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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F04C
管理番号 1053143
異議申立番号 異議2000-72543  
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-06-16 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-06-20 
確定日 2001-10-11 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第2996223号「真空ポンプ」の請求項1ないし6に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第2996223号の請求項1ないし6に係る特許を取り消す。 
理由 (1)手続の経緯
特許第2996223号の請求項1〜6に係る発明は、平成2年11月28日に出願した特願平2-332358号の一部を平成9年11月26日に新たな特許出願としたものであって、平成11年10月29日にその特許権の設定登録がなされ、その後、中村孝子、スターリング フルイド システムズ ゲーエムベーハーより特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年4月17日に訂正請求がなされたものである。

(2)訂正の適否についての判断
ア.訂正の内容
特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。
訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1〜6中の「真空ポンプ」を「ドライ真空ポンプ」に訂正する。
訂正事項b
発明の詳細な説明、図面の簡単な説明の記載(本件特許公報第2頁左欄第20行、同第3頁左欄第18行、同第3頁右欄第43行、同第4頁右欄第40行、同第5頁左欄第49行、同第5頁右欄第34行、及び同第5頁右欄第48行参照)の「真空ポンプ」を「ドライ真空ポンプ」に訂正する。

イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記の訂正事項に関連する記載として、願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という)の発明の詳細な説明には「ドライ真空ポンプ」(本件特許公報第2頁左欄第32行、同第2頁左欄第36行、及び同第2頁右欄第22〜23行参照)、及び「ドライポンプ」(本件特許公報第3頁左欄第4行参照)と記載されており、上記訂正事項a、bは、願書に添付した明細書に記載されている事項の範囲内のものであり、新規事項の追加に該当しない。そして、上記訂正事項aは、「真空ポンプ」を、その下位概念である「ドライ真空ポンプ」にするものであって、特許請求の範囲の減縮に該当する。また、上記訂正事項bは、訂正事項aに伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明、図面の簡単な説明の記載とを整合させるものであって、明りょうでない記載の釈明に該当する。また、上記訂正事項a、bは、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものでもない。

ウ.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

(3)特許異議申立について
ア.本件発明
平成13年4月17日付けで提出された訂正明細書の請求項1〜6に係る発明(以下、それぞれ、「本件請求項1に係る発明」〜「本件請求項6に係る発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみてその特許請求の範囲の請求項1〜6に記載された次のとおりのものと認める。
「(1)ハウジング内に収納された複数個のロータ及びこれらのロータのそれぞれに設けられた複数個の軸と、これらの軸の回転を支持する軸受と、前記ロータと前記ハウジングにより形成される流体移送室と、前記複数個の軸にそれぞれ設けられ、前記複数個のロータ間の接触を防止する接触防止ギヤと、前記ハウジングに形成され前記流体移送室と連絡する流体の吸入口及び吐出口と、前記複数個の軸をそれぞれ独立して回転駆動する複数個のモータと、このモータが収納された空間の圧力を大気圧よりも高くする手段と、前記複数個のモータを同期制御する手段とを備えたことを特徴としたドライ真空ポンプ。
(2)ハウジング内に収納された複数個のロータ及びこれらのロータのそれぞれに設けられた複数個の軸と、これらの軸の回転を支持する軸受と、前記ロータと前記ハウジングにより形成される流体移送室と、前記複数個の軸にそれぞれ設けられ、前記複数個のロータ間の接触を防止する接触防止ギヤと、前記ハウジングに形成され前記流体移送室と連絡する流体の吸入口及び吐出口と、前記複数個の軸をそれぞれ独立して回転駆動する複数個のモータと、このモータの回転を検知するエンコーダと、このエンコーダが収納された空間の圧力を大気圧よりも高くする手段と、前記複数個のモータを同期制御する手段を備えたことを特徴としたドライ真空ポンプ。
(3)圧縮気体を前記モータ及びエンコーダと繋がった空間に供給することにより、この空間と前記流体移送室との間を機械的に非接触でシールするガスパージ手段を備えたことを特徴とする請求項1または2記載のドライ真空ポンプ。
(4)回転軸のロータ側とは反対側の端部に、エンコーダを設けたことを特徴とする請求項2記載のドライ真空ポンプ。
(5)容積式の真空ポンプは、ねじ溝式であることを特徴とする請求項1または2に記載のドライ真空ポンプ。
(6)ハウジング内に収納された複数個のロータ及びこれらのロータのそれぞれに設けられた複数個の軸と、これらの軸の回転を支持する非接触型の軸受と、前記ロータと前記ハウジングにより形成される流体移送室と、前記複数個の軸にそれぞれ設けられ、前記複数個のロータ間の接触を防止する接触防止ギヤと、前記ハウジングに形成され前記流体移送室と連絡する流体の吸入口及び吐出口と、前記複数個の軸をそれぞれ独立して回転駆動する複数個のモータと、このモータを同期制御する手段を備えたことを特徴としたドライ真空ポンプ。」

イ.引用刊行物記載の発明
当審が通知した取消理由に引用した刊行物1(特開昭64-63689号公報)には、第2頁右下欄第12行〜第3頁左下欄第18行「第1の回転体2Aは、筒状のケーシング8 内に複数の軸受9により回転自在に支持された第1の回転軸10Aと、該第1の回転軸10Aの中間部に固定された雄、雌スクリューロータ11A,12Aと、第1の回転軸10Aの雄スクリューロータ11A側の端部に固定された第1のモータロータ15Aとからなり、モータロータ15Aと該モータロー夕15Aに対向してケーシング8内に配設された第1のステータ16Aとにより第1のモ一タ13Aを構成している。
第2の回転体2Bは、ケーシング8内に複数の軸受9により第1の回転軸10Aと平行に、かつ回転自在に支持された第2の回転軸10Bと、該第2の回転軸10Bの中間部に固定され第1の回転体2Aの雄雌スクリューロータ11A、12Aと噛合する雌雄スクリューロータ12B、11Bと、第2の回転軸10Bの雄スクリューロータ11B側の端部に固定された第2のモータロータ15Bとからなり、モータロータ15Bと該モータロータ15Bに対向してケーシング8内に配設さた第2のステータ16Bとにより第2のモータ13Bを構成している。第1、第2の回転軸10A ,10Bの雄スクリューロータ11A,11Bとモータロータ15A,15Bとの間には角度センサの一例であるロータリエンコーダ18A,18Bがそれぞれ固定されている。第1、第2の回転軸10A,10B、雄のスクリューロータ11A,11B、雌のスクリューロータ12A,12B、モータロータ15A,15Bおよびロータリエンコーダ18A,18Bは、それそれ同一寸法、形状、材質であり、これにより第1、第2の回転体2A,2Bの慣性モーメント等が同一になるように設定されている。また第1、第2の回転体2A,2Bの流体の吸込口19A,19Bおよび吐出口20は、それぞれ対称する位置に形成されている。
第1図においてスクリュー流体機械1は、第1、第2の回転体2A,2Bを矢印A,Bの方向に回転させると圧縮機として作動し、また吸込口19と吐出口20の配設位置を逆にして第1、第2の回転体2A,2Bを図中の矢印と逆方向に回転させると真空ポンプとして作動する。
検出回路3は、ロータリエンコーダ18A,18Bにそれぞれ接続された第1および第2の検出回路3A,3Bからなっている。制御回路5は、第1、第2の検出回路3A,3Bと指令回路21にそれぞれ接続されている。駆動回路6は、制御回路5および第1、第2のモータ13A,13Bにそれぞれ接続された第1および第2の駆動回路6A,6Bからなっている。
つぎに、本発明の第1実施例の作用を説明する。ロータリエンコーダ18A,18Bにより第1、第2の回転体2A,2Bの回転角度および回転速度が検出され、その検出信号は第1、第2の検出回路3A,3Bに入力され、それぞれ電気的な信号に変換されて制御回路5に入力される。これらの入力信号から制御回路5は、第1、第2の回転体2A,2B間の回転位相差および回転速度差を求め、また指令回路21にあらかじめ設定された具体的な回転速度を取入れて第1、第2の回転体2A,2Bへの回転速度指令値を決定する。この指令値に従って第1、第2の駆動回路6A,6Bは、第1、第2のモータ13A,13Bに電流を供給して駆動する。これにより回転速度の速いモータが遅く、回転速度の遅いモータが速くなり、第1、第2のモータ13A,13Bが同期回転する。」、第4頁左上欄第12〜18行「第6図および第7図は本発明の第3実施例に係り、第1の回転軸10Aの雄雌スクリューロータ11A,12Aとの間および第2の回転軸10Bの雄雌スクリューロータ11B,12Bとの間に互いに噛合し得る同一歯数の無給油式、例えばプラスチック製のタイミングギヤ23A,23Bが固定されている。」、第4頁右上欄第1〜11行「雄雌スクリューロータ11,12はもちろんタイミングギヤ23A,23Bも定常状態では非接触で回転するが、停電、部品の破壊、緊急停止などを原因とする急激な加減速によって制御が不可能又は不十分となった場合、本実施例によれば、タイミングギヤ23A,23Bが雄雌スクリューロータ11,12に先立って噛合して同期回転を維持するので、雄雌スクリューロータ11,12同志の接触を免れることができ、これにより雄雌スクリューロータ11,12の焼付きなどによる破損を防ぐことができる。」、同頁右上欄第15行〜同頁左下欄第1行「上述のとおり、本発明によれば、雄雌スクリューロータをそれぞれ固定した1組の回転軸に取付けたモータの電気的な制御が容易となり、負荷変動に対しても十分対応することができるので、給油式タイミングギヤによらない同期回転が可能で潤滑油が不要となり、油を全く含まない清浄空気の圧縮が可能となる。」と記載されており、これらの記載と第1〜3、6、7図の記載によれば、刊行物1には、以下のとおりの発明が記載されているものと認められる。
「ケーシング8内に収納された複数個のスクリューロータ11A、11B、12A、12B及びこれらのスクリューロータのそれぞれに締結された複数個の回転軸10A、10Bと、これらの回転軸の回転を支持する軸受9と、前記スクリューロータと前記ケーシングにより形成される流体移送室と、前記複数個の回転軸にそれぞれ設けられ、前記複数個のスクリューロータ間の接触を防止するタイミングギヤ23A、23Bと、前記ケーシングに形成され前記流体移送室と連絡する流体の吸込口19A、19B及び吐出口20と、前記複数個の回転軸をそれぞれ独立して回転駆動する複数個のモータ13A、13Bと、このモータ13A、13Bの回転を検知するロータリーエンコーダ18A、18Bと、前記複数個のモータ13A、13Bを同期回転する手段とを備えた、油を全く含まない清浄空気用の真空ポンプ。」

当審が通知した取消理由に引用した刊行物2(実公昭60-9439号公報)には、第1頁右欄第6行〜第2頁左欄第15行「そこで従来、この様なターボ分子ポンプによって吸気した有害なガスの駆動機構部内への流入を防止する手段として第4図に示す如く構成してなるものがある。すなわち同図のものは、ローター8の下部に内周面11を形成して駆動機構部2の上部外周面6′との間に僅かな寸法の間隙部10′を形成し、更に該駆動機構部2にはポンプ本体13外部と連通してなる注入孔12を設け別途設けてなるガス供給系15より供給される窒素等のパージガスを該注入孔12を通過せしめて該駆動機構部2内へ充填せしめる構成にしてなるもので、該充填せしめたパージガスは駆動機構2内を通過し、更には前記駆動機構部2の上部外周面6とローター8の内周面11とによって形成された間隙部10′をその間隙部10′の寸法が小なる為に流出速度が大となって通過してポンプ本体内空間部16′へ流出する。従って前記パージガスの駆動機構部2内からのポンプ本体内空間部16′への流出作用により、逆にポンプ本体内空間部16′からの駆動機構部2内への有害なガスの流入が妨げられるのである。
しかしながら、この従来のものに於いては、ただ単に駆動機構部内へ充填させたパージガスを寸法を小とした間隙部よりポンプ本体内空間部へ流出させるだけである為、該間隙部による流出速度を大とする作用はそれ程効果が期待できないばかりか、駆動機構部内のパージガス圧力よりもポンプ本体内空間部の圧力が高い場合には、ポンプ本体内空間部から駆動機構部内へのガス流入を全く防止することができない欠点を有するものである。しかも前記ポンプ本体内空間部の圧力はターボ分子ポンプによって吸気・排気するガス量に応じて大きく変化するのである。従って従来に於いては、ポンプ本体内空間部の圧力に影響されず常に駆動機構部内からのパージガスの流出を計るには、常に大量のパージガスを高圧にて駆動機構部へ充填する必要があった。」と記載されており、この記載と第4図の記載によれば、刊行物2には、モータが収納された空間にパージガスを高圧にて充填する技術が記載されている。

刊行物3(特開昭64-15494号公報)には、第2頁右下欄第10行〜第3頁左上欄第19行「ポンプ機構部6と軸受7との間には軸封部9があり、この軸封部9には外部からシールガス供給口10を通ってシールガスが供給される。シールガスとしては、吸込口から流入する気体と反応することのないように、乾燥窒素などを用いる。シールガス供給口10から流入したシールガスは2方向に分かれて流れ、一部はポンプ機構部6へ流入し、吸込口1から流入した気体と一緒に吐出口2から排気され、残りは軸受7を通ってモータ室12に入り、シ ー ルガス排気口11から 排気される 。この、2方向に分かれて流れるシールガスによって、潤滑油がポンプ機構部6に流入するのを防ぐと共に、吸込口1から流入した気体が、モータ室12に流入するのを防止している。
前記シールガス供給口10の上流には、接点付流量計13が設けられており、この流量計を通過するシールガスの流量が減少し、フロート14が接点15の位置に来ると外部に信号を発するため、この信号によって警報を発したり、真空ポンプを停止させたりすることができる。また、シールガス排気口11の下流には、オリフィス16がとりつけられている。
いま、吸込口1から流入する気体中に固形物や、固体化して付着堆積しやすい物質が含まれている場合、吐出口2の付近に異物が付着堆積して吐出口を詰まらせることがある。吐出口2が詰まってくると、その部分の上流側の圧力が上昇し、そこを通過するシールガス量が減少する。その減少する分はモータ室 12に流れるが、オリフイス16があるために、モータ室12の圧力も上昇する。」と記載されており、これらの記載、及び第1図の記載によれば、刊行物3には、モータが収納された空間にシールガス(パージガス)を高圧にて充填する技術が記載されている。

当審が通知した取消理由に引用した刊行物4(実願昭61-88657号(実開昭62-200188号)のマイクロフィルム)には、第5頁第11行〜第7頁第1行「第1図に示した本実施例に係るブロワは、従来と相違して各ロータ(1),(2)の軸端に個別にモータ(17),(18)を連結させて取付けるとともに、各モータ(17),(18)の軸外端にそれぞれの回転角度を検出する検出器(19),(20)を取付けている。そのため各ロ一夕(1),(2)は独立して回転するため従来のようなギヤを必要とせず、ひいてはギヤオイルが不要となって、ギヤオイルのケーシング(3)側への漏れを防止するオイルシールも不要となる。このようにギヤが不要となることから、本実施例ではギヤケースに替えて、閉止板(21)によって内部保護を図っている。一方、検出器(19),(20)はモータケース(13)の端面を境界とした外側に取付けてあり、これら検出器(19),(20)は、カバー(22)をモータケース(13)端面に取付けて保護されている。
以上の構成からも明らかなように、本実施例に係るブロワはギヤ、ギヤオイル及びオイルシールがないためブロワの定期点検の回数を少なくすることができる。そしてギヤに頼っていたロータ(1),(2)の回転は独立したそれぞれのモータ(17),(18)に依存しているため、これらモータ(17),(18)の同期をとる必要がある。この同期をとる役割を果たすものが検出器(19),(20)である。つまり、各検出機器(17),(18)の検出値は、第2 図の構成図にも示したように、比較器(23)に送信され、各信号を受けた比較器(23)は両検出値を比較して、両者間に偏差があれば、これを一方のモータ、本実地例ではモータ(17)に送信してこのモータ(17)の回転数を他方のモータ(18)の回転数に同期させるように補正する。」と記載されており、この記載と第1、2図の記載によれば、刊行物4には、軸4、5のロータ側とは反対側の端部に回転角度を検出する検出器19、20を設ける技術が記載されている。

当審が通知した取消理由に引用した刊行物5(特開平2-283898号公報)には、第2頁左上欄第9行〜同頁右上欄第12行「二つの円筒を接合した断面がダルマ形の静止筒1内に、右ねじ溝2Aと右ねじ山3Aを外周面に有する回転筒A4と、右ねじ構2Bと、右ねじ山3Bを外周面に有する回転筒B7が、相互のねじ溝とねじ山の半径方向すきま8が極力小さくなるよう接近して噛み合わされ、軸心は平行に配置されている。回転筒A4の回転軸A9は、軸受10、軸受11で支持されている。また、前記回転軸A9には、モータの回転子12が設けられ、該回転子12対抗面には、ベース13に組み込まれた固定子14が、設置されている。回転軸B15も回転軸A9と同様に、軸受16、軸受17(図略)で支持されているが、回転筒B7側にはモータを備えていない。回転軸A9の下端には、ギヤA18を装着し、回転軸B15下端にはギヤC22を介して、ギヤA18と同方向、同回転数となるギヤB19を装着している。静止筒1の上端開口部は、 吸込口20で、この先に排気すべき装置が接続し、気体は、吸込口20より下方に押出され吐出口21より排気される。上記構成の分子ポンプにおいて、まず、吐出口21に油回転ポンプ等の補助ポンプを接続して駆動し、ねじ構分子ポンプ本体内の圧力が、分子流領域になるまで粗引きした後、本体を駆動する。」と記載されており、この記載と第1、2、5図の記載によれば、刊行物5には、真空ポンプを、ねじ溝式とする技術が記載されている。

当審が通知した取消理由に引用した刊行物6(特開昭64-41698号公報)には、第2頁左下欄第8〜14行「支承用空気(B1)を支承用空気供給口(08)からターボ分子ポンプ(01)のラジアル気体軸受(04)(06)及びスラスト気体軸受(07)(07)と、回転ポンプ(02)のラジアル気体軸受(09)(011)及びスラスト気体軸受(012)(012)とに送って、ターボ分子ポンプ(01)の回転体(01a)と回転ポンプ(02)の回転体(02a)とを回転可能に支承する。」と記載されており、この記載と第5図の記載によれば、刊行物6には、気体軸受(一般に非接触である)により回転体の軸を支承する技術が記載されている。

当審が通知した取消理由に引用した刊行物7(特開昭61-203688号公報)には、第2頁右下欄第18行〜第3頁右上欄14行「(14)はルーツブロア(8)のガス吸入口、(15)はガス吐出口、(16)はルーツブロア(8)に内蔵されているまゆ形のロータ、(17)はロータ(16)に固着された軸で、磁気軸受(19)によって機械的接触なしに磁気力だけで支承されている。(20)は磁気軸受(19)の磁力を制御する磁気軸受制御回路である。(21)は軸(17)の一端に複数固定された非接触駆動装置の一部を構成する永久磁石リング、(22)は永久磁石リング(21)の内側に配設された非接触駆動装置の一部を構成する電磁コイルで、電磁コイル(22)に電流を流すことにより、軸(17)が回転する。(23)は軸(17)の他端の周囲に配設された位相角を検知する非接触位置センサであるエンコーダである。図示しないが、ルーツブロア(8)内には軸(17)に並列配置されたもう1つのロータ、軸、及び磁気軸受並びにこれらを回転させる電磁コイル、軸に取り付けたエンコーダが設けられている。このため、便宜上、図示のものを第1のロータ(16)、第1の軸(17)、第1の磁気軸受(19)とし、図示しないものを第2のロータ、第2の軸、第2の磁気軸受と称して以後説明する。(24)はコントローラで、第1の軸(17)と第2軸に設けられたエンコーダ(23),(23A)〔第2図参照〕からの信号により、第1のロータ(16)と第2ロータとをクリアランスー定の状態で同期反転するように電磁コイル(22)の電流を制御する。(25)は電磁弁、(26)はボンベ元弁である。
第2図は、ロータの同期反転制御を行うためのブロック図である。(22A)は第2の軸に設けられた電磁コイル、(23A)は第2の軸(17)の位相角を検知するエンコーダ、(30)は各エンコー ダ(23),(23A)の検知した位相角の差を検知する位相角検出器、(31)は位相角検出器(30)の検出した位相角の差と予め設定された位相角の差の基準値とを比較する比較回路、(32)は、比較回路(31)からの検知信号に基づいて電磁コイル(22)への電流を制御する制御回路である。」と記載されており、この記載と第1、2図の記載によれば、刊行物7には、磁気軸受(19)により非接触でロータの軸を支承する技術が記載されている。

当審が通知した取消理由に引用した刊行物8(特開昭61-132797号公報)には、第2頁右上欄第20行〜同頁左下欄第16行「すなわち、本発明は、ターボ分子ポンプの機械室内に駆動軸をガス膜を介して支える気体軸受を設けかつ該気体軸受に供給源から軸受ガスを導入させる流入通路を設けるとともに、前記機械室とターボ分子ポンプのロータ室との境界の駆動軸貫通部に両室を気密に遮断する非接触形のシール機構を設けかつ該シール機構に臨んで機械室内の軸受ガスを排気系に導出させる流出通路を設けたことを特徴としている。
[作用]
このような構成のものであれば、前記流入通路から各気体軸受に供給源から送られる軸受ガスを連続的に導入して供給すると、駆動軸の高速回転時に該駆動軸と気体軸受との間に形成されるガス膜層に駆動軸を浮上支持するのに十分な動圧が発生し、駆動軸を非接触で安定に支えることができるものとなる。」と記載されており、この記載と第1〜7図の記載によれば、刊行物8には、気体軸受によりロータの駆動軸を非接触で支える技術が記載されている。

ウ.請求項1に関して
本件請求項1に係る発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、上記刊行物1記載の発明における、「ケーシング8」、「スクリューロータ11A、11B、12A、12B」、「回転軸10A、10B」、「タイミングギヤ23A、23B」、「吸込口19A、19B」、「同期回転」は、それぞれ本件請求項1に係る発明における、「ハウジング」、「ロータ」、「軸」、「接触防止ギヤ」、「吸入口」、「同期制御」に相当する。また、真空ポンプの技術分野において、一般に「ドライ」という用語は、油等のシールあるいは潤滑用の液を用いないことを意味することは周知である。そして、刊行物1の第4頁右上欄第20行〜同頁左下欄第1行に「油を全く含まない清浄空気の圧縮が可能となる。」の記載からみて、刊行物1記載の発明においても、油等のシールあるいは潤滑用の液を用いていないことは、当業者にとって明らかである。してみると、刊行物1記載の発明における「油を全く含まない清浄空気用の真空ポンプ」は、本件請求項1に係る発明における「ドライ真空ポンプ」に相当する。
したがって、本件請求項1に係る発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「ハウジング内に収納された複数個のロータ及びこれらのロータのそれぞれに設けられた複数個の軸と、これらの軸の回転を支持する軸受と、前記ロータと前記ハウジングにより形成される流体移送室と、前記複数個の軸にそれぞれ設けられ、前記複数個のロータ間の接触を防止する接触防止ギヤと、前記ハウジングに形成され前記流体移送室と連絡する流体の吸入口及び吐出口と、前記複数個の軸をそれぞれ独立して回転駆動する複数個のモータと、前記複数個のモータを同期制御する手段とを備えたドライ真空ポンプ。」である点で一致し、本件請求項1に係る発明は、モータが収納された空間の圧力を大気圧よりも高くする手段を有しているのに対し、上記刊行物1記載の発明では、モータ13A、13Bが収納された空間の圧力状態は明かでない点で相違する。
この相違点について検討すると、上記刊行物2、3には、モータが収納された空間にパージガスを高圧にて充填する技術が記載されている。そして、上記刊行物1に記載される発明と上記刊行物2、3に記載される技術とは、真空ポンプという同一の技術分野に属するものであるから、上記刊行物1に記載される発明に上記刊行物2、3に記載される技術を適用することは、当業者が容易に想到しうることである。そして、その際にパージガスの充填圧を大気圧よりも高くすることは、真空ポンプの使用状態を勘案して、当業者が設計において適宜行う程度のことである(この点に関しては、異議申立人 スターリング フルイド システムズ ゲーエムベーハーの提出した異議申立書第19頁第15行〜第22頁第6行「本件特許掲載公報の・・・ものと認められる。」の記載参照)。したがって、本件請求項1に係る発明の上記相違点のように構成することは、当業者が必要に応じて容易になしうることであり、それによる効果も格別のものとはいえない。
したがって、本件請求項1に係る発明は上記刊行物1、2、3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

エ.請求項2に関して
本件請求項2に係る発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、上記刊行物1記載の発明における、「ケーシング」、「スクリューロータ11A、11B、12A、12B」、「回転軸10A、10B」、「タイミングギヤ23A、23B」、「吸込口19A、19B」、「ロータリーエンコーダ18A、18B」、「同期回転」、「油を全く含まない清浄空気用の真空ポンプ」は、それぞれ本件請求項2に係る発明における、「ハウジング」、「ロータ」、「軸」、「接触防止ギヤ」、「吸入口」、「エンコーダ」、「同期制御」、「ドライ真空ポンプ」に相当する。
したがって、本件請求項2に係る発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「ハウジング内に収納された複数個のロータ及びこれらのロータのそれぞれに設けられた複数個の軸と、これらの軸の回転を支持する軸受と、前記ロータと前記ハウジングにより形成される流体移送室と、前記複数個の軸にそれぞれ設けられ、前記複数個のロータ間の接触を防止する接触防止ギヤと、前記ハウジングに形成され前記流体移送室と連絡する流体の吸入口及び吐出口と、前記複数個の軸をそれぞれ独立して回転駆動する複数個のモータと、このモータの回転を検知するエンコーダと、前記複数個のモータを同期制御する手段を備えたドライ真空ポンプ。」である点で一致し、本件請求項2に係る発明は、エンコーダが収納された空間の圧力を大気圧よりも高くする手段を有しているのに対し、上記刊行物1記載の発明では、エンコーダが収納された空間の圧力状態は明かでない点で相違する。
この相違点について検討すると、上記刊行物2、3には、モータが収納された空間にパージガスを高圧にて充填する技術が記載されている。そして、上記刊行物1に記載される発明と上記刊行物2、3に記載される技術とは、真空ポンプという同一の技術分野に属するものであるから、上記刊行物1に記載される発明に上記刊行物2、3に記載される技術を適用することは、当業者が容易に想到しうることである。そして、ロータリーエンコーダ18A、18Bは制御用の機器であって汚染を嫌うことが容易に予測できるとともに、モータに近接して配置されることから、上記刊行物1に記載される発明に刊行物2、3に記載される技術を適用する際に、モータ13A、13Bが収納された空間だけでなく、ロータリーエンコーダ18A、18Bが収納された空間にもパージガスを高圧にて充填するようにすることも、当業者が容易に想到しうることである。そして、その際にパージガスの充填圧を大気圧よりも高くすることは、真空ポンプの使用状態を勘案して、当業者が設計において適宜行う程度のことである(この点に関しては、異議申立人 スターリング フルイド システムズ ゲーエムベーハーの提出した異議申立書第23頁第17行〜第25頁第6行「本件特許掲載公報の・・・見出せない。」の記載参照)。したがって、本件請求項2に係る発明の上記相違点のように構成することは、当業者が必要に応じて容易になしうることであり、それによる効果も格別のものとはいえない。
したがって、本件請求項2に係る発明は上記刊行物1、2、3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項2に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

オ.請求項3に関して
本件請求項3に係る発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、本件請求項3に係る発明は、圧縮気体をモータ及びエンコーダと繋がった空間に供給することにより、この空間と流体移送室との間を機械的に非接触でシールするガスパージ手段を備えたものであるのに対し、上記刊行物1記載の発明では、モータ13A、13B、ロータリエンコーダ18A、18Bが収納された空間がガスパージされているかどうか明かでない点で相違する。
この相違点について検討すると、「ウ.請求項1に関して」、「エ.請求項2に関して」の項で検討したように、モータ13A、13Bが収納された空間、ロータリエンコーダ18A、18Bが収納された空間にパージガスを供給することは、当業者が容易に想到しうることであるから、請求項3に係る発明の上記相違点のように構成することは、当業者が必要に応じて容易になしうることであり、それによる効果も格別のものとはいえない。
したがって、本件請求項3に係る発明は上記刊行物1、2、3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項3に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

カ.請求項4に関して
本件請求項4に係る発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、「エ.請求項2に関して」において検討した相違点の他、本件請求項4に係る発明は、回転軸のロータ側とは反対側の端部に、エンコーダを設けたものであるのに対し、上記刊行物1記載の発明では、ロータリエンコーダ18A、18Bは、そのように配置されていない点で相違する。
この相違点について検討すると、上記刊行物4には、軸4、5のロータ側とは反対側の端部に回転角度を検出する検出器19、20を設ける技術が記載されている。そして、上記刊行物1に記載される発明と上記刊行物4に記載される技術とは、気体ポンプという同一の技術分野に属するものであるから、上記刊行物1に記載される発明に上記刊行物4に記載される技術を適用して、請求項4に係る発明の上記相違点のように構成することは、当業者が容易に想到しうることであり、それによる効果も格別のものとはいえない。
したがって、請求項4に係る発明は上記刊行物1、2、3、4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項4に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

キ.請求項5に関して
本件請求項5に係る発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、「ウ.請求項1に関して」において検討した相違点の他、本件請求項5に係る発明において、真空ポンプはねじ溝式であるのに対し、上記刊行物1記載の発明では、スクリュー式であり、ねじ溝式と認められるものの、表現上で相違する。この点についてさらに検討するに、上記刊行物5には、真空ポンプを、ねじ溝式とする技術が明記されているので、上記刊行物1に記載される発明における真空ポンプをねじ溝式とすることは、当業者が設計において適宜行う程度のことであり、それによる効果も格別のものとはいえない。
したがって、本件請求項5に係る発明は上記刊行物1、2、3、5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項5に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

ク.請求項6に関して
本件請求項6に係る発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、上記刊行物1記載の発明における、「ケーシング8」、「スクリューロータ11A、11B、12A、12B」、「回転軸10A、10B」、「タイミングギヤ23A、23B」、「吸込口19A、19B」、「同期回転」、「油を全く含まない清浄空気用の真空ポンプ」は、それぞれ本件請求項6に係る発明における、「ハウジング」、「ロータ」、「軸」、「接触防止ギヤ」、「吸入口」、「同期制御」、「ドライ真空ポンプ」に相当する。
したがって、本件請求項6に係る発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、両者は、「ハウジング内に収納された複数個のロータ及びこれらのロータのそれぞれに設けられた複数個の軸と、これらの軸の回転を支持する軸受と、前記ロータと前記ハウジングにより形成される流体移送室と、前記複数個の軸にそれぞれ設けられ、前記複数個のロータ間の接触を防止する接触防止ギヤと、前記ハウジングに形成され前記流体移送室と連絡する流体の吸入口及び吐出口と、前記複数個の軸をそれぞれ独立して回転駆動する複数個のモータと、このモータを同期制御する手段を備えたドライ真空ポンプ。」である点で一致し、本件請求項6に係る発明において、軸の回転を支持する軸受が非接触型であるのに対し、上記刊行物1記載の発明では、軸受が非接触型かどうか明かでない点で相違する。
この相違点について検討すると、軸の回転を支持する軸受を非接触型とすることは、上記刊行物6、7、8に記載されるように真空ポンプ等の技術分野において慣用手段であり、上記刊行物1に記載される発明に上記慣用手段を適用して、本件請求項6に係る発明の上記相違点のように構成することは、当業者が容易に想到しうることであり、それによる効果も格別のものとはいえない。
したがって、本件請求項6に係る発明は上記刊行物1に記載された発明、及び上記刊行物6、7、8に記載された慣用手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項6に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。

ケ.むすび
以上のとおりであるから、本件請求項1〜6に係る発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認める。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
真空ポンプ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 ハウジング内に収納された複数個のロータ及びこれらのロータのそれぞれに設けられた複数個の軸と、これらの軸の回転を支持する軸受と、前記ロータと前記ハウジングにより形成される流体移送室と、前記複数個の軸にそれぞれ設けられ、前記複数個のロータ間の接触を防止する接触防止ギヤと、前記ハウジングに形成され前記流体移送室と連絡する流体の吸入口及び吐出口と、前記複数個の軸をそれぞれ独立して回転駆動する複数個のモータと、このモータが収納された空間の圧力を大気圧よりも高くする手段と、前記複数個のモータを同期制御する手段とを備えたことを特徴としたドライ真空ポンプ。
【請求項2】 ハウジング内に収納された複数個のロータ及びこれらのロータのそれぞれに設けられた複数個の軸と、これらの軸の回転を支持する軸受と、前記ロータと前記ハウジングにより形成される流体移送室と、前記複数個の軸にそれぞれ設けられ、前記複数個のロータ間の接触を防止する接触防止ギヤと、前記ハウジングに形成され前記流体移送室と連絡する流体の吸入口及び吐出口と、前記複数個の軸をそれぞれ独立して回転駆動する複数個のモータと、このモータの回転を検知するエンコーダと、このエンコーダが収納された空間の圧力を大気圧よりも高くする手段と、前記複数個のモータを同期制御する手段を備えたことを特徴としたドライ真空ポンプ。
【請求項3】 圧縮気体を前記モータ及びエンコーダと繋がった空間に供給することにより、この空間と前記流体移送室との間を機械的に非接触でシールするガスパージ手段を備えたことを特徴とする請求項1または2記載のドライ真空ポンプ。
【請求項4】 回転軸のロータ側とは反対側の端部に、エンコーダを設けたことを特徴とする請求項2記載のドライ真空ポンプ。
【請求項5】 容積式の真空ポンプは、ねじ溝式であることを特徴とする請求項1または2に記載のドライ真空ポンプ。
【請求項6】 ハウジング内に収納された複数個のロータ及びこれらのロータのそれぞれに設けられた複数個の軸と、これらの軸の回転を支持する非接触型の軸受と、前記ロータと前記ハウジングにより形成される流体移送室と、前記複数個の軸にそれぞれ設けられ、前記複数個のロータ間の接触を防止する接触防止ギヤと、前記ハウジングに形成され前記流体移送室と連絡する流体の吸入口及び吐出口と、前記複数個の軸をそれぞれ独立して回転駆動する複数個のモータと、このモータを同期制御する手段を備えたことを特徴としたドライ真空ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体製造設備等に用いられるドライ真空ポンプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体の製造プロセスにおけるCVD装置、ドライエッチング装置、スパッタ装置などには、真空環境を作り出すための真空ポンプが不可欠である。この真空ポンプに対する要望は、半導体プロセスの高集積化、微細化に対応するため、近年ますます高度になってきており、その主な内容は、高い真空到達圧が得られること、クリーンであること、メンテナンスが容易なこと、小型・コンパクトであること等である。 以上の半導体設備の真空排気系の要請に応えるため、従来から用いられていた油回転ポンプに代わり、より清浄な真空を得ることを目的として、粗引き用のドライ真空ポンプが広く用いられるようになっている。
【0003】
図11は、従来の容積型真空ポンプ(粗引きポンプ)の一種であるねじ溝式(スクリュー式の一種)のドライ真空ポンプを示すものである。同図において、101はハウジング、102は第一回転軸、103は第2回転軸、104と105はそれぞれ回転軸102、103に締結された筒型ロータである。この真空ポンプは、ハウジング101内に第一回転軸102と第2回転軸103が平行に配置され、その軸上にロータ104と105を備えている。それぞれのロータ104と105の外周部には、ねじ溝106と107が形成されていて、自ら(106または107)の凹部(溝)を相手(107または106)の凸部(山)と噛み合わせることにより、両者の問で密閉空間を作り出している。ロータ104と105が回転すると、その回転に伴い、前記密閉空間が吸入側から吐出側へ移動して吸入作用と吐出作用を行うのである。
【0004】
さて、同図のねじ溝式の真空ポンプでは、2個のロータ104、105の同期回転はタイミングギヤ110a、110bの働きによっている。すなわち、モータ108の回転は、駆動ギヤ109aから中間ギヤ109bに伝達され、両ロータ104、105の軸に設けられて互いに噛み合っているタイミングギヤの一方110bに伝達される。両ロータ104、105の回転角の位相は、これら2個のタイミングギヤ110a、110bの噛み合いにより調節されている。 また113a、b及び114a、bは、第一回転軸102、第2回転軸103を支持するころがり軸受である。
【0005】
駆動ギヤ109bの端部にはオイルポンプ115が組み込まれている。潤滑のためのオイル117は、ポンプ最下部のオイルパン116からオイルポンプ115により吸い込まれ、オイルフィルターを経由して、軸受と前記ギヤに供給されている。119はメカニカルシールであり、オイル117がねじ溝ロータを収納する流体移送室120に流出しないように、また逆に、流体移送室120内で輸送される反応性ガスが前記軸受、オイルが収納された空間に侵入しないように設けられるものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし従来のドライ真空ポンプを反応性ガスを用いる半導体プロセスに適用したとき、次のような課題があった。
【0007】
ドライポンプは、作動室内で油を使用しないため、油とガスとの反応が生じないという点で、油回転ポンプよりは信頼性が高い。しかし反面、ロータ、ハウジング等が油の皮膜なく直接活性ガスや反応性生成物に晒されることになり、この点に関しては、ドライポンプは油回転ポンプよりも条件はむしろ苛酷といえる。半導体プロセスでは、アルミニウム・プラズマエッチングやシリコン窒化膜生成プロセスが真空ポンプにとって、最も苛酷なプロセスといわれている。これらのプロセスでは、それぞれ反応生成物として多量の塩化アルミニウム(AlCl3)、塩化アンモニウム(NH4Cl)を生ずる。これらの物質は高温低圧の反応室の中では気体であるが、比較的低温の真空配管やポンプの内部で凝縮して固体となる。真空ポンプの中で反応生成物が堆積すると、ロータとハウジング(ケーシング)が固着しポンプの運転ができなくなる。たとえば、前述したねじ溝式ドライポンプの場合、高圧である排気側のねじ溝部分で反応性生成物が堆積しやすくなる。2つのねじ溝ロータ104,105が噛み合う部分、あるいはロータとハウジング101の間は、通常数十ミクロンのギャップが保てるように構成されている。しかし、ねじ溝内部に反応性生成物が堆積すると、この種のポンプでは、堆積物が排除される機構を持たないために、両ロータ間に接触が生じ、たちまち運転不能に陥るなどのトラブルが発生する。
【0008】
両ロータ間あるいはロータとハウジング間のギャップを拡大すれば、ポンプ内部での反応性生成物の堆積作用をかなり押さえられることが既に確認されている。しかし上記ギャップのシールに油膜を利用できないドライポンプでは、ギャップを極力小さくすることによる気体の粘性抵抗にシール効果を頼らざるをえず、ギャップの拡大には限界があった。ギャップの拡大によって、内部リークが増大して粗引きポンプの基本性能(真空到達圧)に大きな悪影響を与えてしまうのである。
【0009】
内部リークの影響を極力減らすために、真空ポンプの高速化を図った場合、流体移送室とモータ等が収納された空間の間をシールするために通常用いられるメカニカルシール部119に次の様な課題が生じる。すなわち、機械的な摺動摩擦を伴うメカニカルシール部の発熱の増大とシール寿命の低下、トルクアップ、等が問題点となる。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明にかかるドライ真空ポンプは、ハウジング内に収納された複数個のロータ及びこれらのロータのそれぞれに設けられた複数個の軸と、これらの軸の回転を支持する軸受と、前記ロータと前記ハウジングにより形成される流体移送室と、前記複数個の軸にそれぞれ設けられ、前記複数個のロータ間の接触を防止する接触防止ギヤと、前記ハウジングに形成され前記流体移送室と連絡する流体の吸入口及び吐出口と、前記複数個の軸をそれぞれ独立して回転駆動する複数個のモータと、このモータが収納された空間の圧力を大気圧よりも高くする手段と、前記複数個のモータを同期制御する手段を備えたことを特徴とした真空ポンプを構成したものである。
【0011】
容積式ポンプを構成する各ロータを、それぞれ独立したモータで同期運転することにより、従来のタイミングギヤを用いたロータ間の大きなトルク伝達が不要となる。その結果、ポンプの高速化を妨げていた課題の一つが解消される。
【0012】
さらに前記モータの回転を検知する検出手段として高分解能で高精度のエンコーダを用いれば、このエンコーダからの信号により前記複数個のモータの回転を電子制御を用いて同期運転することによって、さらなる高速化が図れる。
【0013】
従来数千rpmが限界だった粗引き用真空ポンプの回転数を、たとえば1万rpm以上にまで上げることにより、真空ポンプの基本性能(真空到達圧)を大幅に向上できる。あるいは、両ロータ間あるいはロータとハウジング(ケーシング)間のギャップを大きくしても真空ポンプの基本性能を維持できる。後者の効果を利用すれば、ギャップの拡大によって、反応性生成物の堆積作用を押さえることが出来る。その理由は、ポンプの一行程中の内部漏れの総量は、ポンプの一行程に要する時間に比例するからで、回転数のアップにより内部漏れが性能に与える影響を低減できるからである。
【0014】
しかし粗引き用真空ポンプの高速化を図った場合、流体移送室とモータ等が収納された空間の間をシールするために、通常用いられるメカニカルシール部に次の様な課題が生じる。すなわち、機械的な摺動摩擦を伴うメカニカルシール部の発熱の増大とシール寿命の低下、トルクアップ、等が問題点となる。メカニカルシールを用いる代わりに、機械的な摺動を伴わない非接触のシール方法として、モータなどが収納された空間の圧力を大気圧よりも高くする方法、たとえばガスパージ手段を用いれば上記高速回転化のネックの一つは解消される。その結果、電子式同期制御の特徴を活かして一層の高速化が図れるようになる。
【0015】
また反応性ガスを取り扱う半導体用プロセスに、本真空ポンプを適用したときの特有の課題、すなわち、センサー、回転円盤などの部材から構成される精緻な構造を持つエンコーダが収納された空間に、腐食性ガスが侵入することによる致命的なトラブルが懸念される。この場合、クリーンな圧縮気体を上記エンコーダが収納された空間に繋がった部分に供給してエンコーダ収納空間の圧力を高めることにより、反応性ガスの侵入を防止できる。
【0016】
このエンコーダを、ロータが締結される側とは反対側の回転軸の端面に装着すれば、モータ、エンコーダを収納する空間が汚染源(流体移送室)に繋がる部分から最も遠方に配置できる。
【0017】
またこの発明を適用する真空ポンプの形態として、ロータの外周部にねじ溝を備えたものにすると、ねじ溝型ロータは、回転中心軸に垂直な断面が比較的円形に近く、外周部の近くまで空洞にすることができる。この内部空間を利用して、スリーブ状ロータの内面と軸受等が収納される固定スリーブの外面の間隙部に、非接触の上記ガスパージの流路を形成する。この流路は充分に長く形成できるため、十分なシール効果が得られる。また回転軸の軸長を増さなくてすむため、高速化に支障をきたさない。
【0018】
また回転軸を支持する軸受に静圧軸受、磁気軸受などの非接触型軸受を用いれば、完全なオイルフリーに加えて機械的な接触・摺動部分がすべてなくなるため、玉軸受を用いる場合と比べて、さらなる高速化を図ることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は、この発明にかかる容積式ドライ真空ポンプ(粗引きポンプ)の一実施例を示す。
【0020】
この真空ポンプは、ハウジング1内に、第一回転軸2と第2回転軸3をそれぞれ鉛直方向に収納した第一軸受室4と第2軸受室5を備えている。また筒形のロータ6、7が、両回転軸2,3の上端部でかん合されている。ロータ6,7の外周面には、互いに噛み合うようにして、ねじ溝(スクリュー溝の一種)8、9が形成されている。ロータ6,7の上部(上流側)のハウジング1に吸気口10、下部(下流側)のハウジング1に吐出口11が設けられている。ロータ6,7に形成された両ねじ溝の互いに噛み合う部分である凸部(山部)と凹部(溝部)およびハウジング1で形成される空間(流体移送室50と呼ぶ)が、両回転軸2,3の回転に伴い前記吸気口10側から前記吐出口11側へ移動し、この空間の移動により、容積式ポンプとしての吸入・排気(吐出)作用が得られる。
【0021】
第1回転軸2と第2回転軸3は、非接触の静圧軸受で支持されている。両回転軸に設けられた円盤状のスラスト軸受12、13と対向する固定側に、オリフィス14a、14b、15a、15bが設けられている。16,17は上部ラジアル軸受の回転側、18,19は下部ラジアル軸受の固定側である。スラスト軸受同様に、これらのラジアル軸受面と対向する固定側にも、それぞれにオリフィス20〜23が設けられている。
【0022】
なお上部ラジアル軸受16及び17は、筒状に形成されたロータの内部空間を利用して配置されており、大きな慣性負荷を有するロータ6,7を支持する上で有利な構成となっている。
【0023】
上述したオリフィスには、外部から高圧の圧縮気体が吸気孔24を経て供給される。ここで圧縮気体として、半導体工場等で常備されているクリーンな窒素ガスを用いれば、前記モータ等が収納された第一、第二軸受室4,5に繋がる内部空間25,26内の圧力を大気圧よりも高くすることができる。そのため、腐食性があり堆積物を生じ易い反応性ガスの内部空間25,26内への侵入を防止することができる。
【0024】
なお、軸受に玉軸受を用いて、かつその潤滑のために潤滑油を用いる場合は、窒素ガスを用いたガスパージ機構により、前記流体作動室への潤滑油の侵入を防ぐことができる。
【0025】
また、回転軸を支持する軸受は、静圧軸受以外の非接触型の軸受としては、たとえば磁気軸受でもよい。この場合でも、静圧軸受同様に高速回転が容易で、完全オイルフリーな構成となる。
【0026】
27a、28aはACサーボモータの回転側であるモータロータ、27b,28bは固定側であるモータステータである。
【0027】
実施例の真空ポンプでは、各ロータ6,7の下端部に直結した形で、図2に示すようなロータ同士の接触を防止するための接触防止ギヤ29,30が設けられている。この構成が可能なのは、実施例の真空ポンプでは非接触同期制御を用いるため、従来のドライポンプのようなタイミングギヤ部への油潤滑が不要であり、ギヤ部を前記流体作動室に配置できるからである。本構成により回転軸の軸長を短くできるため、高速化を図る上で一層有利となる。なおこの接触防止ギヤには、多少の金属間接触にも耐えられるように、固体潤滑膜が形成されている。
【0028】
第一回転軸2、第二回転軸3は、ACサーボモータ27,28により、実施例では数万rpmの高速で回転する。両軸の回転信号は、前記吸気口側とは反対側の各回転軸2,3の下端部に設けられたロータリエンコーダ31,32により検出される。
【0029】
さて本実施例における2つの回転軸の同期制御は、図3のブロック図で示す方法を用いた。すなわち、ロータリエンコーダ31,32からの出力パルスは、仮想の回転ロータを想定して設定された設定司令パルス(目標値)と照合される。目標値と各エンコーダー31,32からの出力値(回転数、回転角度)との間の偏差は、位相差カウンターにより演算処理され、この偏差を消去するように各軸の前記サーボモータの回転が制御される。
【0030】
ロータリエンコーダとしては、磁気式エンコーダや一般的な光学式エンコーダでもよいが、実施例ではレーザ光の回折・干渉を利用した高分解能でかつ高速の応答性を持つレーザ式エンコーダを用いた。図4にそのレーザ式エンコーダの一例を示す。
【0031】
同図において、91は多数のスリットが円周状に沿って形成された移動スリット盤であって、回転軸2,3とともに回転する。93は移動スリット盤91に対面する個所に配置された扇形の固定スリット盤である。レーザダイオード94から出たレーザ光は、コリメータレンズ95を経て、前記両スリット盤91,93の各スリットを通過して、受光素子96に受光される。
【0032】
なお実施例では、このエンコーダをモータ、エンコーダが収納された空間が流体移送室に繋がる部分から最も遠方の密封端、すなわち回転軸の端面に配置することにより、反応性ガスからの汚染防止を図っている。
【0033】
本発明では、径小モータが回転軸にダイレクトにビルトインされた形で、回転軸を直接駆動できるため、動的安定性の点で有利である。すなわち実施例の真空ポンプは、互いに機械的に干渉しない2つの単軸スピンドルが並列に配置されたものと考えてよく、従来の単軸で片持ち支持構造のターボ分子ポンプが数万回転の高速化を図ることができるように、基本的に高速化に有利である。
【0034】
なお、実施例のドライ真空ポンプでは、ロータの外周部にねじ溝を備えたスクリュー式の一種であるねじ溝式を採用した。ねじ溝型ロータは、回転中心軸に垂直な断面が比較的円形に近く、外周部の近くまで空洞にすることができ、そのためロータの内部空間が大きくとれる。この内部空間(図1のAA)を実施例のごとくガスパージ部と軸受部を収納する等の利用をすれば、片持ち支持構造であっても、回転軸の軸長を短くできるためポンプの高速化に有利となる。すなわち複数モータによる同期制御の特徴(高速化)を活かし、かつクリーン化を図る上で有利な構成となる。
【0035】
接触防止ギヤ29,30の互いに噛み合う部分の隙間(バックラッシュ)δ2は、両ロータ6,7に形成された前記ねじ溝同士が噛み合う部分の隙間(バックラッシュ)δ1よりも小さくなるように設計されている。そのため、接触防止ギヤ29,30は、両回転軸2,3の同期回転が円滑に行われているときは互いに接触することはない。万一、この同期がずれたときは、ねじ溝8、9同士の接触に先立って、ギヤ29,30同士が接触することにより、ねじ溝8,9の接触・衝突を防止する働きをする。このとき、バックラッシュδ1、δ2が微小であると、部材の加工精度が実用的なレベルで得られないという点が懸念される。しかし、ポンプの一行程中の流体の漏れ総量は、ポンプの一行程に要する時間に比例するため、非接触同期制御により高速回転が図れる実施例の真空ポンプでは、ねじ溝8,9間のバックラッシュδ1を少々大きくしても充分に真空ポンプの性能(到達真空圧など)を維持できる。そのため、実用レベルの通常の加工精度で、ねじ溝8,9の衝突防止に必要なバックラッシュδ1、δ2の寸法を確保できる。
【0036】
図5は、この発明にかかる真空ポンプの別形態を示す。この例では、ロータ外周面に形成されたねじ溝60,61が互いに噛み合うように、2個のロータ62,63が配置されて、ねじ溝60,61とハウジング64により容積式真空ポンプ構造部分Aを構成している。
【0037】
またロータ62の同軸上で、前記容積式真空ポンプ構造部分Aから離れた上流側のロータ外周面に、ねじ溝65が形成されており、このねじ溝65とハウジング64により、運動量移送式構造部分Bを構成している。ねじ溝65とハウジング64の微小な間隙部にある気体分子は、ロータ62の高速回転により回転運動量を与えられて、前記構造部分Aに輸送される。
【0038】
前記運動量移送式構造部分Bに形成したねじ溝65の代わりに、タービン翼を形成しハウジング1の内周部にも形成したタービン翼と噛み合う構成でもよい。真空ポンプを上述したように構成すれば、真空圧の作動領域を広げることができる。
【0039】
本発明を適用できる回転部のロータ200の形態としては、ルーツ型(図6)、歯車型(図7)、単ローべ型(図8(a))、複ローべ型(図8(b))、ネジ型(図9)、外円周ピストン型(図10)等であってもよい。
【0040】
また第一の実施例で説明したように、回転軸を支持する軸受に静圧軸受、磁気軸受などの非接触型軸受を用いれば、完全なオイルフリーに加えて機械的な接触・摺動部分がすべてなくなるため、玉軸受を用いる場合と比べて、さらなる高速化を図ることができる。
【0041】
【発明の効果】
容積式ドライ真空ポンプを構成する各ロータを、それぞれ独立したモータで高速同期運転させる。従来数千rpmが限界だったドライポンプの回転数を、たとえば数倍の1万rpm以上にアップさせれば、ポンプ一行程中の内部漏れ総量が低減するため、ポンプの基本性能(真空到達圧)の大幅な向上がはかれる。あるいは同一性能のままで、ロータとケーシング間のギャップを拡大できる。後者の効果を利用すれば、上記ギャップ部分での反応性生成物の堆積作用を押さえられるため、ドライポンプとしての信頼性向上が図れる。
【0042】
またモータ、エンコーダが収納された空間にクリーンな圧縮気体を供給するガスパージ手段により、機械的摺動を伴うメカニカルシールを省略できる。その結果、高速回転のネックが解消されるため、電子制御による同期運転を用いて一層の高速化を図ることが出来るようになる。また精緻な構造を持つエンコーダの反応性ガスによる汚染も、ガスパージ手段によって防止できる。
【0043】
またこのエンコーダを、ロータが締結される側とは反対側の回転軸の端面に装着することにより、モータ、エンコーダを収納する空間が汚染源(流体移送室)に繋がる部分から最も遠方に配置できる。
【0044】
この発明を適用する真空ポンプとして、ロータの外周部にねじ溝を備えたものにすると、ねじ溝型ロータは、ギヤ型、ルーツ型、ローべ型のような凹凸の振幅が大きい異形ロータとは異なり、回転中心軸に垂直な断面が比較的円形に近く、外周部の近くまで空洞にすることができる。この内部空間を利用して、スリーブ状ロータの内面と軸受等が収納される固定スリーブの外面の間隙部に、非接触のガスパージの流路を形成する。この流路は充分に長く形成できるため、十分なシール効果が得られる。また回転軸の軸長を増さなくてすむため、高速化に支障をきたさない。
【図面の簡単な説明】
【図1】
(a)はこの発明にかかるドライ真空ポンプの第1実施例を示す断面図
(b)は同ハウジングの一部側面図
【図2】
第1実施例における接触防止ギヤの平面図
【図3】
第1実施例における電子式同期制御の方法を示すブロック図
【図4】
第1実施例におけるレーザ式エンコーダを示す斜視図
【図5】
本発明の第2実施例における側面図
【図6】
本発明が適用できるポンプの形態図
【図7】
本発明が適用できるポンプの形態図
【図8】
本発明が適用できるポンプの形態図
【図9】
本発明が適用できるポンプの形態図
【図10】
本発明が適用できるポンプの形態図
【図11】
従来のドライ真空ポンプの側面図
【符号の説明】
1 ハウジング
2,3 軸
6,7 ロータ
10 吸気口
11 吐出口
27,28 モータ
50 流体移送室
 
訂正の要旨 (訂正の要旨)
(1)訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1〜6の「真空ポンプ」を、特許請求の範囲の減縮を目的として、「ドライ真空ポンプ」に訂正する。
(2)訂正事項b
上記訂正事項aに伴って、発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲の記載に整合させるために、明瞭でない記載の釈明を目的として、願書に添付した明細書の「真空ポンプ」(同公報第2頁左欄第20行、同第3頁左欄第18行、同第3頁右欄第43行、同第4頁右欄第40行、同第5頁左欄第49行、同第5頁右欄第34行、及び同第5頁右欄第48行参照)を、「ドライ真空ポンプ」に訂正する。
異議決定日 2001-05-28 
出願番号 特願平9-324095
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (F04C)
最終処分 取消  
前審関与審査官 田良島 潔鈴木 貴雄藤井 眞吾  
特許庁審判長 西野 健二
特許庁審判官 飯塚 直樹
田村 嘉章
登録日 1999-10-29 
登録番号 特許第2996223号(P2996223)
権利者 松下電器産業株式会社
発明の名称 真空ポンプ  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 坂口 智康  
代理人 坂口 智康  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 飯田 房雄  
代理人 山田 行一  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 長谷川 芳樹  

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