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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C09D
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  C09D
審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備  C09D
審判 全部申し立て 2項進歩性  C09D
管理番号 1053149
異議申立番号 異議2001-70975  
総通号数 27 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1994-04-26 
種別 異議の決定 
異議申立日 2001-04-02 
確定日 2001-10-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3094118号「コーティング用水分散体」の請求項1及び2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3094118号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3094118号の請求項1及び2に係る発明についての出願は、平成4年10月6日に出願され、平成12年8月4日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、梅田敏之及び東レ株式会社より特許異議の申立てがなされ、取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年8月28日に訂正請求がなされたものである。

II.訂正の適否
1.訂正事項
訂正事項a:特許請求の範囲の請求項1記載の「・・・コーティング用水分散体。」を「・・・プラスチック基材のコーティング用に用いるコーティング用水分散体。」と訂正する。
訂正事項b:特許請求の範囲の請求項2を削除する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
特許明細書の請求項2には、「プラスチック基材のコーティング用に用いる請求項1の水分散体」と記載されていることから、上記訂正事項aは、特許明細書に記載された事項の範囲内において、コーティング用水分散体のコーティング対象の基材をプラスチック基材に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当するものであり、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
上記訂正事項bの訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議の申立てについての判断
1.本件発明
上記II.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「(a)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート3〜20重量%(b)アルキル(メタ)アクリレート40〜96.9重量%(c)エチレン性不飽和カルボン酸0.1〜10重量%(d)その他共重合可能なエチレン性不飽和単量体0〜56.9重量%からなる単量体(イ)、(ただし(a)+(b)+(c)+(d)=100重量%)を、上記単量体成分の合計を100重量部としたとき、0.1〜10重量部の量の反応性乳化剤(ロ)の存在下で乳化重合して得られる共重合体の水分散体であり、かつ前記共重合体のガラス転移温度が0℃以上であり、平均粒子径が200nm以下であることを特徴とするプラスチック基材のコーティング用に用いるコーティング用水分散体。」

2.申立理由の概要
(1)異議申立人梅田敏之(以下、「申立人1」という)は、証拠として、甲第1号証(特開平3-76765号公報)、甲第2号証(特開平4-170402号公報)、甲第3号証(特開昭62-177007号公報)、甲第4号証(「反応性モノマーの新展開」株式会社シーエムシー 1988年4月12日発行 11頁〜13頁)、甲第5号証(特開平6-179726号公報)、甲第6号証(特開昭63-286471号公報)、甲第7号証(特開昭63-260855号公報)を提示し、参考資料1において甲第2〜3号証のTgの計算式を示して、訂正前の本件の請求項1及び2に係る発明は、甲第1〜7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、また、訂正前の本件の請求項1及び2に係る発明の特許は、その明細書の記載が特許法第36条第4項及び第5項の規定に適合していない出願に対してされたものであり取り消されるべき旨主張している。
(2)異議申立人東レ株式会社(以下、「申立人2」という)は、証拠として、甲第1号証(特開平3-192166号公報)、甲第2号証(特開平3-128978号公報)、甲第3号証(「高機能塗料材料の開発」株式会社シーエムシー 1985年8月26日発行 262〜267頁)を提示し、訂正前の本件の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であり、また、訂正前の本件の請求項1及び2に係る発明は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、その特許は、特許法第29条の規定に違反してされたものであり取り消されるべき旨主張している。

3.引用刊行物に記載の発明
当審の取消理由で引用した刊行物1(申立人1が提出の甲第1号証)には、「不飽和カルボン酸を0.1〜10重量%含む(メタ)アクリル酸アルキルエステル系モノマーを、反応性乳化剤の存在下に乳化重合して得られる(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体の水分散性樹脂組成物からなり、前記共重合体のガラス転移温度が重量分率法で計算して20℃以上であり、且つ前記水分散性樹脂の平均粒子径が200nm以下であることを特徴とする防錆塗料用水分散性樹脂組成物。」(特許請求の範囲の請求項1)、「本発明は、建物の内外装用金属、自動車のシャーシ等金属構造物の表面被覆のための防錆塗料用ベヒクルに用いられる水分散性樹脂組成物に関するものである。」(第2頁左上欄下から2行〜右上欄第2行)、「不飽和カルボン酸量が0.1重量%未満の場合、金属素材に対する密着力が低下し、逆に不飽和カルボン酸量が10重量%を越えて多いと耐水性が著るしく低下する傾向を示す。もちろん、(メタ)アクリル酸アクリルエステル系モノマーと共重合可能なモノマー類、例えばスチレン、アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、α-メチルスチレン、アクリロニトリル、塩化ビニリデン等も使用が可能である。」(第3頁左上欄第3〜11行)が記載されている。
同じく刊行物2(申立人1が提出の甲第2号証)には、「エチレン性不飽和単量体100重量部を連鎖移動剤0.1〜1.0重量部およびラジカル反応性乳化剤の存在下に乳化重合してなる水性樹脂分散体。」(特許請求の範囲の請求項1)、「実施例2〜6 比較例1〜3 実施例1と同様の方法で、エチレン性単量体、反応性乳化剤、連鎖移動剤の種類と量を表2に示すように変えて夫々樹脂分散体を得た。」(第4頁左下欄第1〜4行)、メタクリル酸メチル(298重量部)/アクリル酸エチル(540重量部)/スチレン(150重量部)/メタクリル酸(10重量部)/メタクリル酸ヒドロキシエチル(2重量部)からなる単量体を、その3重量%の量の反応性乳化剤の存在下で乳化重合して共重合体の水分散体であるコーティング用水分散体が得られる旨(第4頁表2の実施例3の欄)、メタクリル酸メチル(310重量部)/アクリル酸2-エチルヘキシル(340重量部)/スチレン(340重量部)/アクリル酸(8重量部)/メタクリル酸ヒドロキシエチル(1重量部)/アクリル酸アミド(1重量部)からなる単量体を、その1.5重量%の量の反応性乳化剤の存在下で乳化重合して共重合体の水分散体であるコーティング用水分散体が得られる旨(第4頁表2の実施例4の欄)、「2.塗膜の作成 1.で得られた塗料をガラス板にはけにて厚さ0.5mmになるように塗布し」(第4頁右下欄下から7行〜下から5行)が記載されている。なお、申立人1が提出した参考資料1の記載によれば、実施例3及び4に記載の共重合体のガラス転移温度は26〜33℃である。
同じく刊行物3(申立人1が提出の甲第3号証)には、「アクリル酸もしくはメタクリル酸の低級アルキルエステルの中から選ばれた単量体とこれら単量体と共重合可能な他の重合性単量体との混合物からなる単量体にさらに単官能性の反応性単量体を単量体全量に対して5重量%以下含有させて水性媒体中で乳化共重合させるに当り、・・・反応性乳化剤を用いて反応させることを特徴とする高濃度反応性ミクロゲルの製造方法。」(特許請求の範囲第1項)、「上記単量体に共重合して生成ミクロゲルに反応性を付与する単量体としてはN-メチロール(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、・・・などの一般に使用されている単官能性の反応性単量体が例示される。」(第3頁右下欄第8〜14行)、「本発明の方法によって製造される反応性ミクロゲルはそのまま塗膜を形成するエマルジョン塗料のビヒクルとして用いることも可能であるが、」(第4頁左上欄第17〜19行)、「本発明の方法によって製造される反応性ミクロゲルは、・・・金属面などの微細な凹凸面に対する密着性や、コンクリート、木材などに対する浸透性が優れており、」(第4頁右上欄第16〜20行)、「反応性ミクロゲルをガラス板上で自然乾燥して得られた皮膜の透明性は、」(第5頁右上欄第3〜4行)が記載されている。なお、申立人1が提出した参考資料1の記載によれば、実施例3及び4に記載の共重合体のガラス転移温度は20〜21℃である。
同じく刊行物4(申立人1が提出の甲第4号証)には、「4.1 塗料 2-HEMAの用途において、数量的には塗料分野が大半を占めている。使用方法として、他のアクリル系モノマーと共重合し、溶剤型塗料、水性塗料、・・・と幅広い使われ方をする。密着性、耐候性、耐薬品性、耐衝撃性、光沢などの物性改良に効果が認められている。」(第13頁第14〜18行)が記載されている。
同じく刊行物5(申立人1が提出の甲第5号証)には、各種ホモポリマーのTgが記載されている。
同じく刊行物6(申立人1が提出の甲第6号証)には、「本発明は・・・この共重合体エマルジョンを含有してなる床用光沢組成物が、塩ビホモジニアスタイル、クッションフロアー、ドライケアシステム等において、密着性、耐久性、耐ホコリ性がバランスし、かつ適度の光沢を有することを見出し、」(第2頁左上欄第11行〜最下行)、「共重合体エマルジョン中の共重合体の平均粒子径は、・・・好ましくは0.06〜0.2μであり、・・・0.25μを超えると塗膜のパウダリングが起り易くなり、密着性、耐久性、耐水性、造膜性、光沢性が劣るので好ましくない。」(第3頁右上欄第18行〜左下欄第4行)、実施例として各種性質と共に除去性も評価されている旨(第7頁表2)が記載されている。
同じく刊行物7(申立人1が提出の甲第7号証)には、「・・・無機質焼結体成形体用バインダー。」(特許請求の範囲第1項)、「水性エマルジョンは、本質的に粒子の充填融着によって皮膜が形成されるので、その平均粒子径が小さいことが必要とされるが、本発明において・・・その平均粒子径を100nm以下、好ましくは80nm以下に限定したことから、・・・バインダーとして要求される熱融着、接着性、皮膜の平滑性、光沢性等の諸性能を大巾に向上することが可能となる。」(第2頁右上欄第12〜最下行)が記載されている。
同じく刊行物8(申立人2が提出の甲第1号証)には、「全モノマー中に不飽和カルボン酸をx重量%、グリシジル基を有する不飽和単量体をy重量%、アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なモノマーz重量%、および残部がアクリル酸アルキルエステルである共重合体であって、x、y、及びzは x≧0.1 y≧0.1 x+y≦15.1 z<70 なる関係を満すものであり、かつ重量分率法による計算上のガラス転移温度が20℃以上であり、さらに平均粒子径が200nm以下であることを特徴とする防錆性水分散性樹脂組成物。」(特許請求の範囲の請求項1)、「本発明は建物の内外装用金属、家具、自動車の車体シャーシ、エンジン周囲部及び缶等金属構造物や鋳物等の表面被覆用水系防錆剤として有用な防錆性水分散性樹脂組成物に関するものである。」(第1頁右下欄第1〜4行)、「また、アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なモノマーとしては、例えば、・・アクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシルプロピル、メタクリル酸2-ヒドロキシルエチル、・・・等が使用が可能である。」(第2頁左下欄第17行〜右下欄第8行)、「本発明の水分散性樹脂組成物を重合する際に用いられる乳化剤としては・・・特に、好ましい乳化剤としては・・・たとえば下式で示される構造をもつ乳化剤を代表する反応性乳化剤があげられる。」(第3頁左下欄第11〜19行)、「例えば前記モノマー類の・・・0.3〜3.0重量%に相当する反応性乳化剤の存在下でモノマー類の重合を行い、」(第3頁右下欄第11〜14行)、が記載されている。
同じく刊行物9(申立人2が提出の甲第2号証)には、「・・・よりなる重合性単量体成分を乳化重合して得られる乳化重合体(X)を用いてなる耐候性に優れたエマルション型塗料用組成物。」(特許請求の範囲の請求項1)、「本発明のエマルション型塗料用組成物は、・・・家電製品、鋼製機器、大型構造物用、自動車用、建築、建材あるいは木工用などの広い用途に使用できる。」(第6頁左下欄第11〜16行)、4-メタクリロイルオキシ-2,2,6,6,-テトラメチルピペリジン3.0重量部、4-メタクリロイルオキシ-1,2,2,6,6,-ペンタメチルピペリジン3.0重量部、4-メタクリロイルアミノ-2,2,6,6,-テトラメチルピペリジン3.0重量部、シクロヘキシルメタクリレート10.0重量部、スチレン10重量部、n-ブチルアクリレート10.0重量部、メチルメタクリレート30.0重量部、ヒドロキシエチルメタクリレート10.0重量部、アクリル酸1.0重量部、メチルアクリレート20.0重量部からなる単量体から得た共重合体水分散液である旨(第7頁第1表中の実施例3)、「また共重合体分散液(4)及び(比4)については、・・・塗料組成物とし、先に共重合体水分散液(1)を含む白塗料を塗布したフレキシブルボード上に・・・塗布し、」(第8頁左上欄下から2行〜右上欄第4行)が記載されている。
同じく刊行物10(申立人2が提出の甲第3号証)には、「(5)水分散性アクリル樹脂 水分散性アクリル樹脂は、その粒子径により、コロイダルディスパージョン(0.01〜0.05μm)、エマルション(0.05〜0.5μm)、サスペンション(0.5〜10μm)に大別できる。」(第265頁第26〜28行)、「(7)ソープフリーエマルション ・・・耐水性、密着性を低下させる等の悪影響を及ぼすことが、容易に推察される。・・・したがって、この問題点を解決するため、各種の方法が試みられている。 例えば、1)重合型界面活性剤・・・がある。これらは、エマルションと共重合して存在したり、・・・塗膜になったときの性能向上を図る方法である。」(第267頁第3〜12行)、「塗料用としてみた場合、・・・常乾型クリヤー塗料、シーラー、木工用、シャーシブラック、瓦等で使用されている実績がある。」(第267頁下から6行〜下から5行)が記載されている。

4.対比・判断
(1)特許法第29条第1項違反について
本件発明と刊行物8に記載の発明とを対比すると、本件発明はプラスチック基材のコーティングに用いる水分散体であるのに対して、刊行物8に記載の発明は防錆性水分散性樹脂組成物であって、その組成物は建物の内外装用金属、家具、自動車の車体やシャーシ、エンジン周囲部及び缶等金属構造物や鋳物等のように防錆を要する金属物品の被覆用である点で相違する。
よって、本件発明と刊行物8に記載された発明は同一とすることはできない。

(2)特許法第29条第2項違反について
刊行物1には、上記(1)に記載した刊行物8と同じく、防錆性の塗料用水分散性組成物であって、防錆を要する金属物品の被覆に使用する旨が記載され、参考資料1の記載を参酌しても刊行物2には、水性樹脂分散体が塗布される対象としてガラス板が記載されているのみであり、同じく刊行物3には、高濃度反応性ミクロゲルは金属面、コンクリート、木材、ガラス板に塗布できる旨が記載されているのみであり、刊行物4には、具体的な被塗物について何ら記載されておらず、刊行物5は本件発明に係る出願の出願時において公知の文献ではなく、刊行物6には、塩ビホモジニアスタイル等に塗布する光沢組成物が記載されており、該光沢組成物は塩化ビニル製タイル表面に塗布されるものと解されるが、実施例にも示されるとおり除去性も必要とされるものであり、永続的に被覆をする塗料ではなく、いわゆるワックス的に使用される組成物であると認められ、刊行物7には、バインダーの用途が無機質焼結体成形体用である旨記載され、刊行物9には、エマルジョン型塗料用組成物が家電製品の塗装に使用できる旨記載されているが、家電製品には主に樹脂や金属等が使用されるところ、通常、樹脂部材は塗装されておらず、塗装を要するものは金属部材と解されるから、該エマルジョン型塗料用組成物が塗布される対象としてプラスチック物品が示唆されているとはいえず、刊行物10には、木工用、瓦用塗料として使用されている旨記載されているのみである。
このように 刊行物1〜10のいずれにも、本件発明中の、プラスチック基材のコーティング用に用いる点について記載されておらず、また、これら刊行物の記載を総合してみても、この点を容易に想到できるものとは認められない。
そして、本件発明は、特定の単量体成分を特定量の反応性乳化剤の存在下で乳化重合させて、特定のガラス転移温度と平均粒子径を備えることにより、プラスチック基材に対して、密着性に非常に優れ、防汚性、高度に優れたコーティング被膜を形成することができるという顕著な効果を奏するものである。
よって、本件発明は申立人1及び2が提出した甲号各証に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(3)特許法第36条第3項及び第4項違反について
申立人1が主張する本件明細書の記載不備は、訂正前の請求項1に係る発明はコーティング用水分散体の用途が格別限定されていない点を指摘するものであったが、上記II.1.の訂正によりコーティング用水分散体の用途が発明の詳細な説明に具体的に開示のあるプラスチック基材のコーティングに限定されたので、その記載不備は解消している。

5.まとめ
したがって、本件発明は刊行物8に記載された発明であるとすることはできず、また、刊行物1〜10に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとも認められないし、訂正明細書に記載不備はない。

IV.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
コーティング用水分散体
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート3〜20重量%
(b)アルキル(メタ)アクリレート40〜96.9重量%
(c)エチレン性不飽和カルボン酸0.1〜10重量%
(d)その他共重合可能なエチレン性不飽和単量体0〜56.9重量%
からなる単量体(イ)、(ただし(a)+(b)+(c)+(d)=100重量%)を、
上記単量体成分の合計を100重量部としたとき、0.1〜10重量部の量の反応性乳化剤(ロ)の存在下で乳化重合して得られる共重合体の水分散体であり、かつ前記共重合体のガラス転移温度が0℃以上であり、平均粒子径が200nm以下であることを特徴とするプラスチック基材のコーティング用に用いるコーティング用水分散体。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、特に家具、ビニル床材、航空機の内装材、オートバイ、自動車の内装・外装材、事務用機器などのプラスチック基材の表面を被覆するのに好適なコーティング用ビヒクルに用いられる水分散体に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック基材、ゴム質基材、金属基材、木質基材およびセラミックス基材などの基材の表面保護あるいはこれらの美観を保つ目的で、従来各種溶剤型コーティング剤が一般に用いられてきた。しかし、溶剤型コーティング剤は、火災や爆発の危険性があり、また毒性を有するため労働安全衛生上、健康上、公害上等数多くの問題点があり、水系コーティング剤への移行が望まれている。
【0003】
従来、基材上にコーティング剤を塗布して得られるコーティング被膜と、基材との密着性は、溶剤型コーティング剤の場合には、このコーティング剤中に含まれる溶剤が、プラスチック基材などの表面に食込むことにより、達成されていたのに対し、水系コーティング剤の場合には、このような作用を期待できないため、コーティング被膜と基材との密着性は、充分ではなかった。特に、水系コーティング剤の場合には、基材としてプラスチック基材を用いる場合には、コーティング被膜と基材との密着性は充分ではなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記のような従来の技術における問題点を解決しようとするものであって、作業衛生上の問題が解決され、かつ基材との密着性に優れ、しかも硬度、防汚性にも優れたコーティング被膜を形成しうるようなコーティング用水分散体を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記のような問題点を解決すべく鋭意研究を重ねたところ、粒子径がきわめて小さく、しかもエマルジョン粒子に反応性乳化剤がグラフト結合などにより強く結合してなる共重合体水分散性樹脂エマルジョンから形成されるコーティング被膜は、基材特にプラスチック基材との密着性に優れ、しかもこのコーティング被膜は硬度、防汚性にも優れていることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明に係るコーティング用水分散体は(a)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート3〜20重量%と、(b)アルキル(メタ)アクリレート40〜96.9重量%と、(c)エチレン性不飽和カルボン酸0.1〜10重量%と、(d)その他共重合可能なエチレン性不飽和単量体0〜56.9重量%とからなる単量体(イ)、(ただし(a)+(b)+(c)+(d)=100重量%)を、
上記単量体100重量部に対して合計0.1〜10重量部の量の反応性乳化剤(ロ)の存在下で乳化重合して得られる共重合体の水分散体であり、かつ前記共重合体のガラス転移温度が0℃以上であり、平均粒子径が200nm以下であることを特徴としている。
【0007】
以下本発明のコーティング用水分散体の各成分などを詳細に説明する。
(a)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート
本発明に使用される(a)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、具体的には、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアミル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0008】
この(a)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートは、単量体成分の合計を100重量%とした場合に、3〜20重量%、好ましくは3〜15重量%、さらに好ましくは3〜10重量%の量で用いられる。
【0009】
このヒドロキシアクリル(メタ)アクリレートの量が、3重量%未満では、得られるコーティング被膜と基材との密着性が劣り、一方20重量%を超えると二次密着性が劣ることがある。
【0010】
(b)アルキル(メタ)アクリレート
本発明に使用される(b)アルキル(メタ)アクリレートとしては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、i‐ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、i‐アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n‐オクチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのうちアルキル基の炭素数が1〜8であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、特にメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0011】
この(b)アルキル(メタ)アクリレートは、単量体成分の合計を100重量%とした場合に、40〜96.9重量%、好ましくは50〜96.9重量%、さらに好ましくは60〜96.9重量%の量で用いられる。
このアルキル(メタ)アクリレートの量が40重量%未満であると、得られるコーティング被膜の防汚性が劣ることがある。
【0012】
(c)エチレン性不飽和カルボン酸
本発明に使用される(c)エチレン性不飽和カルボン酸としては、具体的には、(メタ)アクリル酸、フマル酸、イタコン酸、モノアルキルイタコン酸、マレイン酸、クロトン酸、2‐(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸などのα,β-不飽和カルボン酸などが挙げられる。
【0013】
この(c)エチレン性不飽和カルボン酸は、単量体成分の合計を100重量%とした場合に、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜8重量%、さらに好ましくは1〜5重量%の量で用いられる。
【0014】
このエチレン性不飽和カルボン酸の量が0.1重量%未満であると、二次密着性が劣り、一方10重量%を超えると密着性が劣ることがある。
(d)その他共重合可能なエチレン性不飽和単量体
本発明に使用される(d)その他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体としては、具体的には、スチレン、α‐メチルスチレン、4‐メチルスチレン、2‐メチルスチレン、3‐メチルスチレン、4‐メトキシスチレン、2‐ヒドロキシメチルスチレン、4‐エチルスチレン、4‐エトキシスチレン、3,4‐ジメチルスチレン、2‐クロロスチレン、3‐クロロスチレン、4‐クロロ‐3‐メチルスチレン、4‐t‐ブチルスチレン、2,4‐ジクロロスチレン、2,6‐ジクロロスチレン、1‐ビニルナフタレン、ジビニルベンゼンなどの芳香族ビニル単量体、
アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ化合物、
ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの多官能性単量体、
(メタ)アクリルアミド、N‐メチロール(メタ)アクリルアミド、N‐メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N‐ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’‐メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミドなどの酸アミド化合物、
塩化ビニル、塩化ビニリデン、脂肪酸ビニルエステルなどのビニル化合物、
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタデカフルオロオクチル(メタ)アクリレートなどのフッ素原子含有単量体、
γ-(メタ)アクリロイルプロパントリメトキシシラン、チッソ(株)製のサイラプレーンFM0711などの反応性シリコーンなどのシリコーン化合物などが挙げられる。これらのうち特にスチレンが好ましい。
【0015】
この(d)共重合可能なエチレン性不飽和単量体は、単量体成分の合計を100重量%とした場合、0〜56.9重量%、好ましくは0〜49重量%、さらに好ましくは0〜38.0重量%の量で用いられる。
【0016】
この(d)共重合可能なエチレン性不飽和単量体の量が59.8重量%をこえると、重合時に多量の凝集物が発生したりして、得られるコーティング被膜の防汚性が劣ることがある。
【0017】
(ロ)反応性乳化剤
本発明に係るコーティング用水分散体は、上記のような単量体を、(ロ)反応性乳化剤の存在下に乳化重合して得られるが、このような(ロ)反応性乳化剤としては、ビニル基、アクリル基、メタアクリル基などの重合性反応基を有し、かつ上記のような単量体をこの反応性乳化剤の存在下に乳化重合して得られる粒子の平均径が200nm以下となるようなものが用いられる。
【0018】
以下特に好ましい(ロ)反応性乳化剤を例示する。
(1)一般式1
【0019】
【化1】

【0020】
(式中、R1は炭素数2〜4のアルキレン基であり、R2は置換基を有してもよい炭化水素基、フェニル基、アミノ基またはカルボキシル基であり、R3は水素またはメチル基であり、MはNaまたはNH4であり、pは0〜50の整数である。)
(2)一般式2
【0021】
【化2】

【0022】
(式中、R1〜R3、Mおよびpは一般式1と同じである。)
(3)一般式3
【0023】
【化3】

【0024】
(式中、R1およびR3は一般式1と同じであり、R4は置換基を有していてもよい炭化水素基であり、mは0〜100の整数であり、Xは水素、ノニオン系親水基またはアニオン系親水基である。)
(4)一般式4
【0025】
【化4】

【0026】
(式中、R5は炭素数4〜18のアルキル基、アルケニル基、またはアラルキル基であり、R6は水素または炭素数4〜18のアルキル基、アルケニル基、またはアラルキル基であり、R3は水素またはメチル基であり、Yは-O-(R1O)q-H、または-O-(R1O)qSO3M(R1は炭素数2〜4のアルキレン基または置換アルキレン基、Mはアルカリ金属原子、NH4またはアルカノールアミン残基、qは2〜200の整数)であり、nは0〜10の整数である。)
(5)一般式5
【0027】
【化5】

【0028】
(式中、R1〜R3およびpは一般式1と同様であり、Mは一般式4と同様である。)
以上の構造式をもった反応性乳化剤は、アニオン性であることが望ましく、このようなアニオン性の反応性乳化剤を用いると、平均粒子径が200nm以下である共重合体が分散された水分散体を得ることができる。また、公知のアニオン性、ノニオン性およびカチオン性乳化剤も必要に応じて併用してよい。
【0029】
この反応性乳化剤は、単量体合計100重量部に対し、0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜10重量部、さらに好ましくは1.0〜8重量部の量で用いられる。
【0030】
この反応性乳化剤の量が0.1重量部未満であると、得られるコーティング被膜と基材との密着性が劣り、10重量部を超えると二次密着性が劣ることがある。
【0031】
本発明のコーティング用水分散体は、上記のような単量体(イ)を反応性乳化剤(ロ)の存在下で通常の乳化重合条件下で乳化重合することにより得られる。たとえば、水性媒体中に、前記(a)〜(d)からなる単量体成分、前記(ロ)反応性乳化剤、重合開始剤、連鎖移動剤、キレート化剤、pH調整剤などを添加し、温度30〜100℃で1〜30時間程度、乳化重合反応を行うことによって得られる。
【0032】
重合開始剤としては、たとえば水溶性の過硫酸塩、過酸化水素などが使用可能であり、場合によっては還元剤と組み合わせて使用することができる。
還元剤としては、たとえばピロ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、L-アスコルビン酸およびその塩、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレートなどを挙げることができる。
【0033】
また、油溶性重合開始剤、たとえば2,2’‐アゾビスイソブチロニトリル、2,2’‐アゾビス(4‐メトキシ‐2,4‐ジメチルバレロニトリル)、2,2’‐アゾビス‐2,4‐ジメチルバレロニトリル、1,1’‐アゾビス‐シクロヘキサン‐1‐カルボニトリル、過酸化ベンゾイル、過酸化ジブチル、クメンヒドロ過酸化物などを単量体あるいは溶媒に溶解して使用することができる。
【0034】
これらの重合開始剤は、単量体成分の合計100重量部あたり、0.1〜3重量部程度の量で用いられる。
連鎖移動剤としては、ハロゲン化炭化水素(たとえば、クロロホルム、ブロモホルム)、メルカプタン類(たとえば、n‐ドデシルメルカプタン、t‐ドデシルメルカプタン、n‐オクチルメルカプタン)、キサントゲン類(たとえば、ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド)、テルペン類(たとえば、ジペンテン、ターピノーレン)、α-メチルスチレンダイマー[2,4‐ジフェニル‐4‐メチル‐1‐ペンテン(a1)、2‐4‐ジフェニル‐4‐メチル-ペンテン(a2)、および1‐1‐3‐トリメチル‐3‐フェニルインダン(a3)の少なくとも1種からなり、好ましくは(a1)/(a2)および/または(a3)(重量比)=40〜100/0〜60]、不飽和環状炭化水素化合物(たとえば、9,10‐ジヒドロアントラセン、1,4‐ジヒドロナフタレン、インデン、1,4‐シクロヘキサジエン)、不飽和ヘテロ環状化合物(たとえば、キサンチン、2,5‐ジヒドロフラン)などを挙げることができる。連鎖移動剤は、単量体成分の合計100重量部あたり、0〜5重量部の量で用いられる。
【0035】
キレート化剤としては、たとえばグリシン、アラニン、エチレンジアミン四酢酸などが用いられ、またpH調整剤としては、たとえば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニアなどが用いられる。キレート化剤およびpH調整剤は、それぞれ、単量体成分の合計100重量部あたり、0〜0.1重量部、および0〜3重量部程度の量で用いられる。
【0036】
なお、乳化重合の際に必要に応じて使用される溶剤としては、作業性、防災安全性、環境安全性および製造安全性を損なわない範囲内で、少量のメチルエチルケトン、アセトン、トリクロロトリフルオロエタン、メチルイソブチルケトン、ジメチルスルホキサイド、トルエン、ジブチルフタレート、メチルピロリドン、酢酸エチル、アルコール類、セロソルブ類、カルビノール類などが用いられる。この有機溶剤は、単量体成分の合計100重量部あたり、0〜5重量部程度である。
【0037】
本発明において、上記のような単量体を乳化重合してコーティング用水分散体を製造するには、具体的には、公知の方法、たとえば上記のような単量体成分全量を反応系に一括して仕込む方法、単量体成分の一部を仕込んで反応させたのち、残りの単量体成分を連続または分割して仕込む方法、単量体成分全量を連続して仕込む方法などによって行うことができる。
【0038】
本発明のコーティング用水分散体中に存在する共重合体のガラス転移温度(Tg)は、共重合体を構成するそれぞれの成分のガラス転移温度より次式によって求めることができる。
【0039】
【数1】

【0040】
Tg:共重合体のガラス転移温度
WA:A成分の重量分率
WB:B成分の重量分率
TgA:A成分のガラス転移温度
TgB:B成分のガラス転移温度
このようなコーティング用水分散体中に存在する(メタ)アクリル酸アルキルエステル系共重合体は、この式によって求められるガラス転移温度が、通常0℃以上である。このガラス転移温度が0℃未満であると、得られるコーティング被膜は硬度が劣り、一方ガラス転移温度が0℃以上、好ましくは10℃以上、さらに好ましくは20℃以上であると、基材特にプラスチック基材上に硬度および密着性に優れたコーティング被膜を形成することができる。またガラス転移温度が高い場合には室温乾燥では均一なコーティング被膜を形成しない場合があるが、造膜助剤の添加、高温乾燥あるいはこれらの手段の併用することにより、基材特にプラスチック基材表面上に均一なコーティング被膜を形成することが可能であり、しかもこのコーティング被膜は基材との密着性能にも優れている。
【0041】
また、本発明におけるコーティング用水分散体中の共重合体の平均粒子径は、通常200nm以下、好ましくは100nm以下、さらに好ましくは70nm以下であり、この共重合体の平均粒子径が200nmを超えると、得られるコーティング被膜は、二次密着性が劣ることがある。
【0042】
本発明のコーティング用水分散体には、目的に応じて架橋剤を添加することができる。この架橋剤の添加量は、水分散体の固形分100重量部に対して、通常、50重量部以下、好ましくは40重量部以下である。
【0043】
このような架橋剤としては、アミノ樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステルなどの熱硬化性樹脂、イソシアネート化合物、ブロックイソシアネート化合物、多価アルコール、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物などの有機系架橋剤、金属または金属化合物などの無機系架橋剤などを挙げることができる。
【0044】
アミノ樹脂としては、具体的には、ヘキサメトキシメチル化メラミン樹脂などの完全アルキル型メチル化メラミン樹脂、部分アルキル化メチル化メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アルキルエーテル化尿素樹脂などが挙げられる。
【0045】
イソシアネートおよびブロックイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネートおよびその水素添加物ならびにそのアダクト、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびその水素添加物、トリフェニルメタントリイソシアネートおよびその水素添加物、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートおよびその水素添加物、イソホロンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、イソシアネート基をブロック化したブロック化ポリイソシアネートならびにこれらの任意の混合物などが挙げられる。
【0046】
フェノール樹脂としては、具体的には、ジメチロール樹脂、ポリメチロールフェノール樹脂、フェノールホルムアミド樹脂、メチロールフェノールホルムアミド樹脂、ジメチロールフェノールホルムアミド樹脂などが挙げられる。
【0047】
エポキシ樹脂としては、具体的には、エチレングリコール・ジグリシジルエーテル、ヘキサンジオール・ジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコール・ジグリシジルエーテル、グリセリン・ジグリシジルエーテル、グリセリン・ポリグリシジルエーテル、ジグリセリン・ポリグリシジルエーテル、ソルビトール・ポリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA・ジグリシジルエーテル、ビスフェノールA・ジグリシジルエーテルなどの多価アルコールのポリグリシジルエーテル、
p‐オキシ安息香酸グリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸・ジグリシジルエステル、ヒダントイン環含有エポキシ樹脂、および側鎖にエポキシ基を有するビニル系重合体などが挙げられる。
【0048】
前記金属化合物としては、亜鉛、ジルコニウム、マグネシウム、銅、鉄、コバルト、ニッケル、アルミニウム、カドミウム、チタニウムなどの金属の酸化物もしくはこれらの金属の塩類を、炭酸、酢酸、ギ酸、グルタル酸、安息香酸、シュウ酸などの酸に溶解させるか、あるいはこれらの酸と多価金属化合物の水溶液をアンモニア、アミンなどによりpHを7〜11に調整することによって得られるものであり、また金属イオンの形になったものをも含めることができる。この多価金属化合物は、炭酸亜鉛アンモニウム、炭酸アンモニウムジルコネート、亜鉛、ジルコニウムの酸化物または塩である。前記アミンで錯体形成可能なものは、モルホリン、モノエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチルアミノエタノールなどである。そのほか、一般的な錯化剤、たとえばエチレンジアミン四酢酸などのコンプレキサン、グリシン、アラニンなども使用できる。
【0049】
アジリジン化合物としては、具体的には、トリス‐2,4,6‐(1‐アジリジニル)‐1,3,5‐ トリアジン、トリス[1‐(2‐メチル)-アジリジニル]ホスフィンオキシド、ヘキサ[1‐(2‐メチル)-アジリジニル]トリホスファトリアジンなどが挙げられる。
【0050】
オキサゾリン化合物としては、具体的には、分子内にオキサゾリン環を有する化合物が使用でき、具体的には、日本触媒化学(株)製高分子架橋剤K-1000シリーズ等が挙げられる。
【0051】
また必要に応じて触媒を使用することができ、たとえばドデシルベンゼンスルホン酸、p‐トルエンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸などのアミンブロック化した酸触媒を挙げることができる。この酸触媒は、添加する架橋剤の固形分換算100重量部に対し、好ましくは0.05〜2重量部の量で用いられる。
【0052】
また、前記添加剤以外の添加剤としては、一般に用いられる水溶性ポリエステル樹脂、水溶性あるいは水分散性エポキシ樹脂、水溶性あるいは水分散性アクリル樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂などのカルボキシル化芳香族ビニル樹脂、ウレタン樹脂などのほか、金属酸化物、多価金属塩、さらに潤滑剤、消泡剤、湿潤剤、レベリング剤、顔料などを用いることができる。
【0053】
さらに、添加剤として、造膜性、濡れ性を向上させるために、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコールなどのアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ヘキシルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、トリブトキシメチルフォスフェートなどの有機溶剤を使用することができる。この有機溶剤は、水分散体の固形分100重量部に対し、20重量部以下、好ましくは10重量部以下の量で用いられる。
【0054】
本発明のコーティング用水分散体は、各種の基材特にプラスチック基材に対する密着性に非常に優れ、さらに防汚性、硬度に優れたコーティング被膜を形成することができるため、家具、ビニル床材、航空機の内装材、オートバイ、自動車の内装・外装材、事務用機器などの表面被覆に好適に用いられる。
【0055】
本発明のコーティング用水分散体が塗布される基材としては、プラスチック、ゴム質、木質、セラミックなどが挙げられるが、特にプラスチック基材上に塗布されることが好ましい。例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ABS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートなど、好ましくはABS樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレートなどのプラスチック基材上に本発明のコーティング用水分散体を塗布すると、特に密着性に優れたコーティング被膜を形成することができる。
【0056】
【実施例】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
なお、実施例中、割合を示す部および%は、重量基準によるものである。また、実施例における諸物性の測定は、次の方法に拠った。
密着性
JIS K5400に準じて、1mm角100個の碁盤目試験を行い、セロテープにより剥離状態を確認し、100個中の接着数により表示した。
二次密着性
脱イオン水に24時間浸漬後、常温で2時間乾燥させた試験片に対し、密着性測定を行った。
鉛筆硬度
JIS K5400に準じて、鉛筆引っ掻き試験機を用いて測定した。硬度4B以下のものは、本発明の目的を達成していないものと判断した。
防汚性
カーボンブラックとグリセリンの混合物を試験片に塗布し、24時間放置した後水洗し、汚れの具合を観察した。汚れがひどいものを×、変化のないものを○とした。
水分散体の粒子径
乳化重合して得られた水分散体の平均粒子径は、大場電子(株)製レーザー粒子径解析装置LPA-3000を用いて測定した。
【0058】
【実施例1】
攪拌機、温度計および単量体添加ポンプを備えたステンレス製オートクレーブに、加熱器およびチッ素ガス導入装置を取付け、このオートクレーブに水90部、第一工業製薬(株)製アクアロンRN-20(本文の一般式(4)で表される反応性乳化剤の一例)3部および過硫酸ナトリウム0.3部を仕込み、気相部を15分間、チッ素ガスで置換し、75℃に昇温した。
【0059】
その後、別容器からエチルアクリレート40部、n‐ブチルアクリレート10部、メチルメタアクリレート44部、ヒドロキシエチルメタアクリレート5部、メタアクリル酸1部の単量体成分と、アルキルアリルスルホコハク酸塩2部、水40部からなる乳化物とを、3時間かけて連続的に添加した。添加終了後、さらに85〜95℃で2時間熟成したのち、25℃まで冷却し、アンモニア水でpH8に調整したのち、固形分濃度を水で40%に調整し、次いで200メッシュ金網でろ過し、水分散体を得た。
【0060】
このようにして得られた水分散体の粒子径は、50nmであり、Tgは22℃であった。
得られた水分散体を、予めメタノールで表面を拭き取ったABS樹脂板に乾燥、膜厚10μmになるようにバーコーターにて塗布し、80℃の雰囲気下で30分乾燥させ、試験片を作成した。
【0061】
得られた試験片について密着性、二次密着性、鉛筆硬度を測定した。結果を表1に示す。
【0062】
【実施例2】
実施例1において、単量体の種類と仕込み量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして試験片を作成し、評価した。
【0063】
結果を表1に示す。
【0064】
【実施例3】
実施例1において、単量体の種類と仕込み量を表1に示すように変更し、得られた水分散体に、エチルカルビトールの50%水溶液20重量部と、日本触媒化学(株)製K1020E 10重量部とを添加した以外は、実施例1と同様にして試験片を作成し、評価した。
【0065】
結果を表1に示す。
【0066】
【比較例1〜2】
実施例1において、単量体の種類と仕込み量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして試験片を作成し、実施例1と同様にして評価した。
【0067】
結果を表1に示す。
表1の結果から、(a)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが0.1重量%未満では、密着性が劣り、一方20部を超えると二次密着性が劣ることが分かる。
【0068】
【比較例3】
実施例1において、単量体の種類と仕込み量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして水分散体および試験片を作成し、実施例1と同様にして評価した。
【0069】
結果を表1に示す。
【0070】
【比較例4】
実施例3において、単量体の種類と仕込み量を表1に示すように変更した以外は、実施例3と同様にして水分散体および試験片を作成し、実施例3と同様にして評価した。
【0071】
結果を表1に示す。
表1の結果から、(c)エチレン性不飽和カルボン酸が0.1重量%未満では二次密着性、防汚性が劣り、一方10重量%を超えると密着性が劣ることが分かる。
【0072】
【比較例5】
実施例2において、単量体の種類と仕込み量を表1に示すように変更した以外は、実施例2と同様にして試験片を作成し、評価した。
【0073】
結果を表1に示す。
表1の結果から、(b)アルキル(メタ)アクリレートの合計量が40重量%未満では防汚性に劣ることが分かる。
【0074】
【比較例6】
実施例1において、(ロ)反応性乳化剤の仕込み量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして水分散体および試験片を作成し、実施例1と同様にして評価した。
【0075】
結果を表1に示す。
表1の結果から、(ロ)反応性乳化剤が10重量部を超えると、二次密着性が劣ることが分かる。
【0076】
【比較例7】
実施例1において、(ロ)反応性乳化剤を使用する代わりに、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムに変更した以外は、実施例1と同様にして水分散体および試験片を作成し、実施例1と同様にして評価した。
【0077】
結果を表1に示す。
表1の結果から、通常の乳化剤の使用では密着性が劣ることが分かる。
【0078】
【比較例8】
実施例1において、単量体の種類と仕込み量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして水分散体および試験片を作成し、実施例1と同様にして評価した。
【0079】
結果を表1に示す。
表1の結果から、水分散体中の共重合体のTgが0℃未満では硬度、密着性が劣ることが分かる。
【0080】
【比較例9】
実施例1において、反応性乳化剤の仕込み量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして水分散体および試験片を作成し、実施例1と同様にして評価した。
【0081】
結果を表1に示す。
表1の結果から、水分散体の平均粒子径が200nmを超えると、密着性に劣ることが分かる。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【0084】
【発明の効果】
本発明のコーティング用水分散体は、基材に対する密着性に非常に優れ、さらに防汚性、硬度に優れたコーティング被膜を形成することができるため、家具、ビニル床材、航空機の内装材、オートバイ、自動車の内装・外装材、事務用機器などの各種の基材を表面被覆するために使用することができる。
 
訂正の要旨 訂正の要旨
ア.訂正事項a
特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項1の記載を以下のように訂正する。
「(a)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート3〜20重量%(b)アルキル(メタ)アクリレート40〜96.9重量%(c)エチレン性不飽和カルボン酸0.1〜10重量%(d)その他共重合可能なエチレン性不飽和単量体0〜56.9重量%からなる単量体(イ)、(ただし(a)+(b)+(c)+(d)=100重量%)を、上記単量体成分の合計を100重量部としたとき、0.1〜10重量部の量の反応性乳化剤(ロ)の存在下で乳化重合して得られる共重合体の水分散体であり、かつ前記共重合体のガラス転移温度が0℃以上であり、平均粒子径が200nm以下であることを特徴とするコーティング用水分散体。」
とある特許請求の範囲の請求項1の記載を、
「(a)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート3〜20重量%(b)アルキル(メタ)アクリレート40〜96.9重量%(c)エチレン性不飽和カルボン酸0.1〜10重量%(d)その他共重合可能なエチレン性不飽和単量体0〜56.9重量%からなる単量体(イ)、(ただし(a)+(b)+(c)+(d)=100重量%)を、上記単量体成分の合計を100重量部としたとき、0.1〜10重量部の量の反応性乳化剤(ロ)の存在下で乳化重合して得られる共重合体の水分散体であり、かつ前記共重合体のガラス転移温度が0℃以上であり、平均粒子径が200nm以下であることを特徴とするプラスチック基材のコーティング用に用いるコーティング用水分散体。」
と訂正する。
特許請求の範囲の減縮を目的として、以下の訂正事項bの訂正を行った。
イ.訂正事項b
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
異議決定日 2001-09-18 
出願番号 特願平4-267345
審決分類 P 1 651・ 113- YA (C09D)
P 1 651・ 531- YA (C09D)
P 1 651・ 534- YA (C09D)
P 1 651・ 121- YA (C09D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 近藤 政克  
特許庁審判長 脇村 善一
特許庁審判官 山田 泰之
鈴木 紀子
登録日 2000-08-04 
登録番号 特許第3094118号(P3094118)
権利者 ジェイエスアール株式会社
発明の名称 コーティング用水分散体  
代理人 高畑 ちより  
代理人 谷川 英次郎  
代理人 高畑 ちより  
代理人 鈴木 俊一郎  
代理人 鈴木 俊一郎  
代理人 鈴木 亨  
代理人 牧村 浩次  
代理人 牧村 浩次  
代理人 鈴木 亨  
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