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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 C02F
管理番号 1053055
審判番号 不服2001-17447  
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-08-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-10-01 
確定日 2002-03-04 
事件の表示 平成3年特許願第194018号「ユニット式ヘッダマニホールドを有する逆浸透浄水システム」拒絶査定に対する審判事件〔平成4年8月17日出願公開、特開平4-227098、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 〔一〕 本願は、1990年8月3日に米国でした特許出願に基づいて優先権を主張して、平成3年(1991年)8月2日に出願された。
本願明細書の特許請求の範囲の各請求項のうち、請求項2から請求項10までの各請求項は請求項1を引用していて、請求項1の記載は、下記のとおりである。
「【請求項1】 供給水道水等を受容し、前記供給水道水等から不純物がほぼ取り除かれた比較的浄化された供給水をつくる逆浸透浄水システムにおいて、
供給水道水と通じており、受容するようになっているユニット式ヘッダマニホールドと、
供給水道水を、浄化供給水と、不純物が濃縮された排除水とに分離する逆浸透膜を有する逆浸透ステージと、
供給水道水及び浄化供給水のうちの選択された一つをろ過するためのろ過手段を有する少なくとも一つのろ過ステージと、
浄化供給水を収容し貯蔵するための貯水手段と、
浄化供給水を取水するための取水手段とを、備えており、
前記逆浸透ステージ及び前記少なくとも一つのろ過ステージは、前記ヘッダマニホールドに取り外し可能に設置され、前記逆浸透膜及び前記ろ過手段の交換処理を行うことができ、
前記ヘッダマニホールドは、水が、前記逆浸透ステージ及びろ過ステージを順次流れるための内部通路手段を形成し、前記内部通路手段は、前記マニホールド内に形成された細長いギャラリー通路を含み、更に前記ギャラリー通路に沿って間隔をあけた位置に設けられた流れ制御部材を含んで前記ステージを順次通過するよう水流を制御することを特徴とする逆浸透浄水システム。」
なお、以下では、上記請求項1の構成の発明を本願発明という。

〔二〕 実願昭62-80534号(この出願は、昭和63年12月6日に出願公開され、実開昭63-189390号公報が発行されている。)の明細書を複写したマイクロフィルム(原査定の引例2。以下では、本件引例という。)の内容
ただし、下記摘示文中、「・・・」の部分は、当審が転記を省略した部分である。
なお、当審は、原審が引用した特開昭63-264187号公開公報の記載内容は、本願発明との関係に関しては、本件引例とほぼ重複していると判断するので、当審は、この引例の記載については、あらためて言及しない。
(イ) 実用新案登録請求の範囲
「(1)複数個の流体処理用カートリッジ1と、該カートリッジ1にそれぞれ装着されそれぞれ該カートリッジ1内に流体を導入し且つ該カートリッジ1で処理された流体を排出する複数個のカートリッジ用コネクター2と、該カートリッジ用コネクター2を直列に接続して隣接する該カートリッジ用コネクター2間に流体を流通させるコネクター接続用コネクター3とを具備することを特徴とする流体処理装置。
(2)カートリッジ用コネクター2が、何れも同一構造であってそれぞれ上記コネクター接続用コネクター3への接続部220を2個有しており、それぞれの該接続部220が、コネクター接続用コネクター3の端部を嵌入係止させる嵌入口として構成されており、該嵌入口の底部にそれぞれ流体導入口221及び流体排出口223が設けられている、実用新案登録請求の範囲第(1)項記載の流体処理装置。」
以下では、上記第1項の構成の発明を本件引例発明という。
(ロ) 2頁、〔産業上の利用分野〕
「 本考案は、複数個の流体処理用カートリッジを直列に接続することにより、同種又は異種の流体処理を多段で行うようにした流体処理装置に関するもので、本考案の流体処理装置は、特に、流体処理構造体を容器内部に密封した使い捨てタイプの流体処理用カートリッジを任意数直列に接続して使用するのに好適である。」
(ハ) 2頁、下から7〜2行。〔従来の技術〕の一部
「 家庭、事務所等においては、浄水器等の小型の流体処理装置が種々使用されており、これらの流体処理装置によれば、活性炭、イオン交換樹脂、分離膜等の流体処理材により、流体、特に水の脱臭、清澄、除菌、軟水化等の処理が効果的に行われている。」
(ニ) 5頁、10行〜下から3行。〔実施例〕の一部
「 実施例の各部について詳述すると、上記流体処理用カートリッジ1は、その使用前においては第2図に示す如き形態となしてある。即ち、第2図において、11は開放可能な部位12を一端部に設けた容器、13は流体処理構造体で、この流体処理構造体13は、流体処理部14、該流体処理部14とそれぞれ連通する凸状の流体流入口15及び凹状の流体流出口16からなる二重管状の装着部17を有している。」
(ホ) 7頁、6〜13行、〔実施例〕の一部
「 また、上記流体処理部14は、流体流入パイプ18、容器11の内周側壁、両止めリング19及び110で囲まれる環状の空間に充填した吸着剤(例えば、活性炭)、イオン交換樹脂、分離膜(例えば、多孔質膜、各種フィルター)等のフィルター材(濾材)又はミネラル補給用石等で構成してあり、その上下にはフィルター112を配してある。」
(ヘ) 7頁、下から3行〜8頁、17行。〔実施例〕の一部
「 また、上記装着部17は、上記容器11の内周側壁下部に固定され下方の上記止めリング110と一体化された環状嵌合外管部113と、上記流体流入パイプ18の下方突出部(内管部)とで下向きの二重管状の嵌合部として構成してあり、・・・。そして、環状嵌合外管部113には、開放可能な部位12の開放後のカートリッジ装着時において、カートリッジ用コネクター2に対してカートリッジ1を下方に移動させた後回転することによりコネクター2にカートリッジ1を装着固定するための通常のロック機構が設けてあり、・・・。
また、前記カートリッジ用コネクター2は、第1図に示す如く、何れも同一構造であって、その上部にカートリッジ1への装着部21を具備し、又その両側部にコネクター接続用コネクター3への接続部220を2個設具備している。」
(ト) 11頁、下から8〜5行。〔実施例〕の一部
「 また、前記コネクター接続用コネクター3は、その両端部を同一形状となしてあり、カートリッジ用コネクター2の前記接続部220への嵌入係止に適するようになしてある。」
(チ) 12頁、8行〜13頁、11行。〔実施例〕の一部
「 而して、上述の構成からなる本考案の流体処理装置の使用に際しては、同種又は異種の流体処理を行う前記流体処理カートリッジ1複数個をそれぞれ複数個の前記カートリッジ用コネクターに装着した状態で、複数個のカートリッジ用コネクター2をコネクター接続用コネクター3で直列に接続し、先頭段のカートリッジ用コネクター2を前記流体導入コネクター41を介して流体源に接続し、且つ最終段のカートリッジ用コネクター2に前記流体排出用コネクター42を接続すれば良い。このように接続すると、ある段のカートリッジ用コネクター2には、コネクター接続用コネクター3又は流体導入コネクター41から流体が導入され、このようにして導入された流体は、流体流入パイプ18内を上昇し、カートリッジ1の容器11の天壁下方の前記隙間内を通過して前記流体処理部14内を下降してここで所定の流体処理が施され、カートリッジ1の前記流体流出口16を経てカートリッジ用コネクター2の流体排出口23からコネクター接続用コネクター3を介して次段のカートリッジ用コネクター2に導入されるか、又は流体排出コネクター42を介して排出される。従って、異種又は同種の流体処理を順次任意の段数行うことができる。」
(リ) 13頁、下から2行〜14頁、下から7行。〔考案の効果〕
「 本考案の流体処理装置は、上述の如く、同種又は異種の流体処理を行う流体処理カートリッジを任意段数直列に接続できるため、任意の流体処理を行うことができる実用的効果を奏するもので、・・・、流通経路やカートリッジ交換時における斯かるカートリッジの汚染、変質を防止して斯かるカートリッジを清潔な状態で装着することができ、又、・・・ワンタッチで容易に装着でき、更に、・・・、交換する毎に見映えを良くすることができること等と相俟ち、その実用的価値の極めて高いものである。」

〔三〕 判断
(1) 本願発明は、(α)「供給水道水を、浄化供給水と、不純物が濃縮された排除水とに分離する逆浸透膜を有する逆浸透ステージ」と「ろ過ステージ」とを有し、また、(β)ヘッダマニホールドを有することを必須とし、かつ、逆浸透ステージとろ過ステージからなる逆浸透浄水システムを正しく作動させるために、このヘッダマニホールドに、(γ)ギャラリー通路を含む内部通路手段を形成し、(δ)このギャラリー通路に沿って流れ制御部材を収容するようにし、さらに、(ε)浄化供給水を収容し貯蔵するための貯水手段をそなえた、逆浸透浄水システムの発明である。

(2) これに対して、本件引例発明は、複数個の交換可能な流体処理用カートリッジ式を使用する流体処理装置であって、異種の流体処理を多段で行うことができる点では、本願発明と共通である。

(3) しかしながら、本件引例発明は、下記の点で、本願発明と相違している。
(イ) 本件引例発明では、異種の流体処理を多段で行う際に、単に一般的に、流体処理を重複するというだけであって、異種の流体処理として、逆浸透による浄化及びろ過による浄化とを組み合わせる技術思想がない。
本件引例には、流体処理材として、「吸着剤(例えば、活性炭)、イオン交換樹脂、分離膜(例えば、多孔質膜、各種フィルター)等のフィルター材(濾材)又はミネラル補給用石等」が挙げられてはいるものの{上記〔二〕(ホ)参照}、これらは例示であるから、本件引例の記載が流体処理剤として逆浸透膜を排除しているとまではいえないが、逆浸透法は、供給水道水を、浄化供給水と不純物がが濃縮された排除水とに分離する必要があるという特別な性質をもっている(したがって、装置構成上の取扱いもことにする)点で、本件引例の上記諸例の場合とちがったものであると一般に認識されているから、上記諸例から、逆浸透膜を使用して水道水を浄化することを当業者が想到するとはいえないし、したがって、本件引例発明は、逆浸透ステージを逆浸透浄水システムにどのように組みこむことについても、なにも示唆していない。
(ロ) 本件引例発明では、異種の流体処理を多段で行う際に、その格段を正しく作動させるために、ヘッダマニホールドを設け、(α)このヘッダマニホールド内にギャラリー通路を設けたうえで、このギャラリー通路内に流れ制御部材を収容するという技術思想がない。
また、(β)本願発明のヘッダマニホールドは、「ろ過及び逆浸透処理ステージを収容し、支持するとともに、これらのステージと供働して水流を調整し、浄化供給水をつくる」〔本願明細書段落【0009】の記載参照〕(なお、当審は、「供働」は、「協働」の誤記と解する。)ためのものであって、例えば、ユニット式プラスチック成形体であることもできるものであり〔本願明細書の特許請求の範囲の請求項10参照〕、また、例えば、貯水タンク内の圧力を第一ろ過ステージに伝達するための圧力管路を設けることができるようなものである〔本願明細書段落【0021】の記載参照〕。
これに対して、本件引例発明では、「異種の流体処理を行う流体処理カートリッジの複数個をそれぞれ複数個の前記カートリッジ用コネクターに装着した状態で、複数個のカートリッジ用コネクターをコネクター接続用コネクターで直列に接続し、先頭段のカートリッジ用コネクター2を前記流体導入コネクターを介して流体源に接続し、且つ最終段のカートリッジ用コネクターに前記流体排出用コネクターを接続」する{上記〔二〕(チ)参照}から、カートリッジ用コネクターとコネクター接続用コネクターとを直列に接続した、異種の流体処理の各段に流体を供給し、また、取り出す通路が必要に応じて形成されるが、このようにして形成された通路系は、分解可能な臨時のヘッダマニホールドとみることが全くできない分けではないにしても、この臨時のヘッダマニホールドを、本願発明の、上記のような性質のヘッダマニホールド〔上記(ロ)(α)及び同(β)参照〕と同一視することは適当でない。
なお、マニホールドをヘッダユニット化すること自体は、一般的には、格別の工夫とはいいがたいが、本願発明は、「浄化供給水と、不純物が濃縮された排除水とに分離する逆浸透膜を有する逆浸透ステージ」を有する逆浸透浄水システムにおいて、特別にヘッダマニホールドを採用したものと考えるのが適当である。
(4) そうすると、本願発明は、本件引例発明に基づいて、当業者が容易に発明できた発明であるとはいえない。
当審は、他に、本願発明を拒絶すべき理由を発見しない。
(5) したがって、結論のとおり、審決する。
 
審決日 2002-02-19 
出願番号 特願平3-194018
審決分類 P 1 8・ 121- WY (C02F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中野 孝一  
特許庁審判長 吉田 敏明
特許庁審判官 西村 和美
服部 智
発明の名称 ユニット式ヘッダマニホールドを有する逆浸透浄水システム  
代理人 今城 俊夫  
代理人 中村 稔  
代理人 村社 厚夫  
代理人 宍戸 嘉一  
代理人 竹内 英人  
代理人 大塚 文昭  
代理人 小川 信夫  

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