平5-95894
審決分類 P 1 8・ 16- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 斎藤 操佐藤 秀一二宮 千久鳥居 稔  
特許庁審判長 吉村 宅衛
特許庁審判官 稲葉 和生
植松 伸二
発明の名称 ソフトウェア自動インストール方法及びソフトウェア自動バージョンアップ方法  
代理人 吉田 研二  
代理人 石田 純  
代理人 金山 敏彦  

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